5D's:武藤遊戯の孫   作:ジャガイモ

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第十九話 運命のダイスロール!

 

 

「君は私を侮っているのか? それとも本当にそれが君の実力なのか?」

「え?」

 

 龍亞がターンを終了したと同時、ボマーは責め立てるような視線を送った。

 

 いきなりの追求に、龍亞も驚きの声で返す。

 

「今、君の場にはチューナーモンスターが2体もいるはずだ。そのうえで、シンクロ召喚の素材にせず、むざむざとステープランを墓地に送った。その真意を聞いている」

「え、いや、それは……」

「エクストラデッキにカードがないのなら、私の買い被りだっただけのこと。しかし、君を一人のデュエリストとして認めかけた私だからこそ、それはあり得ないと思っている」

「……」

 

 ボマーの冷たい声に、然しもの龍亞も言葉を失った。

 

 たしかに龍亞のエクストラデッキにはシンクロモンスターが眠っている。それもレベル7のモンスターであり、ステープランとスコープンで十分召喚条件を満たすことができるカードだ。

 

 ボマーはそれを見抜き、龍亞を攻めている。

 何故それを召喚しなかったのか、と。

 

 もし、ボマーの場に新たに出たサモン・リアクターを警戒してのことならば、素晴らしい勘だ、というだけで済む。だが、龍亞のデュエルからは、そんな思慮深いデュエルは感じられなかった。

 

 故に問うた。

 

 が、ボマーの懸念を証明するかのように、龍亞の口から納得のいく答えは吐かれなかった。

 

「……残念だ。すぐに反論できるのであれば、それもまた戦術。私の方こそ思慮が足りなかったと恥じるべきところ……がしかし、どうやら君は拙速なデュエルをしているらしい」

「ち、ちがうよ、おじさん! 俺は――」

「いいか! 君のそれは余裕とも手抜きとも違う! ただの傲慢というものだ! 私のターン!!」

 

 龍亞の言い訳も聞かず、言葉を重ねるようにしてドローする。

 

 手を抜いているのはボマーも一緒のこと。

 しかし、なんの考えもなく手を抜く行為は、相手をリスペクトしていないのと同義である。

 

 ボマーは己の使命のため、そして対戦相手をシグナ―として覚醒させるために力加減を行う。されど龍亞が手を抜いた理由は、非常に浅はかで、きっと子供らしい理由なのだということをボマーは感じ取っていた。

 

 ならば、それは正さなければならない。

 

 相手が死力を尽くさないというのであれば、こちらが仕掛けるだけのこと。

 

「私は手札よりマジック・リアクターを通常召喚!」

 

 前のターン破壊されたモンスターと同一のものを召喚する。

 龍のような戦闘機がボマーのフィールドに現れた。

 

 

<マジック・リアクター・AID>

闇属性|レベル3|機械族/効果

攻1200守900

 

 

「さっきと同じモンスター……!?」

「そうだ。そして、このモンスターたちが場に揃ったことにより、リアクターモンスターは、その真価を発揮する。サモン・リアクターのモンスター効果発動!」

 

 フィールドで旋回していた3体のリアクターモンスター。それらが地面に空いた暗い穴へと吸い込まれていく。

 

 そうして穴は閉じられ、次の瞬間――光が爆ぜた。 

 

「3体のリアクターモンスターをリリースすることで、私はデッキからあるモンスターを呼び出せる!」

 

 大規模絨毯爆撃が起きたような煙が辺りに充満し、ゆっくりと風に流されていく。その煙の奥――ボマーの背後からは、3体のリアクターから凶悪な部分を抽出して作られたような、巨大な人型兵器が空へと舞い上がっていた。

 

「来い、<ジャイアント・ボマー・エアレイド>!」

「こ、攻撃力……3000……!」

 

 

 

『なんということだァ! とてつもないモンスターが現れたぞォ! 龍可選手のライフは残り1900! これでテレホンを攻撃されたら、龍可選手のライフは0になってしまう! これは絶体絶命かぁぁぁぁ!!?』

 

 

<ジャイアント・ボマー・エアレイド>

風属性|レベル8|機械族/特殊召喚/効果

攻3000 守2500

 

 

「このまま決めさせてもらおう! バトルフェイズ! ジャイアント・ボマー・エアレイドで――」

「ちょっと、待った! 待った待ったーーー!!」

 

 最後のトドメをさそうとボマーが腕を振り上げた時だ。大きな身振りをして、龍亞が叫ぶ。

 

「おじさん! バトルフェイズ開始の宣言をしたね!?」

「……なに?」

「俺だって、何も考えずにデュエルをしてるわけじゃない! バトルフェイズ開始時、フィールド魔法<ダイス・ダンジョン>の効果発動!」

 

 その宣言とともにボマーと龍亞の前にサイコロが現れる。

 

「このカードはお互いにサイコロを振り、その出た目によって効果を発動させるんだ! 俺と正真正銘、運勝負だよ!」

 

 龍亞の説明を補足するように、フィールドの上空にゲームウィンドウパネルのような説明書きが現れた。

 

 

⇊1:1000ダウンする。

⇈2:1000アップする。

➘3:500ダウンする。

➚4:500アップする。

☠5:半分にする。

☆6:倍にする。

 

 

「……なるほど。サイコロの出目により、モンスターの攻撃力が可変するのか。一発逆転を孕んだおもしろいカードだ」

「でしょでしょ!! 遊太から譲り受けたカードだもんね! 言うなれば、必殺の友情カード<ダイス・ダンジョン>! 強力なのは間違いなしってね!」

「だが、依然君の状況は悪いままに違いはない。私のジャイアント・ボマー・エアレイドの攻撃力は3000。対して、君の最低攻撃力のテレホンとモバホンは攻撃力が900。つまり40%弱の確率で、君の敗北は決定する」

「っ!!?」

 

 ボマーの早すぎる暗算に、龍亞はその確率が本当に正しいのか、急いで手で計算しようとする。その慌てっぷりに、顔だけは瓜二つである観客席の龍可が、「だれか私を殺して……」と疲れたように天を仰いだ。

 

 ちなみに、選手待機室にいた遊太や、ほかの観客、さらにはMCまでもがその計算結果が正しいのか、急いで暗算を始めていた。

 

「と、とにかく! その40%でもひけたら俺の勝ちってことでしょ! だったら、十分すぎる確率だもんねー! 俺は俺のカードを信じる!」

「フッ、そうかもしれないな」

 

 ボマーはそういって冷ややかに笑う。

 後ろでたたずんでいるジャイアント・ボマー・エアレイドも、腕組をし嘲るような態度をしていた。

 

 次のターン、どれだけ龍亞が生き残ったとしても、ライフが900を残さなければ、ボマーの勝ちはほとんど決定する。つまり、たった1100を削るだけでボマーは勝ちを確信できるわけだ。

 

 龍亞が回避できる確率は25%。

 かなり分の悪い賭けである。

 

「(追いつめた末、私に敗れるというのならば、それまでの話。運勝負に持ち込んだのが君の最大の敗因だ)さあ、ダイスを振るとしよう」

「(ど、どうしよう、絶対に負けられないよぉ……おじさんが2か4か6を出したら、ほとんど俺の負け……! 頼む、出るな、出るな~……!)よーし、こい!」

 

 両者の思惑が絡み合い、そうしてサイコロは振られた。フィールド魔法により賽の目で描かれた盤上を、踊るようにサイコロが転がる。

 

 先に動きを止めたのは、龍亞のサイコロだった。

 

「っ……! 4! やった、攻撃力アップの目だ!」

 

 その叫びとともに、説明書きを表示していたゲームウィンドウパネルの「4」が点滅する。ディフォーマーモンスターにオレンジ色のエフェクトが入り、攻撃力をあげるときの効果音が発せられた。

 

 

<D・ラジオン>

攻1800 → 2300

 

<D・スコープン>

攻1600 → 2100

 

<D・モバホン>

攻900 → 1400

 

<D・テレホン>

攻900 → 1400

 

 

「あとは、おじさんの出目で1か3か5が出れば……! お願い! 1か3か5! 1か3か5……!」

 

 なんとも情けない声で龍亞が祈る。

 脳内に再び現れた軍手の男も「1……3……5……!」と缶ビールを片手に呪文のように唱えだすのだった。

 

 のちに、この光景を見ていた遊星はこう語ったという。

 

 

 

 

『あれは、サテライトでよく見る光景だった』

 

 ――サテライトで、ですか?

 

『ああ。毎日飽きもせず、コインがでるゲームをしていた奴らが良くやるポーズに似ていた。そいつらは自分たちのことを、錬金術師と言っていた』

 

 

 

 

「お願い! 奇数が出てくれ~!!」

 

 シティ中に生放送されているのも忘れ、龍亞は大きく叫ぶ。

 それに合わせて龍可は「私のイメージ、もうダメかも」と笑顔のまま失神する。

 

 そうしてボマーが出したサイコロが出した数字は……。

 

「……やった……やった、1だ! 1が出たよ!!」

「……」

 

 

 

 

『驚異の幸運!! 勝利の女神に愛されているのか、龍可選手!? ボマー選手はここで痛恨の出目!! これでジャイアント・ボマー・エアレイドの攻撃力は2000となり、たいして龍可選手の最低打点は1400となったぁ!! その差、たったの600ポイント!!』

 

 

 

 

 ボマーのサイコロが止まったことで、ゲームウィンドウパネルの「1」が点滅する。そうして青いエフェクトが、ジャイアント・ボマー・エアレイドに発生する。

 

 あまりの攻撃力のダウンに、ジャイアント・ボマー・エアレイドは地面へと降り立ち、地面に片膝をついた。

 

 

<ジャイアント・ボマー・エアレイド>

攻3000 → 2000

 

 

「……フフフ……ハハハハハ!」

 

 そんな状況であるにも関わらず。

 なぜかボマーは高笑いをあげた。

 

「(デュエルタクティクスも、その精神性もまだまだ未熟。自分よがりなところは完璧に抜け切れていない未完成もいいところなデュエリスト……)」

 

 ボマーは龍亞をそう評する。

 嘘偽りもなければ、忖度もない。ただ実直に判断すれば、それがしっくりくる評価だと言えるだろう。

 

「(だが、ただ一点。その一点だけは、真のデュエリストとして認めなければならないところがあるらしい)」

 

 ボマーは笑いで吐き捨てた空気を取り戻すように、深く息を吸った。

 

「これが君の言う、カードを信じる心、か。やるな……しかし! 攻撃自体を防がれたわけではない! このままジャイアント・ボマー・エアレイドでテレホンを攻撃! デス・エアレイド!」

「うわああああああ!」

 

 たとえ攻撃力は下がろうとも2000という驚異のパワーを誇っている。ジャイアント・ボマー・エアレイドは機関銃を構え、それをテレホンに向かって発射した。

 

 龍亞LP 1900 → 1300

 

「私はカードを1枚伏せ、ターンを終了する!」

 

 そうして目を伏せたボマーは、少しして龍亞を見やった。

 

 

 

「……次のターン、君がこのデュエルを決めなければ、私の勝ちはほとんど決定するだろう」

「っ、そ、そんなこと、やってみないと分からないじゃんか!」

「いや、これは勘ではなく。そういう盤面だという話だ。君はしっかりと理解する必要がある」

 

 ボマーはそう言ってフィールドを見渡す。

 たしかに龍亞の場に、ジャイアント・ボマー・エアレイドの攻撃力を超えるモンスターはいない。なんどもなんども、そう都合よくダンジョン・ダイスが応えてくれるとも限らない。

 

「前のターンのように出し惜しみをすればどうなるか、今見せた小さな戦士の誇りを持つ君ならわかるはずだ……負けた時のことは考えるな! 死力を尽くせ! そうならないためにも、必死にもがき、抗い、デュエルにかける君の魂を見せてみろ!」

「っ!!?」

 

 龍亞はそう言われて思い返す。自分の振る舞いを。

 

 最初は手札事故のせいで自暴自棄になっていた。

 でもその次のターン、ダイス・ダンジョンがひけて。とんとん拍子に逆転の兆しが見えて。最後には多くのディフォーマーモンスターを展開できた。

 

 が、そこで手を緩めてしまった。

 

 さっきのターンなんてより顕著だ。友情カードと言いながら、その実、運の勝負に逃げたに過ぎない。

 

 このデュエルも、シンクロモンスターなしで勝てると、勝手に決めつけていた。いや、目の前にいる対戦相手を、キングや遊星よりも下だと決めつけて、心のどこかで"嘗めるようにしていた"。

 

 ――『俺のシンクロは、キング戦までのとっておきだから、ここでは使えないよ(キリっ』

 

「(なにがとっておきだ……なにがこだわりだ……!)」

 

 ここで負けたら、なにもかも意味がなくなってしまう。いつまでも、負けて問題なし、という考えではいられない。

 

「(デュエルにかける俺の魂……!)」

 

 まだ見せれていない。

 まだ発揮できていない。

 こんなままで、こんな状態で負けて、それで自分は納得できるわけもない。

 

 

 なにより――約束した親友に胸を張ることができない。

 

 

 すべてを出し切っていないのに、どうして負けたと、どうして残念だったと言えようか。そんな陳腐な敗北を自分は望んでなどいない。負けるなら、死力をつくして闘い、そのうえで敗れたい。

 

 すっと震えが止まった。

 龍亞には似合わない静寂が場を支配し、そして一枚デッキから引く。

 

「俺のターン!!」

 

 そうして覚悟は決まった。

 

「ありがとう、おじさん! 俺に大切なことを気づかせてくれて! 俺、カッコ悪いデュエルはもうしない!」

「……そうか。ならば私も全力で君のデュエルに応えさせてもらおう」

 

 龍亞とボマーは二人とも獰猛な笑みを浮かべると、そのまま装備魔法が発動した。

 

「俺は手札から装備魔法<D・リペアユニット>を発動! 手札の3体目のモバホンを墓地に送ることで、墓地から<D・テレホン>を特殊召喚する!」

 

 龍亞の手札より飛び出したモバホンが、リペアユニットを抱えフィールドに空いた穴へと飛び込む。そして墓地で膝を抱えていたテレホンを見つると、そのままリペアユニットを装着させ、一気に浮上させた。

 

「させるか! 私はジャイアント・ボマー・エアレイドのモンスター効果発動! 相手のモンスターが場に出た時、そのモンスターを破壊し、プレイヤーに800ポイントのダメージを与える!」

「ええ、嘘ぉ!?」

 

 浮上したテレホン。しかし、それを狙い定めていたように、ジャイアント・ボマー・エアレイドが機関銃の斉射によって、それを阻止した。銃弾はやがて龍亞へと飛び、ディフォーマーモンスターの間をすり抜けて、ライフポイントが削られる。

 

 

龍亞LP 1300 → 500

 

 

「ジャイアント・ボマー・エアレイドはモンスターを召喚する度、君にダメージを与える。これで君の展開力は大幅にダウンだ。さぁ、どうする?」

「……いいや、まだだ! 俺はスコープンのモンスター効果発動! 手札からレベル4以下のディフォーマーモンスター<D・ラジカッセン>を特殊召喚!」

 

 

 

 

「なぁ!? そんなことしたら、またモンスター効果で破壊されて、ダメージを受けるんじゃ……!」

「いや、そうとも限らないぜ、爺さん」

「え?」

 

 

 

 

 

「ジャイアント・ボマー・エアレイドの効果は、1ターンに1度、でしょ! じゃなきゃ、さっきのターンで破壊するべきなのは、レベルも高く、ディフォーマーモンスターの攻撃力もあげられるラジオンのはずだ!」

「フッ」

 

 龍亞はそう言って、拳を前に突き出す。

 ボマーは龍亞の見せた冷静な判断力に、心が躍った。

 

「いくぞ! レベル4のラジカッセンに、レベル3のスコープンをチューニング! 世界の平和を守るため、勇気と力をドッキング!! 

 ――シンクロ召喚! 愛と正義の使者<パワー・ツール・ドラゴン>!!」

 

 そうして現れたのは、黄色の装甲をもつ一体のドラゴンだった。ガジェットや工具装備を身に着け、今、龍亞の前に降り立つ。

 その姿に、対面するジャイアント・ボマー・エアレイドも危険と察知したのか、静かに機関銃を構えた。

 

 

<パワー・ツール・ドラゴン>

地属性|レベル7|機械族/シンクロ/効果

攻2300 守2500

 

 

「パワー・ツール・ドラゴンの効果発動! デッキから装備魔法を3枚選び、その中から相手がランダムに選んだカードを1枚手札に加える! パワー・サーチ!!」

 

 パワー・ツール・ドラゴンが左腕を横に振ると、3枚のカードが裏向きに現れる。どれでも好きなものを選べ。そのような挑発的とも思える姿をしながらも、しかし、決して侮ってはいない瞳でボマーを睨んだ。

 

「いいだろう! 私が選ぶのは、一番右のカードだ!」

 

 ボマーは龍亞がこれから行う戦術を、ひそかに楽しみにしながら指をさす。

 そうして選ばれたカードを見て、龍亞はにぃと笑った。

 

「よし! いいカード! 俺はこのまま、装備魔法<ダブルツールD&C>を発動! パワー・ツール・ドラゴンに装備! ジャッキーン!」

 

 龍亞の宣言とともに、パワー・ツール・ドラゴンの腕に装着されていたガジェット装備が外される。代わりに装備魔法から現れた回転刃とドリルの槍が、パワー・ツール・ドラゴンの両腕へと装着された。

 

「これでパワー・ツール・ドラゴンの攻撃力は3300! おじさんのジャイアント・ボマー・エアレイドを上回ったよ!」

「だが、それだけではあるまい」

 

 ボマーは口角をあげて言う。

 

「へへへへへへ、その通りさ! 俺はさらに手札から<団結の力>を発動! パワー・ツール・ドラゴンに装備!」

 

 そうしてパワー・ツール・ドラゴンの身体に雷のようなエネルギーがほとばしる。そのエネルギーは、他のディフォーマーモンスターから受け継がれているような、そんな絆の力を感じさせた。

 

「パワー・ツール・ドラゴンの攻撃力は、これで5700だ!」

「いいのか? その団結の力を他のディフォーマーモンスターにつければ、危険を分散できた。今の君はパワー・ツール・ドラゴン一体を無力化されてしまえば、立つ瀬もなくなる」

「ち、ち、ち! 逆に言えば、パワー・ツール・ドラゴンの攻撃を通せば、俺の勝ちってことでしょ? それにパワー・ツール・ドラゴンは、装備魔法を破壊することで、自分を守ることができる! どっちの装備魔法を破壊されても、ジャイアント・ボマー・エアレイドの攻撃力を上回るってことさ!」

 

 龍亞は「さらに」と付け加える。

 

「おじさんこそ忘れてないよね? 俺の場には<ダイス・ダンジョン>がある! これを発動すれば、ラジオンでもジャイアント・ボマー・エアレイドを破壊する可能性はあるってこと!」

「ああ、忘れていないとも。しっかりと君が考えた結果での戦術、とくと味合わせてもらおう!」

 

 そのやり取りを聞き、各々のモンスターが戦闘態勢に入る。

 このターンで、このデュエルの勝敗が喫するといっても過言ではない。

 

「バトルフェイズの前に、俺はモバホンの効果発動! ダイヤルーーーー・オーーーーン!!」

 

 団結の力でよりパワーアップを目指すため、龍亞はモバホンの効果を宣言する。モバホンもここで決めれば、パワー・ツール・ドラゴンの攻撃力はさらに上がり、たった一撃でボマーのライフを削りきれる範囲となる。

 

 重要なルーレットだ。

 

 しかし、モバホンが出した数字は「1」であった。

 

「っ……、でもまだ引けないと決まったわけじゃないもんね! 俺はデッキの上から1枚をめくる!」

 

 そう言って、一枚めくる龍亞。

 が、それでもめくれたカードは緑の枠をしており、彼の望む結果とはなり得なかった。

 

「どうやら、カードは応えてくれなかったようだな」

「っ、そんなことはないやい! まだ俺には友情の必殺カード<ダイス・ダンジョン>がある! バトルフェイズ! そして、ダイス・ダンジョンの効果発動!」

 

 再び前のターンと同じく両者の前にサイコロが現れる。

 ボマーは静かにそのサイコロを見つめた。

 

「出る目によっては、君にも私にもピンチが訪れる……まさに運命を決めるダイスロールと言っても過言ではないわけだな」

「俺は絶対に負けないよ……! 遊太との約束があるんだ……!」

「君がそのように闘志を燃やすのと同じく、私にも譲れない使命がある。君の全力を凌ぎきり、次のターンで確実なトドメをさしてやる」

 

 そう言った両者は互いに視線を絡めた。

 

「いくぞ!」

「おう!」

 

「「運命のダイスロール!!!」」

 

 

 そうして出た数字は――――。

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

 1時間後、VIP観客席にて。

 

「キヒヒヒヒ、残念でしたね。まさか、双子の兄に成り代わっていたとは。貴方はいい仕事をしてくださったんですが」

 

 そう言ったピエロのようなメイクをした男、イェーガーは目の前に立つボマーを見る。

 

 ボマーは目を伏せて、「いえ」と首を振った。

 

「見抜けなかった私の落ち度でもあります」

 

 それを聞いたイェーガーは、また悪者のような笑い声を漏らした。

 

 イェーガーの隣を縫うように、さきほどまで不動遊星のデュエルを観覧していたゴドウィンが、彼へと一歩近づいた。

 

「残念ながら、シグナ―の覚醒には至りませんでしたが、いいデュエルだったと思います。観客も盛り上がりました」

 

 しかし、とゴドウィンはつづけた。

 

「貴方はシグナ―の覚醒になんら貢献できなかった。その点で見れば、我々は貴方が使命を果たしたとは評価できません。誠に残念ながら、故郷の復興は見送らせていただきましょう」

「……」

 

 ゴドウィンはそれだけを言うと、VIP観客席から立ち去る。続けて、そのゴドウィンに付き従うように、イェーガーもVIP観客席を後にした。

 

 残ったのはボマーと、その会話を黙して聞いていたジャックのみ。

 ジャックは水の入ったコップを呷り、フン、と鼻を鳴らす。

 

「俺は忠告したはずだが?」

「……」

「どうやら、貴様の心にはキングの言葉が届かなかったようだ。耳を貸さぬ愚者に掛ける言葉はない。とっとと立ち去れ」

「……そうさせてもらう」

 

 素直に返事をしたボマーであったが、しかし、不意にジャックへと振り返る。

 

「ジャック。私は君の言う通り愚かだったらしい」

「……」

「自分の使命を捨ててでも、少し、彼と血の通ったデュエルをしたくなった」

 

 ボマーはそう言って、かつての弟たちの姿を思い返す。

 あの時、あの瞬間。

 目の前に立つ少年が、その姿を想起させてしまった。

 

 ――そうなってしまっては、もう駄目だった。

 

「気づくのがどうやら遅かったらしい……なにもかも力で解決しようとしていた本当に愚かな男だ、私は。それでは、あの男と一緒になってしまうというのに」

 

 ボマーはそう言って振り返る。

 振り返った先には、あざ笑うでもなく、真剣なまなざしで答えるジャックがいた。

 

「ジャック、あの男を信用するな。私の村は、あの男の手により、赤き竜を復活させるため実験材料として破壊された」

「なに……?」

「村人全員が行方不明。そしてその中に私の兄弟もいた」

 

 ボマーはそれだけを告げると、歩みを再開させる。

 そして出入口の前にたったところで静かに告げた。

 

「赤き竜を、あの男に渡してはいけない」

 

 閉じられる扉。

 ジャックはそれを聞き、しばらくして、残った水を飲みほした。

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

「いやー、いいデュエルだったよ! 儂も年甲斐もなくはしゃいでしまった!」

「ふっ、爺さんはいつも歳に見合わぬ元気さだろ」

 

 氷室と矢薙は談笑しながらデュエルスタジアムの外へと出た。

 その後ろ続き、龍可、天兵、龍亞、遊太の子供組も話に華を咲かせながら、興奮冷めやらぬ雰囲気で外に出る。

 

「僕が思うベストバウトは、やっぱり初戦かなぁ……ブルーアイズが3体も並んだところなんて初めて見たし」

「ちょ、天兵!? 俺のデュエルだって、遊太に負けてなかったろ!?」

「え、龍亞のデュエル? ……舐めプと手札事故してただけじゃない?」

 

 天兵がそう言って小首をかしげると、横にいた龍可も首を縦に振る。

 

「そうそう、運任せのデュエルって感じよね。とても、いいデュエルだったとは言えないわ」

 

 龍可の言葉に天兵もうなずきで返す。

 しかし、こういう状況で、フォローを入れずにはいられない少年がいた。

 

「あはははー、ぼ、僕はいいデュエルだったと思うよ?」

「遊太ぁ~~~~~!」

「……たしかに、舐めプで追いつめられるのはよくないけど……」

「……遊太ぁ~~~~~!」

 

 そんな集団の前に、Dホイールを押した遊星が現れる。

 いち早く気が付いた龍亞は、(話題をそらしたかったため)手を振って遊星に呼びかけた。

 

「あ、遊星ー! お疲れ! 初戦突破おめでとう!」

「ああ」

「お~、(あん)ちゃん! いいデュエルだったな~!」

「フッ、炎城ムクロが飛び出したときは、どうなるかと思ったが。流石だったな」

 

 龍亞に続き、氷室、矢薙も遊星にねぎらいの声をかける。

 

「これで、遊太君以外にも明日応援できる人が増えたね」

「まぁ、遊星は負けないと思ってたけど」

「遊星”は”……? どういう意味だよ、龍可! 遊星”は”って!」

「言葉のとおりよ」

「むきーーーー! その言い方、腹立つ!!」

 

 そう言って地団駄を踏む龍亞。

 それを見た遊星はほほえましいと内心で感じながらも、そっと言葉を挟んだ。

 

「龍亞。お前はお前のデュエルをした。その結果だ、胸を張れ」

「っ、わかってるよ!」

「そうそう、龍亞くんも精一杯がんばったんだ! 儂はすんごいデュエルだったと思うぞ~!」

「だから、わかってるって!」

「子供だからこそ間違いを犯すことはある。仕方ないことだ」

「もーー、だからそういうの良いって!!」

 

 龍亞はそう言って、手をばっと広げた。

 

 

 

「なんで俺だけ、負けたみたいな雰囲気だしてるの!? 俺だって、1回戦突破したんだけど!!? なんかもっと他に言うことあるでしょ!!!?」

 

 

 

 

 その言葉に全員が、しれーと目線をそらす。

 

 ボマー対龍亞。

 たしかにダイス・ダンジョンの効果により、勝利したのは龍亞であった。ボマーが最悪の出目である「5」を引き。そして龍亞は最高の目である「6」を出した。

 

 しかし、思い返してみると、どう見てもボマーが手を抜いている。

 運と相手の恩情によって勝ち上がったようなものだ。

 それは龍亞自身、一番理解していることだろう。

 

 

 されど、勝利は勝利。

 

 

 そう喜ぶには、些か褒めづらいデュエルであったのも事実である。

 

「あ、遊太君の家って亀のゲーム屋さんだよね? 今から遊びに行ってもいい? 僕もデュエルしたくなってきちゃって」

「え!? 全然いいよ! むしろ大歓迎! 僕も天兵君のデッキみたいな―!!」

「なら私も行こっかな。どうせだし、ちょっとドーナツ屋さん寄ってかない?」

「いいねー、儂も一緒しちゃダメかな? 初代デュエルキングの生家って興味があったんだよ!」

「おいおい、爺さん。ここは子供たち水入らずで遊ばせてやれよ」

「そう言って~、氷室の兄ちゃんも気になってたんだろ~? もしかしたら、初代デュエルキングのオリジナルデッキが見えるかもしれないよ~?」

「ぬ、それは…………すまん、俺もいいか?」

「へへへ、全然! うちならこれくらいの人数余裕だよ! 今日は店閉めてるんだけど、ママに連絡しておくね! 遊星さんはどうする?」

「なら、一緒させてもらおう」

「オーケー、決まりだね!」

 

 龍亞を除く全員が、そう言って和気あいあいとする。

 仲間外れにされた龍亞は肩をぷるぷると振るわせ、やがて我慢の限界に達したらしく――。

 

 

「もーーーー、怒ったからなーーーー!!! 明日、遊星も遊太も倒して、俺が優勝してやる!!!」

 

 

 そんな言葉がデュエルスタジアムの外で木霊するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「伝説のカード、ブルーアイズ、か……残念ながら、もう少しアキには勝ち進んでもらいたいんだ。悪く思わないでくれよ?」

 

 そうつぶやく、自称おじさん――ディヴァインが見ているとも知らずに。

 

 

 

 

第二回戦 第5試合 武藤遊太VS十六夜アキ

おなじく 第6試合 龍可VS不動遊星

 




さて、そろそろウォーミングアップの時間だよ、初代遊戯王勢
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