異世界転生、神様たち的には転移らしいがそれをする前に『地球の神』がインターセプト
お前たちはいったい何を言っているんだ?そう感じた為に書きあがったものです
「生きることが嫌になったわけじゃない。それなりに楽しいことだってある……」
沈みゆく意識の中「竹林竜馬」はそんなことを思いながら現実での苦しみを紛らわせようと思考を巡らせてふと目を開けてみれば真っ白ななにもない空間に居た。
周りを見渡しその異常な状態に困惑しながらも正面を向くと老人と少年と女性……その後ろに厳つい姿をした青年が全員を見下ろしていた。
そんな状況を竹林は唖然としながらも見つめていれば老人が「いらっしゃい」と優しく声をかけてくれた。
老人を中心に掻い摘んで現状を説明してもらえるものの老人が創造神「ガイン」女性が愛の女神「ルルティア」少年が生命の神「クフォ」青年は名乗らず自分のことをしゃべらないように人差し指を口元に持っていき「静かにするように」、とジェスチャーされた。
「あ、すみません。突然の事で驚いてしまい挨拶が遅れました。
その質問にガインは説明をする。
「そう、残念ながら昨日寝ている間に……そして君の魂を儂らが連れてきたんじゃ」
「なるほど……そういう事でしたか」
竹林はその説明に納得を示しながらも気落ちしながらも前を向き、青年の額にビキリと青筋が一つ浮かんだ瞬間を目撃してしまう。
「え?それだけ?」
「もう少し、嘘だ!とかなんで私がとか言わないの?」
その変化に驚きつつも話しかけてきている相手を無視するわけにもいかず竹林は二人の質問に流されて、今の変化に口を挟むことができなくなった。
「い、いえ、驚いていますし現実味がないと思ってますよ。ただ夢なら時間が過ぎれば目覚めるだけですし。本当でもこんな生活のままじゃいずれ早死にするといつも思ってました」
「そ、そんな考え方する人間もいるのね……」
竹林が所感を伝えればルルティアもクフォもその答え、考え方に若干引いたような冷や汗を浮かべる。
そんな三人に竹林は恥ずかし気に後ろ頭をかきながら苦笑して続ける。
「それに死んでまたこういう経験ができるのもすごいじゃないですか。私三十九になってもマンガやゲームを手放せないオタクでして……」
ガインはそんな竹林を微笑ましく見ながら伸ばした手の先にはちゃぶ台があり、その上にはお茶とお茶請けが載せられていた。
「早く納得してくれるならこちらも手間が省けて助かるぞい。座って茶でも飲みながら話を続けよう」
勧められたのを断るのもと思い四人で座りお茶をすすり一服ついたところで竹林は気になっていることを質問しようとする。
「ところで……」
視線を青年に向けるが首を横に振られ、「まだその時ではない」と直感するので言葉を濁しながら自身の死因を聞くことにする。
「私はどうして死んだのでしょうか?」
その質問にガインは今までとは違い真剣な顔になり一言返す。
「四回じゃったな」
「四回?」
その言葉が何を意味するか理解できずオウム返しに言われた回数を口にする。
「そう!四回のクシャミ!」
「……は?」
唐突に言われる訳のわからない脈略のない言葉に言葉を失う。
説明を詳しく聞くとクシャミをするごとに枕がずれていき頭を打ち付けたことで脳内出血を起こしそのままご臨終になったとのこと。
一体どれだけの衝撃を持つクシャミだったというのだろうか青年すら呆気にとられ横に浮かぶ光の球体を見るが球体は焦るように震えていた。
「納得できない……」
聞かされた死因に衝撃を受け絶望にも似た表情を浮かべる。
思い浮かべるのは振るわれてきた頭部へのダメージ、酔った上司のビール瓶、オヤジ狩りの鉄パイプ、おやじのしごきで頭を殴られたことは数知れず。
「なんでそんな死に方を……なんでクシャミなんかで――――!!」
――――竹林が落ち込むこと、数時間――――
「落ち着いたかの?」
「はぁ……すみません」
気を落ち着かせるまで待ちガインが竹林を呼んだ理由を説明し始める。
曰く所謂テンプレでの異世界行き、ガインが用意している若い体に魂を移すので転生とも転移とも言える状態。
使命はガインたちの世界で「生きる」こと。
ガインたちの世界は魔法が発達しており、また魔力を食糧にする生物もいて全てにおいて魔力が関係している世界であるとのこと。
そして消費が激しく世界の魔力の生産量を超えてしまい魔力が枯渇しているので竹林を呼ぶことで地球の魔力を自分たちの世界に取り込むことが目的であること。
そしてそこまで説明したところで青年がついに動く。
「さて、そろそろ私も名乗ろうか」
その青年の額にはすでに青筋が三つ浮かんでおり顔は笑顔なのだが恐ろしい怒気が放たれている。
「どうも、地球の神。名前は気にしなくてもいい、すでに呼ばれることはなくなって久しいからな」
がっしりと腕を三人の神に回し逃がさないようにしていた。
捕まえられている三人は顔を青ざめさせ恐怖に震えている。
「他所の魂を奪って何をしているのかな?てめぇら……魔力の枯渇はお前らで解決するべき案件だよなぁ?人様の世界の魂奪って何してくれてんだ、あぁ?」
「た、竹林君が不幸だったのは貴方が試練を……」
必死にルルティアが反論をしようとするが神はその反論を見下すように冷めた目を向けて呆れるような口調で返事を返す。
「『聖人の資格』を持つからこそ試練を課した。未来地球には奇跡を使うだけの必要に迫る、その救済処置として先んじての試練を複数の候補者に課していたが……竹林。お前は鍛えた肉体をどう使っていた?」
ルルティアに向けられていたのと同じひどく冷めた眼差しを向けられて思わず姿勢を正しながらも背中に流れる汗が止まらない。
「そ、それは……」
「肉体労働に使われることもなく、自衛隊に志願することも、警察に就くこともなく、武を目指すわけでもない、その肉体の作り方を教えるトレーナーにもならなかった。お前は何度その体でデスクワークをしているのが似合わない、間違っていると警告されてきたと思っているんだ?三十九年生きて何度啓示を無視してきた」
その言葉に竹林は何も言い返せなくなっていた。
「お前に与えた天与の力、その頑強さを何故生かす職に就かなかった。合わぬ知の職を行い日々残業をしていたのはお前自身の自業自得だ。それを『不幸だった』?これは竹林、お前が楽に流され堕落した結果に他ならん……それをてめぇらが救ったとでもいうつもりか?好きなことだけをする?ただ生きる?ふざけたことをほざくなよ」
神の言葉に震えながらも立ち上がる。
「なら!なら……母の死も神の試練だというのか!?運命だったとほざくのか!?」
その怒声に神は鼻を鳴らし、呆れた答えを返してきた。
「ふん……そうだ、運命だな。ただしそれはお前が選んだ運命だ」
「どういう意味だ?!」
「お前の母親の病は運命だった、それは確かだ。だがそれを助けられるかどうかは竹林、お前の行動にゆだねられていた……お前が肉体労働や公務についていれば給金も変わり助けられた手段もまたあっただろう。お前の選択がお前の運命を決める。だからそれがお前の選んだ運命というわけだ……わかったか?」
言われた言葉を理解していく度に竹林の顔は絶望に歪んでいく。
「……あ……あ?……救えて……いた?」
言葉を理解して行動の結果を受け止めて、体は支えを失ったように崩れ落ちる。
「お前は不幸だという、だが不幸とは『紛争地帯に生まれた子供』『生まれてからの不治の病、障害を持ち寿命の短い子供』『個人でどうしようもない災害に巻き込まれた者』など行動如何でどうにかならんものを指すべき言葉だ。選択を間違えた自業自得の結果を不幸などと称するのは片腹痛いわ」
その姿を見て竹林自身が不幸だと思っていたそれをただの自業自得と決定打を叩き付け自身の不幸をただの思い込みだと思い知らせる。
より不幸だという人たちは当たり前のようにいるのだと、貴様の不幸だというものなど小さなものだと鼻を鳴らして吹き飛ばす。
「そもそも地球の魔力は試練の果てに起こす奇跡を行うためにプールしているもんだ。それをてめえらが横から搔っ攫っていたおかげでどれだけ規模が小さくなったと思ってやがる……自分勝手な言い分でどれだけの命を奪ったか思い知ってもらおうか」
地球の神は三人を引き摺り白い空間の奥へと移動していく。
――――三神消滅中――――
奪った魔力と連れ去った魂の補填としてガイン、ルルティア、クフォは消滅まで搾り取られその姿を光の粒子のように散り散りにさせ消滅させていった。
「さてと、これで静かに話ができるな。先に言っておくが『神は人を救わない』基本的に神が救ってしまえばそれは自らで自らを救おうと足搔く者たちへの侮辱でもあるからだ。運否天賦の良し悪しの違いこそあれども一定の幸福にたどり着ける道は用意している……他者から見てそれが幸福だったかどうだったかは別になるがな」
新しい湯飲みを作り出し水を入れて、それを飲み一息をつく神。
「今回は他所の神が出張ってきたからこそ神が加入する事ができた。だからこそここで最大の啓示を渡しておいてやる「人は間違いを犯す生き物だ、だが同時に反省し間違いを正せる生き物でもある」今後の君が間違いを正せることを願っている」
「あ、あの……」
その言葉に竹林は自分が死んだということを思い出し申し訳なさそうに口を開く。
何よりももう三十九という年齢に達しながら今更……という気持ちも存在していた。
「もう自分は三十九にもなり……何よりも死んだのでは?」
「なんだそんなことか」
改めて呆れた視線が竹林に突き刺さり、呆れた口調が馬鹿にしているようにも聞こえてくる。
「イエスの宣教活動も三十を過ぎてからの事だ、ブッダとて最初からそういった活動ができていたわけじゃあない。遅いか早いか?そんなことよりも実行するかしないか、重要な部分はそこだけだ。そして死んだというがな?それこそお前が自身で言葉にしていただろう?「夢なら時間が経てば目が覚める」とな」
その言葉とともに竹林の体がゆっくりと透け始めていく。
その現象に驚きながら自分の手を見て起きる時間なのだと直感する。
数時間とずいぶんと長い夢のようだったとも思うが……ふと自分の状況に気が付く。
母によく注意されていた……「お菓子をあげるからと知らない人について行ってはいけない」先ほどされていたことが言葉こそ違うがまさにそれだったのだと。
――――竹林の目覚めから数十年後――――
彼は今の職を止めて自身の体を生かせる仕事に就く、そして被災地に赴き建築の資材を運んだりその筋力を生かし多くの人を救った。
その様子を神は見ており、その死に顔が笑顔であったことに満足そうであったという。
「あんたの息子は無事に「笑顔で死んだ」。どれほどの人間がその結末にたどり着けるのか……守護天使としてついていた、あんたならわかるだろう?」
光の球体の中こくこくと涙を流しながら頷くのは死んだ竹林の母親だった。