歩兵にできることはまだあるかい   作:鶴岡

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ありがとうございます。
次々話辺りで戦闘シーンに辿り着くはず。

今回はマイナー兵器である重自動小銃と、その大元であるQLZ-87の実質的な紹介回です。

参考動画
・中国軍のQLZ-87訓練動画
https://youtu.be/XgMutZsSQVI

中国中央電視台(CCTV)の記者がLG5(※QLZ-87の後継であるQLU-11の輸出仕様)を撃ってみた
https://youtu.be/e7tJ8c-ioEA?t=317


講習会

 星歴2139年9月23日

 サンマグノリア共和国

 首都リベルテ・エト・エガリテ

 共和国工廠本部

 屋外射場

 

 アスホール・ペネトレーターの犯行現場となったここに集まったのは私エニセラ・リュシェール技術中尉と部下のタック・コバ技術准尉、そして呼んだジェローム・カールシュタール中佐と付いてきたヴァーツラフ・ミリーゼ中佐。ここまでがまあ予定の面子だった。

 

「では、これより重自動小銃と新型グレネードランチャーについて簡単ながら説明を始めさせて頂きます。といっても、近日中に東部へ再配置される両中佐のための半ば講習会のようなものとなりますのでご了承よろしくお願いします」

 

 だが、気楽な身内だけの射的大会のつもりだったとはいえ、呼んでない客人まで来てしまっては真面目にやらざるを得ない。ましてや録画までされているのでは。

 

「いやあ、急に押し掛けてしまってすまないねリュシェール君」

 

「いえ少将閣下。私達擲弾課の新兵器に注目して閣下自ら足を運んで頂き、とても光栄です」

 

 客人。共和国軍作戦部のアンリ・クリーブ少将、歳の割にかなり鍛えているらしい偉丈夫の白銀種に加えて、午前にも来ていたジブリール・アルラン少尉、こちらは対照的に線の細い美男子が大仰にもビデオカメラを三脚に載せて回している。

 どうやら午前に持って行かせたのが予想以上に効いたらしい。

 

「とはいえだ。どうか我々の事はいないものとして扱ってほしい。元は中佐達の為の、だったのだろう?」

 

「いえ、共和国の未来の為にも、少将閣下の事を無視なんて致しませんわ」

 

 少将(筋肉ダルマジジイ)相手に無視なんか出来るかバーカ。

 

「あっはっは。ではよろしく頼むよ。初めてくれたまえ」

 

「ありがとうございます。では最初に重自動小銃から」

 

 コバ准尉の方を確認すれば、重自動小銃を持って準備完了といった所。

 

「重自動小銃という妙ちきりんな呼称を採っておりますが、これは現に共和国制式の自動小銃を更新する火器としての扱いを考慮している為で、その実質は携行型の37mm機関砲です。運用としては携行による立射、膝射も可能ですが、その重量のため基本的には2脚を用いての伏射や塹壕などの射点を利用しての依託射撃を推奨します。コバ准尉、それぞれ2発ずつ実演を」

 

「了解しました」

 

 まずは立射で1発、標的は100m先に並べ置かれたヘスコ防壁2個。大きさは合わせて横3m、縦2m。

 

 ばん、とやや気の抜けた銃声。大きさとしては自動小銃のそれより大きい程度。

 そして0.5秒ほどして着弾。ばすん、と榴弾の爆ぜる音。

 

 爆発による閃光と煙が上がったのは、ヘスコ防壁から右に2mほどズレた辺り。まあ立射で初弾ならそんなものか。

 

 そしてもう1発、ばん、ばすん。―――命中。ヘスコ防壁の右上スレスレ。

 

 変わって左膝を地面に付いて膝射。ばん、ばすん。ばん、ばすん。命中、ヘスコ防壁の中央よりやや左上とやや下。

 

 最後に地面に伏せて伏射。ばん、ばすん。ばん、ばすん。命中、両方ともど真ん中。

 

「よし。コバ准尉、お見事」

 

 パチパチと軽く拍手をしてみれば、カールシュタール中佐とミリーゼ中佐、そしてクリーブ少将も続いて拍手する。このご時世にカメラが回ってる中で有色種に拍手など能天気なものだ。

 

「このように、本体重量12kgの重さもあって依託無しでの立射、膝射はあまり精度に期待できませんが、不可能ではありません。続いては伏射でのフルオート射撃です。標的は先ほどと同じく100m先のヘスコ防壁」

 

 コバ准尉がマガジン交換を行う。先ほどの6発ドラムマガジンではなく、一回り大きい15発ドラムマガジンへ。そしてセレクターをフルオートへ切替、発砲。

 

 ばばばばばん、ばばばばばん、ばばばばばん。

 ばばばばばすん、ばばばばばすん、ばばばばばすん。

 

 初速が195m/sと遅いのもあって気の抜けた音が連続する。コバめ、ちゃっかりきっちり全部5点射で揃えてきた、そのお陰で着弾位置が見易くて助かる。

 命令したのは点射ごとに2発、1発、2発で合計5発か。まあボチボチといったところ。

 

「フルオートでの射撃レートは毎分500発で、自動小銃よりやや遅い程度。反動の大きさもあって殆ど実用的ではありませんが、至近距離での遭遇戦では有効でしょう。続いては操作方法を説明します。コバ准尉、重自動小銃とマガジンをこちらへ」

 

 12kgの図体が3脚銃架へと置かれ、バンドで固定される。

 

「この3脚銃架は重自動小銃と併せて開発したものです。これがあれば仰角をとって曲射により最大射程1700mでの射撃も可能ですが、レギオンに対し37mm口径では直撃弾しか効果が期待出来ず、また射点を移動しないまま射撃を継続する戦闘行動は長距離砲兵型(スコルピオン)の標的になりやすいという戦訓もあったため、殆ど有用ではないでしょう。一応、両中佐の第112歩兵連隊には重自動小銃10丁に1基の割合で引き渡しますが、最悪物置台にでもして下さい」

 

「うーん、しかし曲射ができるなら戦車型の上面装甲を狙ってみるのも良いかもしれないな」

「それに、その戦訓にあった共和国軍砲兵に対するレギオンの対砲兵射撃も恐らく音源評定によるものだ。ここまで銃声の大きさが小銃と変わらないなら射点を評定されるまでの猶予もかなり大きそうだ」

 

 私としては期待できない3脚銃架に対して、しかし両中佐は楽観的。どちらが正しいかはともかく、そのギャップはこれから共和国軍兵士が支払う血で得た戦訓で埋められるだろう。

 

「重自動小銃の本体ですが、グリップは機関部の右側面にあります。これはドラムマガジンと3脚銃架の取付部を避ける為のもので、試してみれば分かる通り正直言って握り辛いですが、そういうものだと諦めて慣れて下さい」

 

「なんというか……」

「うん、独特だな」

「私も握ってみて良いかね?―――これは、老体には肩にクルな」

 

 こればかりは実際に前世で採用し、運用した中国軍でも同じ事が言われていたし、しょうがない。

 もっとも、アジア系の比較的小柄な体格である中国軍兵士より体格の良い共和国軍兵士なら多少はマシなはず。というか少将が一番体格が良いだろうに。

 

「グリップの根本下側にはセレクターがあります。セレクターのグリップに対しての位置関係、形状、操作角度は自動小銃とほぼ同じにしております。また銃を上から見てもセレクターポジションが判別できるよう、セレクター軸を上側まで貫通させてセレクターポジション・インジケータとしています」

 

「従来通りというのは良いな」

「見た目の奇抜さの割に転換訓練の手間が省けそうだ」

 

 そりゃそうでなきゃ困る。ここは元型(QLZ-87)からわざわざ変えたのだから。

 

「装填操作は機関部上面にあるキャリングハンドルを兼ねたチャージングハンドルで行います」

 

「これはまあ、見た目通りだな」

「37mmだから重いのかと思いきや、けっこう軽く引けるんだな」

 

 むしろ機関砲みたく人力で引けないようなら携行火器として失格よ。

 

「動作方式としても機関砲より自動小銃に近いですからね。内部構造こそ多少(かなり)違いますが整備手順も自動小銃とほぼ同様です。日常整備としてはグリップフレームとバッファーチューブを外して各部を清掃給油するだけ。最悪、分解せずドラム缶のガソリンに2~3回沈めるだけでも1戦闘くらいはこなせる程度には自動小銃と同じ扱いが出来ます」

 

「それは助かる」

「多少、の範疇なのかこれ……」

 

 そもそも、自動小銃と同様に扱えなければ重自動小銃なんていうホラなんて吹けない。こればかりは元の設計の良さに助けられた。

 

「ドラムマガジンは装弾数6発と15発の2種類を用意しています。どちらも構造と操法は同じで、蓋を開けて弾を装填し、蓋を閉じてレンチでゼンマイを巻き上げるだけです。もし付属のレンチを紛失した場合でも、グリップ底部の形状をレンチとして使えるようにしてあります」

 

「簡単だな」

「戦闘のごたごたで物を失くすなんてよくあるからな」

 

 これにて色々省略しつつ一通りの操法説明は完了。

 

「では最後に注意事項を。銃口にマズルブレーキを装備している為、発砲時に側方へブラストが発生します。距離によっては致命傷もありえますので注意して下さい。さあ撃ってみますか?どうですカールシュタール中佐。とりあえず今回は伏射で」

 

「……うむ。やってみよう」

 

 私の方で重自動小銃を3脚銃架から降ろし、射点に持って行く。

 

 おっかなびっくりという体で、中佐がドラムマガジンを重自動小銃に装填し、チャージングハンドルを引いて、放す。

 中佐が伏せて射撃姿勢をとり、照準、セレクターをセミオートにする。

 

「左手はバッファーチューブを支えるように掴んで、そう順手でも逆手でも楽な方で。では、どうぞ」

 

 ゆっくり、照準を定め、トリガーが引かれ―――指が止まった?

 

「中佐、大丈夫ですか?」

 

「あーすまない。さっき准尉が撃っていたのを見ているから大丈夫なのは知れたのだが、本当に大丈夫な反動なんだよな?肩が砕けたりしないよな?」

 

 妙な疑問をする。そんなに……怖いのだろうか?

 

「大丈夫、大丈夫です。マズルブレーキと銃床に内蔵したリコイルバッファーにより反動は人間が耐えられる安全なレベルまで軽減されています。それに装薬量も初速がたった毎秒195mになる程度しかありません。拳銃よりも遅いんですよ。大きいのは37mmという口径だけです」

 

「なるほど、では……撃つぞ」

 

「どうぞ」

 

 今度こそ、トリガーが引かれていく。

 

 ばん、ばすん。

 

「うぐッ」

 

 爆発の残滓である煙を探してみれば、ヘスコ防壁よりさらに奥、300m先にあるバックストップでたなびいていた。ついでに肩にも効いたらしい。

 

「やや右上にズレましたね。次はグリップとトリガーの位置もあって引く時にブレやすいのを意識してみて下さい」

 

「いや、ちょっと待ってくれ。肩を休ませたい。交代だ」

 

 まあ最初の感想としてはそんなものだろう。

 

「おい大丈夫かジェローム」

 

「なんとか、確かに大丈夫だ。これは慣れの問題だな。大きいのは口径だけというのは冗談が過ぎるが」

 

「そうでも言わないとすぐに撃たなかったでしょう?」

 

「ああ全くだ。とんでもないバケモノを作ってくれたものだ。気を付けろよヴァーツラフ」

 

 次はミリーゼ中佐の番だ。

 

「構えは、右手をグリップの位置に合わせる以外は小銃と同じで良いんだな?」

 

「ええ、その姿勢で問題ありません」

 

「じゃあ撃つぞ」

 

「どうぞ」

 

 やや照準に時間を取って、ばん、ばすん。

 外れ、ヘスコ防壁よりやや手前で惜しかった。

 

「そのまま2発目以降も撃てますか?」

 

「うーん、撃てる。確かに撃てる。それを撃ちたいとは思うかは別というのも良く分かった。クリーブ少将も撃ってみますか?」

 

「ああ撃つ。撃つぞ。ジブリール、ちゃんと撮ってくれたまえよ」

 

 この少将閣下、招かれざる客だというのに妙にヤル気を出すのは何故?

 

「中尉、構えはこうで良いんだよな」

 

「はい閣下。問題ありません」

 

 とはいえ3人の撃ち方をちゃんと見ていたようでしっかりした構えをしている。流石少将というべきか。

 

「では撃つぞ」

 

 ばん、ばすん。

 

 驚いた、単純に驚いた。ど真ん中。

 

「うむ、次も撃っていいかね?」

 

「はい。どうぞ、弾はいくらでもあります。レギオンには効果のない対人榴弾の在庫処分も兼ねておりますので」

 

「なるほど。ではどんどん撃っていくぞ」

 

 ばん、ばん、ばん。

 ばすん、ばすん、ばすん。

 

 言葉通りけっこうな速射で、ど真ん中、やや左にズレた。ど真ん中。こいつフィジカルで反動を殆ど抑えきってみせたぞ。

 

「これは少将閣下、お見事です」

 

「いやあ恥ずかしいなあ、1発外してしまったよ。せっかくジブリールに撮ってもらっているというのに」

 

 外した?ちょっとズレただけのが?

 というかアンリ少将もアルラン少尉も男だというのに、アンリ少将はソッチなのだろうか?もう一方のアルラン少尉は嫌そうな顔をしていて、少将の一方的な好意らしくはあるが。

 

「そうだ。まだ弾はあるようだし、ジブリールも撃ってみなさい。後で役に立つだろう?」

 

「はい、閣下。リュシェール中尉殿、新しいマガジンはありますでしょうか」

 

「ええ、もちろん。こちらに」

 

「じゃあジブリール、君の事は私自ら撮ってあげよう」

 

 なんだコイツら。

 まあ、少尉の構えの姿勢も問題なさそうだし、左手が若干違うが、まあ大丈夫だろう。

 

「それでは、撃ちます」

 

「どうぞ」

 

 ばん、ばすん。

 

 引きが速い。が、命中、ど真ん中。

 一方、反動を受けた少尉はかなり後ろにズラされてしまった。身長の割に細身で体重で受け止めきれなかったのか。

 

「さすがジブリールだ。ど真ん中じゃないか」

 

「いえ、それほどでも……。これでいいでしょうか閣下」

 

 いやその体格で初弾ど真ん中は少将以上に凄いのだけど。

 

「では次に新型グレネードランチャーの実演を行います。コバ准尉、準備を」

 

 なんというか、何か引っ掛かるのよね。




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