小木曽望乃は勇者である?~大満開の章~   作:桃の山

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 オリジナル回です。


戻ってきた日常

 その日、望乃は困っていた。

 

「う〜ん、困ったな〜」

 

 そしてどうするべきか悩んでいた。

 

「待たせたわね!」

 

 そんな時、彼女は現れた。

 

「煮込んで干してと(うお)が言う! 出汁を取ってと叫んでる! 完全無欠の栄養戦士! にぼし仮面! 見参っ!」

 

「にぼし仮面!」

 

「私が来たからにはもう安心よ! だから――早く起きなさい。学校に行くわよ! 望乃!」

 

「ふえ?」

 

 望乃が目を覚まして、寝ぼけ眼でキョロキョロする。

 

「やっと起きたわ。もっと早く起きなさいよ!」

 

「あっ、にぼし仮面おはよ〜」

 

「誰がにぼし仮面よ! どんな夢見てんのよ、全く……」

 

「でも、かっこよかったよ〜。えっとね〜」

 

「言わなくていいから。それより、今日が何の日かわかってんの?」

 

「今日? 今日はうどんが――」

 

「違うわよ。今日はあんたが転校してくる日でしょ」

 

「あ〜、そうだったね〜。忘れてたよ~」

 

「全く……。いいから、早く朝ごはん食べなさいよ。その後、ちょっと言いたいことあるから」

 

「うん! いただきま~す!」

 

 そうして、望乃は夏凜が用意した朝食をあっという間に食べて、片付け始める。

 

「ホント、腹にブラックホールでも飼ってんのかって思うくらいの食べっぷりね」

 

「ん~? 私、お腹に美森ちゃんなんて飼ってないよ~」

 

「誰が東郷って言ったのよ!」

 

「だって、ブラックホールって言うから~」

 

「東郷はブラックホールじゃないわよ! それより、調子はどうなの?」

 

 夏凜がそう言いながら自分の額を望乃の額に当てる。

 

「大丈夫だよ~」

 

「みたいね」

 

 そうして二人は学校に行く準備を進める。その準備が終わった頃、夏凜が声を掛ける。

 

「それで望乃、あんたに言いたいことなんだけど――」

 

「夏凜ちゃん、これ付けて~」

 

 望乃がそう言って渡してきたのは、夏凜がプレゼントしたヘアピンだった。

 

「それくらい自分で付けなさいよ」

 

「え~。転校の初日だから、夏凜ちゃんに付けてほしいんだよ~」

 

「……仕方ないわね」

 

 夏凜はそう言って望乃の前髪にヘアピンを付ける。

 

「それで言いたいことって何なの?」

 

「今日、自己紹介するわよね?」

 

「うん」

 

「その時、絶対に私の名前を出すんじゃないわよ。それが言いたかったのよ」

 

「何で?」

 

「何でって、あんた……。前の時どれだけ大変だったと思ってんの?」

 

 それは望乃の二回目の転校の時に言った、好きなことに対する答えを『夏凜ちゃんと一緒にいること』と答えて、それからしばらくの間『転校初日カップル』と呼ばれていたことである。その時に大変だったのは主に夏凜で、そうでなかった望乃は夏凜が言っていることがわからず、首を傾げた。

 

「ん~。よくわかんない。でも、夏凜ちゃんがそう言うならわかったよ~」

 

「ホントにわかってんの?」

 

「もちろんだよ~」

 

 夏凜は望乃が本当にわかっているのか不安で仕方なかったが、望乃が言わないことを信じるしかなかった。

 

「それよりもほら、学校行こ!」

 

 望乃がそう言いながら夏凜に抱き付く。

 

「行くのはいいけど、抱き付いたら歩きにくいじゃない」

 

「そうだね~。でも、夏凜ちゃんに抱き付かないと一日が始まらないからさ~」

 

「何よそれ?」

 

 夏凜は呆れながら望乃と一緒に家を出た。

 

 

「私の名前は小木曽望乃! 好きなものはうどん! 好きなことは食べることかな~。これからよろしくね~」

 

 三度目の転校の挨拶は夏凜に言われた通り、夏凜の名前を出すことなく終わった。それに夏凜はホッと安堵していた。

 夏凜は気付いていなかった。まだ警戒していなければいけなかったことに。

 休み時間に入り、変わった時期の転校生である望乃の周りに人が集まっていた。

 

「何で今転校してきたの?」

 

「いろいろあってね~」

 

「食べるの好きなの?」

 

「うん。すごい好きだよ~」

 

「その辺に住んでるの?」

 

「夏凜ちゃん家だよ~」

 

「え? 夏凜ちゃんって、三好さん?」

 

「ちょっと、望乃!」

 

 望乃の発言に気が付いた夏凜が望乃に詰め寄る。

 

「あんた、言うなって言ったでしょ!」

 

「え? それは自己紹介の時じゃないの?」

 

「その後も、に決まってんでしょ!」

 

 夏凜の登場と発言により、望乃の言っていたことが本当だと確信を得たクラスメイトは、二人のことを『転校初日カップル』と呼ぶようになった。

 

「前回と何も変わってないじゃない!」

 

「落ち着いてください」

 

 バンッと机を叩く夏凜を、樹がなだめる。

 

「夏凜、あんた……そのことわざわざ放課後の部室に来てから言うわけ?」

 

「仕方ないじゃない! 教室で前回とか言えるわけないし」

 

「それはまあ、そうなんだけどさ……別にさ、どっちでもよくない?」

 

「よくないわよ!」

 

「夏凜ちゃん、ごめんね~。自己紹介で言わなかったら良いと思っちゃったんだよ~」

 

「別に、望乃を責めたいわけじゃないんだけど……」

 

「でも、思ったんだけど、あそこで夏凜ちゃんが詰め寄らなかったら、呼ばれることはなかったと思うわ」

 

「夏凜ちゃんが行って、みんな本当なんだって思ってたんもんね!」

 

「そうよ! わかってるわよ!」

 

「でも、悪いのは私だよね」

 

 望乃が少し落ち込んだ様子を見せる。

 

「だからそういうわけじゃ……」

 

「でも、コギーとにぼっしーの仲がバレるのは時間の問題だったと思うんよ」

 

「それは……確かにそうね」

 

「まあね」

 

 園子の言葉に、東郷と風が同意する。

 

「はあ? 何でよ!」

 

「夏凜、あんた……ホントにわかってないの?」

 

「え?」

 

「登下校が一緒で、四六時中一緒にいて」

 

「夏凜ちゃんはいつも望乃ちゃんを気にしていて、望乃ちゃんは毎日夏凜ちゃんに抱き付いてる」

 

「それだけイチャイチャしてれば、簡単にバレるってもんだぜ~。にぼっしー」

 

「は、はあ? そんなイ、イチャイチャなんてしてないわよ!」

 

「でも、仲が良いことはすぐにわかりますよ」

 

「うぐっ!」

 

「でも夏凜ちゃんは何で望乃ちゃんと仲が良いことを隠そうとしたんだろう?」

 

「照れくさいだけよ、友奈」

 

「そうなの? 夏凜ちゃん」

 

「……そうよ! 悪い?」

 

「開き直った! 望乃、何とか言っちゃってちょうだい!」

 

「ん~? 夏凜ちゃん、私はね、隠さなくていいと思うよ。だって、私と夏凜ちゃんは親友なんでしょ? だったら、隠さない方がきっと良いと思う」

 

「……そうね。私がどうかしてたわ。親友のことを隠そうとしてたなんて」

 

「うん、やっぱりコギーとにぼっしーは創作は捗るんよ~」

 

「あんたがそういうことをするから恥ずかしくなるのよ! それとにぼっしー言うな!」

 

 それから勇者部は、友奈の提案でその日の部活を休みにして、うどん屋のかめやで望乃のおかえり会をすることになった。

 その向かう途中、望乃が何か食べ物を見つける。

 

「あれ食べたい!」

 

「あっ! 望乃ちゃん!」

 

 走っていく望乃を、友奈が追いかける。

 

「友奈ちゃん! 私も……」

 

「大丈夫だよー! 東郷さんは待ってて!」

 

 その場に残された五人は二人の帰りを待つことにした。

 

「コギーとゆーゆって前より仲良くなってない?」

 

「それは私も思った。最近一緒にいる気がするわ」

 

「でもそれは結構前からじゃない? 望乃が友奈を心配して一緒にいることが多かった時から」

 

「でも、その時以上な感じがするんよ」

 

「確か、友奈さんが望乃を連れて帰ったんですよね?」

 

「私たちが望乃を思い出せたヘアピンを持ってたのも友奈よね?」

 

「ていうか、最後に天の神を倒したのもあの二人だったわね」

 

「それで二人の仲が良くなったってこと?」

 

「くっ! あの時、友奈ちゃんと一緒に天の神に立ち向かっていたら……」

 

「何の後悔してんのよ」

 

 その時、東郷があることに気付く。

 

「もしかしたら今、二人で食べさせ合いをしてるかもしれない!」

 

「え? 何よ突然!」

 

「友奈さんと望乃さんの食べさせ合い?」

 

『望乃ちゃん、これおいしいよ!』

 

『ホント? あ~ん! おいし~! じゃあ、私のもあげるよ~』

 

『ありがとう! あーん! おいしい!』

 

「普通にやってそうですね」

 

「全く違和感ないわね」

 

「そんな……。それは私の特権なのに……。それでいいの? 夏凜ちゃん」

 

「え? 何で私に言うのよ。いや、別にいいんじゃない? 望乃はよくやってるし」

 

「ゆーゆとコギーか~。ここにきて大穴なんよ~。でも創作は捗るんよ~」

 

「あんた、何でもいいんじゃないの?」

 

「そんなことないんよ~」

 

 勇者部がそんな会話をしていた、その時だった。

 

「夏凜ちゃん!」

 

 よく知る声が聞こえた勇者部は、声のした方を見る。

 

「ど、どういうこと?」

 

 そこにいた人物を見た勇者部は驚きを隠せなかった。

 天の神との戦いが終わり、失われていた日常を取り戻した勇者部の前に現れた、非日常の存在。よく知る人物のしていてはいけない姿をした少女――精霊の姿をした小木曽望乃が目の前にいた。

 その望乃は勢いよく夏凜に抱き付く。その勢いのあまり、夏凜は尻餅をついてしまった。

 尻餅をついた夏凛は、その望乃を引き剥がして立つ。引き剥がされた望乃も夏凛の前で立つ。

 

「あ、あんた、何で、その姿になってんのよ!」

 

「ていうか、望乃さっき逆方向に行かなかった?」

 

「? 何のこと?」

 

「あなたは、本当に望乃ちゃん?」

 

「今の間に人から精霊になるなんておかしいです!」

 

「何を言ってるの? 私はずっと精霊だよ。人になることなんてありえないよ」

 

 望乃の言葉に、勇者部は理解が追いつかなかった。

 

「でも、コギーは確かに人になってたよ」

 

「あ、ご主人様。お久しぶりですね~」

 

「質問に答えてほしいな~」

 

「それは、もう一人の私が来てから答えますよ」

 

「知ってるんだね」

 

「そうですね~」

 

 それは、一人を除いて誰も知らなかった、しかし決して見過ごしてはいけない問題。

 

「ただいまー! あれ? みんなどうしたの? ……え?」

 

 そこに友奈と望乃が帰ってくる。そしてもう一人の望乃に気付いた友奈が隣にいる望乃を見比べる。

 勇者部も望乃が二人いるその状況に混乱を極めており、言葉を発することができなかった。そして、茶髪の望乃は微笑んで言った。

 

「ようやく、会えたね」

 

「……え? 私?」

 

 小木曽望乃と小木曽望乃。二人の望乃が出会った時、望乃の最後の物語が始まる。

 

 

小木曽望乃は勇者である?~大満開の章~ 戻ってきた日常

 

小木曽望乃は勇者である?~小木曽望乃の章~ 望乃と望乃の出会い




 ここから完全オリジナルの小木曽望乃の章に入ります。
 本当に、ここまで長かった気がします。

 小木曽望乃の章は四話構成くらいの予定なので、もう少しお付き合いください。
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