小木曽望乃は勇者である?~大満開の章~   作:桃の山

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 今回、とあるアニメのパロネタが一箇所入っています。


勇者部の平和な日々 後編

 勇者部一行はキャンプにやってきていた。

 風が苦労してテントを設置し終わり、一息つく。

 

「ふう。やっとできた」

 

「何これ、超難しいんだけど」

 

「初心者にはドーム型テントが良いって聞いたんだけど……」

 

「でも苦労した分だけ愛着が湧きますね」

 

「それ!」

 

 そんな中、園子がワンタッチテントを立てる。

 

「できたできた~。文明の利器ってすごいね~」

 

「そんなのあるの?」

 

「情緒がない、情緒が!」

 

 園子はワンタッチテントに勢いよく入る。

 

「おやすみ~」

 

「もう寝るの!?」

 

「テント使うの楽しみしてたんよ~」

 

「いや、だからって!」

 

「夏凜ちゃん、落ち着いて~」

 

「え? 望乃? あんた、どこにいんのよ!」

 

 夏凜が声のした方を見ると、望乃がハンモックに寝ていた。

 

「そんなの、いつの間に!」

 

「いいかな~って思って。じゃあ、おやすみ~」

 

「あんたも!?」

 

 一方、友奈と東郷は火を付けようとしていた。

 

「何? それ?」

 

「ファイヤースターター。今日のために用意してきたの。着火!」

 

 東郷はそう言って火を付ける。

 

「すごい! 一発! かっこいい!」

 

「友奈ちゃん、吹いて吹いて!」

 

「は、はい!」

 

 友奈は火に空気を送り込んでいく。

 

「ゆっくりね」

 

「ふうーふうー」

 

「ゆっくりと。でも絶え間なく空気を送り込んで」

 

「うん。ふうーふうー」

 

 東郷が小枝を加えていく。

 

「小から大へ、ゆっくりと火を大きくするの」

 

 友奈も東郷を習って木を入れようとするが、東郷に止められる。

 

「焦ってはダメ。ゆっくりと育て――」

 

 そこで園子がバーナーで火を付けた。

 

「そのっち! 風情……風情がない!」

 

「お腹すいちゃって」

 

 そこに夏凜が肉を持ってやってくる。それを見て、友奈と園子が目を輝かせる。

 

「ハンパないよ~。私もう、にぼっしーの言うこと何でも聞いちゃう!」

 

「私も!」

 

「現金ね」

 

「じゃ~、私も~」

 

 望乃がそう言いながら夏凜に抱き付く。

 

「の、望乃!? あんたまで何言ってんのよ! てか、あんたは知ってるでしょ!」

 

「コギーの時だけ慌てるのいいね~」

 

「べ、別にそんなんじゃないから!」

 

「夏凜ちゃんもやるようになったわね。さぞ強力な薬を漬け込んで……」

 

「物騒なこと言わないで! ……ちょっとサプリ混ぜただけよ」

 

「美森ちゃん、大丈夫だよ~。夏凜ちゃんのサプリなら、私が取ったから~」

 

「え!? いつの間に!」

 

 その時、望乃が火に気が付いて、夏凜から離れる。

 

「あれ~? もう火付けちゃったの~? 私、秘密兵器を持ってきたのに~」

 

「秘密兵器?」

 

 その場にいる全員が首を傾げて、望乃の次の言葉を待った。望乃はポケットからあるものを取り出す。

 

「じゃ~ん! 松ぼっくり~。なんか火を付けるのにいいんだって~」

 

『コンニチハ』

 

「そうなんだー!」

 

「って、ちょっと待って! それ今、喋らなかった?」

 

「え~。そんなことないよ~」

 

「にぼっしーの聞き間違いなんよ~」

 

『ソウダヨ、ニボッシー』

 

「やっぱり喋って……って園子、あんたの仕業かい!」

 

「バレたんよ~」

 

「野菜切り終わりましたよー」

 

 そこで樹がテントの中から声を掛ける。樹の話だとカレーを作るとのことだった。各種ハーブを取り揃え、本格的に作ると意気込んでいた。

 そうしてできたカレーは、なぜか紫色だった。

 勇者部はその紫色のカレーを皿によそってじっと眺める。

 

「じゃあ、いただきま~す!」

 

 そのカレーを口に運ぶことを躊躇っていた勇者部の中で、唯一喜々として見ていた望乃が躊躇の欠片も見せずにパクリと食べる。

 

「あ、あの、どうですか?」

 

「おいし~!」

 

 望乃はそう言って皿に乗っているカレーを一瞬で平らげ、樹におかわりを頼む。

 それを見た勇者部は意を決してカレーを口に運んだ。

 

「ホントだ、おいしい」

 

「良かった、おかわりいっぱいありますから」

 

「おかわり!」

 

 樹の作ったカレーを堪能した勇者部だった。ちなみにカレーの三分の一は望乃が食べたのだった。

 

 

 夜。勇者部はテントの中で寝袋に入っていた。夏凜が隣の園子に聞く。

 

「小型テントはもういいの?」

 

「あれは休憩用。こっちはみんなで寝る用」

 

「狭くない?」

 

「せま~い!」

 

 園子が友奈と東郷の間に飛び移ってゴロゴロとする。

 

「望乃は狭くない?」

 

「大丈夫だよ~。寝転んで寝れるのに不満なんてあるわけないよ~」

 

「え!? 夏凜、望乃を寝かせてないの?」

 

「寝かせてるわよ!」

 

「精霊の時の話だよ~。あの時は寝転んで寝たことは全然なかったからね~。みんなと行ったお泊まりの時だけだよ〜」

 

「そう聞くと、異常な生活よね」

 

「それほどでも~」

 

「褒めてない!」

 

「園子さんが来てさらに賑やかになったね」

 

「急に転入してくるからまあびっくりしたわよね」

 

「私、園子ちゃんが来るって言ったよ~」

 

「望乃が言ったの前日じゃない。十分急よ」

 

「ねえ、もうすぐ冬休みよ。早いわね」

 

「お正月だね~。あ、その前にクリスマスか。楽しみだな~。私友達とクリスマスやるの初めて!」

 

「私はそのクリスマスっていうのが初めてだよ~」

 

「そっか……」

 

「クリスマス会、幼稚園に行くんだよね?」

 

「はい。お遊戯を考えないといけないですね」

 

「また風先生が新作を書くんでしょ?」

 

 そう聞かれた風は園子に相談を頼む。

 

「あーはいはい。受験生、大変よね」

 

「園子さんは望乃さんみたいに勉強ができるんですよね?」

 

「ほら、私寝たきりだったじゃない?」

 

「しれっと重いこと言いますね」

 

「ベッドでコギーと一緒にいっぱい参考書読んでたんよ~」

 

「そういえば、望乃も授業中寝てばっかだったものね」

 

「園子ちゃんが寝てからとか暇だったからね~」

 

「それで覚えられるのすごいなー」

 

 そうして、勇者部は眠りにつくことにした。

 

 

 明け方。望乃が夏凜に抱き付きながら寝続けている中、早く起きた東郷と園子は話をしていた。

 

「今の友達、いいね」

 

「うん」

 

「みんながいて良かった~。こうやってまた会うことができた。……おろ? 悩んでる?」

 

 東郷は園子の問いに答えない。

 

「……そっか」

 

「ミノさんには会ってる? 私はね、まだ行けてないんだ」

 

「そのっちも? でも確か、望乃ちゃんは行ってたはずよ。そのっちが転入してくる少し前くらいに」

 

「コギー、行ってたんだ。あの子も行くの躊躇ってたんだけどね。だって、私たちの精霊が生まれた始まりは……」

 

 園子はその先を言わなかった。しかし東郷にもその先に続く言葉は分かっていた。

 

「きっと、人間として生きていくために、向き合うべきだと思ったんだろうね。コギーは強い子だよ。元主人の私よりもずっとね」

 

「それは私も思う。望乃ちゃんは言いたくても何も言えなくて、ずっと苦しんでいたんだと思う。それでもいつも笑って、それを感じさせなかった」

 

「感情の変化があまりなかったところもあったけど、私の前では苦しそうに見えたよ」

 

「……私は、苦しんでるみんなを見て、世界を壊すことで……苦しまなくていいようにしようとした。でも望乃ちゃんは、自分を犠牲にしてみんなが生きていけるようにした。人間と精霊という違いがあったにしても、自分が消滅する選択ができた望乃ちゃんは、やっぱり強いと思うわ」

 

「そうだね」

 

「でも私はダメ。どんな顔して会いに行ったらいいのか……」

 

「そうだね。それは私もだ」

 

「そのっちは違うよ! ごめん……。私は二人のことを忘れていたから……」

 

「わっしーは悪くないよ」

 

「大切だ、約束だ、友達だってあんなに言っていたのに……それでも私は忘れてしまっていた」

 

「怒ってると思っているの?」

 

「そんなことない。そんなことで怒る子じゃない。私は……自分で自分が許せないのだと思う」

 

「そっか。でもねわっしー」

 

「言わないで。分かってる。…………私たちは、三人で勇者だった」

 

 

 別の日。勇者部は海岸で写真を撮り、その写真のおかげで勇者部への依頼が三倍になっていた。そこに園子が部室に入って来る。

 

「園ちゃんは元気だねー」

 

「生き急ぎすぎでしょ」

 

「生き急いでるんよ~」

 

「そんなに急ぐと死んでしまうわ!」

 

「長生きしたいぜ~」

 

「良いサプリ紹介しようか? ってあれ? 空なんだけど」

 

「夏凜ちゃん。それ全部食べちゃった~」

 

「サプリはおやつじゃないのよ! 予備を持ってきてよかったわ」

 

「流石かつおぶっしー!」

 

「にぼっしーよ!」

 

「認めた~」

 

「認めてないわよ!」

 

 その日の帰り道。望乃と夏凜は肩を並べて帰っていた。

 

「全く、園子の相手は疲れるわ。望乃みたいなのかと思ったら、全然違うじゃない」

 

「え~。私も頑張って似せたんだから似てるよ~」

 

「どこがよ! それ、本気で言ってんの?」

 

「頑張ったのにな~」

 

 少しシュンとした望乃に、夏凜が慌てる。

 

「べ、別に望乃はそのままでいいのよ! それに、望乃は園子のコピーでもないんだし、そんなこと気にしなくていいのよ」

 

「そういえばそうだね~」

 

「望乃も、いろんな顔をするようになったわよね」

 

「感情が増えたからね~。夏凜ちゃんのお役目も終わったし、私も精霊じゃなくなった。だからね、ず~っと一緒だよ!」

 

「……そうね。ずっと一緒よ」

 

「あれ? 夏凜ちゃんが素直だ~」

 

「何よ、悪い? ずっと一緒って言ったからには、もう自分を犠牲にしようとするんじゃないわよ!」

 

「大丈夫だよ~。私にそんな力はないよ~」

 

「そういうことじゃないのよ! 良い? もう何があっても、自分を犠牲にしないのよ! 約束しなさい!」

 

「も~。過保護だな~」

 

「誰のせいだと思ってんのよ!」

 

 望乃と夏凜はお互いの小指を曲げて絡み合わせる。そして二人は約束したのだった。

 

「ちなみに夏凜ちゃんもやったらダメだよ~。破ったら、風ちゃんと友奈ちゃんに好きって言ってね~」

 

「何でそうなんのよ!」

 

「え~。いいと思ったのにな~」

 

 夏凜は、残念そうにしている望乃を見て、大きなため息を吐いたのだった。

 

 

 

 その頃、別の場所では防人が集まっていた。

 その前に立つ楠芽吹の隣にいた人物が口を開いた。

 

「さあ、行こうか。芽吹ちゃん」

 

 その言葉を聞いて、芽吹はコクリと頷いた。

 

「総員、配置に就け!」

 

 そこにいた人物は、園子と同じ顔で、同じ髪色で、その髪を強引に短くしたような髪をした、見た目小学生くらいの少女だった。

 ――それは正しく、精霊の時の小木曽望乃と全く同じ姿をした少女だった。

 




 一話終了!

 次回からくめゆ編に入ります。
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