小木曽望乃は勇者である?~大満開の章~   作:桃の山

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 今回は勇者部が登場! ツッコミの安心感がすごい!


勇者に選ばれた人たち

 初めてのお役目。私たちは全員生還した。しかしそれはとても初陣として誇れるものではなかった。望乃は誇っていいと言っていたけど、望乃に頼り切って得た結果を、素直に受け入れることはできなかった。

 想像以上の恐怖だった。想像以上の絶望だった。心折れた者が一人、また一人と去っていった。

 

「仕方ないことだよ」

 

 去っていく者を見送る私と亜耶に望乃がそう言葉を投げかける。

 

「あんなの怖いって思って当然だと思う。みんながみんな、戦えるわけじゃないよ」

 

「望乃先輩は、バーテックスと戦ってる時は怖くなかったのですか?」

 

「そうだな……。私は、お友達を失う方が怖いかな」

 

 望乃は仲間の安全を最優先に行動していた。仲間を失いたくない、犠牲を生みたくない。その気持ちは私よりも上だった。

 だからこそ私は心配していた。

 自分は勇者じゃない。どう足掻いても勇者になることはできない。勇者じゃない自分は全てを救うようなことはできない。だから目の前のお友達だけでも守りたい。たとえ、自分がどうなるとしても。望乃はいつもそう言っていた。まるで望乃自身は救われなくてもいいというように。

 たとえ望乃がそう思っていても、私は認めない。防人でなくても、人でなくても、どんな存在だったとしても、望乃が犠牲になるようなことは絶対に認めない。

 

 神樹様から分けられた苗を植えることで、人間の世界を取り戻す。それが防人のお役目。だけど、敵との戦闘は避けられなかった。欠員はまたすぐに補充される。私たちがまるで使い捨てだというかのように。

 

「これまで死者はゼロ。もっと交換要員が必要になると思っていました。非常によくやっています。あなたが死者を出さずお役目を果たしていること、評価に値します」

 

 望乃の存在を知らない大赦は、この結果が全て私のおかげだと思っていた。しかしそれで良かった。私のおかげだと思っているということは、望乃の存在に気付いていないということだからだ。

 望乃は今なら大赦の監視がないから、自分のことは大赦に言わないでほしいと言っていた。それはつまり、知られてしまえば監視下に置かれてしまうということ。

 望乃ももう仲間だ。彼女が望まないことは、私も望まない。

 

「私が指揮を取る限り、絶対に死者は出しません。これは、私が私に課した誓約です。私たちは……消耗品じゃない」

 

 

 

 ある日、芽吹たちは食堂でうどんを食べていた。

 

「まあ、芽吹さん。またかけうどんですの? もっとこう、華のあるトッピングをですねー。あれ? 聞いてまして?」

 

「はいはい」

 

「仕方ないですわね。私が天ぷらを施して差し上げますわ」

 

「いらない」

 

「天ぷらおいしいよ~」

 

 天ぷらを咥える亜耶の隣で、望乃が同じように天ぷらを咥えながらそう言う。

 

「望乃は乗せすぎ」

 

「そうかな?」

 

 望乃が食べるうどんには、これでもかというほどのトッピングが乗せられていた。

 

「それを持ってくる私の気持ちも考えてほしいわ」

 

「だって~、おかわりを頼むのは悪いからさ~。トッピングを多くするしかないんだよね~」

 

「その体のどこにそれだけ入ってるんですの?」

 

「あ、あの……」

 

 そこで雀が遠慮がちに声を出す。

 

「実はみんなに話したいことがあって……」

 

 雀の話を聞いて、驚きの声が上がる。

 

「望乃さん以外の讃州中学の勇者たちに会ったことがあるですって?」

 

「う、うん」

 

「ホントですの?」

 

「ホントだよ~。私も覚えてるからね~」

 

「雀、どうして会いに行こうと思ったの?」

 

「あ、うん。私ね、正規の勇者に選ばれた人って、どんなアマゾネスみたいな戦闘民族なのか知りたくて」

 

「勇者のみんなも普通の女の子だよ~」

 

「だって、勇者に選ばれるような人だよ!」

 

「それで潜入したの?」

 

「まあ、なんというか……捕まってしまったというか」

 

「ええ!」

 

「ホントにアマゾネスみたいな方々だったのですか?」

 

「そんなことはないよ、亜耶ちゃん。みんな、亜耶ちゃんみたいな感じだよ」

 

「それはない!」

 

「まず三好さんが違いますわ」

 

「あれ~?」

 

「生肉食べてた……?」

 

「あれ、変わった味だよね~」

 

「望乃さんは食べたことがあるんですの!?」

 

「うーん、それがね……猫探してた」

 

「猫?」

 

 そうして、雀はその日の出来事を話し始めた。

 

 

「何で貴重な放課後の時間を使って、こんなことやらなきゃならないのよ」

 

 夏凜が猫探しの紙を見てそう言う。

 

「新入りがぶつくさ言わないの。望乃は文句も言わずにやってるわよ」

 

「望乃は変わってるのよ」

 

「猫、全然見つからないね~」

 

「そんな簡単に見つかるわけないでしょ」

 

「もう夏凜ちゃんに猫耳付けた方がいいんじゃないかな~」

 

「確かにね」

 

「いいわけあるか!」

 

「でも夏凜って、猫っぽいじゃない? いつもにぼし食べてるし」

 

「何よ、にぼしは完全食よ」

 

「私も夏凜ちゃんのにぼし食べるよ~」

 

 望乃がそう言いながら夏凜に抱き付く。

 

「あんたは食べ物なら何でもいいんでしょ!」

 

「え~。そんなことないよ~」

 

「望乃はものすごく犬っぽいわね」

 

「それはちょっとわかるわ」

 

「?」

 

「それで、他の子はどうしたの?」

 

「友奈たちは花壇の修理だから」

 

 そう言って笑う風に、夏凜はため息を吐いた。

 

「勇者部って変な部よね?」

 

「そこが良くない?」

 

「ああ、部長が変だから」

 

「何を!」

 

「仮にも勇者に選ばれたわけだし、言えば大赦がなんだってしてくれる立場じゃない」

 

「そういう特別扱いって良いと思う?」

 

「思わないけど……」

 

「オッケー! 良かった! じゃあ、あんたも立派に勇者部よ」

 

「何よそれ?」

 

「てか、望乃はどこに行ったのよ」

 

「知らないわよ!」

 

 ――何の話をしてるんだろう?

 

「何してるの?」

 

 急に後ろから声を掛けられた雀は驚きで叫び声を上げる。それに気付いた夏凜と風が駆け寄って来る。雀の目の前まできた夏凜が、望乃を自分の隣までグイッと引き寄せてから雀を睨む。

 

「あんた、学校でも私たちを見張ってたわよね? 何が目的?」

 

 ――こ、怖いーーー。

 

 見つかった雀は勇者部の部室まで連れて来られた。雀の前には勇者部六人が揃っており、雀は震えていた。

 

 ――こ、殺されるのかな?

 

「お茶です」

 

「ぼた餅です」

 

「ど……毒ですか?」

 

「まさか。毒じゃないですよ」

 

「ひいーー!」

 

「東郷さんのぼた餅、とってもおいしいんだよ!」

 

「そうだよ~。美森ちゃんのぼた餅ならいくらでも食べれるよ~」

 

「有無は言わせません」

 

 ――何なんだ、この人たち。

 

 雀は恐る恐るぼた餅を口に運ぶ。

 

「あ、おいしい」

 

「でしょー!」

 

「じゃあ尋問の時間よ」

 

「ひいーー!」

 

「こら、東郷! あっ、ウソウソそんなことしないから」

 

「怯えてるじゃないですか、東郷先輩」

 

「尋問って、カツ丼食べれるやつだよね~? 私も尋問されたい!」

 

「いや、尋問なんてしないから。それと、その解釈は間違ってる」

 

 ――何なんだこの人たち……。

 

 

 

「他の部の助っ人とか、あと幼稚園や老人ホームにも行ってた」

 

「なるほど、表向きはボランティア活動のクラブということですのね」

 

「表向きっていうより、そういうところなんだよ~。勇者部は人のためになることを勇んでやる部活だからね~」

 

「偉い方々なんですねー」

 

「そうなんだよ~」

 

「ちゃんと話をしたら全然怖くなかった。……三好さん以外は」

 

「三好さんね。その勇者部の一員として、最後までお役目を果たされたということですわね」

 

「夏凜ちゃんも全然怖くないよ~」

 

「そりゃあ、仲が良かった望乃ちゃんからしたらそうかもしれないけど……」

 

「望乃さんも勇者部の一員だったんですわよね?」

 

 そう聞かれた望乃はうどんを啜りながら答えた。

 

「そうだよ~。勇者部のみんなはね、精霊じゃない私と同じくらい普通だよ」

 

「小木曽は……普通じゃない……」

 

「あれ? 私、普通じゃないかな?」

 

 望乃はそう言いながらうどんを啜り続ける。

 

「変……」

 

「そっか〜」

 

「望乃先輩から見て、どんな方々なのですか?」

 

「えっとね、友奈ちゃんは元気で、美森ちゃんはしっかりしてて、風ちゃんは面白くて、樹ちゃんは可愛い。それで夏凜ちゃんは素直じゃないけど優しいかな」

 

 それを聞いた雀は、バーテックスと戦う勇者たちの姿を想像してみた。

 

『今日もバーテックスをいっぱい倒そうね!』

 

『バーテックスは確実に殲滅するわ』

 

『バーテックスを倒すのって面白いわね!』

 

『やられる時のバーテックスって可愛いです!』

 

『別にあんたのために殲滅してあげるんじゃないんだからね!』

 

「や、やっぱり怖い人たちなの?」

 

「何でそう思ったのかな?」

 

 なぜかブルブルと震え出した雀に、望乃はハテナを浮かべていた。

 

「芽吹先輩? どうされました?」

 

 どこか浮かない顔をしていた芽吹に気付いた亜耶が声を掛ける。

 

「え? あ、いや、何でもない」

 

 芽吹はそう言いながらも浮かない顔をし続けていた。亜耶はそんな芽吹を、心配した顔で見ていた。そしてその隣の望乃も、芽吹の様子を気にしていたのだった。




 想像上の勇者部がひどいことに……。特に犬吠埼姉妹のヤバい奴感……。

 そして、天ぷらを咥える亜耶ちゃん、可愛すぎ! 永遠に見てられるくらい可愛い!
 あややマジ天使!
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