「さて、まずは話の振り方が悪かったのは謝罪します。ごめんなさい」
「はあ……」
厚生棟の食堂で買ってきたベントーなる極東由来のランチボックスを擲弾課のオフィスに持ち帰ってフォークで突きつつ、先ほどの話を整理する。
「それで、近い将来に有色種である事を理由に共和国工廠を放逐されてから一兵卒として徴兵され最前線に行くのと、今の内に白銀種である上司の私からの業務命令として技術准尉の身分で最前線に行くの、どっちが良い?」
「あー。あー、なるほど。……共和国ってクソだなあ」
「そういう事。理解が早くて嬉しいわ」
いわゆる原作知識というものが乾いた砂に染みるようにここまで早く理解される事があるなんて。
「まあ、僕が擲弾課にいる事自体、その証左ですからねえ。僕、首都航空技術高専の席次を6番目で卒業して、それで去年RMIに入って配属されたのが花形の戦闘機部どころか輸送機課でもなく
「いいじゃない。そのお陰でライフルグレネードや新型グレネードランチャーの安定翼の設計ではだいぶ助かってる。あれ、この戦争で最も戦果を挙げる兵器の1つになるわよ」
実際、爆発物は私の得意分野だったが、その弾道を安定させる分野については彼の功績がかなり大きい。
「せめて歩兵携行ミサイルの設計がしたかったなあ」
「それじゃレギオンよりも先に共和国軍の予算が尽きるわよ」
「そうそれですよ。レギオン、何ですかあれ。我が名は
「なら私は
「それ、中尉の作った曲じゃないですよね?聞き覚えが無いんですけど何時の曲です?」
「元は
「
「あら、歴史の勉強もちゃんとしてたのね。流石優等生。まあこの手の替え歌なんてよくある物よ。さっきも元はレギオンじゃなくて
「うーん、なるほど?」
「それに
「中尉、ホントに中尉って共和国人ですか?僕は今、中尉が凄く危険な思想を持っているのではないかと疑っています」
「思想?私は歩兵火力の敬虔な信奉者よ」
「うわあ……」
コバ准尉が人ならざるモノを見たような顔をして呻く。
「あっはっは。良いじゃないか、ラ・ダンス・デ・ボンバ。レギオン共じゃなくて
振り向けば、いつの間にかカールシュタール少佐がオフィスの入り口に立っていた。いや、肩の階級章の線が増えて色も変わって、中佐に?
「あらカールシュタール中佐殿、昇進おめでとうございます。いつから?」
「昇進したのは今朝だ。西部戦線で僅かながらもレギオンを撃退した戦果を挙げた功で、という事になってるが、まあ上が死に過ぎたからってのが実情だ。いつから聞いていたのかという意味では、なら私はラ・ダンス・デ・ボンバの辺りから」
「ヤバいトコ全部じゃないですか、どうするんです中尉」
准尉がもう一つの未来を見出したらしい。差し詰め、憲兵に突き出されて懲罰部隊送りって所か。
「今更、今更だよ。リュシェール中尉のそれは。なあヴァーツラフ」
カールシュタール中佐がその身をオフィスへ踏み込むとともに後ろから続いてきたのは、白銀種の、たぶん中佐と同い年くらいの、階級も同じ中佐の男。
ヴァーツラフ?ヴァーツラフ……どこかで見たような?
『父親のヴァーツラフ・ミリーゼは4年後くらいに死ぬけど、カールシュタールと同僚っぽいから繋がりは持てると思う』
ああ、原作のキーパーソンの父親だ。4年後に死ぬのかこの人。
「いや、流石に私はどうかと思うが……」
「とはいえ、君も彼女に命を救われたクチだぞ?ああ、紹介しよう。彼はヴァーツラフ・ミリーゼ中佐。私と同じく元は西部方面軍第17機甲師団第52歩兵連隊司令部付少佐で、再編された後は俺が東部方面軍第3歩兵師団第112歩兵連隊連隊長、ヴァーツラフがその副連隊長だ」
「ヴァーツラフ・ミリーゼだ。先の戦闘では君のアスホー……いや何だったか、アレにはだいぶ助けられた。第52歩兵連隊が損害を抑えつつ組織的に撤退出来たのは君のお陰だ。ありがとう」
コバ准尉が噴いた。いや私も噴きかけたけども。どうして誰も彼もそう呼ぶのやら。
「まったく、もうアスホール・ペネトレーターで良いですわ。エニセラ・リュシェール技術中尉です。どういたしまして。こちらは部下のタック・コバ技術准尉。彼もアスホール・ペネトレーターの設計に大きく貢献していましてよ」
「これはこれは。ありがとう、コバ技術准尉」
「ど、どういたしまして……。しかし、どうしてそのペットネームが?」
「ああ、元はリュシェール中尉がルキエ一家にしでかした一件が前線にまで流布していたのが由来だが、定着したのはレギオンに対する射法と共にだったよ。どのレギオンでも背面装甲を狙って撃てば、それこそ戦車型でも無力化できるからと。だから、
「なるほど。意外と理にかなっていたんですね」
そういう理由だったのか。