5D's:武藤遊戯の孫   作:ジャガイモ

2 / 24
みなさんお気に入り登録などありがとうございます!
作者の暴走によって出来た作品ですが、投稿がんばります。

デュエルに関して:
本作ではマスタールール2
優先権は今のものと一緒です。


第一話 ディフォーマーデッキ

 

 

「ねぇねぇ、遊太ってデュエルやるの!?」

 

 龍亞と龍可に自己紹介をすれば、食いつくように龍亞からそう尋ねられた。

 

 デュエルをするかどうか、と聞かれれば別にしなくもないというのが答えである。亀のゲーム屋はほとんどカード取扱専門店みたいなため、お客対応のためにもデュエルはできなくてはならない。ゲームなどほとんど興味がないママですら、デュエルモンスターズだけはできるほどだぜ。

 

 持っているデッキだってオレは3つある。そのうちの1つは、デュエリストなら誰もが欲しがるじーちゃんから貰ったもので、今は大切にばーちゃんが預かってくれている。残りの2つが、基本的にオレが持ち運んでいるデッキだ。

 

 しかし、だからと言って、オレは決闘者(デュエリスト)ではない。デュエルモンスターズも、お客に誘われたらやるくらいで、自分から進んでやったことはない。

 

 オレはどちらかと言うとデジタルゲームが好きな人間なんだ。それこそ、F Fとか、M Hとか、ポ○モンとかをこよなく愛している。理由は特にない。ただなんとなく、デュエルモンスターズに打ち込む機会がなかった。単純に友達がいなかったからかもしれないけどさ、ははっ! ……はぁ……。

 

「できるけど……って感じかな」

 

「え! じゃあ、俺とデュエルやろうよ! いっつも龍可相手だからつまんなくてさ」

 

 にかっと歯を見せて笑う龍亞とは別に、側で聞いていた龍可が頬を膨らませた。

 

「失礼しちゃう。龍亞だって弱いじゃん」

 

「これから強くなんの!」

 

 双子特有の軽い口喧嘩なのだろう。オレは微笑ましいと思いながらも少しだけ待った。

 

「……まぁ、接客として頼まれたら僕は誰とでもデュエルするよ」

 

「じゃあ!」

 

「うん、やろう」

 

 オレはデッキホルダーに入れてあったデッキを1つだけ取り出して言った。

 このデッキにはある人から譲り受けた大事なカードが入っている。デュエリストの間ではかなり有名な代物らしく、お金に替えようと思えば数百万はするらしい。

 ゲーム屋として、それを個人の所有物にするのはどうなんだ、と思うけど、まぁ大事なものなので売る気はないんだぜ。

 

「天兵から聞いたんだけど、ここってすんごい強いデュエリストが集まってんでしょ! もしかして、遊太も強い?」

 

「どうだろう。そういうのあんまり意識したことないなー」

 

 お客さん相手には負けてあげるのがうちの常識だ。デュエルモンスターズで真剣勝負をしたことがないため、世間一般的に自分がどれほどの強さを持っているのか分からない。ゲーム屋の店員として、弱いということはないと信じたいが。

 

「もう……龍亞ったら迷惑かけすぎ。遊太が困ってるでしょ」

 

「だって、俺は強いやつとデュエルして腕あげたいんだ!」

 

「だからって直球でそういうこと聞く?」

 

「じゃあ、どうやって聞けばいいんだよ」

 

 つんとした態度で龍亞が言い返すが、呆れて声も出なくなったらしく龍可が首を振る。

 仲がいいのか悪いのか、ちょくちょく分からなくなる双子だ。兄弟がいないから、少しだけ二人の関係性が羨ましく思える。口にしたらきっと、二人から「変なの」って言われそうだから、オレは内心でそれを留めた。

 

「どうやってデュエルする? 一応、僕もデュエルディスクはあるけど」

 

 オレはそう言って、ちらりと龍亞が装着している大きさが不釣り合いなデュエルディスクを見る。さっきから、度々装着部分からズレてるため、あれではデュエルがしにくいはずだ。別にデュエルはディスクが無くてもできるし、なんなら外に出るのが面倒くさい。

 

「勿論、デュエルディスクでやろうよ! 俺のディフォーマーを遊太にも見てほしいんだ!」

 

 案の定とでも言うべきか、龍亞が提案してきたのはデュエルディスクを使用してのデュエルだった。まぁ、今日のデュエルモンスターズで、デュエルディスクを使わないのはナンセンスだろう。ライディングデュエルというものが流行っているくらいだ。みんなデュエルに何かしらのスリルを求めているのかもしれない。

 

「オッケー。なら外に出てやろっか」

 

 出していた脚立やら何やらを諸々片付け、きちんと扉に「対応中」という紙を貼る。

 今はママがいないし、店を開けておくわけにもいかない。常連さんが来ても、オレがデュエルしているのを見れば、状況を察して待ってくれるだろう。今は龍亞のことだけに集中していても大丈夫のはずだ。

 

 オレが店を空けるための準備をしている間、龍亞はデュエルディスクをうまくはめるために四苦八苦していた。

 

「ごめんね、突然こんなことになって」

 

 話しかけてきたのは龍可だった。

 別に謝られるようなことはされていないし、そこまで気に病むことでもないと思うんだけど。

 

「いいよ、気にしなくて。それより龍可はデュエルしないの?」

 

「私はいいかな。デュエルって疲れちゃうし」

 

「そうなんだ」

 

 なんとなく龍可が言っている事に共感できる。昔からオレもデュエルすると酷く疲れたりした。

 

「じゃあ、今日は兄貴の応援と付き添いだね」

 

「うん。龍亞ったら危なっかしいから」

 

「——っ」

 

 そう言って優しくはにかむ彼女に、オレはまたしても胸の高鳴りを感じた。

 おかしいな、今までこんなこと無かったんだけど……。

 

「どうしたの?」

 

「え……? あ、いや! なんにもないよ! なんにも!」 

 

「そう? ならいいけど」

 

 おかしいの、と小さく笑う龍可に俺は内心冷や汗をかく。

 今まで勉強とかもネットを通じてやっていたから、同年代の女の子と関わること自体が少なかった。まさか自分がここまで女の子に弱いとは思わないじゃんか。店番をやっている時は、こんな風になることなんて一度もなかったんだけどなぁー。

 

「よし、できた! 遊太ー、準備できたよー!」

 

「あ、うん!」

 

 どうやら龍亞の準備は終わったらしい。聞いていた龍可も、そっとデュエルの邪魔にならないよう離れた。

 

 よ〜し、集中集中。

 龍亞は強い人とデュエルして腕を上げたいって言ってたんだ。ここで不甲斐ないデュエルをしたら、流石に恥ずかしいぞ。がんばれオレ!

 

 ぎこちない手つきでデュエルディスクにデッキをセットし、大きく深呼吸。ディスクの電源を入れて展開すれば、聞き慣れた駆動音がオレと龍亞の間で鳴り響いた。

 

 

 そう言えば、同年代の子とデュエルするの、これが初めてかも……。

 

 

 一瞬、その考えが頭の中で過ぎる。同年代の友達が1人もいないオレは、それだけで何だか楽しくなってきた。

 

 昔から友達とゲームをするというのに憧れはあったんだ。1人でデジタルゲームをしながら、顔も見えない人間と協力することはあった。ママやばーちゃんと下らないゲームをする日もある。

 

 けれど、友達と笑いながらゲームした記憶がオレにはない。いつも部屋にオレだけがいて、いつも画面にはオレの操作しているキャラしか映らない。心にぽっかりと空いた穴のように、ただならぬ喪失感を覚えていた毎日。

 

 オレは、目の前でデュエルディスクを構えている龍亞を見て、自然と口角が緩むのが分かる。

 

 

 ――さっきまでの緊張は、もう無い。

 

 

「それじゃいくよ!」

 

「うん!」 

 

「「決闘(デュエル)!!」」

 

 俺と龍亞の掛け声が店前の広場で木霊した。

 

 

龍亞L P:4000

遊太L P:4000

 

 

「よーし俺のターン、ドロー! シャッキンー!」

 

 龍亞はどこぞの仮面ヒーローみたく、大袈裟に腕を振り上げてカードを引く。

 引いたカードを覗き見、ニヤリと笑った。

 どうやら、いいカードを引いたみたいだ。

 

「いきなり来たー! 俺は〈D(ディフォーマー)・モバホン〉を召喚!」

 

 

〈D・モバホン〉

地属性|星1|機械族/効果

攻100|守100

 

 

 龍亞の宣言と共に出てきたのは、黄色い携帯を模したロボットだった。ソリッドビジョンで描かれる〈D・モバホン〉の変形は、男子なら誰もが心踊らされることだろう。

 

 龍亞も自身が召喚したモンスターを見て「かっちょいいー」と見惚れていた。かくいうオレも、カッコいいと素直に思ったぜ!

 

「よーし、遊太の度肝をぬいちゃうもんねー! モバホンの効果発動! モバホンは1から6のランダムな数字分、デッキの上からカードをめくり、その中からレベル4以下の〈D(ディフォーマー)〉と名のついたモンスター1体を特殊召喚できるんだ!」

 

 サーチ&特殊召喚!?

 

 へぇ……なかなかに強力な効果だぜ。攻撃力と守備力は低いが、その分展開力があるんだなぁ。

 

 オレの気持ちが伝わっているのか、心なしか〈D・モバホン〉がドヤ顔な気がする。いや、あれは元からそういう作りかも?

 

「それじゃ、いくぞ! ダイヤル〜〜〜オーっ、うぉっとと」

 

 デュエルディスクが身体に合っていないせいで、龍亞は動かした腕によってバランスを崩した。あれじゃ折角の強力な効果も格好がつかない。

 龍可も己の兄の不甲斐なさにため息をついていた。

 

「はぁ……うるさいでしょ、龍亞のデュエル」

 

「あはは、まぁ……」

 

 答えづらい。

 

「余計なこと言うなよ、龍可! 今大事なところなんだ! 遊太も龍可の小言は気にしなくていいからね」

 

 龍亞がそう言うと、こほんと小さな咳払いをした。

 

「——じゃあ、気を取り直して。ダイヤル〜〜〜オーン!」

 

 モバホンの胸部にある1から6の数字部分が、ぴこぴこと音を立てて点滅を始めた。やがて光は3の部分で止まる。

 んー、反応しづらい数字だぜ!

 

「よし、3で決まった! 3枚めくるぞ!」

 

 そろーっと目を細めた龍亞は、今しがた自分が引いたカードの内容を確認する。

 すると、その中に当たりでもあったのか、快活な笑みを浮かべた。

 

「やりやりやりー! めくったカードの中から俺は、レベル4〈D・ラジカッセン〉を守備表示で特殊召喚だ!」

 

 出てきたのは赤く塗装されたラジオだった。モバホンとは違って人型のロボットにはならないのかな? それとも、あれが守備表示における〈D・ラジカッセン〉の姿なのかもしれない。ちょっと残念。

 

 

〈D・ラジカッセン〉

地属性|星4|機械族/効果

攻1200|守400

 

 

「このままカードを1枚伏せてターンエンド! どう、遊太! 俺のカードたちかっこいいだろ?」

 

「うん! すごくかっこいいよ!」

 

 かっこいいかと聞かれたため、オレは素直に思っていることを口にした。

 対して龍可は「男の子って分からない」と言いたげな表情を浮かべている。まぁ、変形だとかロボットとかは男だけのロマンって感じがするし、仕方ないよね!!

 

 さて、攻撃力の方が高いラジカッセンをわざわざ守備表示で特殊召喚した意味——それを考えながら、オレは自身のターンを迎える。

 

「僕のターン、ドロー。龍亞、君がラジカッセンでどんなことを企んでいるのかは分からないけど、僕は僕なりに全力で行くよ! 手札から魔法カード〈予想G U Y〉を発動! フィールドにモンスターが存在しない時、デッキから星4以下の通常モンスター1体を特殊召喚する。来て、〈暗黒の竜王〉!」

 

 迸る青い稲光。頭上に紫色のゆらぎが出現し、そこから翡翠の鱗を持ったドラゴンが1体顔を覗かせる。そして、オレの場に何もないことを確認すれば、そのドラゴンは優雅な姿でその地に舞い降りた。

 

 

〈暗黒の竜王〉

闇属性|星4|ドラゴン族/通常

攻1500|守800

 

 

「すげー! 遊太のカードもかっちょいい〜!」

 

「ありがとう、龍亞! でも、まだ僕の召喚権は残ってるよ! 僕はチューナーモンスター〈ガード・オブ・フレムベル〉を通常召喚!」

 

 モンスターカードを場に置けば、小柄な青竜が灼熱のバリアを作って参上した。共に並ぶ《暗黒の竜王》と《ガード・オブ・フレムベル》が、獰猛な瞳を龍亞に向ける。

 

 

《ガード・オブ・フレムベル》

炎属性|星1|ドラゴン族/チューナー/通常

攻100|守2000

 

 

「え、ちゅ、チューナー!? まさか遊太って……シンクロ使うの!?」

 

「え? うん。使うよ?」

 

 オレがあっけらかんとした態度で返したからなのか、龍亞が驚きつつも罠発動の宣言をした。

 

「だ、だったら永続罠を発動、《デビリアン・ソング》! 効果はさっき教えてもらった通り! よかった〜、遊太にこの罠カードをお勧めされてて……」

 

 ほっと胸を撫で下ろす龍亞とは対照的に、罠カードからは赤いドレスを着込んだ黒い長身の女性が出現する。肌は黒く、顔は叫びを体現したような表情。幼稚園児が見たら絶叫ものだ。そんな女性が、オレの従える2体のドラゴン目掛けて魂を込めた歌を飛ばすと、再び罠カードへと戻った。

 

 

〈暗黒の竜王〉

星4⇨星3

〈ガード・オブ・フレムベル〉

星1⇨星1

 

 

 んンー、やるな龍亞。

 オレのE Xデッキに、レベル4シンクロモンスターは入っていない。龍亞が狙ったにしろ、狙っていないにしろ、これでシンクロ召喚は完全に防がれてしまったわけだぜ。

 

「だったら、バトルフェイズ! 僕は〈暗黒の竜王〉で〈D・ラジカッセン〉を攻撃!」

 

 喉奥で炎を溜め、そのまま勢いよく〈暗黒の竜王〉はラジカッセンに向けて噴き出す。

 が、ラジカッセンが破壊されることなかった。守備力たった400のはずのモンスターが、ドラゴンの灼熱を受けてもピクリともしなかったのだ。

 

「え。なんで!?」

 

「へっへ〜ん、驚いたでしょ。ラジカッセンの効果はね、1ターンに1度、〈D〉と名の付いたモンスターが攻撃対象となった時、その攻撃を無効にできるんだ!」

 

 な、なるほど。だから攻撃力で上回っているはずの〈暗黒の竜王〉で破壊できなかったのか……!

 たぶん目的は攻守ともに低いモバホンを守るため……。

 

「やるね、龍亞! だったら、〈ガード・オブ・フレムベル〉でモバホンを攻撃!」

「迎え撃て、モバホン!」

 

〈ガード・オブ・フレムベル〉は灼熱の炎を放出させながら、縦回転で突進する。しかしモバホンはそれに臆することなく、転がってきた〈ガード・オブ・フレムベル〉へと拳を繰り出した。

 両者ともに攻撃力は100。全く同じ力が衝突したため、2体のモンスターは破壊された。これで次のターン、モバホンによる〈D〉モンスターの特殊召喚はできない。

 

 シンクロ召喚は防がれたものの、未だオレのモンスターの攻撃力の方が高い。手札には攻撃力2000の〈アックス・ドラゴニュート〉もある。ラジカッセンが場に残っているとは言え、有利なのはオレの方だろう。

 することもできることもないし、ここでターンを譲っても問題なし。

 

「僕はこれでターンエンド」

 

「なら俺のターン、ドロー! シャッカーン、うぉっとと」

 

 またもや大振りでカードを引き取ろうとしたため、身体に合っていないデュエルディスクにバランスを崩されてしまう。うん、あのディスクは今すぐに代えた方がいいと思う!

 

「もう、またカッコつけようとするから」

 

「うるさい! 龍可は少し黙ってて!」

 

 龍可からの野次を一蹴すれば、龍亞は飛び切りの笑顔で引いたカードを見る。

 

「これまた、いいもん引いちゃったもんね〜! 遊太、これで勝負は決まりかな!」

 

「え——」

 

 まさか……相当攻撃力の高いモンスターでも引き当てたのか?

 

「よし、出番だ! 手札より〈D・ビデオン〉を召喚 ! ジャッジャジャーン!」

 

 新たに出てきたのはビデオカメラを模したロボット。そいつが変形し、某戦隊モノロボのように場に出てきて腕を組んで参上する。

 

〈D・ビデオン〉

光属性|星4|機械族/効果

攻1000|守1000

 

「攻撃力1000……それも通常召喚で?」

 

「ちっちっちっ〜。〈暗黒の竜王〉より攻撃力が低いからって油断しちゃだめだよ、遊太! 〈D・ビデオン〉にはものすごい効果があるんだ! 今からそれを見せてあげるね! 装備魔法〈デーモンの斧〉をビデオンに装備!」

 

 ビデオンの手に悪趣味なデザインの斧が顕現する。

 一振り。二振り。

 〈デーモンの斧〉を吟味し終えたビデオンは、あからさまにやばい目つきで〈暗黒の竜王〉を見た。

 

 

〈D・ビデオン〉

攻1000 ⇨ 2000 ⇨ 2800

 

 

「攻撃力2800!?」

 

「そうさ! 〈デーモンの斧〉の効果でビデオンの攻撃力は1000U P! さらに、ビデオンに装備されているカード1枚につき、ビデオン自身の効果で攻撃力が800U Pするんだ!」

 

 確かに、そう易々とは越えられない攻撃力を実現させている。次のターン、オレの手札にある《アックス・ドラゴニュート》でも越えられない数値だ。

 や、やばい……!

 

「バトル! 〈D・ビデオン〉で〈暗黒の竜王〉に攻撃するよ!」

 

 某ホラー映画の殺人鬼が如く振り下される斧。〈暗黒の竜王〉も抗おうと天に逃げるが、ビデオンが斧を投げつけたことによって破壊される。

 

「グッ——!」

 

 自身のモンスターが破壊された擬似的衝撃がオレを襲った。

 

 遊太L P:4000⇨2700

 

「俺はこれでターンエンドだよ。えっへへ、これで次のターンにビデオンがダイレクトアタックできれば俺の勝ちだね! どうどう、すごいでしょ!」

 

「うん、すごいや! まさか、いきなり攻撃力2800のモンスターを出すなんて」 

 

「もう、遊太もこんなことで一々龍亞を煽てなくていいのに……」

 

 龍可はああ言っているけど、龍亞の実力は純粋に評価してもいいと思う。

 

〈D〉はパワーの小ささが欠点ではあるが、それをきちんと装備カードを使って補えている。デッキ構築力もさることながら、それらを総じて扱いきれている戦術性も龍亞の評価できるポイントだ。本当に今のデッキは熱意を込めて作ったに違いない。

 

「じゃあ、僕のターンだね……ドロー!」

 

 来い、この場を逆転できるカード!

 

 オレが内心で必死に嘆願しながら引いたカードは、しかし、まさかの〈クリボー〉だった。あの時、デッキホルダーに入れたままにしてしまったのだ。単純にやらかしてしまっている。

 

 それでも、もしかしたらこの《クリボー》が今の戦況を覆せるカードかもしれない。

 

 オレはそんな淡い期待を孕ませてクリボーのテキスト欄を読んでみるが、攻撃力守備力ともに、今の〈D・ビデオン〉を上回ることができないカードだった。

 

 ……と、とりあえずやれるところまでやってみよう。

 

「僕は〈竜の霊廟〉を発動! デッキからドラゴン族モンスターを1枚墓地へ送ることができる! 僕は〈砦を守る翼竜〉をデッキから墓地へ! さらに、〈竜の霊廟〉の追加効果により、もう1枚ドラゴン族モンスターを墓地へ送る! 僕は〈伝説の白石〉を追加で墓地へ!」

 

 魔法カードから広がる草原の大地。そこは数多のドラゴンの骨と思わしきものが散らばっていた。〈砦を守る翼竜〉も〈伝説の白石〉も安らかな眠りへと誘われる。眠りにつく瞬間、〈砦を守る翼竜〉がオレの顔を見て、何かを訴えかけているような気がした。

 

「……まだだよ。〈伝説の白石〉の効果発動! このカードが墓地へ送られた場合、デッキからあるカードを手札に加えることができる!」

「あるカード?」

 

 オレは山札から〈伝説の白石〉が指定したカードを取り出した。

 

「これだよ、〈青眼の白龍〉。僕の大事なカードさ」

 

「〈青眼の白龍〉だって!? レア中のレアじゃんか!? なんで遊太がそんなもの持ってるんだよ!?」

 

「へへ、実は知り合いから譲り受けたんだ!」

 

 そうこのデッキは〈青眼の白龍〉を中心としたデッキ構成となっている。本来であれば、〈青眼の白龍〉を場に出し、そこからシンクロや融合、専用魔法カードなどを駆使して戦うのだが、残念なことに今はこのカードを生かすことができない。

 

 ごめんよ、ブルーアイズ……。

 

「悔やんでも仕方ない! 僕は魔法カード〈トレード・イン〉を発動! 残念だけど、今加えた〈青眼の白龍〉をコストに僕はデッキから2枚ドローする!」

 

 そう言って引いたカードは、相手モンスターの表示形式を変更できる〈エネミーコントローラー〉。

 そしてもう1枚は……2体目の〈ガード・オブ・フレムベル〉。

 

 たしかに〈エネミーコントローラー〉を使えば、ラジコンを守備表示にし、攻撃力2000の〈アックス・ドラゴニュート〉でも撃破は可能。けれど、それをするには攻撃を一度だけ無効にできるラジカッセンが邪魔すぎた。

 

「……僕はモンスターを伏せてターンエンド」

 

 カードを裏側にして出し、ふと龍亞が立っている方へと目を向ける。そこにはこのデュエルをありのまま楽しんでいる彼の姿が目に入った。

 

 だからこそ仕方ない。

 仕方のないことなんだ。

 

 オレは負けるべくして負ける、とこの瞬間悟らされたような気がした。




遊太のデッキその1は〈青眼の白龍〉。
これは、海馬のカードを遊戯の孫に持たせたらエモい、という気持ちだけでなりました。
原作「遊戯王」では、じーちゃんのカードを取り戻すために、遊戯が《青眼の白龍》を死者蘇生で奪い返し、海馬を破っている。(ブラックマジシャンより古参)

あとデュエルスキルは2人はまだまだです。
初回なので、小学生らしいデュエルをしてもらっています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。