さーて、負け過ぎて頭馬鹿になった作戦部の伝令を追い返しついで、重自動小銃と新型グレネードランチャーの試作品を押し付けられたのは僥倖だった。
私が共和国軍に対して無理を通せる伝手をカールシュタール少佐しか持たない都合、今現在も再編中の少佐の部隊にこれら新兵器を押し付け、その戦果でもって制式採用をと迂遠な手を考えていたが、まさかその前に
リュッテ副局長が生きていれば、公金で腹と共に膨らませた伝手を頼れたのかもと思いつつ、いやあの年中脂汗の浮いたデブ男に頼るのは女として生理的嫌悪でゾワゾワとするのでやはり無し。死んでくれてありがとう。
とりあえず、重自動小銃と新型グレネードランチャーの小改良と先行量産の手配をしよう。
まずは少佐に再編される部隊の配置先を確認しておいて、首都からその途上近くにある兵器生産プラントの枠を確保しておく。ついでに都合が合えば午後にも残りの試作品を使って少佐にレクチャーしておこう。
10年後には准将になっている、つまり生存して軍に籍があるらしいカールシュタール少佐ならまた新兵器を押しつけても上手く使ってくれると思う。
そして小改良。
何しろ重自動小銃も新型グレネードランチャーも、元々のQLZ-87とパンツァーファウストないしRPG-7と同様に人間の軍を想定して設計している。それがレギオンというらしい帝国軍無人兵器にも一応有効とはいえ、無駄もいくつかあるのはどうにかしておきたいし、今の共和国は中国やナチス・ドイツ、ソビエト連邦とも国情が異なる。
その最たるものというのが、
元ネタと同じく
まずはHEAT-MP、元ネタはDFJ87破甲殺傷弾というもので、80mm厚装甲を貫通しながらも周囲10mに対人殺傷能力を持つ破片を撒き散らすが、その破片を無くして空いた容積を貫通性能の向上に充てた単純な
次にHE、元ネタはDFS87殺傷弾というもので、これは正直どのレギオンにも効かない以上は不要となる。なにしろ対人破片を撒き散らすだけの弾。歩兵部隊には絶大な威力を発揮するけど。
その代わり、前線から上がっている戦訓に応じた弾を追加しよう。
一つは、自走地雷という人の形を模した地雷へ対抗する為の弾。
自走地雷は陸上のレギオンの中でも最小サイズの、人の背丈ほどしかないが、それでいながら他のレギオンと同じく高出力アクチュエータによって駆動する脚による高い機動性で防衛線に浸透し、兵士や車両にしがみついて自爆する兵器。
こんなレギオンの中でも使い捨ての性格が強いにも関わらず、それでも多少の防弾性能を持っており小銃弾にも多少は耐える厄介な機種。そんな小型で快速かつ軽装甲の目標に対抗するのであれば、榴散弾だろう。
どの世でも普通の榴弾の性能向上によって廃れた、弾の前方にしか弾子を撒けない扱い辛い弾ではあるが、これで重自動小銃が37mm口径の散弾銃に化ける。
本来の榴散弾であれば炸裂タイミングは時限信管で任意に選択できるが、重自動小銃では既にドラムマガジンに装填した弾の信管を後から調定できないし、そもそもが自走地雷に対する近接防御にしか使わないので不要、よって銃口を出てから0.08秒後、およそ15m先で炸裂させ、100m先まで弾子に加害力を持たせられる。これで放出させる弾子は一般的な鉄や鉛の球形ではなく、貫通性能と弾子密度を重視した炭素鋼のいちょう切り形。この素材と形状の為に似た用途ながらより簡易なキャニスター弾は薄い弾殻が銃身内で破損した際に、弾子が銃身に傷を付けてしまうので採用出来なかった。
もう一つは、阻電攪乱型による無線妨害へ対抗する為の弾。
といっても阻電攪乱型が攪乱する電波をどうこうする電子機器を積んだ弾ではない。―――ただ光るだけの信号弾。
そもそも重自動小銃の弾の規格は共和国軍制式信号拳銃の弾から寸法を引用しており、このため信号弾をそのまま撃つ事も可能ではある。だが装薬量と弾頭重量が全く違うので重自動小銃の自動装填機構までは動作させられず、完全な弾薬互換性とまではいかなかった。
これでは、ただ信号弾を通信用途に使う分には自動連発できなくてもやや不便で済むが、焼夷弾の代用として撃つには不適になってしまう。
この為、重自動小銃の他の弾を同じ装薬量と弾頭重量に合わせた信号弾を各色用意する。装薬も弾頭も大きくなった分だけ飛翔高度と発光時間を高く長く出来るので、通信手段としても性能向上を果たせる。
あとはそうだな、新型グレネードランチャーの発射器に装着する、射手を装薬の熱から守る断熱被筒はRPG-7と同様に木材か樹脂を考えていたが、どちらも今後不安があるからパルプモールド辺りで検討するか……。
あれこれ考えつつPCで設計をこねくり回してしていると、作戦部へ使いに出していたコバ准尉が戻って来た。
「中尉、ただいま戻りました。作戦部の皆さん腰抜かして驚いてま―――」
「そうだ准尉、君ちょっと10年くらい最前線に行ってくれないかな?」
「なんで???」