小木曽望乃は勇者である?~大満開の章~   作:桃の山

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 最終決戦、くめゆ編です。


生きたい気持ち

 防人は大量の星屑との戦闘が続いていた。

 

「いやー! 怖い怖い怖いーーー!」

 

 雀がそう泣き叫びながら自身に十枚のバリアを展開する。それを見た夕海子が驚きを見せる。その雀に星屑が襲い掛かるも、シズクが星屑を倒していく。

 

「ふん!」

 

「怖い方のシズクちゃん!」

 

「雀!」

 

「はい!」

 

「泣くのは終わってからにしろ! ちゃんと防御しろよ!」

 

「ちくしょう! このやろー!」

 

「泣くのも笑うのも、生き残ってるってことだからな!」

 

「うん!」

 

「強くなってますわね、雀さん。私も! トップスコアは、この弥勒夕海子のもの! 上層部も認めざるを得なくなりますわ! 弥勒家の再興を!」

 

 その夕海子に大量の星屑が押し寄せる。大量の星屑に襲われた夕海子は逃走を始める。

 その時、横から大きな竜巻が現れ、夕海子を追っていた星屑を全て薙ぎ払った。

 

「え? な、なんですの?」

 

「敵!?」

 

 一度の攻撃で多くの星屑を倒したその竜巻に、芽吹が警戒を強める。

 

「大丈夫? 夕海子ちゃん」

 

 そんな言葉と共に竜巻を出した本人が船に着地する。

 

「望乃さん!」

 

「大丈夫みたいだね。良かった~」

 

 安堵する望乃の姿を見て、四人は固まった。

 

「……望乃、その格好は何?」

 

 望乃の服装はどこかへ行く前までとは全く違うものに変わっていた。その服装は紫を基調としているもので、どこか夏凜の勇者服に似ており、右手には望乃と同じくらいの大きさの槍を持っていた。

 

「えっとね、今勇者の姿になってるんだ~。だからこれは勇者服なんだよ」

 

「勇者になれるの!?」

 

「小木曽! そんな力があるんならもっと早くやっておけよ!」

 

「確かに、なぜ今になって?」

 

「望乃、確かあなたはもう勇者になれないって言ってなかった?」

 

「うん、みんなには言ってなかったんだけどね、なれないわけじゃなかったんだ。でもこれは奥の手みたいなもので、いつでも使えるものじゃなかったんだよ。だからいざという時にしか使わないようにしてたんだ」

 

 それを聞いて、芽吹がとあることに気が付いた。

 

「バーテックスと戦った時、その姿になって戦ったのね」

 

「そうだよ。バーテックスが相手だと、勇者の姿にならないときついからね」

 

「それでは、今の竜巻も望乃さんが?」

 

「そうだよ」

 

 そこで望乃に大量の星屑が襲い掛かってきた。望乃はその星屑に大きな槍を大きく振った。それだけで襲い掛かってきた星屑を倒してしまった。

 

「すごっ! これなら絶対負けないよ、メブ!」

 

「油断は禁物よ、雀」

 

「そうだよ、雀ちゃん。あ、あと、これ返すね」

 

 そう言って望乃が雀に渡したのは望乃がずっと着ていた雀の訓練用の服だった。

 

「え!? 今返されても困るよ! しかもすごいボロボロ!」

 

 望乃は一気に前線に出て星屑を倒していく。今までの望乃でも撃破数はトップでその力は凄まじいものだったが、勇者の姿となった望乃はそれすらも比較にならないものだった。たった一振りで何体もの星屑を倒し、苦戦など全くないほどの圧倒的な力を見せていた。

 

 ――望乃、何も変わってないように見える。でも望乃は何かをしてきたはず。一体、今まで望乃は何をしていたと言うの?

 

 望乃が芽吹の近くに着地する。

 

「望乃」

 

「ん? どうしたの? 芽吹ちゃん」

 

 芽吹は望乃に背中を預けて星屑を撃ちながら疑問を投げかける。

 

「あなたはその勇者の姿をいざという時に使うと言ったけど、今はその時なの? そもそもその力を常時使えない理由は何?」

 

「えっとね、この状態になると、エネルギー? みたいなのの消費が激しいんだ。それを消費しすぎると、精霊の力すらも使えないようなことになるかもしれなかったから中々使えないんだよ。でも今回のお役目は千景砲(ちかげほう)を放つまでだから使っても大丈夫かなって」

 

「……そういうことなのね」

 

「うん」

 

「それと、千景砲(せんけいほう)よ」

 

「あれ? 間違えちゃった~」

 

「どういう間違いよ。最初に言った時は間違えてなかったのに」

 

「なんかいろいろ混ざっちゃった」

 

 千景砲のこと以外に望乃の返答で絶対におかしい、というところはなかった。しかしそれでも芽吹は望乃が嘘を言っているように見えた。

 確信があるわけではなかった。でも何度も笑うその望乃の笑顔が、本気の笑顔ではなく作り笑顔のように思えて仕方がなかったのである。

 

 

 しばらく戦っていると、大きな彼岸花の形をした千景砲が現れる。しかしそれはすぐに壊れてしまった。

 

「失敗ですの?」

 

「祈りが……足りない。人数が少なすぎる!」

 

 千景砲の失敗に防人は動揺し、戦意を失った者もいた。そしてその戦意を失った防人が姿を消した。

 

『楠隊長! 隊員二名、消えました!』

 

『こちら五番船。一名消失』

 

「消失!? どういうこと?」

 

「神樹様の一部になったんだよ」

 

 そう答えたのは望乃だった。

 

「神樹様の一部?」

 

「今回のお役目で神婚が成立した時、死なずに済むって言ったけど、それは少し違うんだ。正確には神樹様の一部になれるの。このお役目は死ぬか神の一族になって生きるかっていうものだったの」

 

「神の一族として生きるっていうのは……」

 

「消えた子を見たらわかるよね? その体を失われ、人として生きることは叶わない。そういうことだよ」

 

「そんな……私たち、もう人として生きられないってこと?」

 

「でも大丈夫。大丈夫だから。それより、芽吹ちゃんは亜耶ちゃんのところに行って! ここは私たちに任せて」

 

「わかったわ」

 

 そうして、芽吹は祈祷してる亜耶たちのところに行った。そこで神官の一人に聞く。

 

「何があったのですか!」

 

 芽吹は隣の神官が消えていることに気付く。

 

 ――望乃が言っていたことがここでも?

 

「楠隊長。千景砲による援護作戦は失敗です」

 

「まだだ! 私たちが守る! だからもう一度祈祷を!」

 

「三百年。人は人として手を尽くしました。もうできることは……。しかし、喜ばしいことでもあるのです」

 

 そう言って目の前の神官が小麦粉になって消える。

 

「亜耶ちゃん! 今回のお役目が神の一族になるためのものだってことは望乃に聞いたけど、亜耶ちゃんもそれでいいの? 私たちは一体、何のために戦ってきたの?」

 

「芽吹先輩。人として生きることも、神と共にあることも、どちらも救いなんです」

 

「救い? こんなことが! 勇者たちが戦っている。早く援護射撃しないと!」

 

「勇者様は神婚の儀を成就させるため、天の神を阻んでいてくれるのです。結城友奈様なら、傷付いた神樹様を救うことができます。彼女が神樹様の元に辿り着き一つになれば、世界に平穏が訪れるんです」

 

「一つ? 望乃もそんなことを言っていたけど、そんなこと望んでない」

 

「もう戦わなくてよくなるんです。傷付くことも、悲しむことも」

 

 亜耶の体が少しずつ小麦粉になっていく。芽吹が亜耶の元まで近付いていく。

 

「亜耶! 目を覚ませ! 人として生きないで何の価値がある」

 

「巫女は生まれた時から神樹様と共にあります。それが巫女としての使命。それは勇者だって防人だって、それに精霊だって違いありません」

 

「違う! そんなことを認めるわけには、いかないだろう!」

 

 芽吹は神官たちを押しのけて亜耶の目の前まで来る。

 

「芽吹先輩」

 

 芽吹の目の前で神官が一人、また一人と小麦粉になっていく。芽吹は亜耶の肩を掴んで言った。

 

「亜耶、ダメだ!」

 

「私、国土亜耶として過ごした時間、とても楽しかった」

 

 芽吹が亜耶を抱きしめる。

 

「だったら! 私は信じている。望乃が言っていた通り、勇者たちは神婚の儀なんて認めないことを。望乃が言っていた。勇者は仲間の、友達のために戦っていると。友達のために戦っている彼女たちが、認めるはずがない」

 

「でも……」

 

「生きるために戦ってきたんだ!」

 

「逆らうなんて……」

 

「生きるんだ!」

 

「怖いです……」

 

「たとえそれが、神様に逆らうことになっても!」

 

「芽吹先輩……」

 

「言え!」

 

「私……」

 

「言ってくれ!」

 

 亜耶が涙をこぼす。

 

「生きたい!」

 

 その頃、星屑と戦っていた望乃たちは、勇者の姿となっている望乃のおかげで最悪の事態には陥っていないが、ゴールの見えない戦いに疲弊していた。

 そこに芽吹から通信が入る。

 

「みんな!」

 

「芽吹さん、撃てるんですの?」

 

「撃てる! 生き残るために戦うぞ!」

 

「当然ですわ! 私の代で必ず弥勒家を再興させますもの!」

 

「言われなくても生き残ってやるよ! だからお前らも死ぬんじゃねぇぞ!」

 

「メブ、ホントに大丈夫なんだよね? 次で勝てるんだよね? もうこんなところいたくないよー」

 

「何の話?」

 

 望乃が夕海子に聞く。

 

「芽吹さんが生き残るために戦うか聞いているんですわ。望乃さんも同じ気持ちですわね?」

 

「生き残るため……」

 

 ――生き残るか……私は生きないといけなかったから、死ぬなんて絶対に許されないから、生き残るためにとか、考えたことなかったな。

 

 望乃はそんな胸中を秘めたまま笑みを浮かべた。

 

「うん、そうだね。私も同じ気持ちだよ」

 

「芽吹さん。望乃さんも同じ気持ちですわ!」

 

 それを聞いた芽吹が亜耶を見て、亜耶がコクリと頷いた。

 

「必ず生きて帰るぞ!」

 

 芽吹がそう言って浮遊能力を使って飛ぶ。それを見届けた亜耶が神樹様に語り掛ける。

 

 ――神樹様。みんな、生きようとしています。それぞれの命には、きっと一人ひとり、それぞれの意味があるんです。私や、芽吹先輩も。だから、もう少しだけ。

 

 亜耶の想い、芽吹の想い、その全てが伝わったのか千景砲がその一撃を放った。そして天の神と戦っていた夏凜と園子の一撃が天の神に突き刺さった。

 

「やったの?」

 

 雀がその場にペタリと座り込む。

 

「ええ、やったわ」

 

「後は、勇者に託すんでしたわね」

 

「俺たちの戦いは終わりってことか?」

 

「うん。あとは生きるも死ぬも勇者次第だよ」

 

「でも、勇者様って神婚を阻止するんでしょ?」

 

「うん。でも、神婚が成立しなくても勇者が何とかしてくれると思う。だって、誰が相手でも最後には世界を救う、それが勇者だから」

 

「そうね。勇者ならきっと……」

 

 芽吹のその言葉に望乃は言葉を返さず、それからしばらくしてからフフフと笑って、手を前に出す。そして手を下ろして芽吹たちに振り向いた。

 

「雀ちゃん」

 

「え?」

 

「夕海子ちゃん」

 

「どうかしたんですの?」

 

「シズクちゃん。それと、しずくちゃん」

 

「何だよ」

 

「芽吹ちゃん」

 

「急にどうしたのよ、望乃」

 

「もう、きっと、大丈夫だと思う」

 

「大丈夫?」

 

 望乃は芽吹の質問には答えずに言葉を続ける。

 

「もう心配する必要なんてないんだよ。私には、わかるんだ。この戦いの後には、みんなが笑って暮らせる世界が、待ってるって」

 

 望乃はそう言いながら、満面の笑みを浮かべたのだった。




 やっぱりめぶあやはいいですね!

 次回は最終決戦、ゆゆゆ編です。
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