転生孤児ウマ娘の奮闘記   作:しょうわ56

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第89話 孤児ウマ娘、前哨戦は茨の道

 

 

 

ちょっと前のことになるが、

フランス入りした時のことをちょっと話そうか。

 

まず交通手段だけど、ドバイやロンドンへの経路で飛行機には

散々乗ったので、せっかくだから電車で行くことにした。

 

ユーロスターで2時間ちょっと。

 

ところで、英仏海峡トンネルはまだ開通していない時期*1のはずなんだが、

そのあたりは……まあ、深く考えないのが無難かな、うん。

 

で、無事にパリ北駅へと到着。

入国審査を済ませて、審査場から出た瞬間、

多数のマスメディアに取り囲まれる事態となった。

 

なぜバレたしと思う間もなく、大勢の記者たちからいっぺんに、

それも複数の言語で滅茶苦茶に語りかけられるものだから、

もう何が何だか……

 

日本ではこんなことはなかったので、

初めての経験に驚きつつも、ここまで認められたんだな、

と改めて実感して、少し悦に浸ったりもした。

 

悪評の立つことの多いマスコミだが、

見向きもされないよりはよっぽどマシってもので。

さすがパパラッチの本場は違うなあとも思ったり。

 

イギリス入りした時は、こんなことなかったんだけどねぇ。

待ってたのはムーンとトニーだけだったんだし。

 

まあさすがに、ヨーロッパでG1を2勝して、

片方はキングジョージだったとなれば、

あちらさんの注目度も増すってものか。

 

とはいえ、このままでは埒が明かないので、

急遽記者会見がセッティングされて、この場はお開きになった。

 

そうして、1時間後。

 

「Bonjour, ravi de vous rencontrer.

 Je m'appelle Familie Lien et je suis originaire du Japon.

 J'ai décidé de défier le Prix de l'Arc de Triomphe.

 Je ferai de mon mieux et j'ai hâte de travailler avec vous」

 

用意された会見場で、一礼してから立ったまま一気に、

必死になって覚えたフランス語で挨拶する。

 

意味合いは以下の通り。

 

『こんにちは、はじめまして。

 日本から来ましたファミーユリアンと申します。

 このたびは凱旋門賞に挑戦することになりました。

 精一杯頑張りますので、よろしくお願いします』

 

言い終えてもう1度一礼すると、記者たちから「おおっ」と歓声が漏れた。

 

こういう場で海外の人に、その国の母国語で話してもらうと、

少なくとも悪い気はしないでしょ?

俺もそう考えて勉強したんだが、正解だったようだ。

 

こんな機会もあるかなと思ってさ。

 

あ、ちなみに、現状では丸暗記しただけだから、

他のことをフランス語で話せと言われても無理だし、

聞き取れないからね。ご了承いただきたい。

 

あまりに拙いフランス語だったんで、後から見返すことは

絶対にないと言い切れる会見になりそうだ。

 

急だったから通訳の人もいないけど、

フランス語の分かるスーちゃんが、その役目も引き受けてくれるってさ。

 

実際、さしたる問題もなく普通にこなしてたから、

スーちゃんの凄さをまた一段と思い知らされたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フォワ賞に向けて調整している中、

スターオーちゃんからメールが届く。

 

『お疲れ様です。サクラスターオーです。

 トレーニングの状況はいかがですか?』

 

という書き出しで始まり、こちらの具合を

心配するいくつかの文言の後、重大事項が待っていた。

 

『私事で恐縮ですが、実はこのほど状態が整い、

 実戦に復帰する運びとなりました』

 

……復帰ね。えっ……?

実戦に復帰!? ってマジで二度見したわ。

 

『来月の京成杯オータムハンデ*2に登録しました。

 もう1度ターフに戻れることになって、今からとても楽しみです』

 

そっかぁ、秋シーズン開幕のG3で復帰かあ。

思っていたよりずっと早いなあ。

 

この秋での復帰を目指して、

トレーニングのピッチを上げているとは聞いていた。

でも早くて10月、普通に考えて11月くらいだと思ってたよ。

 

これは日本は盛り上がるだろうなあ。

オグリと四強に加えて、スターオーちゃんも戦列復帰となれば、

史上類を見ない『六強』と謳われること間違いなしだ。

 

『本当に諦めないで良かったです。

 あのとき介抱してくださり、励ましてくださったリアン先輩には、

 筆舌に尽くしがたいほどの感謝の気持ちしかありません。

 ありがとうございました』

 

ただね、スターオーちゃん。

 

そうやって一区切りや目途が立って、

精神的にちょっと緩んだときが1番危ない。

 

実戦復帰のスターティングゲートに入って初めて、

いや、ゴールして無事を確かめてから初めて、

安心するなり、感慨にふけるなりするものだよ。

 

うん、お礼を言うのもちょっとまだ早いかな?

 

『長期療養明けの一戦になりますので、とりあえず勝敗は度外視して、

 走れることの喜びを噛み締めながら、

 ひとつでも上の順位を目指して頑張りたいと思います』

 

返信として、あまり説教臭くならないよう気を付けながら、

そのあたりのことを書いて送った。

 

勝利直後の悲劇から、もうほぼ2年がたつのか。

まさに光陰矢の如しだよなあ。

競走能力喪失と診断されたほどの重傷から、

よくぞここまでと本当に思わされる。

 

ああ、時間が許してくれるのなら、帰国して見に行きたい。

現地まで行って、この目で、スターオーちゃんの復帰戦を見届けたい。

 

でも、当たり前だが、ソレは許されないので。

 

向こうでの発走時刻は、こっちだと朝になるか。

それほど早い時間でもないし、

せめてネット中継での生観戦くらいはしてあげなきゃな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8月下旬。

シリウスが英インターナショナルS(G1)*3に出走した。

 

海外4戦目となったこの一戦。

結果は……

 

なんと。

なんとなんとなんとなんと!

 

直線に入ってからの攻防で、今年の愛1000ギニー娘と、

エクリプスSを制した娘との三つ巴の叩き合いになった末、

最後の最後でハナ差だけ出て勝利!!!

 

テレビで中継を見ていたけど、ゴール前は思わず立ち上がってしまったほどで、

写真判定の結果が出た瞬間、気付いたら全身が汗びっしょりだったよ。

自分で走ったとき以上に汗かいたかもしれない。

 

これであいつも海外G1、2勝目。

まさかここで勝つとはね。

 

日本でどういう報道になるかわからないけど、

まあおめでとうシリウス。

こっちの一線級に競り勝ったという評価でいいんじゃないかな?

 

ドバイでのアレは正直、予想外の奇襲というか、

フロックだという見方が日本でも少なくなかったみたいだから、

もう1勝できたことで、正当に評価してもらえるはず。

 

とかなんとか思っていたら──

 

携帯が着信を告げる。

手に取って確かめてみたら……げえっシリウスッ!?

 

おまっ、レース直後だというのに何やってんの!*4

表彰は? 口取式は!?

 

まったくもう、ドバイでの事件の再現かよ……

 

ずっと音沙汰なしだった上に、

お偉いさんから苦言を呈されてもいたのに、勝った途端にこれとか。

 

やれやれと思いつつ通話ボタンを押す。

 

「もしも──」

 

『リアンッ!!』

 

「──そんな叫ばないでも聞こえてるよ」

 

恒例のお耳ツーン。

スピーカーフォンなのに、思わず手を伸ばして遠ざけてしまったほどだ。

 

まだ興奮が冷めやらないのか、鼻息がすごい。

ホントのホントにゴール直後だもんなあ。

ゴールして数分というレベルなんだ。

あれだけ激しい競り合いをしたんだし、そりゃ息も整ってないというもの。

 

連絡してくるのはいいけど、少しは落ち着いてからにしろや。

というか公式行事は優先しろ。

関係者の皆さんもきっと困ってるぞ。

 

『どうだッ、勝ったぞ。勝った! フハハハッ!!』

 

「はいはいおめでとうおめでとう」

 

お祝いは後からでもできる。

今おまえがすべきことは、戻って式典に参加することだ。

OK?

 

『……チッ呼ばれちまった。

 リアン! 私も凱旋門に出るからな!

 首を洗っとけ。じゃあなっ』

 

さすがに関係者からお呼びがかかったようで、

早口にそう言うと、ぷつっと通話は切れた。

 

……まったくやれやれだ。

って、ちょっと待って?

 

切り際に爆弾発言していかなかったかあいつ!?

凱旋門に出るだと? マジで?

 

いや、まあ、史実でも挑戦しているから、不思議ではないんだけど、

ここで宣言していくとか何なの?

 

まさか本当に、もう1度勝ったら私も挑戦するって言うって決めてて、

そのチャンスを窺ってたから、電話もメールもなかったってことなの?

 

はあ~もうっ……なんて言ったらいいか……

本当にもう……

 

ツンデレにも程がある!

 

祝福してあげたい気持ちはあれど、

素直に祝福できないというか、

なんか猛烈に疲れた出来事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9月9日、中山レース場。

 

今日の満員の観客たち、そして中継を見ているファンたちの目は、

すべてこの娘に注がれていると言っても過言ではないだろう。

 

『大トリを飾って登場しました8枠13番サクラスターオー!』

 

場内実況で紹介されると、大歓声が巻き起こる。

声援に応えるようにして、体操服姿のスターオーは、

観客たちに向かって右手を振った。

 

故障した左足には厳重に巻かれた、

痛々しいほどのテーピングが見られるが、

まずは無事なる復帰となって一安心。

 

『天皇賞勝利直後の悪夢からおよそ2年。

 長くつらい治療とリハビリを乗り越えて、今日ここに、

 グランプリウマ娘がターフへと戻ってまいりました。

 この大歓声をお聞きください!』

 

G3の、それもまだ発走すらしていないというのに、

G1級の大歓声が場内に木霊する。

 

『もちろん本日の1番人気はこの娘です!』

 

実況が告げた通り、圧倒的な1番人気となっている。

ご祝儀という意味合い以上に、

人々の期待と信頼の証と言えるだろう。

 

「スターオ~!」

 

「待ってたぞ~!」

 

「信じてた。信じてたぞ~!」

 

様々なファンから、様々な声が飛び交う。

 

そんな反応を受けて、スターオーは照れ臭そうに笑みを見せると、

ぺこりと大きく頭を下げてから、返しウマへと入っていった。

 

 

おおおおっ

 

 

それだけで、場内からはどよめきが起きる。

 

兎にも角にも、今日のこのレースは、

一緒に走る子たちには気の毒だが、スターオーのためだけに存在した。

 

 

 

 

 

そうして迎えた発走時刻。

 

『スタートしました!』

 

『まず2番がハナを切っていきます』

 

『続けて3番4番、12番も先行する模様』

 

大きな出遅れもなくレースは始まった。

最初の600m通過が34秒7というハイペースになる。

 

『注目の復帰戦サクラスターオーは中団に構えた。

 先頭から8バ身くらいの位置』

 

スターオーは中団につける。

置いていかれるということもなく、自然な位置取り。

 

『2番先頭で直線へ』

 

2番が逃げたまま、レースは最終直線。

しかし2番は間もなく失速して、バ群に沈んでいった。

 

『4番と3番が抜け出した』

 

前は2人が抜け出して、粘り込みを図る。

 

『2番人気トウショウマリオン迫る。11番も迫ってきた。

 その後ろサクラスターオーも来ている!』

 

スターオーの名が呼ばれた瞬間、

場内のボルテージが一気に上がった。

前に迫るかという伸び。

 

しかし見せ場はそこまでだった。

スターオーにそれ以上の脚はなく、前と脚色が同じになってしまう。

 

『前は大接戦でゴールイン! これはわかりません』

 

『サクラスターオーは5着に入りました。

 4着トウショウマリオンから2バ身といったところか』

 

粘る3番と4番、外から迫った11番が並んだところがゴール。

1バ身差でトウショウマリオンが4着に入り、スターオーが2バ身離れた5番手で入線。

 

ゴールした瞬間、観客たちから拍手が起きる。

勝ちウマに対してはもちろんのこと、

スターオーに向けたものであることは言うまでもない。

 

写真判定の結果、1着4番、2着11番、3着3番。

ハナ、ハナ、という接戦での決着となった。

 

 

 

『まずは勝った子にお祝いを申し上げます。

 私自身といたしましては、レースに出走できたこと、

 完走できたことが最上の喜びです。

 再び勝利することを目指して、引き続き精進してまいります』

 

レース後、スターオーは広報を通じて、

このようなコメントを発表した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ずびっ。う~、ティッシュティッシュ……」

 

涙と鼻水でめちゃくちゃな中、ティッシュを探す。

 

スターオーちゃんの復帰戦を、ネット観戦した結果がこれだ。

朝っぱらから大泣きする羽目になってしまった。

 

だってこんなの、泣くなって言われても無理だよ……

 

観客たちと同様、スターオーちゃんが実戦で走っている姿を

見るだけでも感動なのに、ほぼ2年ぶりのレースで入着するとか、

どう考えたって泣くしかないだろ!

 

こんな姿、他人様には見せられないな。

え? もう何度も見られてるだろって?

それも全国中継で?

 

アッハイ。

 

「はぁ……えがった」

 

何はともあれ、よかったよかった。

 

スターオーちゃんの復帰は叶った。

ならばもうひとつの夢、凱旋門賞制覇も叶えるしかないよね?

 

まずは来週のフォワ賞だ。

 

「よし、気合入れていくぞ!」

 

 

 

 

 

気合入れていく、そのはずだったんだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『日本の皆さんこんばんは

 こちらはフランス、パリロンシャンレース場*5です。

 ファミーユリアンが出走しますG2フォワ賞の模様を、

 衛星生中継でお届けいたします』

 

『1857年に開設されたパリロンシャンレース場は

 世界で最も優雅とも謳われるレース場です。

 世界中のウマ娘、レースファンにとっての憧れのレース場であり、

 フランスで開催される平地G1、28競走のうち実に17競走もの舞台であります』

 

『ですがご覧の通り生憎の天候、パリは雨が降り続いております。

 解説のゴーダさん、これについては?』

 

『はい、非常に残念なコンディションになってしまいましたね。

 発表では1番悪い「TRES LOURD」、日本語では不良に当たります。

 それも近年でも類を見ないほどの状態*6だと言っていいでしょう』

 

『それもそのはず、この数日パリは雨続きで、

 今日もスコールのような突然の大雨が、何度も来ている有様でして──』

 

衛星中継冒頭での、アナウンサーと解説のやり取りの一部である。

これだけで、不吉な予感がしたファンは多かっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんぞこの雨?

 

いや、雨が降り出した瞬間から嫌な予感はしてたんだけど、

ここまで悪化するとは思ってなかったぞ……

 

今はゲート前でスタートを待っているんだけど、

ここの芝からもわかる、『極悪』なバ場状態。

 

一歩踏み出すごとにじゅわっと水が浮き出てくるし、

ずぼっと足が沈み込む感じがする。

底なし沼にでもはまってしまったかのような感触。

 

これが散々言われ続けてきた、特殊なロンシャンの芝、

それも最悪コンディションの不良バ場かあ。

 

これはもう、本番がどうとか言っている場合じゃないな。

予行演習とか抜きにして、今日は無事に完走すること、

怪我しないことを第一と考えたほうがよさそうだ。

 

そうこうしているうちに発走時刻になり、ゲートインが始まる。

 

出走は6人。

1番のライバルは、キングジョージでも一緒に走ったインザウイングスか。

実際、俺が1番人気、彼女が2番人気になっているようだ。

 

ゲート入りを済ませ、態勢完了を待つ。

まあ少人数だから、すぐに終わるだろう。

 

やれやれ、良バ馬で本番のシミュレートしたかったなあ……

 

 

──ガッシャン

 

 

「ッ!」

 

程なくゲートが開いてスタート。

毎度のように、一歩目自体の反応は良かった。

 

しかし……

 

あかんわこれ。

 

下手すると滑るし、それを避けようとして力を入れると、

やはり足が沈み込んでしまって、まるでパワーが伝わらない。

進もうとしてもがけばもがくほど、逆に後ろへ押されているみたいになっている。

 

現実として先手は取れず、先頭からは5、6バ身くらい、

インザウイングスの後ろ5番手のポジションがやっとだ。

 

追走するので精一杯……ってすごい懐かしい感覚だなこれ。

学園に入って最初の選抜レース以来だ。

今となっては遠い昔の出来事。

 

剥げた芝だの泥だのが飛んでくるし、

勝負服は汚れる*7し、嫌な感じしかしない。

 

早くレースが終わってくれ。

そう思ったのは、デビューして以来初めてだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フォワ賞スタートしました』

 

『ファミーユリアン好スタートですが、どうしたことか、

 行き脚がつきません。下がっていきます』

 

『インザウイングスの後ろ5番手!』

 

実況も、異変を感じ取って声が裏返り気味だ。

普通ならポンと飛び出してそのまま逃げていくのに、と。

 

『もしかして、今日も追い込み策を採ったのか?

 いやしかしこの不良バ場でそれは……』

 

『そうですね……』

 

自分で言っておいて、すぐに否定する始末。

解説も二の句を告げない。

 

『レースは3コーナー、坂の頂点を迎えます』

 

『態勢は変わらず、ファミーユリアン依然5番手』

 

『フォルスストレートに出ます』

 

ロンシャン名物、偽の直線フォルスストレート。

ここでもまだ動きはない。

 

『最終直線に入った。先頭ザルトタ*8粘っている』

 

『インザウイングス外からかわしにかかる』

 

『ザルトタまだ粘る!』

 

『ファミーユリアン来ない! ファミーユリアン、ピンチ!』

 

直線半ば、逃げ粘る子をインザウイングスもなかなかかわせない。

そしてリアンも追い上げてくる気配がない。

 

『残り200m!』

 

『インザウイングスここでやっとかわして先頭!

 ファミーユリアンもようやく3番手!』

 

200を切ったところで、

インザウイングスがようやくザルトタを競り落として先頭に出る。

 

リアンは3番手に上がっていたが、伸びているというよりは、

他の子が脱落していっての順位だ。

 

『インザウイングス先頭でゴールイン!

 2着ザルトタ粘った』

 

『その後ろ、なんとファミーユリアン3番手で入線です。

 ファミーユリアン敗れました!』

 

『これで連勝はストップ、

 連続連対記録も途絶えたことになります……』

 

徐々にアナウンサーの声量が落ちていった。

 

一昨年のジャパンカップから続けていた連勝は、11でストップ。

そして24戦目にして初めて連を外したことになる。

 

『これは、どうしましたか……

 やはりこのバ場が堪えましたか』

 

『……わかりませんが、そうとしか思えない結果ですね』

 

意気消沈している実況と解説。

それだけ衝撃的な敗戦だったということだろう。

 

『スタートは良かったのに、行き脚がつきませんでしたし。

 道中も非常に苦労している様子でした』

 

『不良バ場での実績もあったんですがね』

 

『わかりませんねぇ……

 やはりロンシャン、それもこれだけ悪くなりますと、

 日本とはもはや別物、と考えるべきなのかもしれません』

 

『そうですか……

 故障というわけではないといいんですが』

 

『本当にそうですね』

 

『……以上、フォワ賞の模様をお伝えいたしました』

 

とにかく最悪の事態でないことを祈りつつ、

中継は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あーもう滅茶苦茶だよ。

 

レースを終えたあとの第一感がこれ。

前に進もうとしてるのに、引き戻されそうになる感覚なんて初めてよ。

マジで反発力でも働いてたんかと疑いたくなる。

 

おかげで消耗が激しく、とてもじゃないが、

追い上げる力なんて残ってなかった。

今もまだ、とてつもない疲労感がずっしりと残っている。*9

 

はぁ、もう……これだからロンシャンは……

 

実際に体験してみてわかる、歴史の重み。

というかこれ、もう()()の類なんじゃないの?

欧州調教馬以外に発動する呪い*10

 

やれやれだぜ、まったくもう……

 

せめて本番では晴れてくれ。

最低でも、不良はやめてちょうだい。

 

「お疲れさま。身体は大丈夫?」

 

「あ、はい……」

 

いまだ呼吸が整わず、久々に味わう敗北感もあってか、

トボトボと引き上がていくと、スーちゃんが温かく出迎えてくれて、

タオルを渡してくれた。

 

「取材は全部断っておくから、

 確定したらすぐに引き上げましょう」

 

「わかりました。お願いします」

 

すべてを察した様子のスーちゃん。

彼女のやさしさが身に染みる。

 

まだ9月だというのに、なんか異常に寒い。

そりゃ日本とは気候が違うけど、こんな震えるほどじゃなかったはずなんだが。

 

ブルブルッ……

 

ああもう、おかしいなあ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の『ファミーユリアンちゃんについて語るスレ』のコーナー

 

 

(フォワ賞リアルタイム視聴組の反応)

 

:フォワ賞のお時間ですよ!

 

:これくらいの時間ならまだ楽だな

 

:凱旋門本番もそうだよ(23時くらい)

 

:中継まだか?

 

:ハジマタ

 

:げえっ雨!

 

:しかも、近年でも類を見ないほど、だと……

 

:な、なあに、リアンちゃんは不良でも勝ってるし

 

:だが、ロンシャンは違うと聞く

 

:すべては走ってみないとわからん

 

:皆、リアンちゃんを信じろ

 俺は信じてる!

 

:こりゃ本番云々言ってる場合じゃないな

 故障だけには気を付けてもらいたい

 

:引き続き相手はインザウイングスか

 

:あとは実績的に大きく劣るしな

 

:スタート!

 

:!?

 

:な

 

:え?

 

:うわあああああ

 

:あのリアンちゃんがついていけない……

 

:それほどなのか……

 

:上がっていく気配もないな

 

:これはやばい……

 

:まずいぞ

 

:フォルスストレート!

 

:駄目だ……

 

:ああああああ

 

:なんで……

 

:3着……

 

:連勝があ!

 連対記録がああああああああああ!!

 

:どっちも止まってしまった……

 

:お通夜状態の放送席

 

:ロンシャンは別物(結論)

 

:タイムが恐ろしいな……

 

:2分45秒台*11とか

 

:2600よりも遅いやんけ!

 

:まさにロンシャンおそるべし

 

:本番でもこんな天気だったらどうするんや

 

:どうしようもない

 

:こんなバ場だったらお手上げや

 

:俺、てるてる坊主いっぱい作る!

 

:まさに神頼みしかできない

 

:はたして、日本のてるてる坊主が海外に効くのかどうか……

 

:何もやらないよりはマシじゃないか

 

:現地の人! 頼む作ってくれ!

 

:そんなことよりリアンちゃんが心配だ

 何事もなければいいんだが

 

:故障だけはやめてくれぇ!

 

 

 

*1
94年開通、開業

*2
G3。90年当時は京王杯

*3
2005年、ゼンノロブロイが遠征して2着

*4
ギャンブル要素がないとはいえ、一連の流れが終わるまではさすがに通信機器は預けられると思うので、あくまでフィクションということで

*5
JRAによるコース紹介https://www.jra.go.jp/keiba/overseas/country/france/racecourse.html

*6
史実の90年フォワ賞は良馬場

*7
アプリ版ラークシナリオ同様、G2でも勝負服着用とした

*8
サンクルー大賞3着馬

*9
昨年のドウデュースは、きっとこんな感覚だったに違いないと思う

*10
いまだに凱旋門賞は、欧州調教馬以外の勝利がない

*11
これで驚いてはいけない。93年、重馬場で2分51秒6という記録がある




ウマ娘世界のハンデ戦って、どうなっているんでしょうね?
名称としては残っているので、存在はしているようですが……
重りでも仕込んで走るのかな?

久しぶりの敗北リアン
いくらパワーがあっても、ロンシャンの極悪不良バ場は格が違った

仮にリアンが海外遠征する場合、初戦は何が良いですか?

  • ドバイワールドカップ
  • ドバイシーマクラシック
  • ガネー賞(仏)
  • クイーンエリザベス2世カップ(香港)
  • アメリカ遠征
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