101回目を迎える天皇賞は、
いまだかつてない盛り上がりを見せていた。
『四強』と称されるメンバーが、今年初めて勢揃いして激突するからだ。
絶対王者のファミーユリアンこそ海外遠征で不在だが、
その王者とタメを張るレベルの高速逃げの使い手メジロフルマーが、
春初戦の大阪杯をリアンのレコードを破っての圧勝。
3000m超の長距離に不安は残るものの、
人々は克服できると踏み、事前投票での1番人気に推された。
昨年の菊花賞を制し、前哨戦の阪神大賞典も楽勝して
駒を進めてきた、白い稲妻タマモクロス。
長距離実績ではナンバーワンであり、
人気は2番手に留まったが、本命に挙げる人も少なくない。
3番人気は、皐月賞ウマ娘にして僅差の菊花賞2着、
トウショウファルコである。
大阪杯での完敗でフルマーとの勝負付けは済んだ、
との見方もあるが、熱心なファンも多く、いまだ人気は高かった。
今回こそ勝利して輝きを取り戻せるか。
そして4番人気は、中山記念で中央移籍後2勝目を挙げ、
大阪杯でも2着に入ったイナリワンだ。
まだ中央でのG1勝ちこそないが、その末脚には定評がある。
以上が四強のメンツである。
その他の出走者では、いずれも大ベテランの域に入る、
カトリウイング、フリーラン、ミスシクレノンの
G1常連組3人が目立っていた。
主な出走バの枠順
1枠2番メジロフルマー
3枠5番タマモクロス
3枠6番トウショウファルコ
4枠7番イナリワン
6枠12番フリーラン
7枠13番ミスシクレノン
7枠14番カトリウイング
『春の天皇賞、まもなく発走です。
最終見解をお願いします』
『はい。おそらくはメジロフルマーが逃げるでしょう』
実況に促され、解説者が自身の見解を述べる。
『距離に不安がある中でも逃げますか?』
『自分のスタイルですからね。
中距離戦ほどのハイペースにはならないかもしれませんが』
『続くのはトウショウファルコ、ミスシクレノンあたり?』
『そうですね。比較的、前に行く娘たちが多いので、
メジロフルマーを含めて、ペースに注目したいです』
先頭争いは見ものになりそうだ。
そして、どういうペースになるのかも大注目。
『タマモクロスとイナリワンは、いつも通り後方ですね。
この2人にとっては、前がやり合ってくれたほうが助かります。
早く流れろと願っていることでしょう』
『楽しみなレースになりそうです。
さあスターターが台に上がりました。
第101回天皇賞ファンファーレです』
ファンファーレが演奏され、各ウマ娘が順番にゲートに収まっていく。
その経過は非常に順調。短時間で態勢は完了した。
『スタートしました! 16人そろったスタート』
スタートで大きな出遅れはない。
しかし4番の子の行き脚がつかず、最後方となる。
『注目のハナ争いですが、各バ横一線!
これはどうなる? メジロフルマー行かないのか?』
注目された誰が先手を取るのかという争いだが、
なんとしばらくは各娘たちが横一線となり、
我先にと逃げていく存在が現れない。
『メジロフルマー行かない、行きません!
おおっ、左右を見ているぞ!』
意外そうに実況の声が上擦った。
フルマーは、お先にどうぞとばかりに、左右に視線を送っている。
距離不安を鑑みて自重したか。
実況につられて、場内の観客たちもどよめき始める。
(普通に走ってはまず持たない。
ならば、できうる限り持たせるようにすること!)
フルマーの思考はこうだった。
確実に逃げるだろうと思われた存在が逃げないとき、
どうなるのかは自明の理。
かくしてレースはその通りの事態になり、フルマーの思惑通り、
抜けて逃げていく存在はついに現れず、
一同、集団のまま京都の坂を登っていく。
『ここで押し出されるようにして、
トウショウファルコ先頭に立ちました』
『ミスシクレノン続きます。
メジロフルマーは2バ身差3番手で3コーナーを迎えます』
致し方なし、という感じでファルコが前に出る。
どうやら誰もが先頭には出たくなかった模様。
ミスシクレノンがあとに続いて2番手。
メジロフルマーはその後ろになった。
『4コーナーを回って1周目直線に出ます』
『先頭トウショウファルコ、ぴったりついてミスシクレノン。
2バ身差メジロフルマー』
『これはスローペース。
後方勢は歓迎したくないでしょう』
最初に各バが牽制し合ったせいで、見るからにわかるスローペース。
いつものように後方に構えたタマモとイナリには、不利な状況。
とはいえ先頭から後方まであまり差はついておらず、
瞬発力勝負になれば、まだ十分に希望はある。
『64秒6で1000mを通過。やはりスローになりました』
『先頭から最後方まで12、3バ身といったところか』
ひとかたまりの集団に近い状況の中で、レースは向こう正面へ。
『トウショウファルコ先頭変わりません。
直後にミスシクレノン。外を突いてカトリウイング上がって2番手。
内にメジロフルマー。真ん中フリーラン付けています』
ファルコが先頭といっても、リードは1バ身もない。
外からカトリウイングが並びかけていき、
続けざまに数人が我慢できないと見えてさらに並んでいく。
そんな中、メジロフルマーは慌てず騒がず、内でジッと待機。
後方勢にもまだ動きはない。
『各バ、2周目の坂に挑みます』
『頂上から下りにかかる』
坂の下りに差し掛かったところで、レースは動いた。
(直線勝負になったら私に勝ち目はない。
……なら! 早めに仕掛けてリードを取るしかありません!)
自分の弱点はわかっているファルコが、早くも仕掛ける。
きっと思い描いていたプランからはほど遠い内容に違いないが、
勝利するためには自分から動いていくしかない。
加速していち早く集団から抜け出しにかかった。
『トウショウファルコ動いた!
2バ身3バ身とリードを取っていく!』
これをきっかけとして、それまで穏やかだったレースが、
大雨の後の濁流のごとく激しくなる。
(動きましたね。待っていましたよ。ならば私も……!)
この瞬間を待っていたのがフルマーだった。
先頭で逃げるのは、どうしても他バの目標にされてしまう。
距離に不安がある中、今回ばかりはそれは避けたかった。
かくしてレースはここまで、フルマーが思い描いた通りになった。
(天皇盾……メジロの悲願、私がいただきます!)
内にいたフルマーが一瞬の加速で外に動いて、
ミスシクレノンやカトリウイングをかわして2番手に上がる。
『メジロフルマーも動いた!
外に出て追い上げていきます!』
『さらにはイナリワン、タマモクロスも上がってきた!』
4コーナー手前で、いつのまにやらするすると、
3番手争いにイナリワンとタマモクロスが加わってくる。
『さあ直線に向いた!
トウショウファルコ先頭、2バ身差メジロフルマー!』
2人が抜けたところで、上がる大歓声。
しかし、観客のテンションを上げるのはそれだけではなかった。
『外からタマモクロス、イナリワンも突っ込んでくる!』
『やはり
もう言葉は要らないのか!*1』
内から綺麗に四強がそろい踏みだ。
実況が実況を放棄してしまうほどの状況。
『歯を食いしばって必死に粘るトウショウファルコ!
真ん中メジロフルマー! 外からタマモクロスとイナリワン!』
『トウショウファルコとメジロフルマー並んだ!
残り200m! タマモとイナリも迫る!』
『先頭替わった! メジロフルマー先頭に立った!』
200mでファルコとフルマーが並び、粘るファルコをかわしてフルマーが前へ。
そこにタマモとイナリが襲い掛かる。
『メジロの悲願目前! しかし外の2人のほうが脚色が良い!』
『……替わった~! 叩き合いながら
タマモクロスとイナリワン先頭に躍り出る!』
『あと100m!』
フルマーは間もなく2人に飲み込まれ、3番手に下がった。
タマモとイナリは、引き続き激しく争いながらゴール前。
『タマモか、イナリか!』
『タマモクロス僅かに出た! タマモクロスぅ~っ!』
ゴール寸前でタマモがイナリを振り切り、アタマ差勝利。
イナリはこれで、3回目のG1での2着となった。
「はぁ、はぁ……やったで……
い、イナリぃ……はぁ、はぁ……これで……
有馬での借りは、返したでぇ……」
「はぁ……はぁ……ち、ちくしょうめぇ……っ!」
熾烈な争いを演じた2人は、ゴール後すぐに足を止めて、
並んでひっくり返ってしまった。
しかし大きく呼吸を乱しながらも、満足そうに語り合っていたという。
四強の実力が並外れていたことは、ファルコの後方、
5着との差が8バ身開いたことから明らかである。
天皇賞(春) 結果
1着 タマモクロス 3:21.9
2着 イナリワン アタマ
3着 メジロフルマー 2.1/2
4着 トウショウファルコ 2
「お父ちゃんお母ちゃん! チビたちぃ!」
タマモは、勝利インタビューで再び吠えた。
愛する家族に向かって。そして……
「先輩も、見とってくれたかぁ!?」
海の向こうの、敬愛し尊敬する先輩に向けて、思いっきり叫ぶ。
大阪杯を回避した負い目があったせいか、その目は潤んでいた。
「このとーり、日本はウチたちが盛り上げたるからな!
心配なんかな~んもいらん。
先輩は先輩で、海外でもっと大暴れしたってなあ!」
春のクラシック戦線も終了し、残りの春シーズンのG1は、
安田記念と宝塚記念を残すのみとなった。
その安田記念には、笠松から来た
クラシック級の春にして、シニア級へ挑む異例のローテーション。
ダービー出走が叶わなかった代案と言えばそれまでだが、
ここで好勝負、もしくは勝ってしまうとなれば、それこそ大事件だ。
迎え撃つシニア勢は、前年の桜花賞ウマ娘で
直前のヴィクトリアマイルも制しているシャダイカグラが筆頭候補。
続けて、桜花賞でカグラの2着だったホクトビーナス、
昨年のマイルCS2着のホクトヘリオス、スプリンターズS4着のブラックナルシスら、
一線級が勢揃いした。
「オグリ、いけるな?」
「もちろんだ」
「よし」
パドックへと向かう直前の控室。
トレーナーからの問いに、オグリは力強く頷いた。
それを見て、トレーナーも満足そうに笑みを見せる。
「ここを勝てば、また新たな道も開ける。しっかりな」
「言われるまでもないさ」
両者がっしり握手を交わすと、悠然と控室から出ていった。
そして無事にパドックでのお披露目を終え、
本バ場入場を迎える。
『オグリ~!』
『がんばれよ~!』
『地方の意地を見せたれ~!』
オグリが姿を現すと、歓声が乱れ飛ぶ。
彼女は早くも、中央のファンたちにも受け入れられ、
成り上がりを好む日本人的な気質のおかげもあって、
爆発的な人気を得ることに成功していた。
トレーナーが指導するままに“弱者”ムーブを貫いたことと、
強者側のURAが一方的な対応を取ったせいでもある。
(中央でもこんなに応援してもらえるとは思わなかった。
……うれしい)
当のオグリ本人は、大歓声に驚きつつも、
内心ではちょっぴり喜んで、返しウマに入っていった。
当然、抜けた1番人気はオグリ。
2番人気シャダイカグラ。3番人気はホクトヘリオス。
天候は曇り、良バ場。
『さあ安田記念出走16人、ゲートイン完了しました。
ゲートが開いてスタート!』
『揃いました。綺麗なスタートになりました』
ここでも出遅れなどはなかった。
『7番がス~ッと出てまいりまして逃げを打ちます。
続けて16番が追っていきます』
『注目のオグリキャップは3番手集団』
7番と16番が先手を取って先頭に立ち、
オグリはいつもより前目なポジションにつける。
『外から15番上がっていって3番手』
『オグリキャップは内内を追走しております』
『先頭は7番。3、4バ身程のリードをとって3コーナーへ向かいます』
『縦長の展開になっています』
『7番のリードがなくなってきた』
残り600を切る段階で、逃げた7番のリードは消失。
2番手集団に吸収された。
もちろんオグリもその中に含まれている。
『4コーナーを回って直線へ出ます』
『オグリキャップ、今2番手から先頭に出ようというところ』
逃げウマの直後のインベタという、経済コースを取ったオグリは、
ウマなりで7番に並びかけていく。
他の2番手集団にいた子たちも、すべて置き去りにする勢い。
『オグリキャップ楽々先頭に立ちました』
坂上でオグリは先頭へ。
しかも、まだ本気で追い出してはいない。
(よし、ここからだ!)
満を持して、ここでオグリはラストスパート。
『さらに引き離していくオグリキャップ。
これはちぎったちぎった! さらに離す!』
『シンウインド2番手。
後方からはホクトヘリオス突っ込んでくる』
『しかしオグリキャップ、これはモノが違う!
3バ身、4バ身、5バ身と離していく!』
直線入り口でウマなりで並びかけていって、
坂上からのスパートで、これだけの差を作る。
まさにバ力、瞬発力の違いだった。
『オグリキャップ堂々とゴールインッ!』
『オグリキャップ勝ちました。中央3連勝でG1も連勝!
中央のシニア級が相手でも全く問題なし』
『まさに怪物! 笠松から来た
オグリは最終的に、2着に6バ身もの差をつける圧勝。
しかも、再びレコードを更新。
それも今度はコースレコードをも塗り替えて見せたのである。
安田記念 結果
1着 オグリキャップ 1:32.4R
2着 ホクトヘリオス 6
「安田記念を勝ちましたオグリキャップさんです。
おめでとうございます」
「ありがとう」
恒例のインタビューに応じるオグリ。
本人はもちろんのこと、前回のようなことを警戒してか、
トレーナーも最初からすぐ隣に映りこむという、前代未聞の形。
以後、これが彼らの標準スタイルとなっていく。
「レース前から凄い大歓声でしたね」
「ああ、すごかった。感謝する」
「レース内容についてはいかがですか?
6バ身差をつけての圧勝となりましたが」
「勝ててうれしい。それだけだ」
「悔しさは晴れましたか?」
「悔しさ? ……どういうことだ?」
明らかに、ある1点を意識した質問。
しかし、オグリの天然さで、それを察しろと言うのが土台無理な話で。
このかわいらしく首を傾げる様子が、また話題を呼ぶのだ。
「トレーナー?」
「うん、まあ、勝ててうれしいって言っときゃいい」
「そうだな。とにかく、レースに勝ててうれしい」
「は、はあ」
外れも外れなコメントだったが、これ以上話を引き出すのは
無理と判断したのか、早々に次の質問へと移る。
「次走についてはお決まりでしょうか?」
これも恒例な質問だ。
前回のこともあるので、これなら話が広がると考えたのだろう。
現に、オグリ陣営はここまでで、次の話はしていなかった。
「オレから答えよう」
案の定、ぐいっと押し出てくるトレーナー。
局側はしめた、と思っただろう。
だが、それ以上のものが、確かにもたらされた。
「秋シーズンに備えて休養でしょうか?」
「いや」
休養か、の声には首を振るトレーナ。
ならば、夏場も休みには充てず、どこかのレースに出るつもりか。
そんな予想は、斜め上に外れることになる。
「オグリの次走は、宝塚記念だ」
「!! それは、本当ですか?」
「ウソついてどうなる。
公共の電波使ってウソつくわけにはいくめえよ」
明らかに衝撃を受けて動揺している周囲をしり目に、
してやったりという顔で笑みを見せるトレーナー。
「何を驚いてんだ。出走できないわけじゃないだろう」
「た、確かに、ファン投票で選ばれれば可能ですが……
しかし、それもまた異例中の異例で……」
昨年も、タマモやファルコがそうであったように、
クラシック級の娘が投票上位に顔を出してくることはあった。
だが、ほぼすべてが秋に備えて辞退というケースであるため、
選ばれてそのまま出走、というのは極めて稀だと思われる。*2
もしかすると、初めてかもしれない。
「こいつなら確実に選ばれるだろうし、
そうなりゃ
なあオグリ、行けるよな?」
「ああ。走れというなら走る」
「そ、そうですか」
つくづく破天荒なウマ娘とトレーナーだ、という印象を、
いっそう強めることになるインタビューとなった。
しかし、既存のルールを打破して、新時代を築こうというのだから、
これくらいはやって見せて当然なのかもしれない。
また、G1を連勝、それもシニア級を打ち破って勝利するようなウマ娘が、
世代最上位を決めるダービーに出走できなかったのは、やはりおかしいとして、
URAを批判する声が一層高まるのである。
『Congratulations! オグリならやれると思ってたよ』
「ふふ……」
深夜、ルームメイトすら深い眠りについている中で、
人知れずメールチェックするのが、オグリの秘かな楽しみとなっていた。
もちろん今回も、リアンからのおめでとうメッセージだ。
『君なら当然勝つと思ってたからお祝いはそれくらいにして、
宝塚にも出るんだって? 大丈夫? 疲れてない?』
「相変わらず優しいな、大先輩は」
心配してくれている文章に、静かにしていないといけないのに、
思わず声に出てしまうオグリ。
確かにリアンの言うとおり、宝塚にも出走するとなれば、
シーズン4走目になる。それも、間隔を詰めての出走だ。
ただでさえ厳しいG1を連戦となれば、当然の言葉ではあった。
「だが大丈夫だ。私はこの通り元気いっぱい、
トレーナーを信頼してもいる。
走れと言われたところを走り、勝つだけだ」
不思議と身体は軽いし、気力も満ち溢れていた。
チーム加入3ヶ月足らずで、すでに振り切れんばかりの信頼を向けている。
ルームメイトと同等かそれ以上に、チームメイトとの関係も良好だった。
心配することなど何もありはしない。
……そのはずだった。
『それと、宝塚に出るとしたら、タマちゃんと勝負することになるね。
ルームメイトだし仲良しだって聞いてるけど、大丈夫かな?』
「む……」
指摘を受けて、オグリの様子が明らかに変わった。
目線が止まり、うろたえているようだ。
「……そう、か。そうだな、タマと走るのか」
今さらながら、その事実に気付かされたオグリ。
春の天皇賞を制したタマモは、当然、G1連勝を狙って出てくるだろう。
今までとは格が違う、一筋縄でいかない明確な強敵となる。
『覚悟はできてる?』
「覚悟……」
かつて、自身がスターオー相手に喫した2度の敗戦を踏まえ、
送ってきているのであろうアドバイス。
ロクでもない気持ちで、中途半端な状態で臨むと、
手痛いしっぺ返しを食らうぞという、教訓の明示であった。
もっとも、オグリがそこまで深読みできていたのかは、不明である。
『できてるというなら、もう何も言わない。
お互いに気が済むまで、思い切り走っておいで』
「……そうだ。思い切り走る、これだ」
走ることが第一と考えるオグリは、そう受け取った。
「相手が誰であろうと関係ない。
ただ思い切り走って、勝負して、勝つだけだ。うん」
そう言って自身を納得させる。
無理にでも何でもなく、自然に達した結論だった。
「……なんやぁオグリぃ? 起きとんのか?」
「!」
と、ここで、タマモが起きてしまったようだ。
こちらへ寝返りを打って顔を向け、眠そうに目を擦っている。
「す、すまない、起こしてしまったか」
「明日は学校やで。オグリもはよ寝ときぃ……」
「あ、ああ」
「………」
タマモはそれだけ言うと、向こう側へと寝返りを打つ。
程なくして、再び安らかな寝息が聞こえてきた。
「……うん」
もう1度小さく頷いて、オグリは携帯をスリープにし、
身体を横たえて寝る態勢に入った。静かに目を閉じる。
(大丈夫だ。たとえ誰と走ることになろうとも、
走れることに感謝して精一杯走るんだ)
幼いころ、走りたくても走れない、
立ち上がることすら困難だったことを思えば、
このようなことは屁でもないではないか。
それに、何も殺し合いをしようというわけじゃない。
お互い正々堂々と勝負すればいいだけの話。
(大先輩は、私とタマが一緒に走るとなったら……
どっちを……応援……してくれる、だろ……か……)
やはりレース直後なだけあって、疲れていたのだろう。
すぐさま睡魔が襲ってきて、あっというまに深淵へと沈んでいった。
リアン
「応援する対象が多すぎて決められないよ!
強いて言うなら全員がんばれっ!(やけくそ)」
仮にリアンが海外遠征する場合、初戦は何が良いですか?
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ドバイワールドカップ
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ドバイシーマクラシック
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ガネー賞(仏)
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クイーンエリザベス2世カップ(香港)
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アメリカ遠征