小木曽望乃は勇者である?~大満開の章~   作:桃の山

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 本編の十一話を今回に詰め込みました。

 前作の『友奈と望乃』から大分使っていて、(少し変えてたりもします)今作だけの話は少ないかもしれません。


勇者の力

「これが!」

 

「勇者の!」

 

「魂ってやつよーーーーー!」

 

 夏凜と園子の一撃が天の神に突き刺さった。園子は自分たちが刺した武器――銀の斧と同じものを見て微笑んだ。落ちていく二人を樹が受け止める。

 

「お姉ちゃんたちと合流します。友奈さんを取り返して全員で帰るんです」

 

 

 東郷と望乃を送り届けた風は、樹の心配をして上を見る。

 

 ――どうして……どうして私たちだったの? どうして友奈を? 意地悪しないと存在できないのなら、そんなもの……。

 

 その時、天の神からの攻撃を受ける。しかしそれは突然現れた木の根のようなものが防いだ。

 

 ――どうして、今さら守ろうとするの? 心変わりした? 後からそんなことになるくらいなら、初めからするな! 私は、そんなもの……神なんて認めない。

 

 

 同時刻、風と同様に天の神の攻撃を受けた夏凜、園子、樹は身を潜めていた。そしてその三人を守るように木の根のようなものが地面から生えていた。

 

「どういうことなのよ! もしかして、これも望乃が?」

 

「それはないと思う。これは精霊の力というより、神樹様の力だと思う。コギーが神の力を発動させても神樹様の力を使うことはできないと思うよ」

 

「だったら何でよ? 神樹様からしたら、私たちは神婚を邪魔する敵みたいなもんでしょ?」

 

「お姉ちゃんたちが何かしたんでしょうか?」

 

「わからないんよ。神樹様が何を考えてるのかも……」

 

 ――望乃。何もしてないわよね? あんたが死ぬなんて絶対許さないから。

 

 夏凜は嫌な予感を抱きながら、それでも望乃の無事を祈っていた。

 

 

 その頃、望乃と東郷は友奈のところに向かっていた。向かっている内に二人は水の中のような場所に来ていた。その中ではなぜか呼吸ができるようだった。

 

「美森ちゃん、行こう」

 

「ええ」

 

 二人はその奥へ進んで行く。進みながら東郷は思う。

 

 ――たくさんの犠牲があった。犠牲も国のためには仕方がない。尊いこと。正しいことだと信じている。だって、この国を愛しているから。でも……。

 

「なんてとこ……望乃ちゃん、精霊の力でここから帰れるかしら?」

 

 相変わらず息が荒い望乃が冷静に答えた。

 

「わからない。でも無理矢理にでも出させてあげるから大丈夫だよ。それより美森ちゃん、下見て……」

 

 望乃が下の方に向かって指を差した。その先には白い蛇に縛られている友奈がいた。

 

「友奈ちゃん!」

 

「東郷さん……望乃ちゃんも……どうして」

 

「帰ろう、友奈ちゃん! 迎えに来たのよ!」

 

 東郷が友奈の元へ行こうとするが、糸のようなもので足を掴まれる。

 

「そうまでして渡したくないのね……。友奈ちゃん! 今助けるから!」

 

 それを見ていた望乃が助けに入ろうとするが、急に足の力が抜けて膝から崩れ落ちてしまい、そのまま動けなくなってしまっていた。

 必死に友奈を助けようとする東郷を見て、友奈が言った。

 

「でも……私が……私がやらないと、世界が消えちゃう……」

 

「友奈ちゃんを失うことが嫌なの。どうしてそれがわからないの?」

 

「私がやらなきゃ……。これは私にしか……」

 

「そんなことしなくていい!」

 

「東郷さんらしくないよ……。一番に国のことを考えてたのに……」

 

「それでも……」

 

「これは、誰かがやらないと……仕方ないことだから」

 

「仕方がないとか、どうでもいい! 大切な人を、もうこれ以上……奪われたくないの!」

 

「ありがとう……東郷さん」

 

「そういう取り繕った言葉……どうしていつも我慢をするの?」

 

「私が我慢をすれば……それでいいから……」

  

「友奈! 本当のことを言ってよ! 怖いなら怖いって……私には言ってよ! 嫌だって言ってよ! 友達だって言うなら……助けてって言ってよ!」

 

 東郷にそう言われた友奈は自分の本心を口にした。

 

「嫌、だよ……怖いよ、でも言っちゃダメで……でもそんなの……死ぬの嫌だよ……。みんなと別れるのは……嫌だよ! 私たち、一生懸命だったのに……それなのに何で……。お役目だから仕方ないなんて、嘘だよ! ずっと……ずっとみんなと一緒にいたいよ……」

 

「友奈ちゃん、手を伸ばして!」

 

「東郷さん! 助けて!」

 

 そう言って双方涙を流しながら手を伸ばすが、二人の間に壁のようなものができて、二人の手は届かなくなった。

 

 

 望乃はその様子を見続けていた。二人の間にある壁をどうにかしなければならないのだが、今の望乃はろくに動けない状態だ。

 望乃は心臓の辺りをギュッと押さえて言った。

 

「誰か……誰か友奈ちゃんを、助けて……」

 

 望乃がそう言った瞬間、一瞬だけ望乃の身体が光った。すると、東郷の頭上から銀らしき影が降りてきた。そしてそのすぐ後に歴代の勇者らしき影が降りてきた。そしてそれの力の甲斐もあって、友奈の救出に成功したのだった。

 東郷が救出された友奈を抱きしめる。

 

「東郷さん……。世界が、世界が終わっちゃうよー!」

 

 友奈が泣き叫ぶ。

 

「友奈ちゃんのせいじゃない。これで世界が終わるんなら、それは、仕方ないことなのよ」

 

 その光景を見ていた望乃は思った。自分が『神の力』を一時的に使って歴代の勇者の魂を呼び寄せたのだと。少しでもそれを使った以上、自分が消える以外の道はないだろう。それを理解した望乃は、自分の役割を受け入れて覚悟を決めた。

 しかしそれは間違いであった。歴代の勇者を呼び寄せたのは望乃が『神の力』を使ったからではなかった。歴代の勇者の魂は自分たちの意志でこの場にやってきたのである。そしてそれが可能だったのは、他でもない神樹様がそれを許したからである。

 だが、自分が『神の力』を使ったのだと信じて疑わなかった望乃は、目を閉じて祈りのポーズをした。

 

「私は精霊の頂点に立つ者。神樹様。私は人間になろうとしました。大切な人たちと、対等な存在になりたかった。その結果私は、精霊にあるまじきことをやってしまいました。しかし後悔はしていません。彼女たちと過ごした時間は無駄ではなかった。そう思うから。私は笑って、怒って、泣いて、楽しんで、友を想えるようになれました。その感謝として、友の力になりたい。神樹様、私に神に等しき力を授けてください! この……讃州中学勇者部、勇者、小木曽望乃に!」

 

 すると、望乃の耳に誰かの声が聞こえてきた。

 

『勇者…………なら、守……みせ……よ。……を。世界を。……たいと思ったものを。見せ……よ!』

 

 聞こえてきた声は聞こえないところが多く、何を言いたいのか理解することは不可能だった。

 

「もしかして、神樹様?」

 

 そしてその瞬間、勇者部六人の刻印の花の花びらが現れ、望乃を包み込んだ。その花びらが消え、そこから現れたのは、紫色の神々しい姿に変わった望乃であった。

 

 

 その頃、友奈と東郷の前に牛鬼が現れる。

 

「牛鬼? あっ……」

 

 牛鬼が光り、光が二人を包み込む。

 

「何を?」

 

「大丈夫だよ。あったかい」

 

 そしてその瞬間、友奈の前に高嶋友奈が見えた。そして高嶋友奈は手を伸ばした。

 

「行こう」

 

「あ……うん!」

 

目の前に現れた牛鬼によって、光の蕾に包み込まれた友奈は神々しい姿に変わり、オッドアイになっていた。

 

「私は……私たちは人として戦う! 生きたいんだ!」

 

 姿を変えた友奈が言った。すると、その近くで別の光が見えた。そこから現れたのは神々しい姿に変わった望乃だった。友奈は望乃の姿を見て驚いた顔を見せる。

 

「望乃ちゃん、それ……」

 

「……友奈ちゃん! 行こう、みんなで笑って暮らせる世界のために!」

 

「うん!」

 

 友奈と望乃が天の神の方へ向かい、友奈はパンチで、望乃は武器を出して攻撃する。

 望乃の姿を見て、『神の力』を使ったことを理解した夏凜が思い切り叫んだ。

 

「ふざけんなー!」

 

 それが聞こえたのか、望乃は一瞬だけ夏凜の方を見た。

 すると、夏凜の目の前に決まった言葉だけ喋れる夏凜の精霊、義輝が現れた。そしていつもとは違う言葉を発したのである。

 

「……カリンチャン、ゴメン。ミンナノコトワスレナイヨ。ダイスキ」

 

「私だって絶対忘れない。忘れてなんてあげない! だから……これで最後みたいに言うな! いけー! 友奈! 望乃!」

 

 夏凜の声に続いて勇者部が二人に声援を送る。

 

「友奈さんの幸せのために!」

 

「なせば大抵!」

 

「なんとかなる!」

 

「勇者部ーー!」

 

「ファイトーー!」

 

 全員でそう言った後、友奈がさらに力を上げる。望乃はそんな友奈をちらっと見ると、手に持っていた武器から手を離し、その武器を消す。そして『神の力』を使って自身の左手を友奈と同じ拳にして、攻撃方法をパンチに変えた。そして望乃はもう片方の手で友奈のもう片方の手を握った。

 

「……最後に敵を倒すのは、勇者(私たち)だよ!」

 

 友奈と望乃は互いの手を繋いだまま、拳を思い切り振りかぶった。

 

「勇者は根性! いくよ! 望乃ちゃん!」

 

「うん! 友奈ちゃん!」

 

「勇者パーンチ!」

 

 友奈と望乃は声を揃えて全力で殴った。それにより、天の神との戦いは終結した。

 

 

 力を使い果たした友奈の目の前に牛鬼が現れ、友奈は一言礼を言う。そして牛鬼が消えてしまった。

 その友奈の前に現れた神々しい姿の望乃に、別れを告げられて、ヘアピンを渡された友奈は望乃を助ける決意をした。

 

「望乃ちゃん、絶対助けるから!」

 

 そうして友奈は望乃を探して見つけ出し、一緒に帰ることになった。こうして、友奈は勇者部の元へ帰ることができ、勇者部の戦いは幕を閉じたのだった。

 

 

 壁の外では、少しずつ外の炎と神樹様が消えていっていた。その様子を、一人の少女が眺めていた。その少女とは、防人にいた方の望乃だった。

 

「本当に世界を救っちゃうなんてね、予想外だったな~。さすがは勇者ってところかな。でも、うん。私がやるより、この方が良かったよね」

 

 壁の外の炎が消え、神樹様も枯れ果てた。そして世界が元の姿へと戻る。その様子を見届けた望乃は、大きく伸びをした。

 

「さてと、これからどうしようかな~」

 

 望乃はどこか満足げな表情で去って行った。




 最終決戦、終了です。

 一応今回の話がクライマックスでしたが、もう少しだけ続きます。
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