5D's:武藤遊戯の孫   作:ジャガイモ

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究極竜魔導師がきてしまった、、、
他にも表遊戯のカードが、、、
やるっきゃねぇぜ!

まだ先の話だがな!


第十二話 対戦の組み合わせ

 

 時間は少しだけ巻き戻り、開会式の前。

 

 デュエルスタジアムの観客席にて、赤いフレームの眼鏡を掛けた天兵が、いまかいまかと胸を躍らせながら座っていた。

 そんな天兵の前に、ちょうど観客席出入口から現れた少女の影が現れる。

 龍可だ。後ろに昨日ならず者の街で出会った矢薙と氷室も見える。今朝、龍可の応援中にばったり出くわしたと聞いていたため、特段驚くことはなかった。

 天兵は龍可たちを呼ぶ為、少し腰を浮かせる。

 

「あ、龍可ー! こっちこっち!」

 

 天兵の声に3人が一斉に振り向く。

 そして声の主に気が付き、龍可はてってと軽い足取りで近寄ってきた。

 

「ありがとう、天兵。席確保してくれて」

「気にしないで。僕も龍亞の見送りもしたかったけど、みんなでいくと良い席が埋まっちゃうからね」

「悪いね、儂らの分まで」

「恩に着る、少年」

 

 龍可が確保してくれていた席へと座り笑みを浮かべれば、天兵は照れたように頬を掻く。

 そんな微笑ましい光景を眺めながら、龍可の付き添いとして来た氷室と矢薙も隣に腰掛けた。

 

「それにしても、遊太君……だっけ。彼にも一言くらい激励の言葉をかけたかったなぁ」

「フォーチュンカップは2日制だし、明日応援すればいいんじゃない」

「あはは、いやだなー。それじゃ勝つこと前提みたいじゃん」

「そうだけど……何か変?」

「え?」

 

 龍可は不思議そうに小首をかしげる。

 彼女からすれば珍しい発言だ、と天兵は思った。リアリストの一面がある龍可が、こうも確信めいた発言をすることはあまりない。いや、彼女がリアリストめいた発言をするのは、いつだって龍亞限定だったような気もする。

 はて、どういう真意で龍可が発言したのか。

 天兵が頭を軽く悩ませていると、隣の席で話を聞いていた矢薙も、体を前のめりにして話しに混じってきた。

 

「いやー、天兵君。きっと彼は強いぞー。一回戦なんてあっという間に突破するかもしれん!」

「お爺さんもそう思うの?」

「そりゃ、そうじゃ。なんせ初代デュエルキングの生き写しだったんじゃからな。儂はもうびっくりしたよ」

 

 へー、と天兵は目を輝かせる。

 初代デュエルキング――或いはキング・オブ・デュエリスト。

 噂には聞いていたが、やはり武藤遊太は、あの伝説のデュエリストと瓜二つなのだろう。天兵も昔の記事や写真などでしか、その存在を見た事がない。世代が違うのだから当然だ。

 だからこそ、憧れと言うより好奇心が非常に強かった。彼と出会ってからというもの、龍亞と龍可が自慢げに語るものだから、日に日に気持ちは強くなった。

 

(やっぱり、僕も応援しに行けばよかったかな)

 

 天兵がそんな風に考えていると、ようやく心待ちにしていた開会式が始まりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 開会式の最初はキングの登場だった。<レッド・デーモンズ・ドラゴン>を連れ、Dホイールに跨る姿は、さすが無敗のキングという感じである。天上天下唯我独尊。これほどまでに、その言葉が似合う男も居ないだろうと、観客の誰しもが思わされた。最近ではファンサービスもかなり良いらしく、今までは女性層に偏っていたファン層も、一気に子供層が追い上げてきているらしい。

 そうしてジャックが舞台にDホイールで降り立つと、次に舞台下から選ばれしデュエリストたちが姿を現す。

 ようやく出てきた出場者たちに、わーっと歓声が上がった。熱気は最高潮に達し、肺がやぶけんばかりに叫ぶ若者も見受けられた。大きく映し出された空間ディスプレイには、一人一人の顔がアップで映っていく。

 

 そしてスタジアムは静まり返った。

 

 はて、どうしてだろうか。あれほどまでに盛り上がりを見せちていた観客席が、今ではお通夜のように静まり返っている。さっきまで熱気にあてられていた龍亞も遊太も、頭の上で疑問符を浮かべずにはいられない。

 しかし数秒経って、ようやく2人の少年は理解した。

 

 遊星だ。

 マーカーの男――遊星が選ばれていることに対する嫉妬、不安、侮蔑が原因である。

 耳を澄ませば、口々に心無い声が聞こえてきた。自分は選ばれなかったのに、よりにもよって犯罪者が選ばれている。それだけで観客のほぼ全員が訝しげな、それでいて侮蔑的な視線を遊星に投げていた。

 

 だけど、どうやらそれだけじゃないらしい。

 

「初代デュエルキングっ……!?」

「おいおい、マジでそっくりじゃんか」

「すげー、すげー……!!」

「あぁ……南無阿弥陀……南無阿弥陀……」

 

 観客が静寂に支配された理由。

 それは、紛れもなく遊太にも原因があった。

 遊太があまりにも、初代デュエルキングに似ているからだった。

 

 事前に告知されていたサイトには、確かに武藤遊太の写真が掲載されていた。注目度が高い大会なため、それなりに全国の人間がそのサイトに訪問もしているほどだ。

 なのにも関わらず、実物を見た観客が声を失うほど驚いてしまった理由。

 簡単なことである。みんな誰しもが侮っていたのだ、武藤遊太という子供を。所詮サイトに出されていたのは、ただの画像一枚。今の時代において加工技術など、腐るほど発展している。そんな技術的背景を鑑みると、どれだけ似ていようが「まぁ、加工だろうしな」や「たまたまそのアングルで切り抜いただけだろ」で終わってしまう。

 けれど目の前に立つ遊太は、そんな言葉が烏滸がましかったと自覚させられるほど瓜二つであった。正確には、初代デュエルキングを若返らせた姿と言えばいいだろう。

 どの角度、どの席、どのタイミングで見ても……遊太と初代デュエルキングは瓜二つ。

 ありえない。まさに絶句ものだ。マーカー持ちの遊星の存在など皆んなかなぐり捨て、一斉に声を上げる。

 

 ――初代デュエルキングが再誕した、と。

 

 

 

 

(えへへ、困っちゃうなぁ)

 

 注目を一身に浴びている遊太は照れていた。

 それはもう凄まじいほどに。人生最大と言っても過言ではないほど、顔を赤く染めて頭を掻いていた。

 今まで初代デュエルキングと似ていると言われたことなど、いくらでもある。それこそ亀のゲーム屋にきたことがある人間なら、皆んな一度は遊太に向かってそういう反応を示す。

 しかし今回は規模が違った。ネオドミノシティ外からも、多くの観光客がやってきた本大会では、遊太の存在など上澄しか知らない人間のオンパレードである。必然、囃し立てる人間の量はこれまでと比にならないものとなった。

 

(オレってもしかして超有名人?)

 

 天狗になりそうになっている遊太。

 いや、実際はピノキオのように鼻が伸びているようにも見える。

 流石にこの騒ぎを収集するのは難しいだろうな、と思いながらも、自分がちやほやされているのを悪く感じてはいない。

 

 しかしどうやら、一人の悪魔は違ったらしい。

 さっきから苛立たし気に靴を鳴らしている。

 しまいには、ふんぞり帰って座っていた腰をあげ、MCから颯爽とマイクを奪い取ってしまった。

 

『ええい、やかましい! マーカーも初代デュエルキングも今大会には関係ない。ここに選ばれた者が競い、争い、勝ち取ることで、このキングとデュエルする栄光を掴めるのだ! 新たな伝説の幕開けに、過去の栄華もしがらみも要らん。デュエリストならば己のデッキでその価値を示せ!』

 

 ジャックはそう言って席へと戻る。

 彼がどうしてこのような行為に及んだのか、それは誰にも分からない。最近ずっと一緒にいた遊太も、ただただジャックの行動には驚きの表情しか浮かべていなかった。

 でもこれは、ただ照れていた遊太も引き締まる思いである。

 

『キングらしい良い言葉をありがとうございます。私はレックス・ゴドウィン。本大会を主催し、真の平等を求める者です』

 

 しーんと場が静まり返ったのを見て、ゴドウィンが立ち上がった。

 大きな体で両手を広げ、仰々しい態度で語っていく。

 

『私がこの場を用意したのは、まさに今、キングが語ったことに関係しています。本大会では、マーカーを持つ者であろうと、親類に英雄がいようと、例え心病めるつかえがあろうと関係ありません。肩書や生い立ちなどに縛られず、そのデュエリストの本質を見て、知り、そして真の平等に繋げてほしい。この言葉をもって、私からの開会の辞としましょう』

 

 そして沸き起こる拍手喝采の嵐。

 この場を作り上げた一因とも言えるジャックに、遊星はほとほと死んだ目を向けていた。

 

『よぅし、では! 主催者の開会の辞もいただいたところで、早速、対戦の組み合わせを発表するぞぉ!』

 

 開会の辞も終わり、MCが引き継ぐ。早速スタジアムの大型モニターにトーナメント表が映し出される。トーナメント表には8つの空きブロックがあり、各ブロックの中で激しく出場者の顔写真がランダムに切り替わっていた。

 順番に右端からブロックの中の画像が止まる。

 8つ全てのブロック内に各出場者の顔写真が収まれば、フォーチュンカップでの組み合わせが決定した。

 

 

 第一試合 武藤遊太VS KM

 

 第二試合 ジル・ド・ランスボウVS十六夜アキ

 

 第三試合 ボマーVS龍可

 

 第四試合 不動遊星VS死羅

 

 

「遊太は第一試合だね」

「うん、そうみたいだ」

「これで俺たちが戦うとしたら決勝戦ってわけ。わくわくするじゃん!」

 

 遊太と龍亞は互いに横目だけで視線を交わすと、拳を軽く合わせる。

 絶対に上がってこいよ、そんな意思を相手に込めて。

 

 

 

 × × ×

 

 

 

「じゃあ、行ってくるよ」

 

 出場者の待機室でオレは重い腰をあげた。

 遊星さんはこちらを見て「ああ、全て出し切ってこい」と、龍亞は「絶対に負けるなよ! 約束だからな!」なんて激励をくれた。

 

 何人かのライバルたちに視線だけで見送られながら待機室を出れば、たまたま開会式の時にオレの隣に立っていた女性と鉢合わせる。

 

「あっ、ごめんなさい」

「……いえ。気にしないで」

 

 女性はそれだけを言うと、じぃとこちらを見つめてきた。

 な、なんだろう、流石にそんな見られると気恥ずかしい……。

 お姉さんも、じーちゃんのファンだったりして、オレを見てるのかな。

 なんて思いお姉さんの顔を窺うと、どうやら違うっぽい。こう、羨望というか、嫉妬?というか、まぁ好奇心みたいなものではないナニカを向けられている気分を感じる。

 

「えっと、あの……?」

「……」

 

 オレがそう問いかけるより早く、お姉さんは無言のまま待機室へと入る。

 え~、なんなの……。

 と考えれば、後ろから今日初めて「クリクリ〜……」と声が聞こえた。その声は何だかいつもより元気がないように思える。

 はぁ、本番前に変なことを考えさせないでほしいぜ、まったく。

 

「だめだめ、気持ちを切り替えよ! もう本番なんだから!」

 

 オレはばしばしと力強く頬を叩き、よしっと小さくガッツポーズを取る。

 龍亞との約束を守るためにも、ここで負けるわけにはいかない。何より今日のため、わざわざ応援に来てくれたママやばーちゃん、それに龍可たちにもカッコ悪いところは見せたくないんだぜ。

 

 そうやって気持ちを固め、何度も頭の中で戦術を転がし、スタジアムの舞台に出る。

 広いデュエルフィールドに立つため階段を上がれば、目の前に白いフードを被った背の小さい対戦相手がいた。

 

『さぁ、記念すべき第一試合の紹介をしよう! 亀のゲーム屋の看板を引っ提げ、その小さな身で観客の期待を一身に受け止める少年デュエリスト、武藤遊太!』

 

 おー、登場と同時にオレの紹介が実況の人からされる。

 結構気分があるもんだな。観客の方からも、ちらほらとがんばれーっていう声が聞こえてきた。

 ママや龍可たちもこっから見えるかな?

 

『これに対するは出身不明、素顔不明、経歴不明! 公開情報が未だ一才ない謎の男、KM! デュエルはスタンディングで行うぅ、まずは両者握手を!』

 

 スタッフの人に指示された通り、オレとフードの男の人はお互いにデュエルフィールドの中央に歩み寄る。手の届く距離まで近づいたと言うのに、オレの方からは一切フードの中が覗けなかった。

 うげぇ……何か怖そぉ。

 

「おいおい、緊張してるのか、遊太」

「…………え?」

 

 だと言うのに、フードの男から親しげな声がかけられる。

 それこそ旧来の友人へ声を掛けるかのように自然だった。

 でも、なにが一番驚いたかって、やはりその声であろう。フードの人の声音は、オレにとってすんごく聞き覚えがあったのだから。

 

「え、も、もしかして……その声は!?」

「ひひっ、あははははは! そうだ、俺だぜー、久しぶりだな!!」

 

 がばっとフードをとり、露わになったその姿。

 何度か顔を合わせるくらいには知人であり、何より俺にあのカードを渡してくれた人。

 確かに、この大会はKCが関係しているとは聞いていた。なんなら、多分オレを推薦して受け入れられる人間なんて、この人くらいだろうとも思っていた。なのに、今日は姿も形も見えないから、フォーチュンカップにはいないのかなって思ってたら…………なにしてんの。

 

「モクバおじさん!!?」

「驚いたか? いやー、外から見てるだけってのもつまないからな。飛び入り参加のサプライズ大成功だぜい」

 

 年甲斐もなくはしゃぐおじさんを見て、オレは唖然とするしかなかった。

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