ステイン妹のヒーローアカデミア   作:苗字ちゃん

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神野の悪夢編(下)

 

 

 

 闇が霧散し、集約する。

 それを見ていると酷い胸騒ぎがしたのを、今でも覚えている。

 

 

 (みさお)は漠然とした恐怖を感じていた。ぽっかりと空いた深い闇を瞬きする事なく見つめていた。でも、既に手遅れだった。

 集約した暗闇から現れたのは衣服を身に纏っていないラグドールだった。全身ずぶ濡れの彼女はその場に力無く膝をつくと、糸の切れた操り人形のように地面に沈む。その瞳は虚で、何も映していなかった。

 

 死柄木がラグドールに手を伸ばすより先に操は動き出した。躊躇いなく個性を使って腕を伸ばすけれど、何故か壁際に引き寄せられラグドールから遠ざかっていく。

 言葉にならない叫びを上げた。それでも死柄木は止まらなくて、その手は彼女の頭に触れる。

 その瞬間、何も映していなかった瞳が操を捉え、小さく微笑んだような気がした。

 

「待っ──」

「──待たねえよ!」

 

 それは一瞬の出来事だった。

 全身に罅が入ったかと思うと、ラグドールはそこから砂のように崩れ落ちていく。身体を形成していたはずの血肉は影すら見せず、等しく塵となり崩壊していく。

 その場に残されたのは、跡を留めていない砂の山だけだった。

 

「あーあ、死んじまったなァ」

 

 砂は泥となり、まるで夢のように消えていく。それを掬い取った手のひらに、彼女が生きた証は何一つ残らない。ただ鋭い刃物が深々と胸に突き刺さって血の色に濡れているだけだった。

 震える喉が言葉にならない悲鳴を上げて慟哭を掻き鳴らす。嗤いを滲ませた男の声は鼓膜にこびり付いていつまでも離れなかった。

 

 

 

 

 

 そして操は弾かれるように目を覚ます。

 視界に飛び込んできたのは真っ白なカーテンの(ひだ)とクリーム色の天井だった。明るさにムラのある寂れたヴィランのアジトではなく、操は安全な場所で寝かされている。それに気付くと無意識のうちに止めていた呼吸をゆっくりと再開させ、操は再び瞼を下ろした。

 寝起きで意識と肉体が上手く繋がっていないのか、それとも随分と長く眠っていたのか。身体全体がとても重く、思うように動かなかった。頭の半分はまだ泥の中に浸かっているかのようだった。それなのに、こびり付いた嗤いは脳の中でずっと反響している。

 閉じていた傷口は次第に裂けて、心は真っ赤に染まっていく。

 

「…………ゆめ、」

 

 ──夢なんかじゃない。

 開いた瞼の下で、瞳が小刻みに震えはじめた。操は上体を起こすと腕に刺さっていた点滴を乱暴に引き抜く。そして甲高い音を立てて倒れたそれに視線を落とすことなく、シーツに皺を作りながら膝を立てて頭を抱えた。全身の傷が悲鳴をあげるけど、その声は今の操に届かない。

 乱暴に髪を掻きむしっても、柔らかい皮膚に歯を突き立てても、手のひらからあの人がすり抜ける感覚が消えることはなかった。何度確認してもそこには何もないのに、彼女の残骸が永遠にすり抜け続けている。

 脳裏に反響する嗤い声を消したくて頭を殴ってもそれは消えなかった。歯を食いしばって瞼を下ろしても、消える瞬間の優しい眼差しが焼き付いて離れそうになかった。

 

「あ……あぁ……」

 

 私が手にした結末を、どうか許さないでほしい。

 震える唇を噛み締めて俯けば、浮かび上がるのは眩しい記憶の断片だった。

 初めて出会った時は嘘を見抜かれた。個性や肉体強化の為にアドバイスをしてくれた。悩んでいたら助言もしてくれた。個性をうまく使えた時は手を上げて喜んでくれた。自傷の減った手首を見て嬉しそうに頬を緩ませていた。サーチの個性で操の居場所なんてわかりきっている筈なのに、一人になりたい時を察して放っといてくれた。入試の時はカツ丼を大きな弁当箱につめて持たせてくれた。別れの時は手首におまじないを巻いて、操の未来を案じてくれた。そして、いってらっしゃいと笑顔で見送ってくれた。

 操はその時、初めて心から笑えるようになったのだ。穴だらけの心を彼女たちが埋めてくれたから、暗かった世界が色鮮やかに変わっていったのに──。

 そうやって笑い合ったのが、遠い昔のようだった。

 

 胸の奥から何かが迫り上がってきたけれど、それは言葉に成り損なって音もなく吐き出される。身体が強張って震え、汗が噴き出しているのに寒い。胸の中を土足で踏み荒らす感情にどうしていいのか、わからない。

 ──私が手にした結末を、どうか許さないで……!

 ラグドールは砂になって跡形もなく消えてしまった。けれど、一緒に過ごした日々は確かに操の中にあった。それが一層胸を締め付け、深い傷となって心に刻まれる。溢れ出す様々な感情を、どうしても抑えることができない。

 ラグドールは最初から最後まで操を想ってくれたのに、操は自分の保身ばかり考えていた。彼女の名誉のためと無理やり理由を付けただけで、結局自分の未来のために彼女を見殺しにしたのだ。操が、ラグドールを殺したのだ!

 

 喪失感が現実味を帯びてきた時、操の心の中では激しい感情が溢れ出していた。

 知床知子(ラグドール)を殺したのは自分だと責めることしか出来なかった。悔やむ気持ちはとめどなく溢れ、全身を埋め尽くし覆い隠していく。脳裏で誰かが嗤い、凍てつく冷笑で操を責め続ける。

 罪の意識で埋め尽くされた心では正常な判断ができなかった。あの時なんて答えれば正解だったのか、操にはわからない。ただ最善を尽くしたかと問われると、首を縦に振ることが出来なかった。

「心身共に追い詰められたあの状況では仕方がなかった」「彼女はプロヒーローだから死ぬ覚悟は出来ていた筈だ」、なんて言葉では片付けられない結末になってしまったのだから。

 

「私は……取り返しの、つかない事を……」

 

 人間は自分にとってかけがえのない存在を失った時、今までに経験した事がないような大きな感情の波に襲われる。

 それは非常に深い悲しみであり、身を切るような鋭い辛さであり、自身に向けられた抑えられない怒りでもある。心の奥底からほとばしる、ふつふつと湧き上がる感情に適切な名前なんてない。

 それは声にならない心の叫びだ。

 真っ赤に滴る心が、負の感情を撒き散らす。

 進み続ける秒針を平伏し、跪かせ、時を遡ることは不可能だ。どれだけ嘆いて悔やんでも振り返った道を戻ることはできない。ラグドールを助ける事は、絶対にできない。

 そして彼女に直接謝ることも許してもらうこともできないから、自分を責めて嘆くことは無理もなかった。操が折れればラグドールの死は無駄になるとわかっているけれど、自分の心が折れるまで叩かないと気が済まなかった。辛い気持ちから逃れる事は許さないし、誰にも許してほしくない。

 だって悲しみや罪悪感に支配されていないと、自分が生きていることを許せそうになかったから。

 

 無傷では何も勝ち取れないと知っているから必死に手を伸ばしたけれど、その手が大切な人を殺める引き金を引いてしまった。

 あの時何をするのが正しくて、どうすれば正解だったのかわからない。もしかしたら正解なんてないのかもしれない、わからないけれど──。

 

「ごめんなさい……っ」

 

 手にした結末に、ただ心が痛かった。

 マンダレイ、ピクシーボブ、虎、洸汰。彼らの顔が浮かんでは操を鋭く非難する。氷のような冷たい視線が、操を貫いていく。

 そんな未来に恐怖を覚えつつも、今回のことを許してほしくないと思うのだから操の心は矛盾している。

 ──私がもっと強かったら、ヴィランの問答関係なくラグドールを守れたのに。私が誘拐されなければ、あの時ラグドールの救助に向かっていれば、違う結末だったかもしれないのに。死柄木の問いに違う答えを出していたら──!

 

 悔やむ要因はいくらでもあった。そんな呵責が心を渦巻いているから、自分を責めずにはいられないし、罪悪感を覚えずにはいられない。自分だけの、決して他人とは分かち合えない罪の重み。時と共に膨張して増え続ける負の感情。

 それは抜き身の刃として操の目の前に置いてあった。操はそれを躊躇なく手に取ると何度も何度も自分の心に突き立て、切り刻む。錆びて切れ味が悪くなっても止まる事なく、黒く染まったそれを振り下ろし続ける。

 心臓を貫かれ、身体を切り刻まれても死ねない拷問のようなそれは全身を駆け巡る。体温に近い赤がその場を汚しても、その行為は決して終わらない。

 そうして生まれた傷と痛みを、人は後悔と呼ぶのだろう。

 

 あまりに重たい自責に、心は耐えきれず徐々に擦り切れていった。収拾がつかない自己嫌悪に駆られ、自分を痛めつけないと崩れ落ちてしまいそうだった。

 傷付けたところで、やがて崩れ落ちることには変わりないのだけれど。

 

「……赤黒?」

 

 病室のドアが静かに開かれ、何時もより身なりを整えた男が室内に足を踏み入れる。男は──相澤は、ベッドの上で踞る操を視界に捉えると息を呑んで駆け寄った。

 熱に浮かされた傷だらけの身体は数ヶ月前の出来事を思い起こさせた。何よりもがらんどうの瞳が、感情の揺らぎのない表情が、彼女の精神的な異常をありありと知らしめている。

 操の内面は今も激しい感情が渦巻いていたが、自身に対する失望や落胆、幻滅に似た何かに襲われ、側から見ると放心しているようにしか見えなかった。

 

「おい、赤黒」

「……せんせい、」

 

 目の前の生徒が大丈夫じゃないことは一目見てわかった。

 そっと肩に触れれば、どこか(くう)を見つめていた瞳は力無く相澤を捉える。相澤は操が抱く罪の意識が痛みに転じているのだと感じて口を固く引き結んだ。彼女がこうなってしまったのは、我々大人が守れなかった証拠だったから。

 あの日操に何があったのか。相澤は爆豪から話を聞いているため、その全容を知っている。だから彼女が目覚めた時、心のケアが何よりも必要だと理解していた。

 

 罪悪感を抱き自身を責めることで、人は心の正常をなんとか保っている。しかし予想以上に激しく燃え上がる自責の念は深刻なエラーを引き起こし、亡くなった人の死因に自分が直接関与していなくても、自身の取った言動に無理やり関連付けて「自分が一番悪い」と責めてしまう。要するに、客観的に物事を捉えられなくなるのだ。

 そういう人には「原因は自分以外にもある」と教える事が重要だ。最初から「あの答え方をした自分も良くなかったけど、殺したヴィランも悪い」と考えられれば苦労はないが、それが出来ないから彼女は苦しんでいるのだろう。

 彼女が持つ過剰過ぎる自責の念を緩和するには、境遇や年齢を考えると難しい。けれどやらなければ、このまま彼女は壊れてしまうだろう。

 

 罪悪感で苦しむ子どもの言葉は傾聴するのが一般的である。人には自らを回復する能力が備わっている為、教師である相澤は操の気持ちを受け止め、整理し、自力で立ち上がるのを支えるのが仕事だ。

 抱える問題の"事実"ではなく操の"感情"に寄り添い、彼女が今どんな気持ちなのかを大切にして話に耳を傾ける。それが気持ちの整理をつけるには効果的な対応だと学んでいる。

 けれど今の操にその姿勢は正しくないと思った。何故なら、そもそも"事実が異なっている"からだ。

 

「赤黒、ラグドールのことだが──」

「先生、人殺しは、ヒーローになれるかな?人を殺してるのに、人を救うヒーローに、私はなれるのかな……?」

「……話を最後まで聞け、まだ途中だろうが」

「っ、今は聞きたくない……!」

 

 操は相澤の手を払うと鋭い視線で貫いた。先程まで空っぽだった瞳は、赤黒い炎が燃え盛っている。大き過ぎる精神の振り幅は不安定な証拠であり、些細なことで崩れ落ちそうなほど酷く危うい。

 相澤は操の言動に怒ることなく、冷静かつ真剣な眼差しで見つめ返した。そして再び手を伸ばし、その薄い肩に触れる。

 元々操には生まれや境遇から自身を追い詰める癖がついているのだが、近くで見てきた相澤はそれを充分に理解していた。操は誰かを助けられなかった痛い思い出があり、過去の境遇から期待されることに喜びを感じ、過剰に応えようとしてしまう。

 それらは向上心を持つヒーローとして良い方向に作用する時もあるが、このように一度破壊されると一気に崩れ落ちてしまう危うさも孕んでいる。頑張れば頑張るほど、頑張った人ほど、脆く粉々に壊れてしまう。

 

 助けたい、救いたい、役に立ちたいと思って頑張ってきたが、力が及ばず上手くいかなかった。それどころか最悪の結果に結びついてしまったから、彼女の心に無力感や罪悪感が生まれてしまうのは無理もないだろう。

 でもそれは"違う"のだと伝えなければならない。

 現時点では彼女の感情に寄り添う事より、事実を伝える事が最も重要であった。だから相澤はどれだけ操が嫌がろうとも口を閉じるつもりはなかった。

 

「いいから聞け、ラグドールは──」

「「操!」」

 

 しかしその言葉を遮ったのはこの場に現れた二つの声。ノックもなしに病室にやってきたのは私服に身を包んだプッシーキャッツの二人、マンダレイとピクシーボブだった。

 ピクシーボブは頭部に包帯を巻いていたが、その痛みを感じさせないほどの勢いで走っている。そして二人は操を見つけると、心配そうに眉を潜めてベッドサイドに駆け寄った。その足元には洸汰もいたが、彼は不安そうに操を見上げるだけで何も言葉を発しなかった。否、操の状態を見て言葉を発する事ができなかったのだ。

 

「操、大丈夫?」

「怖かったよね、辛かったよね……!守ってあげられなくてごめんなさい!」

「あ……シノさ、リュウコさん……」

 

 マンダレイとピクシーボブの二人を見ると、操の胸の中にある罪悪感が一気に膨れ上がった。それは心を瞬時に切り裂き、切断されたそれは赤を噴き上げる。あまりの痛みに奥歯を噛み締めたが、そのまま奥歯ごと砕いてしまいたかった。

 だって操は二人の大切な人を奪ったのだ。

 ラグドールは、ワイプシは、操に光をくれた人たちだ。生きる喜びを教えてくれた、未来を照らしてくれた人たちだ。

 それなのに操は恩を仇で返し、ラグドールの未来を握り潰した。ワイプシの未来を土足で踏み荒らしてぐちゃぐちゃにしたのだ。

 けれど二人は操を責めるばかりか、酷く心配している。怪我を見つめて眉を下げて、守れなかったことを悔やんでいる。その言葉に嘘がないのは瞳を見ればわかった。

 

「ごめ、ごめんなさい……」

 

 やめてほしかった。

 怒鳴られて非難された方が何倍も楽だった。優しくしないでほしかった。彼女たちに合わせる顔がない、心配される価値がない。

 だから操は身体に力を入れると立ち上がり、冷たい地面に膝をついた。そのまま両手と額も地面につけて、二人に頭を下げる。

 

「え? なに、どうし──」

「ごめんなさい」

「ちょ、ちょっとやめてよ!私たちが謝ることはあっても操が謝ることなんて──!」

「ラグドールが死んだの、私のせいなんだ……!」

「!?」

「私のせいなの……私が、殺したんだ!」

 

 こんなことで許されないのはわかっているけれど、それでも謝らずにはいられなかった。謝る以外の方法がわからなくて、操は壊れたように同じ言葉を繰り返す。

 脳裏に浮かんだのは楽しそうに嗤う死柄木の姿。そして彼が操に提示した二つの選択肢だった。

 

『あー……なんだっけ、ラグドールだったか。お前がヴィランにならないならそいつを殺す事にしよう』

「ごめんなさい」

『さて、どうするヒーロー。お前の選択次第で一つの命が救えるぜ?』

「ごめんなさい……っ」

 

 それに私は、何と答えたっけ?

 ヒーローは決してヴィランに屈してはならないと理由をつけて、結局自分可愛さに彼女を見殺しにした。他の選択肢を探すことなく、迷うことなく提示された二択に答えてしまった。

 既に、その時点で彼に負けていたというのに。

 ごめんなさい。その六文字で片付けられないほど許されない罪を操は犯した。砂になった瞬間、ラグドールは何を思ったのだろう。操のことを恨んでほしい、呪ってほしい。そう思うけれど、きっと「気にしないで」と思っていたのだろう。

 だってあんなにも優しく、笑っていたのだから。

 

「ラグドールが死んだのは、私の、私のせいなんだ……!」

「違うだろ!!」

 

 地面に踞る操に掴みかかったのは、先程までずっと黙っていた洸汰だった。

 小さな手で肩を掴み、無理やり操の顔を上げさせる。何かに反抗するような目付きはいつもの彼の瞳とは違っていて、芯のある真っ直ぐな何かを孕んでいた。小さな身体で一生懸命に何かを伝えようと操に訴えかけていた。

 

「操のせいじゃないだろ!」

「だって、私が──……」

 

 その時洸汰の脳裏には恐ろしい男が過ぎっていた。人を嗜虐的に嬲り殺す事で快楽を見出す危険人物、血狂いマスキュラー。洸汰の両親の仇。

 操はそんな相手にも怯むことなく立ち向かった。「死なせない」と洸汰に告げて、深い傷を負いながらも本当に守ってくれた。

 きっと目の前にヴィランがいたから仕方なく立ち向かったんじゃない。洸汰(ぼく)を傷付けた男だから、怒って戦ったんだ。

 

『お互いやりてぇのとをやった結果だよ。悪いのはてめェのパパとママさ!』

『悪いのはお前だろ!!』

 

「操のせいじゃない……! ヴィランのせいだろ!!」

 

 だから操は悪くない、悪いことをしたヴィランが一番悪い。

 操が傷だらけになるのはよく見る光景だった。雄英高校に通う前も、合宿中も彼女は傷だらけでとても汚れていた。けれど心まで傷だらけになるのを目にしたのは初めてだった。

 操はいつだって洸汰の前を走って、自信満々な笑みを携え何だってこなしていた。お手本のように隣で野菜を切って、森の中を先導して。睨んで暴言を吐いてもその手は一度だって離さなかった。両親が殺されてから一人ぼっちだと思っていたのに、見上げれば此方を見下ろしていて、目が合えば太陽みたいに笑うんだ。

 きっと操は知らないだろう。被害者でもなく子どもでもなく対等に接するその姿勢に、洸汰がどれだけ救われたのか。その背を追いかけようと走り出したことなんて、気付いていないんだろう。

 だからこそヴィランによって傷付けられた操を見ていられなかった。洸汰は肩に置いた手の力を強め、唇を噛む。自分の大切な人たちを傷つけてばかりのヴィランに、傷つけておいて謝りもしない彼らに、怒りと憎しみが湧き上がる。

 

「ヴィランがいるから……あいつらみたいなのがいるから……!いつも、いっつもこうなるんだ!!」

「……で……でも、」

「でもじゃない!そもそもラグドールは……!」

「あちきがどうかしたにゃん?」

 

 聞こえた声に操の思考は停止した。

 血潮が逆流するような思いになって前を見つめるけれど、洸汰は既に操から視線を外して声の方へ向いている。

 そんな横顔を眺めながら、操は心臓の鼓動と呼吸が止まってしまったような気持ちになった。けれど再び聞こえた声に、心臓は大きな音を立てて再び躍動する。

 

「操、起きたのか?」

「なんか取り込み中かにゃん?」

 

 開いた扉の先にいたのは私服姿の虎と病衣を見に纏ったラグドールだった。その姿は操の目をすり抜けて心に直接刻まれる。

 開いた口が塞がらず呆然とする操を眺め、ラグドールは首を傾げた。翠色の髪がさらりと揺れて、肩から流れ落ちていく。

 マンダレイやピクシーボブが耳打ちをすると彼女は眉を下げ、ゆっくりと操の前に歩いてくる。そして膝をついて顔を覗き込んだ。

 合わさった瞳は虚ではなく、意志を持って瞬いていた。光が差し込んで輝き、感情を乗せ揺れていた。悲しそうな表情は瞬きと共に消え、いつもの笑顔が顔を覗かせる。

 

「まるで幽霊でも見たかのような顔だにゃん」

「……なんで、生きて……?」

「だってあちき死んでないもん!」

「だって、私の目の前で殺されたじゃん……!」

「操、聞いて。あれはヴィランの個性によるものよ」

「ヴィランの……、」

 

 いつものように両手を伸ばして笑うラグドールに感情が追いつかずぼんやりとしていれば、それを察してかマンダレイが口を挟む。

 相澤もプッシーキャッツの面々も、爆豪の証言からあの日操に何があったのか知っていた。彼はラグドールが殺されたのを見たと言っていたけれど、脳無格納庫から彼女は救出されている。よって警察はヴィラン連合トゥワイスの個性によって「ラグドールの死を演出した」のではないかと結論付けている。

 相澤も操にそれを伝えるつもりだったのに、自責の念が強すぎて周りが見えていなくなっていた操は聞く耳を持たなかったのだ。

 

 操は両手に視線を落とした。そこには彼女の残骸が今でも残っている。けれど顔を上げると「あははは!」といつも以上に笑うラグドールが確かに存在していて、手の中の泥は次第に消えていく。

 翳ることのない輝きに手を伸ばすと、両手でラグドールの頬に触れた。

 柔らかくて温かい、それは命の温度だった。

 

「本当に、生き、てる……?」

「うん!」

「生きて、…………っ」

 

 操の声は情けなく揺れていた。遠い星の瞬きのようにか細く、そして小さく震えていた。

 やがて涙がぽろりとひとりでにあふれ出した。一つ一つが大きなそれは雨粒のようにとめどなく落ちて、衣服の染みになっていく。ラグドールをちゃんと見たい筈なのに、視界がぼやけて前が見えなかった。唇を噛んで堪えても止まらなくて、操の意思に反してそれは流れ続けていく。

 この世に生まれ落ちてから一度も流したことのなかった涙が、次から次へとあふれ出て止まらなかった。たまりにたまった罪悪感が堰を切って涙に変わり、光っては消えていく。

 操が弱いから泣くのではない。それはきっと、操の人生で泣けるようになるほど大切な人に巡り会えた証だった。

 

「トモコさん……、生きてる……ちゃんと、生きてる……」

「あはははは! うん、生きてるよ! 大丈夫、大丈夫……生き、てるよ……っ」

 

 ラグドールはいつものように笑った。安心させようと、心配させまいと笑った。けれど笑っているはずなのに、徐々に目頭が熱くなって瞳の縁には涙がたまる。でもどれだけ歪になっても笑顔のまま操を見つめ返した。

 君が息をしている。瞬きをしている。

 操は瞳の中にラグドールを閉じ込め、あの日のことを思い返していた。

 ──ヒーローとして正しくありたいと思っていた。けれどそう願っても、誰かを犠牲にしなければならない矛盾が確かにあった。

 自分の弱さと命の尊さを改めて胸に刻む。そしてヴィランの犯行の悍ましさと、心の拠り所を失った人間の脆さを痛感していた。

 

「ごめん、トモコさん、ごめんなさい……!私……私は、ヴィランにならないとトモコさんを殺すって言われて、私……!」

「うん」

「……っヴィランにはならないって、断った……!」

「……うん」

 

 それはとても痛々しい、真っ赤に濡れた罪の告白だった。ラグドールはそれを聞くと、頬に添えられた手を上から包み込む。

 想像を絶する痛みを負っただろう。簡単には真似できない彼女の心の在り方は、時には牙を剥いて自身を傷付ける。真っ直ぐであるが故に、道を少しでも踏み外したら絶対に許せなくなる。

 そんな彼女を労わるように、ぎゅっと手を握る。不思議なことに視界がぼやけて操がどんな表情をしているのかわからなかったけれど、出来る限り口角を上げていつもみたいに笑ってみせた。

 

「よく頑張ったにゃん……!」

 

 震える唇で紡いだ言葉は、ちゃんと操に届いただろうか。

 操がワイプシ(自分たち)を特別視していることなどとっくに気が付いている。嘘でも「死んでもいい」だなんて言葉は言いたくなかっただろう。

 けれどその選択をさせてしまったのは自分たちヒーローが彼女を守りきれなかったからだ。学生である彼女には何の落ち度もなく、むしろヴィランに屈して悪の道に足を踏み入れなかった強靭な精神力を讃えるべきだった。

 そんな辛い最中で選択を迫られ、それでもヴィランに屈しなかった操を誰が責められるのだろうか。

 ──少なくとも、あちきは絶対に責めたくない。

 

「こんなこと、冗談でも言いたくなかったよ……!」

「大丈夫、わかってるにゃん」

「本当は……本当は、誰よりも、死んでほしくない人だから……!」

 

 相手がラグドールではなく一般人であったなら、操の返答は決して褒められることはないだろう。或いは操が学生ではなくヒーローだったなら、その行動を咎める者は多く存在したかもしれない。

 けれど痛々しい少女の身体と泣き声は、不利な状況下でも最後まで戦い抜いた証拠だった。

 とめどなくあふれるその涙は、初めて出会った時より何倍も成長した証であった。最悪の中で最善を尽くそうともがいた、努力の証だった。

 

「生きてて、よかった……!」

 

 他人を思いやり、他者のために涙を流す。彼女の生い立ちを鑑みて、それがどれだけ尊いことかわかっているから、ラグドールは両手を伸ばして操を抱きしめた。

 血も繋がっていない、たった二年しか過ごしていないラグドール(赤の他人)を想って泣く子どもを、愛しいと思わないわけがなかった。彼女の目覚ましい成長に涙をこらえられる筈がなかった。

 ──守ってあげられなくてごめんね、辛い思いをさせてこんなに泣かせてごめんね。その言葉を飲み込んで、ラグドールは操をきつくきつく抱きしめた。

 ただ今は、お互いが生きていることに安心したかった。

 

「操も無事でよかった……!」

 

 腕の中の温もりに身を任せようとした瞬間、突如病室に大きな音が鳴り響く。

 二人の近くで鳴ったそれに大した脅威は感じない。けれど身体を少し離して視線を向ければ、そこには二人を鋭く睨みつける洸汰の姿があった。

 

「……っ、どこが、どこが無事なんだよ!?」

 

 心からの本音を吐露した彼の声は裏返り、肩は小刻みに震えていた。

 二人を見ていると心の底から苛立ちが湧き上がり、洸汰は思わず二人に掴みかかる。けれど至る所に包帯を巻いていて、痛々しくて掴めやしない。仕方なく病衣を掴むけれど、それすらも躊躇われる傷を負っていた。

 こんな怪我、拉致される前にはなかった。そう思うとやりきれない思いがふつふつと煮えて心をぐらぐらと揺らしていく。

 ──傷だらけで個性も取られて大泣きしてるくせに、何で……!

 

「お前らイカれてんじゃねえの!?」

「ちょ、洸汰……!?」

「なんでだよ、なんで戦うんだよ!?こんな怪我して、泣いてまで──……!」

 

 兄を殴るためにヒーローになる、操はそう言って雄英高校に入学した。ニュースで彼女の兄が捕まったと知った時、もう彼女が戦う理由はないと思った。それなのに彼女は戻ることなく、合宿ではずっと頑張っていた。

 泥と汗だらけでみっともないのに、笑顔だけはキラキラと輝いていた。そうやってすごく頑張っていたのに、マスキュラーの前では成す術なく地に伏せた。胃の中身を吐き出して痛みに苦しんで、死ぬかもしれないのに立ち向かっていった。

 洸汰(自分)や悲しむ誰かを守るために今頑張っているのだと理解している。だからこそ、嫌だったのだ。

 

「そこまでして戦う理由があるのかよ……!」

 

 ──弟みたいな、大切な子なんだ。

 嬉しかった。家族は死んでしまって一人ぼっちだと思っていたから、血が繋がっていなくてもその言葉だけで嬉しかったのに。

 それなのに操は何日も帰ってこなかった。帰って来ても傷だらけで苦しそうで、酷い目にあったのだと見ただけでわかってしまった。ラグドールも無理して笑っていて、苦しさや悲しみをひた隠しにしている。

 

「戦わなきゃ、いけないのかよ……っ」

 

 立派な死だと褒め称えられるくらいなら、非難されてでも側にいてほしかった。

 一度繋いだその手だけは、何があってももう離さないでほしかった。

 

「……もう、帰ってこないかと思った……、」

 

 ただ、僕は。

 もう大切な人に死んでほしくないんだ。

 

「ヴィランに殺されて、もう帰ってこないかと思った……!!」

 

 ──両親みたいに。

 二人が拉致されてからずっと、洸汰は最悪を想定していた。

 操は拉致されて無惨に殺されてしまう。それか、拉致されても尚勇敢に戦ったけれどやっぱり殺されてしまい「立派な死に様だ」と称賛される。そんな未来が何度も頭を過って気が狂いそうだった。

 さっきまで隣にいた人が過去になる恐怖に耐えきれなくて震えが止まらなかった。そんな未来が怖くて涙が止まらなかった。

 何もできない自分は「神様一生のお願いです、二人を殺さないでください」と何度も神に願うしかなかった。救出作戦に参加する虎に「二人を救けて」と縋り付いて懇願するしかなかった。マンダレイとピクシーボブに何度も二人の容態を確認するしかなかった。

 

「操……ラグ、ドール……!」

 

 みっともなく床に座り込んで泣く二人の名前を呼ぶ。

 手を伸ばすと温かくて、二人が生きているとようやく実感できたのだ。先程まで胸の中を支配していた苛立ちはとうに消え失せ、二人が生きて帰ってきて酷く安心している自分がいる。

 ──傷だらけで個性も取られたくせに、何で安心した顔して泣いているんだよ。

 先程まではそう思っていた。それなのに、自分もきっと今は二人と同じ思いを抱いている。

 

「生きててよかった……!」

 

 噛み締められた歯の間から、嗚咽がこぼれ落ちた。大きな瞳の縁にはいっぱい涙を溜めて、次第に彼は火がついたように泣きじゃくる。

 洸汰が年相応に、感情のまま泣いているのを操とラグドールははじめて目にした。流星のように光る涙を見ていると、二人の瞳の奥が熱くなって瞬きするたび熱い水滴が星のようにはじき出される。

 年齢も離れ血の繋がっていない三人だけれど、大切に想いあっているからこそ流せる涙が確かにあった。

 

「洸汰、心配かけてごめんね……!」

 

 ラグドールが洸汰を抱き寄せ、操と一緒に腕の中へ閉じ込める。先程まで堪えていた声は震える唇のせいで洩れ、彼女は操と洸汰にもたれ掛かりながら頬を涙で濡らした。

 いつも笑っている大人が泣いている姿に、操と洸汰はたまらなくなって同じように抱きしめた。背中には、それぞれの腕が力強く回されている。

 

 冷たく深く閉ざした心を溶かしたのは優しい光だった。

 二人は自分の為に泣く強さをまだ持ち合わせてはいないけど、人の為に泣く優しさを持ち合わせている。それは初めて会った時には確かに持っていなかった、二人の強さ。成長した証だった。

 ここにいる全員が、二人の心の穴を埋めたのだ。誰か一人でも欠けていたら、きっと今こうやって泣くことは出来なかっただろう。

 

「……もう、泣かせないでよ……っ」

 

 そんな姿に、一緒に生活していた三人が感化されないわけがなかった。

 突然の襲撃、仲間の負傷、凶悪ヴィランに襲われた子どもと立ち向かった子ども、そして拉致された三人。現場に大量に残された血痕に最悪の未来を想定した。傷だらけで遠ざかる背中を止めればよかったと、悔やんでも悔やみきれなかった。

 今回の事件で傷付いたのは決して洸汰だけではない。ワイプシの三人はヒーローとして不甲斐なく、情けなかった。生徒たちを無傷で守ってあげたかったし、泣かせたくなかった。個性を奪われた仲間に何て声をかけていいのかわからなかった。

 

 瞼に涙を滲ませて俯いても、ひと筋こぼれてしまったらあとはもうとめどがなかった。

 拭っても拭っても止まらないそれにたまらず、ピクシーボブもマンダレイも、虎も無事だった仲間に駆け寄って抱きしめる。

 お互いの温もりを分け合って、声を上げて涙を流した。生きていてよかったと誰もが安堵し、すぐそばにあるその幸せを全員が痛いくらいに感じていた。

 

 

 

 

 

 

 今回の事件を受け、世間は騒然としていた。

 事件の舞台となった神野区は半壊し、数多くの犠牲者を出し今もなお行方不明者の捜索が続けられている。たった一夜にして家族や家、職場、友人を亡くした人は数知れず。肉体的には五体満足でも精神的に深く傷ついた人は数多く、被害は計り知れない。

 襲撃された雄英高校の生徒は二人が拉致され、十五名が意識不明の重体に陥った。そして重傷を負った生徒も多く、入学してから相次ぐヴィランの襲撃に今一度防犯システムの再検討と生徒のメンタルケアが重視されている。

 そして子どもや民間人だけでなく、平和の象徴たるオールマイトを筆頭にベストジーニスト、ラグドールと数多くのヒーローたちが大打撃を受けた。それに加えてヴィラン連合はAFOしか捕まっておらず、脳無の出所すら不明である。

 

 今回の事件でヴィラン連合は合宿だけではなく、神野区で被害に遭った人々やその関係者、そしてこのヒーロー社会に深い爪痕を残していった。

 彼らは我々が今まで紡いできた生活を踏み荒らし、もう跡形もないほどにぶち壊した。失ったものは数多く、痛みと苦痛を伴った時間は心に傷を残していく。

 ヒーローへの不信感、ヴィランへの恐怖──様々なものを残して、明日は等しくやってくる。明日が暗くて見えない中で、残酷に明日はやってくる。

 今回の事件を、人々は"神野の悪夢"と呼んだ。

 

 

 

 

 

 昔から失っては傷付いて、それでも痛みや恐怖を全て乗り越えて君は走り続けてきた。

 無傷では何も勝ち取れないと知った。正解なんて存在しない問いがあると知った。けれど君は、弱さを見せられる強さを手に入れた。

 始まりも終わりも誰もが知らされていない世界で、私たちは生きている。

 進まなければ決して傷つく事はないこの世界で、それでも君は進み続け、現実から目を背けないのだろう。

 

 一度転んだからこそ見える世界があり、失いかけたからこそ見えるものがある。加害者側だった操は被害者の立場に立ち、そしてヴィランの心に触れた。

 それは今後彼女が生きていく上で、答えの見つからない悩みになっていくだろう。みんなが幸せになれない世界だと知ってしまったから、私たちはもがくのだろう。

 

 世の中はたくさんの人で溢れかえっている。それぞれが違う輝きを持っていて、同じものはないたった一つの輝きが、操の側にはたくさんある。

 彼女が幸運だったのは、自分の弱みを見せられる人に出会えたことだ。ありのままの彼女を受け入れて、愛してくれる人に出会えたことだ。

 今回失ったものは多く、声にならない痛みは傷跡として永遠に消えることはないだろう。それでも人は一人ではなく、支え合って生きていけると知っている。

 心に空いた穴はいつか埋めることができると、私たちは知っている。

 

「操」

「なぁに、洸汰」

「救けてくれてありがとう」

「……うん、どういたしまして」

 

 涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で洸汰は笑う。

 その心に大小の傷は付いていても、命は確かにそこにあった。言葉を交わすことができ、抱きしめれば同じように返される。

 それを実感するたびに操は守れてよかった、そして、生きていてよかった、君に出会えてよかったと思うのだ。

 

「あと、おかえり」

「──……」

 

 それは当たり前の、変わり映えのない毎日で使う言葉。

 私たちには縁がなかったはずの、眩しく、とても温かい四文字。

 

『──いってらっしゃい!』

 

 生まれて初めてもらったその言葉に、操は心の底から笑うことができた。

 

『洸汰、明日は約束通りカブトムシを取りに行くぞ! だから、いってくる』

 

 そしてワイプシから貰って嬉しかった言葉を、操は洸汰に繋いだのだ。だから今度は洸汰の番。

 当たり前の、幸せにあふれたその言葉を繋いでいく。

 

「……ふふ。おかえり、か」

 

 心の底から笑うこと、そして泣くこと。そんなときに隣で同じ気持ちを分け合っていると、湧き上がってくる感情がある。

 ──きっとこの胸に抱く感情の名は愛なのだろう。

 いつだって操を照らしてくれる、暗闇の中で輝く星。愛しさも寂しさも教えてくれた、かけがえのない存在。悲しみを笑顔に変えてくれる大切な人たち。操が、無条件に心を預けられる場所。

 寄り添ったときの温かさを、人はきっと幸せと呼ぶ。

 無数の中で巡り合う命の繋がりを、人はきっと愛と呼ぶ。

 

「そういえば、まだ知子にも言ってなかったわね」

「ああ……大事なことなのに、つい言い忘れていた」

「なら改めて言いましょう!操、知子……おかえり!」

 

 涙を拭って顔を上げたら、もう誰も悲しみを浮かべていなかった。

 おかえりの四文字が、二人を非日常から日常へ導いていく。苦しくて悲しいだけの暗闇から、明るい星空へと引っ張っていく。

 操とラグドールは思わず顔を見合わせたけれど、お互いの顔があまりにも酷くて、でもそれがなんだかおかしくて吹き出すように笑ってしまった。

 そして二人で声を合わせて、四文字の言葉を紡ぐのだ。

 

 

 

 ステイン妹のヒーローアカデミア

 第二章 「ただいま」

 

 

 

 それはたった四文字の短い音の響きだ。

 けれどその言葉で愛を示せるのならば、私は大切な人たちに贈り続けるのだろう。

 

 無数の中で選び合った命の繋がりを、私が愛と呼ぶ限り。

 

 

 

 

【ステイン妹のヒーローアカデミア】

 

第二章:「ただいま」 了

神野の悪夢編(下):了

 

 

 

 




活動報告にて2章全体のあとがき、裏話があります。
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