5D's:武藤遊戯の孫   作:ジャガイモ

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●のところは、毎度おなじみ熱き決闘者bgmスタートのところさぁ


第十四話 究極青眼龍vs精霊青眼龍

 

「ま、伏せてあった罠は全て使わせたし上々ってとこだろ……どうだ遊太。これがブルーアイズを使うってことだぜ?」

「うん、すごいよ! さすがモクバおじさんって感じだ!」

「へへ、素直に褒められるのは悪い気がしねぇな」

 

 すごい。本当にすごいと思う!

 

 1ターンで3体のブルーアイズを並べたことは快挙だ。最初の口ぶりからすると、きっとモクバおじさんは、どんな手札でもブルーアイズを3体並べる自信があるのかもしれない。

 

 考えれば考えるほど、身を震わせられる気分だ。

 モクバおじさんは間違いなく、一流のデュエリストと言える存在。証拠に観客は沸いているし、実況の人もずっとモクバおじさんを褒めたたえていた。

 

 でも、一流のデュエリストなら、あの悪魔だって負けてないぜ。

 そしてオレは、そんな悪魔と来る日も来る日も特訓してきたんだ。

 

「まだデュエルは終わってないよ! 僕のターン!」

 

 オレはドローし、考える。

 モクバおじさんの場には3体のブルーアイズがいる。攻撃力は全て3000。対してオレの場にはアンクリボーとクリボーンのみ。

 融合モンスターでひっくり返そうにも融合するカードが今はないし、シンクロモンスターにブルーアイズを超える攻撃力のやつを召喚するには、どうしてもレベルが足りない。

 

 しかも一番厄介なのは、モクバおじさんの墓地にある<復活の福音>だ。

 あのカードは一度だけ、モクバおじさんのブルーアイズの破壊を防ぐ効果を持っている。できれば、あれも処理させておかないと……。

 

 

 ……。

 

 …………。

 

 ………………。

 

 

「……よし」

 

 オレは小さく声を漏らす。

 モクバおじさんはそんなオレを見て、にやりと笑みを浮かべた。

 

「何か策が思いついたようだな、遊太」

「うん。この方法しかないと思う」

 

 オレはそう告げ、手札からモンスターカードを提示する。

 

「僕は<輝白竜ワイバースター>の効果で、墓地の闇属性モンスター<暗黒竜 コラプサーペント>を除外し特殊召喚! そしてチューナーモンスター<ガード・オブ・フレムベル>を通常召喚!」

 

 2体目のワイバースターが同胞の仇と言わんばかりに、コラプサーペントを噛み砕いて現れる。さらにその隣には、いつもオレがお世話になっているレベル1チューナーの<ガード・オブ・フレムベル>が並んだ。

 

「何回シンクロ召喚しようと、ブルーアイズには勝てないぜ!」

「それは分からないよ! 僕はレベル1ガード・オブ・フレムベルにレベル4ワイバースターをチューニング!」

 

 ガード・オブ・フレムベルがひとつのサークルを形成し、その中をワイバースターが潜り込む。

 

「輪廻の旅。永劫の時は一度終わり、新たな境地に今到達する――――シンクロ召喚! 冥界より出でよ<転生竜サンサーラ>!」

 

 お腹に大きく光を溜め込んだ黒い立髪をもつ竜。

 それが2体のモンスターを素材としたシンクロ召喚により姿を現した。

 

「これこそが僕の考えた、ブルーアイズ3体を破壊する秘策のドラゴンだ!」

 

 

<転生竜サンサーラ> 

闇属性|レベル5|ドラゴン族/シンクロ/効果

攻100|守2600

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに考えてんのさ、遊太!? 攻撃力100のモンスターなんて攻撃表示でシンクロ召喚したら……!」

「落ち着け、龍亞」

「だって、遊星~……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕はこのままバトルフェイズ! <転生竜サンサーラ>で<青眼の白龍>を攻撃!」

「っ、血迷ったかよ、遊太! それじゃあ、自分のライフを削るだけだぜ!」

 

 モクバおじさんの動揺を無視して、サンサーラの腹部に収まっていた大きな光の結晶が、白から紫へと変わりビームを放つ。相対する青眼の白龍は、大きく首を振って口膣に力を溜め込み、自慢の技を繰り出した。

 

 激突する二つの力の奔流。されど結果などとうに見えていた。サンサーラは攻撃力が100しかない。そんなモンスターで<青眼の白龍>に挑めば、ひとたまりもないことなんて、百も承知の上だった。

 

 遊太LP 4000 → 1100

 

「ぐっ……!」

 

 でも、それがどうした。

 ライフが0にならない限り、デュエルは負けじゃない!

 

「僕は破壊された<転生竜サンサーラ>の効果を発動! このカードが戦闘で破壊されたことにより、墓地にいるモンスター1体を特殊召喚する!」

「なにぃ!? 蘇生効果だと!?」

「僕が選ぶのは<ブルーアイズ・タイラント・ドラゴン>!」

 

 ブルーアイズに焼かれ、倒れたまま動かなくなっていたサンサーラが、光る腹部を中心にひび割れ出す。そして蛹から蝶へ羽化するかのように。サンサーラだった殻をはいで、中から<ブルーアイズ・タイラント・ドラゴン>が、ゆっくりと姿を現した。

 

「これでブルーアイズの攻撃力は上回った! このままバトルフェイズを続行! 僕はタイラント・ドラゴンで左の<青眼の白龍>を攻撃。滅びのタイラント・バースト・ストリーム!」

「こんのっ……!」

 

 光の両翼からエネルギーを集め、それを光線にのせ、放つ。普通の<青眼の白龍>では、まず立ち向かうことすら許されない暴力。モクバおじさんの<青眼の白龍>は、なす術もなく破壊された。

 

 モクバLP 4000 → 3600

 

「ダメージステップ終了時、僕はタイラント・ドラゴンの効果発動する! 自分の墓地からトラップカードを一枚選びセット!」

「へ、次のターンの備えだな! だがそれが何かは、対戦相手である俺にも見えてるんだぜ!?」

 

 オレは次のターンに備え、シルクハットで落としておいたトラップカード<ガード・ブロック>をセットする。

 いくらタイラント・ドラゴンを復活させようと、このターンだけでモクバおじさんを下せるほど状況は芳しくない。それはオレ自身が嫌というほど理解している。

 でもだからと言って、オレが狙っていた目的は他にもあるんだぜ。

 

「伏せたトラップがバレていようと問題ない……言ったはずだよ、モクバおじさん! これは、僕がブルーアイズ3体を破壊する秘策だって!

 ブルーアイズ・タイラント・ドラゴンの永続効果で、このモンスターは相手モンスター全てに1回ずつ攻撃ができるんだ! 残りの2体を焼き払え、滅びのタイラント・バースト・ストリーム!」

「っち、我ながら厄介な効果だな、そいつは! だがオルタナティブ・ドラゴンの代わりに、俺は墓地にある<復活の福音>を除外する!」

 

 右側にいた<青眼の白龍>が、タイラント・ドラゴンの光線により破壊される。しかし、残りのオルタナティブ・ドラゴンが破壊されそうになった時、同じ姿を模した石造が現れ、代わりに砕けた。

 

 モクバLP:3600 → 3200 → 2800

 

 やっぱりオルタナティブ・ドラゴンを残したか。

 でも当初の目的である、<復活の福音>を使わせたことは大きい。あのカードが残っていたら、今後の展開がどうなるか予想もつかなかったわけだし。

 

「……僕はカードを一枚伏せて、ターンエンド」

「へへ、予想以上にやるじゃないか、遊太。いまの攻撃はかなりヒヤッとさせられた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おぉっと、まさに息をつく暇もない攻防! いったい誰がこれを予想できた! 第一試合にしてこの白熱っぷり! 会場は既に最高潮だぁー!!」

 

 

「ね? だから安心してって言ったでしょ、遊星。遊太の狙いは最初っから、これだったんだから!」

「……」

 

 遊星はそう誇らしげに胸を張る龍亞に突っ込むことを放棄していた。

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 モクバおじさんはデッキからカードを引き、ほくそ笑む。

 

「……悪いが、遊太。さっきのサンサーラの自傷は敗北に繋がるかもしれないぜ」

「? それは、どういう」

 

 尋ね終えるよりも早く、モクバおじさんはオレの場にいるクリボーンを指さした。

 

「メインフェイズ! オルタナティブ・ドラゴンの効果で<クリボーン>を破壊!」

「っ、タイラント・ドラゴンじゃなくクリボーンを……まさか!?」

 

 オルタナティブ・ドラゴンがクリボーンを踏みつけ破壊する。

 隣にいたアンクリボーは友の最期に涙した。

 

 ――だけど、ごめん! 今はそれどころじゃない!

 

 オレはてっきりタイラント・ドラゴンをオルタナティブ・ドラゴンで効果破壊されると思っていた。というより、それを誘っていた。効果破壊時モンスターを増やせる<レベル・レジスト・ウォール>ではなく、<ガード・ブロック>を伏せたのも、それが理由のひとつ。

 

 なのに守備表示のクリボーンを破壊した理由……どうやら引いてほしくなかったカードを、モクバおじさんは引き当てたみたいだ……!

 

「俺が何を引いたか分かったようだな、遊太! だが分かっても既に手遅れ、お前に今から究極のドラゴンを見せてやる」 

「―――ッ」

「手札より<究極融合(アルティメット・フュージョン)>を発動!」

 

 モクバおじさんは手に持ったカードを、勢いよくデュエルディスクに挿入する。

 と同時、デュエルスタジアムを辺りが暗転し、いくつもの稲妻が走った。オルタナティブ・ドラゴンは今から起こることを予見したのか、天に向かって猛々しく鳴き声を上げる。

 

「<究極融合>は手札、フィールド、そして墓地の<青眼の白龍>を素材とし、融合召喚できる最強の魔法カード」

「……」

「いま俺の墓地・フィールドには、3体のブルーアイズが揃っている。これがどういう意味か分かるか、遊太」

 

 稲妻により浮き彫りとなった二体の影。オレが見間違えるはずもない。それは<青眼の白龍>の姿。

 フィールドに残っていたオルタナティブ・ドラゴンが、力強く空へと舞い上がる。翼で風を切る音が静寂を破り、そのまま雷鳴の轟く雲へと消えていく。

 激しい轟雷がスタジアムへ落ちた。

 目が眩みそうになるほどの明転を繰り返し、三体の龍が交わる影が上空に映し出されれば、

 

 ――――そいつは現れた。

 

「これが進化したブルーアイズの究極3体融合! 今こそ降臨せよ、<(ネオ・)(ブルー)(アイズ)(・アル)(ティメ)(ットド)(ラゴン)>!」

 

 雷雲を裂いて舞い降りたのは三つ首のドラゴンだった。<青眼の白龍>を3体を合体させ、さらに進化した姿。

 全身が鮮やかな青色で覆われ、その瞳は深い青色で深海のように鈍い。両腕はなく、ただそれを補うように3つの巨大な頭部が、それぞれ独立し動いている。

 

 まさに究極の名を冠すに相応しいドラゴン――これこそブルーアイズが行き着く1つの最終形態。

 

 

 

 

 

<真青眼の究極竜> 

光属性|レベル12|ドラゴン族/融合/効果

攻4500|守3800

 

 

 

 

 

「こいつこそがブルーアイズの究極合体だ」

「これが……ネオ・ブルーアイズ……」

 

 モクバおじさんは誇らしげに言う。

 そりゃ勝ちも確信するだろう。純粋なパワーだけでも驚異であるのに、ネオ・ブルーアイズのモンスター効果はこの状況に適し過ぎているのだから。

 

「さて、遊太。俺がなぜタイラント・ドラゴンではなく、クリボーンを破壊したのか分かるよな?」

「うん……僕のライフは残り1100。タイラント・ドラゴンとネオ・ブルーアイズの攻撃力差とちょうどだ」

「そうだ。つまり守備表示のモンスターを破壊するより、俺はタイラント・ドラゴンを攻撃するだけで勝ちになる」

 

 

 

 

 

 

 

「そんな……これじゃ、遊太君の……」

「ええぇ、またまたピンチじゃないか! 兄ちゃんどうするんだい、これ!?」

「俺達には見守ることしかできん」

「遊太……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「手加減はしないぜ、遊太! 俺に負けてちゃ、そこまでのデュエリストだったってことだからな!」

「――っ!」

「<究極融合>のさらなる効果! フィールドから素材にしたブルーアイズの数だけ、相手のフィールドにいるモンスターを破壊する! 俺はアンクリボーを破壊!」

 

 モクバおじさんが腕を大きく振るう。

 それに呼応するかのごとく、雷雲からは稲光が走り、守備表示になっていたアンクリボーを貫いた。

 

「っ、アンクリボーが破壊されたことで、僕はトラップ発動<魂の綱>! 僕はライフを1000払い、デッキよりレベル4のモンスターを特殊召喚する!」

 

 デッキからオレは目当てのカードを素早く抜き取る。

 選んだのは<混沌の使者>。そしてそれを、守備表示にしてフィールドへと特殊召喚させた。

 

 

 

 遊太LP1100 → 100

 

<混沌の使者> 

闇属性|レベル4|戦士族/効果

攻1500|守0

 

 

 

「手札から伏せていたのはそれか! でも、どれだけ壁モンスターを増やしても無駄だぜ! バトルフェイズ!」

 

 フィールドに現れたネオ・ブルーアイズの一頭が青白い閃光を口膣に発生させた。

 

「ネオ・ブルーアイズよ、ブルーアイズ・タイラント・ドラゴンを粉砕せよ――――ハイパー・アルティメット・バースト!」

 

 事象全てを焼き払う強大な光線。

 それからオレを庇うようにタイラント・ドラゴンが身を盾にすれば、光の粒子へと変換し破壊された。

 しかしタイラント・ドラゴンの奮闘も虚しく、光線は止まることを知らない。勢いはいくらか衰えたものの、未だ致死量の力がオレへと差し迫ってくる。

 

「っ、まだだよ! トラップカード<ガード・ブロック>を発動! この戦闘ダメージを0にする!」

 

 伏せていたトラップが顕になり、カードの中からバリケードが形成される。オレに差し迫っていた光線は、残り拳ひとつ分といったところでバリケードに進行を阻まれ、そのまま大気中へと霧散した。

 

「さらに<ガード・ブロック>の効果! 僕はデッキからカードを1枚ドロー!」

「はっ、悪あがきに過ぎないな! ネオ・ブルーアイズのモンスター効果! 融合デッキから<ブルーアイズ>融合モンスターを墓地に送ることで、最大2回まで攻撃回数を増やすことができる!」

 

 そう言ってモクバおじさんは、エクストラデッキから2枚目の<真青眼の究極龍>を墓地に送る。

 

「さぁ、これでお前のフィールドには<魂の綱>で出した、壁モンスターが1体のみ。どう足掻いても残り1回の攻撃は受け止めきれないぜ」

「……」

「覚悟はできてるな、遊太」

 

 まだ攻撃していないネオ・ブルーアイズの2つの頭が、先ほどと同じように光を溜め込む。

 1つ目の頭はオレの場にある<混沌の使者>に向かって。

 2つ目の頭は場がガラ空きとなった瞬間、すぐさまオレを撃ち抜くために。

 最後まで抵抗を諦めないと、オレのフィールドにいる<混沌の使者>が防御体制に入った。

 

「これで最後だ! ネオ・ブルーアイズよ敵を蹴散らせ!!」

 

 宣言が下された刹那、<混沌の使者>が破壊される。

 光の粒子へと変わる際、心なしかオレの方を見つめてくれた気がした。申し訳なさそうに。自分の不甲斐なさを呪うかのように。オレはそれを見送ったあと、静かにカードを墓地へと送る。

 それと同じタイミング――モクバおじさんもエクストラデッキから3体目の<真青眼の究極龍>を墓地へと送った。

 

 続く第三射。

 すでにオレのフィールドにカードは1枚もない。もちろん手札にもこの攻撃を防ぐ手段はない。

 直撃すればオレの負け。ライフポイントは0へと切り替わり、すぐさまデュエルは終了する。今まで破壊されていったモンスターたちの頑張りも、これまで練習してきた努力も全てが水泡に帰す。

 それなのにオレの手は墓地へと置かれたまま、動くことなく――。

 

 

 

 

 

 

 武藤遊太の敗北を、会場にいるほとんどの人間が察した。

 なぜなら最後の攻撃を受ける際、彼は<混沌の使者>を墓地に送った時のまま、微動だにしなかったからだ。

 フィールドにカードはなし。頼みの綱であろう手札すら、彼は見ようとしなかった。

 

 武藤遊太を知る少年は選手待機室で叫んだ――諦めちゃダメだ、と。

 武藤遊太を知る少女は観客席で願った――どうか負けないで、と。

 

 しかし一人だけ。いや、このデュエルスタジアム内で二人だけ、笑った男たちがいる。

 武藤遊太という少年を熟知し、何より彼のデュエルをこよなく愛する悪魔と、初めて会った際、彼のデュエルセンスに驚かされた頬にマーカーを持つ男。

 

 彼らが笑みを浮かべると同時、モクバによって放たれた三度目の攻撃はフィールドのみならず、デュエルスタジアムを一瞬だけ白へ塗り潰した。

 誰もがこのデュエルの行き先を確信し、誰もがこの後の光景を予見したはずだ。ライフが0になり、その場で悲しみの面貌を見せる武藤遊太――彼がいるはずだと。

 

 なのに――。

 

 

 

 

 

 

 遊太LP:100 → 100

 

「なんで……ライフが減ってないんだ?」

 

 オレのライフポイントが映し出されたスタジアムのモニターを見て、モクバおじさんは呟く。

 やっぱり、おじさんは知らなかったようだ。

 

 

 ●

  

 

「……僕はモクバおじさんの攻撃宣言時、あるカードの効果を発動したんだ」

「あるカード……?」

「うん。モクバおじさんが最初に破壊したクリボーンだよ」

 

 オレがそう言えば、半透明になったクリボーンが背後でふわふわと浮かんだ。

 

「クリボーンの効果は、相手の攻撃宣言時、自身を除外することで墓地のクリボーモンスターを特殊召喚できるもの」

「っ、まさか、そういうことかよ……」

「僕はクリボーンの効果でもう一体のアンクリボーを特殊召喚し攻撃を防いだんだ」

 

 デュエルディスクをモクバおじさんに見せながら種明かしをすると、墓地ゾーンからソリッドヴィジョンとしてアンクリボーが半透明で飛び出す。

 ありがとう、クリボーン、アンクリボー。お前たちのおかげで助かったぜ。

 そして……。

 

「僕はアンクリボーの効果を発動! このカードが効果または戦闘で破壊された時、このエンドフェイズ<死者蘇生>のカードを手札に加える!」

 

 出てきたアンクリボーは、オレのデッキから<死者蘇生>のカードを探り当てると、いつでも渡せるよう大事そうに抱えた。

 そんな同胞の一大仕事見届けたからだろう。背後で浮いていたクリボーンも、最後に満足げな鳴き声を漏らすと、風に乗って消失する。

 二度目の別れ。今度はアンクリボーも笑顔でクリボーンを見送った。

 

 

 

 

 

『な、な、な、な……なんという展開だああああああ! 誰もが彼の敗北を察したことだろう! しかし、しかし! ネオ・ブルーアイズの3回攻撃を受けてもなお、武藤遊太選手は立っているぅ!! そればかりか、次のターン死者蘇生を使うための効果まで発動したぞう!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほっ……」

「ふふ。始まる前はあー言ってたけど、龍可も心配だったんだね」

「なによっ、からかわないで! もぅ!」

「いやー、儂はヒヤヒヤしちゃったねぇ」

「やるな、あの少年」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーもう、だから何も心配する必要ないって言ったじゃん! 遊太がこんなところで負けるわけがないんだもんね!」

「ふ、そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 観客が盛り上がりを見せる中、対してオレの前に立つモクバおじさんは余裕そうな顔をしていた。

 場にあるネオ・ブルーアイズも同様だ。オレを見下ろしながら、その目は敗北を微塵も感じていない強者の光を持っているように思える。

 

「確かに、このドラゴンの攻撃を全て受け切ったのは驚きだったぜ。でもな、別にネオ・ブルーアイズが破壊されたわけでもない。攻撃力4500のこのモンスターは、死者蘇生を使ったところで、そう易々と越えられるものでもないしな」

「分かってる……でも僕は、次のターンでおじさんに勝つ!」

「だったら見せてみやがれ、お前のラストターンをな! 俺はカードを一枚伏せてターンエンド!」

 

 モクバおじさんがターン終了を宣言したことで、オレの墓地に眠るカードが効果を発動する。

 

「エンドフェイズ時、僕はこの墓地にいる<混沌の使者>の効果を発動! 墓地にある光属性モンスター<輝白龍ワイバースター>と闇属性モンスター<アンクリボー>を除外し、手札に加える! さらに発動していたアンクリボーの効果で、死者蘇生をデッキから手札に!」

 

 アンクリボーが抱えていた死者蘇生のカードが、俺の手札へと落とされる。そしてアンクリボーはそのまま、ワイバースターと共に、墓地にいた混沌の使者を引っ張り、現世へと戻してきた。

 

「僕のターン――――ドロー!」

 

 さっとドローしてきたカードを確認する。

 

 モクバおじさんを倒すための条件は割と複雑だ。

 攻撃力4500のネオ・ブルーアイズ。奴を倒さないと話は始まらないが、奴を倒すのが厄介である。

 それは対象を取った効果はできないということ。厳密にはできないのではなく、墓地にいるネオ・ブルーアイズの効果で、対象を取る効果は全て無効にされるのだ。

 だから攻撃力を下げたり、直接破壊したり、除外する効果は軒並み3回打たなければ、フィールドのネオ・ブルーアイズに届かない。実質2つ耐性が付けられている状態と言えば簡単だろう。それだけ連続で相手をどうこうできるカードは、今のオレの手札にない。

 

 でも、それでも……勝利のピースはすべて揃っている!

 

「―――、僕はチューナーモンスター<青き眼の乙女>を召喚!」

 

 フィールドに艶やかな銀髪をした女性が降り立つ。

 その女性は一度モクバおじさんのデュエルディスクを見つめるなり、ふっと瀟酒な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

<青き眼の乙女>

光属性|レベル1|魔法使い族/チューナー/効果

攻0|守0

 

 

 

 

「? そのカードは俺も知ってるぜ。でも、この場でそいつを出しても大した意味はないはずだろ」

「うん。でもどんなカードだって、他のカードと組み合わせれば、無限の可能性を秘めているんだ……僕は手札から<魔法石の採掘>を発動する!」

「っ、何ぃ!?」

 

 オレが魔法カードを発動すれば、モクバおじさんは予想外の攻撃を受けたとばかりに驚いた。

 

「いや、待て、お前はそもそも魔法カードを使ってないはずだろ? 墓地から回収するような魔法カードなんて1枚も……まさか!?」

「そうさ。一度だけ、僕はデッキから好きな魔法カードを墓地に置くことができたんだ」

 

 あの時、マジカルシルクハットを使った本当の理由。

 レベル6チューナーを守るためだけに発動させていたのか。

 タイラント・ドラゴンで復活させるトラップカードのためだけに発動させていたのか。

 いや違う。本当は三つ目の狙いがあった。

 

 オレはモクバおじさんがブルーアイズを使うと分かった瞬間、この作戦を思いついた。いや、正確には今の状況のようなことになるだろうことを、半ば確信していた。

 それはオレのデッキなんかより、モクバおじさんの方がブルーアイズは何倍も使いこなせるだろうという信頼もある。

 故に仕込んだ。

 それに繋げるための布石を打った。

 ブルーアイズの究極合体。そのドラゴンがオレの前に立ちはだかり、対象効果の耐性を持つという状況を打開するために!

 

「いくよ、これが僕の考えたネオ・ブルーアイズを破るための秘策だ! 僕は手札の<混沌の使者>と<青眼の白龍>を墓地に送り、代わりに墓地にある<滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)>を手札に加える!」

「ちぃっ!」

「さらに手札から装備魔法<ワンダー・ワンド>を発動! 僕が対象に取るのは<青き眼の乙女>! そして対象となった<青き眼の乙女>の効果発動! 僕は墓地にある<青眼の白龍>をフィールドに特殊召喚する!」

 

 青き眼の乙女の手中に杖が収まる。

 すると彼女の体内から、まるでホースの口から水が飛び出すかの如く<青眼の白龍>は現れた。

 

 

 

 

 

<青眼の白龍>

光属性|レベル8|ドラゴン族/通常

攻3000|守2500

 

 

 

 

「いくよ、モクバおじさん! 魔法発動<滅びの爆裂疾風弾>! このカードの効果により、相手フィールドのモンスターを全て対象を取らずに破壊する!」

 

 天高く飛翔した<青眼の白龍>は、やがてある程度の高度まで到達すると、モクバおじさんとネオ・ブルーアイズを見下す。

 その全身は陽光に濡れ、青白い鱗はきらきらと神秘の輝きを放った。まぶしさのあまり、モクバおじさんとネオ・ブルーアイズが目を細める。

 

 大きく仰け反り、喉奥に力を溜めるブルーアイズ。そのまま一気に放たれた、この世の全てを焼き尽くす光線。滅びという名を体現してみせた必殺の一撃に、ネオ・ブルーアイズは何を思っただろうか。

 

 ひとつひとつの頭が、やがて光に飲まれ蒸発する。光の粒子になることさえ許されず、塵すら残らないその破壊痕は、自然と観客からも言葉を奪い取ってみせた。

 

「ネオ・ブルーアイズ……! だが、まだだ! 俺もこのまま、ただやられるだけなんてカッコ悪いんでな! 速攻魔法<青き眼の激臨>を発動! 手札と墓地を全て除外し、デッキにある<青眼の白龍>を任意の数だけ特殊召喚する! 俺のデッキに入っている2体の<青眼の白龍>よ、力を貸してくれ!」

 

 いち早く切り替えたモクバおじさんが、そう高らかに呼び出すと、2体の<青眼の白龍>が防御体制でフィールドに着地する。睨み合う3体の<青眼の白龍>。ドラゴンたちの瞳には、少しだけナニカを懐かしんでいるような感情が見てとれた。

 

「モクバおじさん。分かっていると思うけど……」

「ああ、分かってるぜ……でもな、その上ではっきり言う! 甘ったれるな、遊太! お前は勝ちを捨てるほど愚かなデュエリストなのかよ!? 例え一寸先が闇であろうと、俺はデュエリストとして最後まで足掻く! だからお前も、最後の最後まで手を緩めることなく掛かってこい! ………なぁんて、兄様なら言うのかもな」

 

 モクバおじさんがそう笑うのを見て、オレも覚悟を決める。

 例え恩義があろうと、情があろうと、こうして目の前に相対すれば1人のデュエリスト。そこに油断なんてものは必要ない。ましてや、情けも必要ない。

 

 分かったぜ、モクバおじさん……オレはアンタを全力で倒す!

 

「手札の<暗黒龍コラプサーペント>のモンスター効果により、墓地の<伝説の白石>を除外し、攻撃表示で特殊召喚! そして僕は魔法カード<死者蘇生>を発動し、墓地の<ブルーアイズ・タイラント・ドラゴン>を甦らせる!」

「やはり来たか……!」

 

 墓地にいたタイラント・ドラゴンが、死者蘇生のマークをした十字架を壊し蘇る。それに続くように、白石を口に加えたコラプサーペントも場に降り立った。

 2体のドラゴンは、この状況を理解しているのか勇ましく咆哮する。

 しかし、これだけでは足りない。

 

「まだ僕のメインフェイズは終わってない! 僕はレベル8の<青眼の白龍>に、レベル1の<青き眼の乙女>をチューニング!」

 

<青き眼の乙女>が円形のフレームへと転じ、<青眼の白龍>を飲み込んだ。8つの星へと分解されるブルーアイズ。だがその表情に憂いはなく、逆にこれから起こることへの高揚しているようにさえ見えた

 そうしてひとつひとつの星が規則正しく縦に並べば、やがて天をも貫く光の柱を形成される。

 

「聖なる魂よ。白き力を根源とし、古の時代より呼び覚ます。

 シンクロ召喚――――現れろ<青眼の精霊龍(ブルーアイズ・スピリット・ドラゴン)>!」

 

 青から白へ。白から光へ。

 光の粒がいくつも舞い落ち、その中で佇む1体の龍。

 神話を彷彿とさせるほど美しく、その姿を見入った者は誰であろうと忘我の境を彷徨うことだろう。

 

 

<青眼の精霊龍>

光属性|レベル9|ドラゴン族/シンクロ/効果

攻2500|守3000

 

 

「いくよ、モクバおじさん」

「来い、遊太」

 

 デュエリストにそれ以上の言葉は不要。

 交わさなくても、お互いに理解している。

 

 オレはそのままバトルフェイズに入り、全てのドラゴンでモクバおじさんを攻撃した。場に2体のブルーアイズしかいないモクバおじさんには、それを受け切る手段はない。ましてや、<青き眼の激臨>で、手札も墓地も全て除外したのだから、当然のことだろう。

 タイラント・ドラゴンが<青眼の白龍>らを破壊し、<青眼の精霊龍>らがガラ空きになったモクバおじさんを攻撃する。

 

 ――そうして、決着はついた。

 

 

 

 

 モクバLP2800 → 0

 

 

 

 

 

『しょ、勝者決定ッ! 2回戦進出は武藤、遊太ああああああああああ!!』

 

 

 実況が響き渡る。

 なんだか、すごい頭を使うデュエルをしたから、どっと疲れが出てきた。まだ一回戦だというのに、この消耗。これは明日の本戦で死んでしまうんじゃないだろうか、なんていう縁起の悪いことを考える。

 堪らずオレはその場で尻から崩れ落ちた。もう一歩も歩けないぜ……。

 

「強くなったな、お前。そいつを返しといて正解だったぜ」

「あはは……ありがとう、モクバおじさん」

「なんだー、そのしけた面? 勝った奴がそんな顔するもんじゃないぜ? ほら、子供は子供らしく笑え!」

「え、ちょ……や、やめっ! ふぁふぇふぉー!」

 

 そう言って、近づいてきたモクバおじさんがオレの頬を引っ張り、笑顔に変えさせてくる。

 な、なんて体力お化けなんだ、このおじさんは……!? オレの抵抗を全ていなしながら、無理やり頬を吊り上げてくるなんて、信じられないんだぜ!?

 内心でモクバおじさんのまだ見ぬ若さに戦々恐々としながらオレは、スタジアムのモニターに歪な笑みを延々と映されるのであった。

 

 

 

 蛇足。

 後日モニターに映った顔が龍可とママに撮られていたのを知るのは、また別のお話。




当初の予定ではライフ8000 でバチバチに殴り合ってもらおうかとも思ったフォーチュンカップ
まぁ、これの倍の長さになるところだったから、ある意味このままでよかったかもしれませんね


さて、次回とかはジルVS十六夜アキになるんだが、、、
ほぼアニオリカードばっかだよなぁ、ジルって
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