5D's:武藤遊戯の孫 作:ジャガイモ
え、じゃあ遊戯の子孫いるやろ……作ってみよ。
という作者の悪ふざけが産んだ物語。
突然だけど、亀のゲーム屋って知ってる?
この「ネオ童美野シティ」が、まだ「童美野町」と呼ばれていた時代。そんな昔からある、由緒正しいゲーム屋なんだぜ。
昔はパズルや、ボードゲームなんかも売っていたらしいけど、今はほとんどカードゲーム取扱専門店になってる。毎日、多くの決闘者がデュエルモンスターズのカードを買いにやってくるんだ。
で、なんでオレがそんな話をしているのかと言うと——
「遊太、ちょっと手伝って〜」
「は〜い」
ここがオレ——武藤遊太の家だからなんだ。
昔、うちの家系はちょっと有名らしいって、母親から聞いたことがある。なんでもオレのじーちゃんは、初代デュエルキングの称号を持つ、凄腕な決闘者だったとか。
と言っても、オレ自身デュエルモンスターズは積極的にやらないから、どれだけ凄いことなのか分からない。じーちゃんもオレが物心ついてすぐ亡くなってしまった。
ただ、いつも亀のゲーム屋に訪れる人たちは、何かしらの畏敬と期待を孕ませて来店してくるんだ。オレとしては店が潤うからいいんだけどね。
でも決まって、そう言う人たちはこうも言ってくる。
『初代デュエルキングのデッキを売ってくれ』
てね。
誰が見ず知らずの人間に自分の宝物を売ってやるか。
オレは決闘者じゃないけど、デッキは持ってるんだぜ。そのうちの一つが、じーちゃんの形見でもある、じーちゃんのデッキなんだ。
そうそう、じーちゃんの形見と言えばもう一つある。
それがこの千年
昔、じーちゃんの若い写真を見た時、オレが駄々をこねて貰ったらしい代物だ。ねだったときの記憶はあんまりないけど、ばーちゃんからそう教えてもらった。
と言っても、ばーちゃん曰くこれはレプリカというものらしい。本物は純金で出来ていて、すごく重いらしいけど、これは金メッキで誤魔化してるんだってさ。
このパズルには面白い迷信があってね。なんでも、このパズルを解いた人には、もれなく願いを一つ叶えてくれるんだぜ!
じーちゃんもこのパズルのおかげで願いが叶ったって言ってたんだ。何を叶えたのかは、最後まで教えてくれなかったけどね。
オレ自身、このパズルを解いたわけではないけど、もしかしたら願いを叶えてくれるかなー、なんて期待しちゃってる。
へへ、流石にそれは都合が良すぎか。
でも、本当に願いが叶うなら、叶えて欲しいことはあるんだぜ。
——親友が欲しい。
この11年間、ずっとずっとオレにできなかったもの。
どんな時も裏切らない、どんな時も裏切れない、そんな親友が欲しい。
天国にいるじーちゃんに聞かれたら怒られちゃうかな?
「なーに、ぶつぶつ独りで喋ってんの。暇ならちょっとママ出てくるから、店番してくれない?」
そう言って部屋にノックもせずに入ってきたのはママだった。
父親は海外赴任中なため、いつも亀のゲーム屋さんはママが切り盛りしている。
ばーちゃんもいるけど、今は足腰を痛めているため、あまり部屋から出てこないんだぜ。
「えー、またー?」
「仕方ないでしょ。今日はトップスの人たちにカードを訪問販売する日なんだから」
「そんなのやめちまえばいいのに……」
トップスと言うのは、この街の最上層に暮らしている人たちのことだ。なんでも、オレ達では想像できないほどのお金持ちが住んでいるらしい。
ママは「太客だー」とか言って大切にしているけど、オレは好きになれないんだぜ。なんだか、性格悪い奴らがいっぱいいそうじゃない? 毎日毎日、札束プールとかしてるんだ、きっと。
そんなオレを見て嘆かわしそうにママはため息をついた。
「はぁ……遊太も大人になれば分かるわよ」
「——ちぇ」
ママはいつもこうやってオレを諭そうとする。なんだか子供扱いされているようでオレはこれが嫌いだった。まぁ、オレはまだ小学生だけど。
「じゃあ、ママは行ってくるから、店番頼んだわよ」
「はいはーい」
「あと勝手に店のお菓子食べたら駄目だからね。やったら晩御飯抜くから」
「……はぁーい」
きっと睨まれたのに対し、オレは気の抜けた返事をしながらママを見送った。この前、勝手に食べたのがバレて、げんこつされた頭が妙に痛むんだよなぁ……ほんと、手心がないんだから。
頭を摩りながら見送れば、オレはさっさと上着を羽織り下の店部分へと降りていく。2階以降は居住スペースで、1階部分がお店スペース。何度か改築作業をしているらしいけど、この形態は昔から変わってないそうだ。
一階のお店スペースに降りれば、お客さんは今のところいない。ママが出かける前に、休憩の看板を垂らし、店に鍵をしていてくれたからだ。
オレは内側から自動ドアの鍵を開け、電源を入れる。そして休憩の看板を取った。
店番、といっても特にやることはあんまりない。カウンター席に座って、必要とあればお客さんの相手をしたり、レジ作業をしたりするだけ。
ね、簡単でしょ?
時には、購入したカードの試運転相手も務めたりしてるけど、基本的には暇なんだ。
だからオレは毎度の如く、店に置いてある暇つぶし用のゲームを持ってきては、それに興じる。
昔はよくじーちゃんとたわいもないゲームで遊んだっけ。まだ言葉もろくにしゃべれなかったオレは、いつも勝たせてもらっていたんだと思う。
その度に撫でてくれた、じーちゃんの手の温もりをオレはまだ忘れられそうにない。
「ふうぁ〜あ……今日はどのゲームで遊ぼっかな〜」
あくびを噛み殺しながら、オレは脚立に登って上の棚を端から順に開けていく。
大抵のゲームは網羅しているつもりだけど、それは一人用のゲームに限った話である。ゲームっていうのは対戦用のモノも多く、遊び相手のじーちゃんが亡くなってからは、友達のいないオレに縁のないものとなっていた。
そのため、それらは棚の奥でひっそりと埃を被っていたりする。
「久々にアナログゲームでもしようかなぁ……あ、モンスターファイターだ。懐かしい〜」
ごそごそと棚の中に仕舞ってあった段ボールを開けながら進むと、一つのものが目に入った。
「ん? これなんだろ?」
それは封筒だった。真っ白い封筒が黄ばんでしまった封筒。何かが封入されてから、かなりの年月が経っている証拠だ。
封筒の後ろ部分を見てみれば、そこには汚い文字で「ゆうた」と書かれている。一瞬、オレが書いたものかなと思ったが記憶にない。あーだこーだと頭を捻らせていても埒が明かないため、オレはさっさと開封してみることにした。
「カード……?」
封筒の中に入っていたものを手にとってみれば、それはデュエルモンスターのカードだった。
かなりの年代物なのだろうか。テキスト欄などのデザインが、今のカードと少し違っている。
名前の欄を見てみれば、そこには「クリボー」と書かれていた。
「クリボー、か。なんでお前こんなところに入ってたんだ?」
なんとなしにそう聞いてみた時だ。
「クリクリー」と何処からか声が聞こえたような気がした。
辺りを見渡してみるも、客は一人もいない。気のせいかと思い、オレはそっとクリボーのカードをデッキホルダーの中に仕舞い込んだ。
「まぁ、いっか……そっれよりも〜、暇を潰すゲーム、ゲーム♪ スロットマシンとかあったっけ」
――からんからん。
気を取り直してオレはもう一度ゲームを探そうとすれば、それは聞こえた。
客が入店したことを知らせる鈴の音。オレは一応、店員としての矜持を持ってその客の顔を見てみる。
するとそこにいたのは、顔が瓜二つの同年代くらいの子供だった。
「おー! ここが天兵が言ってた、噂の亀のゲーム屋さんか! 初めてきた!」
「もー、龍亞。お店の中では静かにね」
「わかってるって、龍可。俺も子供じゃないんだからさ」
————わぉう。
どうやらドッペルゲンガーとかでは無いらしい。
ツインテールの子が龍可と呼ばれていて、ポニーテールの子が龍亞と呼ばれている。髪を解かれたら、絶対に見分けがつかないレベルで瓜二つだ。
すっごいや、双子とかなのかな?
「えーと、いらっしゃい。ゆっくり見ていってね。デュエルスペースも自由に使っていいよ」
とりあえず、店員としての対応はしておこうと思い、オレは愛想笑いを浮かべた。
今の発言を見る限り、悪い人たちでは無さそうだ。少しばかり声のボリュームが調整ミスしている時もあるけど……。
「あ、もしかして君がここの店長!? うへー、どう見ても俺たちと歳変わんないじゃん! すげー!」
声を掛けると、龍亞と呼ばれていた子が、そう言ってオレの顔をマジマジと見てきた。
カウンターテーブルに乗り上げてまで人の顔を見るのは、どうなんだ? と思いながらも、とりあえず落ち着きを取り戻してもらうことにした。
「あはは〜……まあ、多分同い年だと思うな。僕も小学生だし」
「えっ!? 小学生が店長なの!?」
「一応、誤解を解いておくけど、僕は店長じゃないよ」
オレがそう言って手を横に振れば、さっきまで黙っていた龍可が話に入ってきた。
「こら、また騒いでる。店員さんが困ってるでしょ」
「ちょ、龍可! 引っ張らないで!」
「テーブルに乗り上がらないの」
そうやってカウンターテーブルから引きずり下ろされた龍亞は、危なげに着地した。
んー、お願いだから店の物だけは壊さないでよぉ……ママ怒ったら怖いんだから。
「ごめんなさい。私たち滅多に外出しないから、龍亞ったらはしゃいじゃって」
――どきん。
刹那、胸が高鳴った気がした。
脚立に乗っていたせいもあるかもしれない。下から見上げてくる龍可の顔に、変に魅入ってしまったのだ。
誤魔化しも兼ねてオレは勢いよく咳払いを一つ。「あ、あははー、別にいいよ」と大人な対応を取ってみせる。さっき感じたことをこの場の誰にも知られたくはなかった。
初対面の女の子に見惚れたとか、男として恥ずかしいし……。
「そ、それより君がお姉さんなの?」
話を逸らすようにオレがそう聞けば、次は膨れっ面になった龍亞が矢継ぎ早に云う。
「なんでだよ! 俺の方がどう見ても兄さんだろ!」
「え、そうなの!?」
「そんなに驚くことはないだろ! 失礼しちゃうな、もう!」
「残念ながらね。生まれた順番的には龍亞の言ってることが正しいわ」
やれやれ、といった様子で龍可がかぶりを振れば、龍亞は目を細めた。
対してオレは、龍亞が男だという事実と、兄だったという事実のダブルパンチで脚立から落ち掛けた。
顔が一緒すぎるから、どちらも女の子と思っていたのは内緒である。服装もほぼ一緒なのだから仕方ないと思うが……それにしてもよく似ている。昔のじーちゃんとオレも、よく似ているとばーちゃんが言っていたけど、この二人はそれ以上かもしれない。
「ねぇねぇ、ここってカード売ってるんだろ? 俺もデュエルするんだけどさ、なんかいいカードない!?」
手に装着された不釣り合いな
ふと隣にいる龍可を見てみるが、彼女は決闘盤を身に付けていなかった。でも、腰にはデッキホルダーらしきものが巻かれている。どうやら龍可は決闘者では無いが、デッキは持っている人種らしい。オレと同じだなー、と変な共感を覚える。
「うーん。どういうデッキを使っているのかによるけど……オーソドックスなものだと、〈死者蘇生〉とか、〈ブラックホール〉、〈サイクロン〉とかかな? どのデッキにも使えるとは思うよ」
とは言っても、今のうちあげた二つのカードはかなりレアリティの高いカード兼制限カードだ。うちでもバラ売りであったりはするが、在庫は常に薄めである。子供が買えるようなカードじゃないとすら言える。おすすめしておいてなんだが、少しだけ悪いことをしてしまった気持ちになった。
「それ制限カードでしょ? それよりさ、こう、誰も使わないような強いカードない!?」
龍亞はオレの後悔など殴り捨て、笑顔で新たに注文を出してきた。
さっきよりも注文のレベルが跳ね上がったような気がするのは、気のせいじゃないだろう。誰も使わないような強いカードってなんだよ。それめちゃくちゃ局所的にしか刺さらないカードじゃんか。そんなのあるわけ――
いや待てよ……
「じゃあ、〈デビリアン・ソング〉とかどう?」
「何それ?」
〈デビリアン・ソング〉 |
| 【永続罠】 このカードがフィールド上に存在する限り、 相手フィールド上の全てのモンスターのレベルは1つ下がる。 |
「今、流行りのシンクロ召喚を崩すには丁度いい罠カードさ」
オレはそう言いながら脚立から降り、カードの保管庫から一枚を龍亞に渡した。
シンクロ召喚を主体とするデッキには、中々鬱陶しい効力をしていると思う。これまた流行りの《緊急同調》にチェーンすれば、相手の効果を不発にすることも可能かもしれないカードだぜ。
龍亞もお気に召しているらしく、さっきとは違って目を光らせていた。こうして見れば龍亞も純朴な少年だ。
もしかしたら、こんなオレとも仲良くしてくれるかなー、なんて淡い夢を抱きそうになる。
「うわー! 俺これにするよ、ありがとう! えぇーと……」
龍亞がオレの手を握り、困ったように口角をあげた。
あ、そう言えばまだ名前を名乗ってないんだっけ。オレは二人の名前を会話から察していたけど、名札もつけていないし分からないよな。
普段、自己紹介とかしないから、印象的なものは思いつかないけど、無難なものでいいのかな。
「僕は遊太————武藤遊太だよ。どういたしまして」
僕はこれから起こりそうな出来事に胸を膨らませ、精一杯の笑みを浮かべたのだった。
作者が設定を迷わないためのメモでもあります。
以下、勝手なQ&A
Q武藤遊太(オリ主)は闇遊戯と表遊戯どれに近いのですか
A現状、漫画原作「遊戯王」最初期の表遊戯
Q今作では初代遊戯王から何年後に設定されていますか
Aアニメが明記していないため、数十年後としか言えない
Q遊戯はもういないんですか
Aいない。映画でジャックが「タイムスリップしなければ会えない」とか言いやがったから。
Qアニメの初代遊戯王と漫画の初代遊戯王、どちらの世界線ですか
A遊戯王デュエルモンスターズ側に近い世界線