5D's:武藤遊戯の孫   作:ジャガイモ

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龍亞&龍可「な〜にかな〜、な〜にかな! 今回はこれ!」

《ダブルツールD&C》

龍亞「相手ターンと自分ターンで効果が入れ替わる、Dとパワーツール専用の最強かっちょいい装備魔法だ!」
龍可「でも、機械竜とかには装備できないのよね? それにディフォーマーデッキって装備魔法より、ソリティ――」
龍亞「それ以上はいけない」


まさかのアンケートでは見たい票が多かったので、実行!
久々にソリッドヴィジョンの描写をして、私はほっこり


第十話 新生ディフォーマーロック

「「決闘(デュエル)‼」」

 

 龍亞と遊星が向かい合い、互いにそう宣言すれば、デュエルディスクにライフポイントが表示された。

 

龍亞L P:4000

遊星L P:4000

 

「俺のターン、ドロー! シャッキーン!」

 

 遊星が譲ったこともあり、先行は龍亞からだ。いつもどおり大げさなアクションでカードをドローする。昨日からスタンディングデュエルをしていなかったのもあり、色々と溜まっていたのだろう。

 視界の端で妹が深いため息をついた気がするが、今の龍亞には関係ない。手札を確認すれば、そこそこに良い手札。

 

 ――へへ、俺ってついてるぅー。

 

 と思い、ニヤリと口角を上げれば、初動としてよく使うモンスターを場に出した。 

 

「ようし、早速来た! ≪D(ディフォーマー)・モバホン≫を攻撃表示で召喚! ジャキーン!」

 

 呼び出されたのは前時代的なデザインの携帯――それを模したロボットだ。

 金属が動く音を響かせ、派手な変形を披露する姿に、龍亞は勿論のこと観客である遊太も興奮していた。変形は男のロマンなのである。

 遊星の表情筋は微動だにしなかったが。

 

≪D・モバホン ≫ 

地属性|星1|機械族/効果

攻100|守100

 

「Dのモンスター効果は表示形式によって変わるんだ! モバホンは攻撃表示の時、ダイヤルの1〜6の数字で止まった枚数分、デッキからカードをめくり、その中にあるレベル4以下のモンスターを特殊召喚できる!

 いっくぞー、ダイヤル〜〜〜〜、っとと」

 

 モバホンの強力なモンスター効果を説明し、いざ発動! というタイミングでバランスを崩す龍亞。

 これには思わず、モバホンも後ろを振り向き「またか、マスター!?」と驚きの動きをする。

 モバホンの表情は一切変わってなかったが。

 

「…………おい」

「「はぁ…………」」

 

 代わりに遊星が呆れた声で、龍可と遊太が「だろうね」という諦めに近いため息を漏らした。

 

「あはは、ちょっと重いんだよねぇ、ごめんごめん。気を取り直して…………ダイヤル〜〜〜、オン!!」

 

 今度は重いデュエルディスクが装着されていない方の腕を回し、見事に技名を決める。

 龍亞の宣言に合わせモバホンのダイヤルがぴこぴこと点滅すれば、4の数字で止まった。

 

「ようし、4に決まった! 4枚デッキから捲って…………ふっふふ、いいカード引いちゃったもんね〜。俺はレベル4≪D・ビデオン≫を攻撃表示で特殊召喚!」

 

 さっと自分の手札と、捲って出てきたモンスターカードを見比べて、龍亞はもっとも活躍できそうなビデオンを特殊召喚する。

 出てきたのは白と黒のコントラストがお似合いの、ビデオを模したロボット。真打ち登場と言わんばかりの動きで、華麗に地面へと着地した。

 

≪D・ビデオン ≫ 

光属性|星4|機械族/効果

攻1000|守1000

 

「へへーん、ここからビデオンのすごいところを見せてあげるよ! 俺は自分のライフを2000ポイント払い、装備魔法≪サイコブレード≫をビデオンに装備! ジャキーン! このサイコブレードは発動時に支払ったライフ分だけ、装備モンスターの攻撃力・守備力をアップさせるんだ!」 

「ビデオンの攻撃力は1000……つまり攻撃力3000か」

「それだけじゃないぜ! 攻撃表示のビデオンの効果で、自身に装備されたカードにつき800ポイント攻撃力を上げる!」

 

 龍亞LP 4000 → 2000

≪D・ビデオン≫攻撃力 1000 → 3000 → 3800

 

 龍亞のライフポイントを吸収し、肥大化する≪サイコブレード≫。

 結果、それは装備魔法と言うには、あまりに大きすぎた。 大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把に強すぎた。 ビデオンが手に収れば、何故かビデオンも大きくなる。それは正にサイコ戦士だった。

 

「さ、ら、に! 手札から装備魔法≪ダブルツールD&C≫もビデオンに装備! このカードは自分ターンと相手ターンで効果が変わるんだ! 自分ターン中は装備モンスターの攻撃力を1000あげる!」

 

 サイコブレードを持った右手の甲にチップソーを装備し、何も持っていない左手にはドリルがはめ込まれる。完全武装となったビデオンはさらに一回り大きくなった。

 後ろで見ていたモバホンは、少しだけ羨ましそうに見上げている。

 

 ≪D・ビデオン≫攻撃力 3800 → 4800 → 5600

 

「俺はこのままターンエンド。≪ダブルツールD&C≫は相手ターン中に攻撃力上昇効果を失い、違う効果となる! 相手は装備モンスター以外のモンスターを攻撃対象にできないって効果さ! これで攻撃力が低いモバホンは、ビデオンを破壊しない限り、攻撃できないってわけ」

「面白いカードを使うな」

「へへ、でしょでしょ?」

 

≪D・ビデオン≫攻撃力 5600 → 4600

 

 龍亞がターンエンドの宣言をしたことで、≪ダブルツールD&C≫が鈍く光ると、装着者であるビデオンがモバホンを庇うように前へ出た。

 ――こいつを攻撃したけりゃ、俺を破壊しろ。

 そんな言葉が伝わってくるようである。

 

「俺のターンだな」

 

 遊星は静かにそう呟いてドローし、手札を確認する。

 攻撃力は下がったとしても、ビデオンの攻撃力は4600と依然高いまま。遊星のデッキに、その攻撃力を単体で上回れるカードは存在しない。どれも低い攻撃力、守備力のモンスターたちであり、このデッキの真骨頂は、そんなモンスターたちを掛け合わせることで発揮される。

 遊星は龍亞を見る。

 

 ――楽しそうにデュエルをする奴だ。

 

 ふっと笑みが溢れた。

 遊星は龍亞の怒涛の展開を見ながら、静かに闘気を高ぶらせる。ここ最近、純粋なデュエルというものをしてこなかった遊星にとって、龍亞の熱い思いはどこか懐かしさを感じさせたのだ。

 

「俺はモンスターをセット。さらにカードを一枚伏せて、ターンエンドだ」

「え、それだけ?」

 

 しかし、遊星のとった行動はカードを伏せることだけ。対戦相手である龍亞も、観戦している遊太も、遊星の行動に少し違和感を覚える。

 龍亞からは「何も打つ手がないのかな」と少しだけ拍子抜けした感情が。遊太からは「あれだけで防ぎきる自信があるのか?」と懐疑の感情が。

 遊星のポーカーフェイスもあわさって、なかなか真意を見抜くことはできなさそうである。答えを知りたくば、あのカードたちを捲らせる他ない。

 

「悪いけど、遊星! たとえ手札がよく無かったとしても、俺は手加減しないよ!」

 

 なんの警戒心もなさそうな龍亞がドローして、そう言った。

 龍亞のターンが開始すると同時、≪ダブルツールD&C≫の効果が、また切り替わる。

 

≪D・ビデオン≫攻撃力 4600 → 5600

 

「ようし、このまま一気に決めるぞー! まずはモバホンの効果を使う! ダイヤルーオン!」

 

 ぴこぴこと再度点滅を始めるモバホン。

 隣で並び立っているビデオンがサイコブレードとダブルツールをガチャガチャと鳴らし、合いの手を入れる。まさに居酒屋でコールをする大学生と同じノリだ。

 仲が良さそうである。

 

「出た数字は3! 俺はデッキトップからカードを3枚めくり……よし、またまたいいカード引いちゃったもんね! ≪D・ステープラン≫を攻撃表示で特殊召喚!」

 

 出てきたのはステープラー……つまり、ホッチキスを模したピンクと白みがかった灰色が特徴的なロボットだった。

 

≪D・ステープラン ≫ 

地属性|星4|機械族/効果

攻1400|守1000

 

「? なんだ……」

 

 遊星が疑問の呟きを口にしたときだ。

 召喚されたステープランが強い磁力のようなものを発生させた。まるですべてを吸いつけるような力。

 それを披露した龍亞は、自慢げに鼻下を指でこする。

 

「ひひーん、凄いでしょ? 相手ターン中に攻撃対象を装備モンスターへ誘導する≪ダブルツールD&C≫の効果。実は攻撃表示のステープランにも同様の効果があるんだ。ということは〜!」

「――フッ」

 

 龍亞が言わんとしてることを察したらしく、遊星はにやりと笑った。

 

 遊星のターン時。ダブルツールの効果は切り替わり、装備モンスターへの攻撃誘導効果を発動させる。

 そうなれば必然、ダブルツールを装備したビデオンが攻撃を受けようとすれば、もう一体同様の効果をもつステープランが攻撃を受けようとする。そのステープランが攻撃を受けようとすれば、またさらにダブルツールを装備したビデオンが攻撃を受けようとする。

 つまり……。

 

「遊星のターン中は、どこにも攻撃対象にできないってことなんだ! 攻撃は最大の防御、これが新生マグネロック――その名もディフォーマーロックさ!」

 

 龍亞の叫びに、ベンチで座っていた龍可がくすりと笑い、隣に座る遊太を見た。

 

「昨日、遊太が教えたコンボじゃない?」

「あはは、採用してくれたみたいで嬉しいよ」

 

 龍可の言うとおり、このコンボを発案したのは遊太からだった。

 本来、龍亞が使っていたのは≪D・マグネンU≫を使ってのマグネロックである。しかし、これをするためにはマグネンUを2体とも守備表示で出さなければいけない制約がある。ルール上、通常召喚は基本的に表側攻撃表示か裏側守備表示でしなければいけないため、マグネロックを完成させる前に、マグネンが破壊されてしまうか、効果発動までに1ターン遅れてしまうことがザラにあったのだ。

 その弱点に気づいた遊太は、「だったらこの2枚使った方が、デッキの枠もスッキリするんじゃない?」とアドバイスをし、新生マグネロック――その名もディフォーマーロックが生まれたわけである。

 当然、マグネンUは龍亞のデッキから解雇。その姿を消してしまった…………彼もニトロ・シンクロンやガイアナイトと同様、不遇モンスター同盟に名を連ねたのである。

 

「まだまだ行くぞぉ! 俺はモバホンをリリースして≪ガジェット・トレーラー≫をアドバンス召喚!」

 

 モバホンが足元から光の粒子となって消え、新たに大型トラックが龍亞の背後から走行し現れる。そして荷台部分を大きく開け放つと、中からは銃身のような、もしくは砲台のようなものが出てきた。

 

≪ガジェット・トレーラー ≫ 

地属性|星6|機械族/効果

攻1300|守0

 

「≪ガジェット・トレーラー≫は手札のDモンスターを墓地へ送ることで、一枚につき800ポイント攻撃力を上げることができるんだ! 俺は1枚のDモンスターを墓地へ送り、800ポイントアップさせる! 続けて、装備魔法≪重力砲(グラヴィティブラスター)≫をビデオンに装備! ≪重力砲≫の効果で400ポイント、ビデオン自身の効果で800ポイント攻撃力アップだ!」

 

 龍亞が手札からモンスターを墓地に送ると、ガジェット・トレーラーに≪D・ラジカッセン≫が搭載される。さらに隣にいたビデオンも、左肩に≪重力砲≫を身に着けたことで、一回り成長した。

 

≪ガジェット・トレーラー≫攻撃力 1300 → 2100

≪D・ビデオン≫攻撃力 5600 → 6000 → 6800

 

「このままバトルフェイズ! 俺はガジェット・トレーラーでセットモンスターへ攻撃!」

 

 それを見ていた遊太から、え? と思わず声が漏らされる。

 その漏らした発言で龍可もどうやら気がついたのか、「あーあ、調子に乗るから」とため息をついた。

 

 けれど今更遅い。ガジェット・トレーラーはすでに攻撃態勢に入り、すかさず砲丸をセットカードに打ち出した。

 そしてそのまま着弾。

 煙が晴れると、破壊しているはずの遊星のモンスターが守備表示のまま姿を現していた。

 

≪マッシブ・ウォリアー≫

地属性|星2|戦士族/効果

攻500|守1200

 

「え、えぇ! なんで破壊されてないの! ガジェット・トレーラーの方が攻撃力は上なのに⁉︎」

「≪マッシブ・ウォリアー≫は1ターンに一度だけ、戦闘ダメージを0にし、破壊されない効果を持っている」 

「っ、破壊耐性持ち! だったら、ステープランで≪マッシブ・ウォリアー≫に攻撃だ!」

 

 龍亞の攻撃宣言に従い、ステープランが大量のホッチキス針を飛ばす。今度こそ破壊されるマッシブ・ウォリアー。彼は戦士らしく決して背中を地面につけまいと、抱えていた巨石を降ろしもせず、前のめりに倒れ込んだ。

 

「っようし! このままビデオンでダイレクトアタックすれば、俺の……」

「残念だが、そうはならない。(トラップ)発動。≪スクランブル・エッグ≫」

「えぇ⁉︎」

 

 これで勝てる、そう思った矢先にすかさず遊星が伏せカードをオープンした。

 このターン二度目の驚きの声が、龍亞から放たれる。

 

「このカードは自分フィールドのモンスターが効果または戦闘で破壊された時に発動できる。手札、デッキ、墓地から≪ロードランナー≫を特殊召喚する」

 

 遊星はデッキから、ピンク色の野鳥がコミカルに描かれたカードを加えると、それを守備表示で特殊召喚した。

 特殊召喚された≪ロードランナー≫は、いつも通りライディングデュエルでの召喚だと思い、時速60キロ近くのスピードを伴い登場する。がしかし、今はスタンディングデュエル中。彼の猛スピードの登場は、ずっこける形で終わりを迎えた。

 

≪ロードランナー≫

地属性|星1|鳥獣族/効果

攻300|守300

 

 ロードランナーの登場により、龍亞はこのターンで勝つことが出来なくなったのである。

 

「ぐぬぬぬ、でもビデオンの攻撃は止まらないよ! いけ、ビデオン! ≪ロードランナー≫に攻撃だ!」

「ロードランナーは攻撃力1900以上のモンスターとの戦闘では破壊されない」

「残念! ≪ダブルツールD&C≫の効果で、装備モンスターの攻撃対象となったロードランナーは、バトルフェイズの間だけ効果が無効化されるんだ!」

 

 龍亞の説明通り、いつものように効果によって相手の攻撃を撥ね退けようと防御姿勢をとる≪ロードランナー≫だが、ビデオンの握ったサイコブレードの一閃で難なく破壊されてしまう。

 遊星はその光景を見て、しばし思考する。さっき、観戦していた2人から出てきた、戸惑いとも呆れとも取れる声。それが何故出されたのか、たった今理解できたのだ。

 

「あぁ、オッシイ! でもでも、このターンで決められなくても、俺の場には高い攻撃力のモンスターが2体。さらにディフォーマーロックで遊星から攻撃もできないんだ。へへ、この勝負貰っちゃったかな。俺はこれでターンエンド。悪いね、遊星」

 

 余裕綽々と言った様子でターンを譲る龍亞。

 遊星は特に焦る様子もなく、ターンが移行したために一枚ドローした。

 そんな落ち着いた対戦相手と油断しまくりな龍亞を見て、ベンチで仲良く観戦していた2人は直感する。

 

 ――あぁ、さっきのセリフ……負けフラグだな、と。

 

「俺は手札の≪ボルト・ヘッジホッグ≫を墓地へ送り、チューナーモンスター≪クイック・シンクロン≫を守備表示で特殊召喚」

「チュ、チューナーモンスターだって⁉︎ もしかして、こっから反撃始まっちゃう⁉」

 

 現れたのは投射器を搭載したガンナー風のモンスター。龍亞の言葉に機嫌を良くしたのか、拳銃をかっこよくホルスターに収め、ポーズを決めてくれる。

 

≪クイック・シンクロン≫

風属性|星5|機械族/チューナー/効果

攻700|守1400

 

「続けて、墓地にある≪ボルト・ヘッジホッグ≫の効果。自分の場にチューナーモンスターがいる場合、このモンスターを墓地から特殊召喚できる」

「レベル2とレベル5……ということは合計レベル7のシンクロモンスター⁉︎」

「あぁ。だが俺はまだこのターン召喚をしていない」

 

≪ボルト・ヘッジホッグ≫

地属性|星2|機械族/効果

攻800|守800

 

 遊星は律儀に答えると、手札から最も使用率の高い愛用モンスターを場に出した。

  

「チューナーモンスター≪ジャンク・シンクロン≫を通常召喚。ジャンクシンクロンのモンスター効果、墓地にあるレベル2以下のモンスターを守備表示で特殊召喚する。≪マッシブ・ウォリアー≫を特殊召喚」

 

 場に出てきた≪ジャンク・シンクロン≫が、何もない横に勢いよく手を翳す。すると地面に照らされたサークルが形成され、そこから≪マッシブ・ウォリアー≫がぬるりと這い出てきた。

 その姿はまさしく、井戸に住まう某女性亡霊がごとき登場シーンである。マッシブ・ウォリアーは、自身を破壊したステープランをめちゃくちゃ睨む。まさしく次代貞〇の名を欲しいがままにする睥睨だった。

 

≪ジャンク・シンクロン≫

地属性|星3|戦士族/チューナー/効果

攻700|守1400

 

「げげ、めっちゃ増えた!」

 

 気が付けば、遊星の場には壮観な光景が広がっていた。遊星の場には、一気に4体ものモンスターたち。

 龍亞の驚きも仕方がない。これほどまでにチューナーと非チューナーを並べられたのは初めてのことだ。遊太でさえ、連続でのシンクロ召喚はほとんどしない。彼のデッキはシンクロ完全主体ではないのも大きいが。

 

「いくぞ。レベル2≪マッシブ・ウォリアー≫にレベル3≪ジャンク・シンクロン≫をチューニング」

 

 ジャンク・シンクロンとマッシブ・ウォリアーが交わり、一筋の光を作り出される。遊星の頭上でそれが一瞬だけ爆ぜれば、光の海から≪ジャンク・ウォリアー≫が飛来した。

 

「来い、≪ジャンク・ウォリアー≫! そして、シンクロ召喚された≪ジャンク・ウォリアー≫のモンスター効果。このカードの攻撃力は自分の場にあるレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分アップする。パワー・オブ・フェローズ!」 

 

≪ボルト・ヘッジホッグ≫からパワーを受け取った≪ジャンク・ウォリアー≫は、白い闘気を纏い拳を強く握り込む。

 今なら誰にも負けない。そんな風にさえ思えてしまうが、目の前のフィールドに佇む化け物……ビデオンを見て、「あ、あれには敵わないな」と即座に察してしまうのだった。

 ビデオンはいつでも返り討ちにするべく、サイコブレードを静かに構えている。

 

≪ジャンク・ウォリアー≫攻撃力 2300 → 3100

 

「え……? なぁんだ、攻撃力3100のモンスターか! それじゃあ、ビデオンの攻撃力には届かないね! ディフォーマーロックも突破できないみたいだし、ふぅ、危なかった!」

「……どうしよう、遊太。龍亞がどんどん噛ませキャラみたいになってるわ……」

「あははは……そう、だね」

「え? 二人とも何か言った?」

 

 兄の敗戦フラグにもはや苦笑いしかでない龍可は、龍亞に聞かれたことを答えもせず、そっと遊太とともに手を合わせる。できれば、立ち直れないほどボコボコにはされませんように、と祈って。

 

 しかし遊星は構わず、メインフェイズを続行した。

 

「続けて、レベル2の≪ボルト・ヘッジホッグ≫にレベル5の≪クイック・シンクロン≫をチューニング」

 

≪クイック・シンクロン≫の腹部から、数々のシンクロンチューナーが投射される。その映像のうちのひとつ、≪ジャンク・シンクロン≫の映像をガンマンの如き早業で撃ち抜けば、クイック・シンクロンは円形フレームへと姿を変えた。

 そしてそのまま、≪ボルト・ヘッジホッグ≫が円形フレームの中を潜り、彼も2つの星へと生まれ変わる。

 

「集いし叫びが木霊の矢となり空を裂く――光さす道となれ!

 シンクロ召喚――いでよ、≪ジャンク・アーチャー≫!」

 

 出てきたのは、弓を持った狩人の戦士だ。ジャンク・シンクロンを彷彿とさせるオレンジのカラーリングは、太陽に照らされることで黄金に光を放っている。

 赤色の隻眼でぎょろぎょろと辺りを見回せば、自身が狙わなければいけないモンスターを見つけたらしい。ジャンク・アーチャーは無言のまま、ビデオンに向かって弓矢を引絞った。

 

「≪ジャンク・アーチャー≫のモンスター効果。相手の場のモンスターを一体選び、それをエンドフェイズ時まで除外する」

「モンスターを除外……って、まさかまさか!?」

「俺はビデオンを除外の対象にする。ディメンジョン・アロー!」

 

 仲良くステープランと挑発行為に勤しんでいたビデオンが、ジャンク・アーチャーの矢によって射抜かれた。いきなりのことに驚きの表情を見せるビデオン。気づいた時には遅く、彼は突如開いた異空間へと吸い込まれるように消えていく。装備されていたカードたちだけを置いて。

 当然、装備対象を失った装備魔法は破壊という運命を辿った。そして相方を消されたステープランは、機械の顔面から涙という名の油を垂れ流すしかできなかった。

 

「そ、そんなぁ……折角、遊太に教えてもらったディフォーマーロックなのにぃ……! これじゃ丸裸だよお!」

「もう、しっかりしてよ、龍亞! まだデュエルは終わってないんだから!」

「だってさぁ……どう見ても……!」

 

 そうね、どうみても負けね、とは流石に龍可も言えなかった。泣きべそをかきかけている龍亞を見兼ねたのか、デュエル中ずっと毒舌を披露していた妹ですら、同情の念を禁じ得ない。

 龍亞の状況は、誰がどう見ても最悪の一言に尽きる。

 場には、ガジェット・トレーラーとステープランのみ。しかも最悪なのが、どちらも攻撃表示でステープランは攻撃を誘導する癖に、さほど攻撃力が高くないという点だった。

 

 龍亞の残りライフは2000。完璧に遊星が削れる圏内である。

 

「バトルフェイズ。≪ジャンク・ウォリアー≫でステープランに攻撃。スクラップ・フィスト!」

「う、うぅ……」 

 

 容赦なく飛びかかるジャンク・ウォリアー。例え負けが見えようと、必死に抗おうとするステープラン。さっき消されたビデオンの仇と言わんばかりに襲い掛かるが、ジャンク・ウォリアーの拳がステープランの腹部を破壊し、そのまま光の欠片へと霧散させる。

 そうして戦いの余波だけが龍亞を襲い、そのままライフは底を尽きるのだった。

 

 龍亞LP 2000 → 0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☓ ☓ ☓

 

 

 

 

 

 

  

 

 いいデュエルだったけど、残念ながら今回は龍亞の負けで決着しちゃったなぁ。

 ひとまずオレと龍可は、龍亞の慰めも兼ねて歩み寄る。すると、近づいてきたオレたちにいち早く気がついたらしく、龍亞が今にも泣きそうな顔で頭を下げた。

 

「ごめん……折角、遊太に教えてもらったのに、俺……負けちゃって」

「そ、そんな謝ることなんてないよ! 早速、使いこなしてたのは凄いと思うし!」

「遊太の言うとおり。ま、元気出せ出せ。そんなんでへこんでたら、きりないぞ」

 

 珍しく龍可がオレと一緒に龍亞を励ましていると、遊星さんもこちらに歩いてきてくれた。怖そうな顔付きながらも、浮かべている表情はどこか優しげのある微笑みで龍亞を見ている。

 

「デュエルを心から楽しんでる気落ちは伝わってきた……ただ、お前のデュエルは少し自分勝手すぎる」

「ぅっ」

 

 言葉は厳しく、されど声音はできるだけ柔らかく。決して龍亞に悪い気持ちにだけはならないようにと、そう配慮された口調で、遊星さんは先程のデュエルを振り返ってくれる。

 

「さっきのデュエル。ビデオンの攻撃力を上げることばかり、集中していなかったか?」

「そうね。≪重力砲≫も≪ダブルツールD&C≫と同じく、モンスター効果を発動させない効果があるのに、龍亞ったらビデオンに装備させたんだもん」

「あっ」

 

 思い当たる節がありすぎたのか、龍可の補足も踏まえて龍亞は頭を抱えた。

 

「ああ。もし≪重力砲≫をステープランに装備させていれば、まだデュエルは続いていただろう。それに、重力砲を装備させたステープランであれば、俺のマッシブ・ウォリアーも一回目の攻撃で破壊されていた」

 

 まぁ、概ね遊星さんの言うとおりだぜ。反論の余地がない。オレも問題があるとすれば、そのターンだとは思ってる。

 装備魔法もそうだが、ラストターンでわざわざガジェット・トレーラーを出さなくても、モバホンを守備表示にしておくとかのほうがよかったかも〜、なんて。

 まぁ、どれだけ言ってもタラレバの話なんだけどね。

  

 遊星さんはふと、龍亞のデュエルデスクに収められたデッキを見つめる。

 

「本当にデュエルは何があるか分からない。その場その場で最善手を見極めるのは非常に困難なことだが、お前の熱い気持ちがあれば、きっと多くのものが見えてくるはずだ」

「見えてくる……遊太のよく言う『見えるけど見えないもの』みたいな感じかなぁ?」

「なに?」

 

 そう言って龍亞と遊星さんがオレを見る。

 確かに「見えるけど見えないもの」って、オレの口癖みたいなところはあるけどさ、なんで遊星さんまでオレを見てくるの? ちょっと、怖いんだぜ……。

 こういうときはあれだ。話を逸したほうがいいって、ばあちゃんが言ってたな。よく、じーちゃんも学生の頃は親の話を逸してゲーセン行ってたらしいし。

 

「ま、まぁ、龍亞もすごくいいデュエルをしたんだし! あ、あはは、僕はそこまで悪くなかったと思ったり? 確かに龍亞は勝ち筋が見えた途端、それ一辺倒になっちゃうけど、巡り合わせが良ければ勝てたんじゃないかな?」

「はぁ……そうやって遊太がいつも龍亞を甘やかして指摘をしないからよ? 私が諌めてちょうどいいバランス保ってるんだから」

「え?」

「もしかして、遊太は俺の自分よがりなデュエルしてるのに気付いてたの⁉︎ 」

 

 え、エ”ー!

 なんだか、よくわからないけどオレが責められる感じになってるぜ⁉

 

「なんで黙ってたのさ〜! もー、指摘してよ〜! 俺がキングになるの応援してくれたんじゃないの〜⁉︎」

 

 これ以上はヤバいと自分の何か訴えかけてくる。話を逸らした先にも万能地雷グレイモヤが仕掛けられているとか、誰も予想できないよ。 

 

「あ、そうだ! 良い事思いついちゃったもんねー。遊太もさ、遊星とデュエルしてみなよ! どっちが強いか気になるんだよね」

 

 どうにか名誉挽回できないものかとオレが模索していると、いきなりそのようは提案がされた。

 遊星さんとオレがデュエル……?

 言っちゃあ悪いが、勝てる未来が見えないなぁ……だってこの人は、あの悪魔ともやり合える人で、なんなら勝てちゃう人だもん。オレなんかでは相手にならないよ、と素直に思ってしまう。

 それに寝不足すぎて、実はかなり体調がギリギリなんだ。なんなら観戦してるときも、ちょっと瞼が落ちかけてたくらいだし。今は正直、ベッドで横になりたい……。

 

「ねぇ、いいでしょ? 遊星も!」

「悪いが、そのうちな。世話になった」

「え、どうして!?」

 

 さて、どう断ったものかと思えば、先に遊星さんから、NOの返事をいただいてしまった。踵を返す遊星さんを龍亞は必死に呼び止めるも、頬にあるマーカーを徐に親指で差してこう言われる。

 

「このマーカーを見ろ。俺と関われば迷惑をかける」

「そんなことないよ! 俺、遊星の力になりたい!」

 

 すかさず龍亞の反論。二の句を継がせない勢いで畳み掛けていく。流石はディフォーマーデッキの使い手。展開力はだてじゃない。いや、今はそんなの関係ないか。

 

「まぁ、今日くらいゆっくり休んでもいいんじゃない?」

 

 まさか警戒していた龍可までも、龍亞の味方についたことで、流石に遊星さんの良心が屈したらしい。大分、長い沈黙を守ったあと

「…………分かった。今日だけ世話になる」

 と遊星さんは言った。

 

「じゃあ、早速二人ともデュエルを――」

「あ、ごめん通話みたいだ」

 

 そこまで話されたときに突然オレに向けて電話がかかってきた。

 そういえば、朝ママに連絡するために電源を入れっぱなしにしていたんだった。

 俺はママからの電話だと思い、誰から掛けてきたのかも確認せず出てしまう。それがあやまちだとも知らずに。

 

「もしもし、どうし――」

『今どこにいる』

「……」

 

 ――なんて空気の読めないやつ。

 それがまず最初に思った感想。つぎに思い浮かんだ言葉は、気まず、というシンプル極まりない単語だった。

 

 掛けてきたのは金色の悪魔こと、ジャックさん。龍亞の憧れであり、遊星さんと浅からぬ因縁を持つ男。

 どうせ、いつかはオレとこの悪魔の関係性はバレるんだろな、と思ってはいたさ。亀のゲーム屋にはキングもよく出没すると有名だし、であれば、オレと面識があるのも、みんな大抵は察していたことだろう。

 でも、プライベートで、しかも個人的繋がりまであるというのは、もう少し先のタイミングで知られたかったなぁ。

 だって龍亞はジャックさんのファンなんだよ? オレとの関係性を知れば、きっと今すぐにでも羨ましがって会いたがる。そんな親友に言える?

 

 ――あの人は人間の皮をかぶった悪魔だから、プライベートで会わないほうがいいよ、って。

 

 オレは言えない。会わせてもあげられない。幻想を砕かれるなんて可哀想すぎるぜ!

 

『おい、どうした。返事をしろ、遊――』

 

 とりあえず、見なかったことにしとこう。

 オレは何も言わずに通話機器の電源ごと落としてやった。

 

「……」

「え、今のキン――」

「あ、あぁ、そう言えば僕、今日は昼から店の手伝いなんだったなー! ごめん、僕先帰るね! 本当ごめん! 黙ってたことも含め、今度ちゃんと謝るからー!」

 

 よし逃げよう。すぐ逃げよう。

 なにか問い詰められる前に、ここから一秒でも早く抜け出そう。というか、ママからオレの居場所を聞き出して、ここに来られたほうが嫌すぎる! ママったら、ジャックさんのファンだからって、なんでも教えてしまうところがあるからなぁ! 

 

「え、ちょ、遊太! 別に黙ってたことは良いんだけど、遊星とのデュエルはぁ!?」

「ごめん、それもまた今度! 機会があれば!」

「え、ええぇぇぇ!?」

 

 今はデュエルをしている暇もなければ、考えてる余裕も無いんだ! 許して!

 

「あ、遊星さん!」

「なんだ」

 

 オレは急いで荷物をまとめながら、遊星さんに話しかける。

 ええい、正直言おうかどうか迷ってたけど、こうなったらヤケクソだ!

 

「ありがとうございました! 龍亞とのデュエルもそうだけど、悪m……じゃなくてキン……でもなくて、まぁあの人もなんだか憑き物が落ちたみたいでした! 多分、あの人が悪いことしたんだと思うけど、許してあげてほしいんだ。きっと遊星さんが、あの人にとっては支えてくれた仲間だろうから!」

「…………あぁ。俺はもう気にしてない」

 

 良かった。それが聞けただけでも御の字だ。

 本当にあの悪魔は……こんな人のできた友達を怒らせるなんて、よっぽどのことしたんだろうなぁ。ハンバーガーでも奪い取ったりしたのだろうか? だとしたら、万死に値するぜ! 今度、勝手にカップラーメンを食ってやる!

 

「えっと、それじゃ……あ、また今度亀のゲーム屋にでも遊びに来てくださいね! 龍亞と龍可はまた大会の日に! ママの車で迎えに来るから! じゃあ、お邪魔しましたー!」

 

 俺は矢継ぎ早にそう言い残し、荷物を全部背負ってエレベーターに駆け込んだ。龍亞たちからの返事も聞かず出てきたけど、まぁ何かあったらメールとか電話でこと済むだろう。

 そういえば、フォーチュンカップの日はばあちゃんも珍しく見に来るんだっけ?

 まぁ、ママの車なら人数自体は問題ないか。

 俺はそんなことを考えながらも、今から家に来るだろう悪魔に辟易しながら、帰路につくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 遊太が帰ったあと、遊星たちはリビングで談笑していた。

 

「気持ちのいいやつだな」

「へへ、でしょ? 遊太は俺の最高の友達だよ。キングから電話かけられてたのは驚いたけどね」

「怒らないのか、キングは憧れなんだろ」

「んー、なにか事情でもあるんじゃない? それに、俺は実力で会って、キングとデュエルをするんだ!」

「フッ、良い仲間だな」

 

 龍亞はそれを聞いて「いしし」と笑いのける。

 眩しい関係性だ、と遊星はそれを見て心底思えた。そんなものを見せつけられてしまっては、久方ぶりにサテライトの仲間たちと会いたくなる。

 ジャックとの因縁も終わらせた遊星からしてみれば、もうこっちにいる意味はあまりない。Dホイールとデッキも取り返したことだし、明日にはサテライトへ帰る計画を立てる予定だ。

 ――帰る前に亀のゲーム屋には寄っておくか。

 もしかしたら、ラリーたちに良い土産話ができるかもしれない。

 なんせ、あのジャックがジャパネットた〇たのようになっていたのだから。

 そんなことを考えながら、ゆったりしていると、ふと会話にあまり入ってこない龍可が目に入った。なにやら小さいモンスターをのぬいぐるみを弄り、不満げな表情を漏らしている。

 

「あーあ、もう少し話したかったんだけどなぁ……昨日のデュエル中のこととか」

「ん? 龍可、なにかいった?」

 

 遊星にはしっかり聞こえた声も、こっちの話に夢中になっていた龍亞には聞こえなかったらしい。話しかけられたのだと龍可へと思い振り返ってみれば、 

「ううん、なんでもない」

 と彼女はごまかしてみせた。

 

(あの感じ、多分遊太も……)

 

 

 

 

 

 この日の晩、遊星は龍亞たちの部屋を抜け出し、夜の街へと駆出す。そこでサテライトの仲間を人質に、フォーチュンカップへの出場を強要されたりするのだが。

 まぁ、詳しいお話は次回からのフォーチュンカップ編からということで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

「大会まであと3日しかないのに、お前はなにをしていたんだ」

「と、友達と特訓してたんだよぉ……ちゃんとデュエルしてたんだよ?」

「ほう。ではその特訓とやらの成果を見せてもらおうか」

「ちょ、ちょっと待って! 今は無理だから……って、あぁ! オレのハンバーガー返せ、この悪魔野郎!!」




次回からはフォーチュンカップに一気に飛びます。
一気に飛ぶんです。

一応、アニメをなんとなく思い出したい方向けに、原作だとこの後どんな感じだったのか言うと、
・遊星フォーチュンカップの招待状無理やり渡される
・くそ、ゴドウィンめ! ラリーたちを人質にしやがって!
・「なら俺が見に行ってやろうか」と言ってくれるイケオジ登場
・サテライトに行くためにスラム街で案内人を探すぜ!
・なんかスラム街で魔女が暴れてるぜ!
・なんか魔女の腕に竜の痣があったぜ!
終わり

多分、大体あってます。

遊星と龍亞のデュエルを見たい人ー?

  • Yes、どんなデュエルでも見せてくれ!
  • No、早くフォーチュンカップいこう!
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