疲労回復のために、レース後の3日間は完全休養。
日本から来てもらったいつものスタッフさんに、身体のケアをしてもらう。
その間に、乙名史さんは編集やその他業務のため、いったん帰国。
イギリスのトレーニング拠点で再合流の予定だ。
トニーとムーンも、次の視察予定があるとかで、
早々に出発していった。お役所勤めはつらいのう。
で、3日間を悠々と過ごして、次の遠征先イギリスへと向かう。
ちなみに、今回もファーストクラスだそうだよ。
あ、そういえば、シリウスのヤツは今後どうするんだろう?
日本に帰るのか?
それとも、あいつもこのまま遠征を続けるのか?
結局出発前に顔を合わせることはなくて、
聞くことはできなかった。
ロンドン・ヒースロー空港に、現地時間6時15分着。
遅れもなく、定刻通りに到着できたのは良かったんだが……
向こうを深夜発、こっち到着早朝っていうのが、
時差のことを考えるとベストかなって思ってたんだけど、
8時間のフライト時間だったんだけどさ、
時差で3時間マイナスされるせいで、あんまり寝た気がしないのよね。
機内食の時間とかもあるし、合計しても、
3時間も寝られてないんじゃないだろうか。
この便選びは失敗したかな、と思わないでもない。
まあいい。その分、身体は早く慣れてくれるだろう。
ふあ~っ……ねむ……
幸い、向こう1週間はさしたる予定もないし、
スーちゃんの話では、こっちでのトレーニング拠点である
ニューマーケットのトレセン施設に入るまでは、
特にすることもないってことだから、
まだ早朝だけどホテルに直行して、だらだらしてようと思う。
事情を説明すれば、チェックインさせてもらえるだろう。
特別料金とか取られるかもしれないけど、それはしょうがない。
じゃあそういうことで──
「リアンッ!」
「……?」
受け取った荷物を引きながら到着ロビーから出ると、
いきなり名前を呼ばれた。
何事かと思って、声のした方向へ目を向ければ
「こっちよ!」
「……ムーンじゃないか」
なんと、こちらに向けて手を振っているムーンの姿があった。
しかもご丁寧に、『Welcome! FamilleLien!!』と書かれた紙を手にしている。
彼女の後ろには、お約束のように、トニーもいるんだなこれが。
「ようこそイングランドへ! 歓迎するわ」
「それはどうも」
キャリーケースを引きつつ彼女のもとへ向かうと、
笑顔で大歓迎されて、差し出した手を取るとがっしりと握られる。
次の視察先がどうとか言ってたけど、ここがそうなの?
まあ彼女の母国だしなあ。見事に先回りされてたってわけか。
「先乗りされちゃったなあ」
「ここでやらないで、いつやるのよ」
まさにその通り。
この手のイベントを母国でやらないで、いつやるのという話だ。
えっへんと豊満な胸を張って見せるムーンに、後ろのトニーも苦笑している。
先にドバイから出国していったのに、
俺たちの到着便を把握しているのもさすがだよなあ。
どこから情報得てるんだか。
もしかして、URA経由だったりする?
一応、遠征の詳細というかスケジュールは、都度報告してるからね。
2人は一応URAの職員でもあるわけだしさ。
「で、今日これからの予定は?」
「あ、うん。特に何もないけど。
時差調整の関係で朝に着くようにしただけだし」
「そうなのね? じゃあ、今日はロンドン観光に行きましょう!
とっておきのプランを考えてきてあるのよ!」
「か、観光?」
いいのか、それって……
仮にもレースするために来てるのに、観光って……
というか、俺に予定があったらどうするつもりだったんだ。
「なーによー、まったく遊んじゃダメってわけでもないでしょ?」
「えーと……」
待って、俺の一存じゃ決められないから。
えっと、スーちゃんは……あ、いた。
……思いっきりOKサイン出してるな。
え? ドバイ勝ったご褒美?
ニューマーケット入りする日までは、自由に過ごしていい?
ただし羽目は外しすぎないようにすること。
あ、はい、わかりました。
荷物も預かる? 先にホテルへ行ってるって?
楽しんでらっしゃいって、あ、はい……
行ってしまった。
「話の分かるトレーナーさんじゃない」
「ムーンが半ば強制したようなものだぞ」
うんうんと頷くムーンに、呆れ気味に言うトニー。
俺もトニーの言うとおりだと思う。
「じゃあじゃあ早速行きましょ!」
「あ、待って引っ張らないで……うわっ」
「加減してやれムーン」
観光に行くのはいいとしよう。
ドバイではそれどころじゃなかったし、観光要素もそれほどないからさ。
楽しみだという思いもあるよ。
ただ、現在時刻はまだ朝の6時過ぎなんだ。
こんな時間にどこの何を観光するというんだ。
まったくもう、やれやれだぜ……
ああ、あくびが出るぅ……
ニューマーケット・ナショナルトレーニングセンター
イギリスにおけるウマ娘育成の一大トレセンで、
敷地面積がおよそ10㎢に及ぶんだとか。
日本のトレセン学園の5倍近い規模だという。*1
バリーサイド(東側)とレースコースサイド(西側)の2つのエリアに常時、
約2500人ものウマ娘と、プラス関係者たちが暮らす。
ニューマーケットトレセンの代名詞とされるウォーレンヒルは、
全長約900メートルの間に高低差40メートルの勾配が設けられ、
欧州のタフなレースに耐えうる強いウマ娘づくりの礎となってきた。
スーちゃんが現役時代の遠征時にお世話になったという、
トレーナーさんや関係者の協力で、その一角に間借りさせてもらえることになり、
そこでコロネーションカップ及びキングジョージへの調整を行う。
サラッと説明したけど、すごいよね。
まさに日本とは桁違いの規模だ。
トレセン学園の敷地も相当に広いが、それの5倍ってなんだよ。
900mで40mもの高低差を持つ坂路*2だと?
どういうコースだよ。そりゃヨーロッパの子は強いわけですわ。
俺も坂にはある程度の自信はあるけど、
ここで改めて鍛えて、さらに強くならないとな。
エプソムの坂はただでさえきついんだから。
何はともあれ、今日からは俺もここの一員として、がんばりまっしょい!
ニューマーケットに入って間もなく、オグリからメールが届いた。
なんでも、いきなり理事長室に呼び出された挙句、
あなたはクラシックに出られません、諦めてください、
と言われたとかなんとか。
あー、やっぱりしてなかったのかクラシック登録。
俺も伝えようか伝えまいか迷ったんだけど、
すでにどうにもならないだろうから、
あえてオグリには何も言わなかったんだけど。
この様子じゃ、どうやらショックは少なくなかった様子。
いきなりで戸惑っただろうし、右も左もわからない新天地で、
まだまだ頼れる人や友達もいない状況だから、
それとなくは伝えておいたほうが良かったかなあ。
こうしてわざわざ言ってきてるわけでもあるし、
オグリの性格からして、より高い舞台で、
より強い相手と戦いたい、って普通に考えるだろうしなあ。
時すでに遅し。
けどまあやっぱり、これはオグリ自身で解決していかなきゃいけない問題。
現実に、これをきっかけとしてルールが変わったわけで、
こちらの世界でも、追加登録制度が生まれてくれるように、
がんばってもらうしかない。
翌日、オグリから
『タマにも同じことを言われた。
私の力でルールを変えられるように頑張る』との返信が来た。
うむ、がんばってくれたまえ。
なんでタマちゃん?と思ったら、
アプリではこの2人ってルームメイトだったんだよな。
同じ組み合わせになったのか、それとも、
たまたま出会って仲良くなったのかはわからないけど、
こっちでも良好な関係になれたようで何よりだね。
オグリの相談からしばらくしてから、
今度はクリークからのメールが舞い込んできた。
『ごめんなさいお姉さま』というタイトルと、
時期的なことで再び、あ~、っとなる。
すみれSを快勝し、ダービーを目指して、
青葉賞を視野に入れていますとは聞いていた。
お姉さまみたいに、ダービーと連勝しますよ~、
なんて意気込んでたんだけどなあ。
中身を読んでみると案の定で、その青葉賞へのトレーニング中に骨折し、
ダービー出走はもはや叶わなくなったと書かれている。
すぐさまこう返信した。
『クリークさん、悪いことは言わないから、
明日にでもこの番号に電話して、行って診てもらってきて。
私やスターオーちゃんなんかもお世話になってる
信頼できるところだから、安心して行ってきてね。
私から紹介されたって言えば、何も問題ないから』
後日、クリークからは、素晴らしい施設の
ご紹介ありがとうございましたというお礼と、
治療とリハビリ頑張って、菊花賞には必ず出ます、
という決意表明がもたらされた。
悪いことというのは重なるもので。
皐月賞に続けてダービーも勝って二冠を達成したチヨちゃんが、
直後に右足に屈腱炎を発症してリタイア。
俺から直接あれこれ言うのもどうかと思ったので、
スターオーちゃんのほうに、例の研究所へと誘導してもらえるよう、
それとなく促しておくに留めた。
身体のピークのこともあって、復帰できたのはいいものの、
その後は散々な結果だったチヨちゃん。
こちらでは、少しでも早く復帰できることと、
少しでも良い結果が得られるように祈ってるよ。
伝え聞いたところによれば妹のホクトちゃんも、
今のところは、あれほどの雨嫌いを発揮することもなく、
順調にトレーニングに励んでいるようなので、
姉妹ともども頑張ってほしい。
ダービーでチヨちゃんと死闘を演じ、
2着に入ったアルダンもまた、右足を骨折してリタイア。
ここのところ史実ブレイクしてばかりだったので、
こうやって史実準拠の流れが続くと、やっぱり嫌になるね。
クラシックの主役が戦線離脱となって、
世間はいよいよ、オグリ一色へと染まっていくことになる。
そして、衝撃的なことがもうひとつ。
ドバイ後の動向が不明だったシリウスなんだけど、
5月下旬に、なんと隣国アイルランドにいることが判明した。
現地のG1、タタソールズゴールドカップ*3に出走するという。
遠征継続で来たか……
ルナちゃんと話した限りでは、日本には1度も戻っておらず、
シンボリの後援を受けて、粛々と調整しているという。
この分だと、次はロイヤルアスコットとか、
エクリプスS、いや、下手すると、
キングジョージで対戦するなんてことになりかねん。
あいつのことだから、それが狙いという気さえしてくるな。
相変わらず引っ掻き回してくれるぜ。
まあ俺と直接関係のないところのレースであれば、
応援してやらんでもない。
結果、3着と好走。
次走はロイヤルアスコットの、プリンスオブウェールズSと発表された。
6月に入って、コロネーションカップへの出走者が固まってきた。
主なところを紹介しておこう。
まずは、ガネー賞2着から転戦のインザウイングス*4。
現時点でのG1勝ちはないようだけど、俺でも名前は知っていたくらいだから、
史実でも活躍した名馬クラスだと思う。
2人目は、去年のジャパンカップで対戦したあいつ、イブンベイ。
あのゴリラがここにも出てくるようだ。
こいつもガネー賞からの転戦で、3着からの巻き返しを狙う。
3人目は、ドイツから遠征してくるモンドリアン*5という子。
モンゴル人みたいな名前だがドイツ出身。
俺と一部名前が被ってるが気にしないことにする。
国内ではG1を4勝というから、相応には強いんだろう。
あとは名前も知らないよくわからない子が数人、という程度。
ヨーロッパなんかではよくあることだが、
G1でも出走者が10人に満たない、という光景になりそうだ。
そうして調整を順調に進めて、ニューマーケットの今までに体験したことのない、
異常な坂路でのトレーニングにひいこら言いつつ、コロネーションカップ当日を迎えた。
「ファミーユリアンさんっ!」
スタート前。
早速、例のゴリラ娘から目をつけられた。
「お久しぶりデスワ!
こちらでもお目にかかれるとは、思っておりませんでした」
「そうだね、久しぶり」
発走前に顔を合わせて、挨拶を交わして握手する。
……だから手加減しろって。痛ぇんだよ!
「ジャパンカップのリベンジマッチですノヨ!
今度こそワタクシが勝たせていただきますわ」
「うん、負けないよ」
「いいえ、今回はここ英国、ワタクシのホームの地!
負けるわけには参りません。オホホ!」
……相変わらずうるせぇ。
あのときアメリカの暴れん坊がいなくても、
こいつ1人で大騒ぎして、掛かっていったんじゃないの?
「また逃げ対決をご所望で?」
「!? もしや、受けていただけると!?」
「イエス、と言ったら?」
「それはもう、喜んで応じさせていただきマスワ!」
……ちょろい。
だからレースには駆け引きというものがあることを学びたまえ。
例えOKしたところで、真正面から素直に応じるなんて馬鹿な真似も、
しないってこともな。
正直、海外の上に初コース、
それもエプソムという超難コースなんで、ペースなんてわかったもんじゃない。
良い先導役になってくれそうだ。イヒ(悪い笑み)
『日本の皆さんこんにちは、こんばんは。
本日はイギリス、エプソムレース場から、G1、
コロネーションカップの模様をお届けいたします』
『ドバイを制し、世界一に輝いたファミーユリアンが出走します。
欧州での初戦ですが、今回は堂々の1番人気。期待しましょう!』
日本向けの衛星生中継。
今回も日本では夜中の放送になる。
再び寝不足になる人が続出しそうだ。
『解説のゴーダさん。いかがでしょうか』
『はい。ファミーユリアンがドバイを勝ったことで、
風向きが変わりました。もちろん良いほうに、です』
話を振られた解説者は、力強く断言する。
『間違いなく、日本ウマ娘の評価が上がってきています。
先日アイルランドで、ファミーユリアンと同様に遠征を続けている、
シリウスシンボリが好走したこともありますしね』
『本日の予想はどう読まれますか?』
『正直なところ、現状一線級と呼べるのはイブンベイくらいですね。
インザウイングスも昨秋凱旋門賞に出ているとはいえ、大敗してます。
イブンベイはジャパンカップで下してますし、チャンスですよ。
ドイツのモンドリアンは比較が難しいので不気味です。
ただ難コースなんで、オーバーペースにならないようにだけ、
注意してもらいたいところです』
『そうですか、期待大ですね。
さあゲートインが始まっています』
正面スタンドからはちょうど反対側の、
広大な野原を挟んだスタート地点。
モニターで確認しなければ、正直よくわからないだろう。
『コロネーションカップ、出走7名、態勢整ったようです』
『スタートしました! 各バ揃ったスタート』
出遅れ等はない模様。
『イブンベイ飛び出した! ファミーユリアンも続いている』
真っ先にゲートから飛び出たのはイブンベイ。
リアンも同じくらいのスタートで、後に続いていく。
『最初は右に緩やかにカーブします』
『そこから先は、レース中間付近まで続く上り坂だ』
『950m先にあるてっぺんまでひたすら登ります。
日本のあらゆる坂など目じゃない高低差40m、4%勾配の坂』
『先頭イブンベイ、2番手2バ身差でファミーユリアン追走』
『3番手以降は固まって、3バ身差で集団を形成しています』
出走7人は、前2人、後ろ5人に分かれた。
「オホホホ!」
快調に先頭を行くイブンベイ。
脇目など微塵も振らず、ただひたすら前のみを見ている。
きっと彼女の中では今、リアンが隣を走っている
(相も変わらずうるせぇ)
2バ身差で追走するリアンは、
イブンベイの背中を、そう思いながら見つめつつ考える。
(単純で助かるが、仕掛けどころが難しい)
坂を登りきると、ゴール直前まで、一転して下りとなる。
前半の上り坂による消耗と、下り坂によるオーバーペースで、
脚などあっという間に持っていかれかねないからだ。
(まあ、なるようにしからならん。
どのみち一発勝負なんだしな)
いつもの思考で迷いを吹っ切ると、
勝負どころの見極めが肝心だと、改めて気を引き締めた。
『レースは中間地点を過ぎて、ここから下りになります』
『先頭イブンベイ変わりません。
2番手も変わらずファミーユリアンで2バ身差』
『後方勢も動かず待機している』
『さあ各バ、エプソムの名物、急勾配の最終左カーブ、
タッテナムコーナーを曲がって直線へ出ていきます』
『先頭は依然イブンベイでリードを保つ。
2バ身差ファミーユリアン虎視眈々。
どこで仕掛ける? 残り600のハロン棒を通過した』
態勢は変わらずに東京コース以上の長い直線に入り、
そのまましばらくは動きが起こらない。
『後続勢が追い出し始めた。
イブンベイもスパートに入った』
『しかしファミーユリアンはまだだ。まだ我慢している!』
『残り400メートル!
後続勢、伸びが苦しいか? 差は詰まりません』
『まもなく残り200! ファミーユリアンどうした?
伸びないのか? イブンベイも苦しい! 脚色が鈍った!』
下り坂なのに、徐々に鈍っていく脚。
イブンベイがバテるのを待っていた。
『っ! 来たっ、ファミーユリアン来たっ!』
『満を持して追い出してイブンベイに並びかける!
そのままかわすか、かわして先頭っ!』
耐えに耐えて仕掛け、一気に先頭に立った。
残る問題は、中山や阪神も真っ青の、ゴール前100メートルの急登坂。
どんなに堪えても、ここを耐えきれなければ意味がない。
「はぁあああっ!!!」
ここをリアンは、咆哮するのと同時に、
さらにもう1段ギアを上げて全力で駆け上がる。
『ファミーユリアン先頭! これはもらった!』
『ファミーユリアン勝った! 勝ちました!
ドバイに続いてコロネーションカップも制覇!
ゴールインッ!』
結果、他バのように脚色が鈍ることもなく、
最後の急坂を駆け上がって、ゴール板を先頭で通過した。
『素晴らしい末脚、素晴らしいタイミング、素晴らしい勝利です!』
『海外G1、2勝目! 連勝も継続中っ!』
『絶対王者ファミーユリアン健在!
ドバイだけに飽き足らず、ヨーロッパ制圧も時間の問題かっ!』
コロネーションカップ 結果
1着 ファミーユリアン 2:34.43(稍重相当)
2着 インザウイングス 1.1/2
3着 イブンベイ 1.1/2
はぁ……はぁ……
さ、さすがに……すげぇ……タフなコース……だ……
ゴール後しばらくしても、呼吸が戻ってこない。
普段ならもう回復していてもおかしくないんだが、
流石は天下の難コースエプソムダウンズ。
あの春天を逃げ切った時くらいのつらさかもしれん。
別にそこまでハイペースにはなっていないとは思うんだけど、
やっぱり終始坂っていうのは厳しい。
はぁ……やっと楽になってきた。
呼吸が整ってきたところで、スタンド前まで戻り、
至る所で振られている日の丸に向かって、こちらからも手を振る。
湧き上がる大歓声。
ファンクラブの選抜メンバーはもちろんのこと、
今回も、日本からは大応援団が来ているってことだったからな。
もっと手を振って感謝を伝えないと。
「また、負けてしまいマシタ……」
しばらくファンサービスしてからふと気づくと、
真後ろでイブンベイがしょげていた。
「でも、さすがファミーユリアンさんデシタ!
お強いですね!」
しかし、持ち前のポジティブ思考ですぐに立ち直る。
やはりすごい羨ましいメンタルしてるぜ。
「ありがとう。
ごめんね、目標にさせてもらっちゃった」
「イエ構いません。勝負、デショウ?」
「その通り」
「一緒にレース出来て楽しかったデスワ!」
笑顔で言葉を交わし、握手を交わす。
だから痛ぇっつってんだろー!
他人様の手を何だと思ってやがる。
「次走はキングジョージと伺っておりマスガ?」
「うん、そう」
「ではワタクシとは別路線デスワネ。
ワタクシはこのあと、ドイツに行く予定ですので」
「そうなんだ」
じゃあ、今日一緒に走ったモンドリアンと、
また一緒に走ることもあるのかな?
「またどこかで一緒に走りたいものデスね!
また会えそうな気がしマス!」
「うん、また」
そう誓い合って、手を離した。
イブンベイは凱旋門賞出たことないんだっけ?
わからん。知識がないな。
話しているうちに係の人がやってきていて、
引き上げることしばし、レースは無事に確定し、俺の勝利も確定。
こうして海外G1、2勝目を得るのと同時に、
ヨーロッパでの初勝利も手にすることができた。
都合の良い女イブンベイ
意外なところで再び再会するかも?
仮にリアンが海外遠征する場合、初戦は何が良いですか?
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