5D's:武藤遊戯の孫 作:ジャガイモ
多分、みんな待ってただろ……!?
※あとがきは作者暴走してるので注意してください
デュエル・オブ・フォーチュンカップの初日も終わり、みんなが家に帰った夜のこと。オレは自室にて、喜びの声をあげた。
「やったぜ! ビンゴ―!!」
嬉しさのあまり、オレはそう言って腕を振り上げる。
目の前にはランダムに並べられた真っ白の靴下たち。オレは唯一裏側を向いたハートマークの刺繡付き靴下を見て、喜びの舞を踊った。
「今日も絶好調! この調子で明日の二回戦も頑張るぞー!」
「こら! 夜中になに騒いでるの、あんた!」
「っ!?!? ママ!?」
突然、自室の扉が開けられて般若の形相をしたママが俺を見た。
ま、まずい……! ちょっと騒ぎすぎちゃったみたいだぜ……! しょっぱなから般若モードのママって、容赦ないんだよなぁ~……。
拳骨をするためか、すでに固く握られた拳をオレは恐る恐る見る。
「え、えっと、これは靴下神経衰弱って言って……ゲ、ゲームの直観力を養うトレーニング、なんだ……! だから決して、遊んでたわけじゃ――」
「まーた、理解不能なことして! そんな直観力より、学力をあげなさい!」
「
遠慮なしに落とされた拳骨に、オレは思わず涙目になる。
いって~~~~……!
もう、本気でぶつんだもんなぁ……たんこぶとかできたら、どうしてくれるんだよぉ~……。
オレは恨めしそうに頭を摩りながらママを見ると、呆れたようなため息を返された。
「はぁ、まったく誰に似たんだか……いい? 明日も早いんだから早く寝なさい。あと、おばあちゃんも今日は疲れて寝てるんだから、静かにすること」
「うぅ、はぁ~い」
「返事は伸ばさないの。ったく、おやすみ、遊太」
「うん、おやすみ」
それだけを言うとママは部屋の明かりを消して出ていく。
オレも怒られてしまったため、おとなしくベッドに潜り込むことにした。
明日はいよいよ、二回戦と決勝かぁ……オレも龍亞も一回戦は勝ち上がったから、このままいけば、本当に決勝戦でやりあえるかもしれないんだぜ……。
寝返りを打ちながら、そんなことを考える。
龍亞や龍可と出会ってから、いろんなことが早々と起こった。
目まぐるしく変わる環境に、どこか夢見心地な自分がいる。もし今目を閉じて眠り、そして朝を迎えたら、きれいに全部なくなってしまうんじゃないかって、時々思ってしまう。
「……へへ、そんなことあるわけないか」
じゃらりと鎖が鳴った。
寝るときも外さないオレの宝物――千年
「じーちゃん、見てくれてるかな……」
千年パズルをそっと握り、オレは目を瞑る。
親友と呼べる友達ができて、その友達と決勝戦にいく約束をして、それもあと一歩のところまでやってきた。
きっと、じーちゃんも草葉の陰から見守ってくれていることだろう……。
――『遊太』
優しい幻聴を聞きながら、やがてオレは静かに寝息を立てる。
ぬるりと窓から覗く、影に気が付くこともないまま。
× × ×
それは奇跡に等しかったのかもしれない。
物音は聞こえなかった。
誰かの息遣いも感じなかった。
本当にたまたま、オレが喉の渇きを感じて起き上がった時だ。
「――――チッ、目が覚めたのかよ」
「っ――――、誰だ!?」
黒いヘルメットを身に着けた男が、オレの部屋の中で肩を竦める。
見覚えなんてあるわけがない。声も聞いたことがない男だ。
ふと、寒空の下で吹きすさぶような風が、オレの頬を撫でた。
「なんで……窓が割れて……!?」
「クク、ガキがこんなお高そうなカードを持ってんのが悪いんだぜぇ? 俺は本来Dホイールの窃盗が専門だったのによ」
そう言って男は、オレが部屋の隅においていたデッキを見せてきた。当然、そのデッキの一番下には……。
「ブルーアイズ……!!」
「じゃあな、お子様。もう少し目ぼしいものを探してたかったが、ここいらでお暇させてもらうわ」
「なっ、待て!!」
オレはそう言って飛びかかろうとするも、男はそれよりも早く割れた窓へと向かって飛び降りる。
って、その窓は屋根についてる高さだぞ!?
しかし、男は猫のようなしなやかさで、あっという間に庭へと着地した。そのまま、着地の衝撃をまったく感じさせない様態で、外に停めてあったのだろうDホイールへと跨る。
まずい、まずい、まずい……!!
このままじゃ、オレの大切なカードが……!!
「待てぇーーーーーーー!!」
だけど、子どものオレに、男を止める力なんてなく。割れた窓越しにそう叫ぶことしかできなかった。
「く……!」
俺は急いで寝巻きのまま部屋を飛び出す。
すると、騒ぎを耳にしたのか、廊下でママと鉢合わせた。
「ちょっと、どうしたの遊太!?」
「ごめん! 今は説明してる暇なんてない!」
「ちょっ!?!?」
ママの横をすり抜けて階段を降りる。律儀に1段降りるのすら煩わしい。ほとんど滑り落ちるような勢いで、オレは一階へと降り立った。
しかし、それがよくなかった。
起き抜けの運動ということもあり、まだ目覚めきれてない足がもつれてしまったのだ。階段を降りていた勢いもあわさり、俺は激しく地面に転倒する。咄嗟に手を突き立てたけど、どうやら首にかけていた千年パズルが顔面を強打したらしい。いつの間にか俺の鼻からは、ぽとぽとと鼻血がでていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
頭が冷えていく。
心が凍っていく。
どんどん遠ざかるブルーアイズたちの幻想に駆られ、喉が干上がっていく。
モクバおじさんから貰った大切なカード。じいちゃんが使っていた仲間たち。龍亞たちと一緒に作り上げた、オレのデッキ……。
「ぁ……あぁ……」
なんでこんな目に遭わなくてはいけないのか。
寝る前まで楽しかった気分が、嘘のように掻き消えていく。
怒りと悲しみと、よくわからない感情がうずまき、視界は次第にぼやけていく。さっきまで流れ出ていた鼻血は嘘のように止まり、しかし代わりに、目からは止めることのできない大粒の涙が溢れ落ちる。
……最悪の1日だ……。
じーちゃんが死んだあの日と同じくらい、深い深い悲しみが胸を支配する。
そんなオレを、千年パズルが見つめるように、からんと乾いた音が部屋の音で鳴った。
× × ×
「……なるほど、話はわかりました。やはり、ただの押し込み強盗ではないようですね。……ええ、はい。まずは息子さんが無事で何よりです。…………ええ、ええ。あとは我らセキュリティにお任せください。必ずや、犯人を捕まえてみせます」
かちゃり、と奥の部屋から大きな体をした男の人が出てくる。
ママがすぐに通報してくれたおかげで、こうしてうちにセキュリティの人たちが来てくれたのだ。扉を隔てて事情聴取をされているのは聞こえていたため、今、それが終わったこともオレにはわかった。
項垂れた姿勢で座っていたオレは、力なく目線だけを扉の奥から出てきたセキュリティの人に向ける。
すると、その人はオレを見てギョッとすると、こほんと喉の調子を整えた。
「えーと、君が武藤遊太くんかい?」
「……」
正直、頷く気力すらない……。
オレは目線を自身の足元へと戻した。
「……辛いことだろうが、決して自暴自棄になっちゃいけない。君のカードを盗んだ犯人も大まかに目星がついている。我々が責任を持って捕まえるよ」
「……無理だよ。もう僕のデッキは遠くにいっちゃったんだ……今更、取り返せるはずないよ……」
「そんなことはない。カードを売るにも時間は掛かる。諦めには早すぎるさ」
怖い顔をしているはずのセキュリティの人は、そう言ってオレの肩を優しく叩いた。
「それに、君のお爺さんなら、決して、そんなことは言わなかったはずだ」
「じーちゃんを知ってるの……?」
「ああ、知っているとも。少し顔馴染みでね。君は彼によく似ている…………って、昔の喋り方は性に合わねぇな」
そう言ってセキュリティの人が頭を掻くと、何かしらの通信が入ったのか、腕に巻かれていた端末から音が鳴る。オレはそこで初めて、視線だけでなく顔を上に上げた。
「……ああ、……ああ。分かった、すぐ行く……。安心しろ、ガキンチョ。この牛尾様が、必ずや悪党ども捕らえ、お前のデッキを取り戻してみせるからよ。……これも罪滅ぼしってやつさ……」
「え?」
「いや、ただの独り言だ、気にしないでくれ。……それより明日のフォーチュンカップ二回戦、1人のデュエリストとして楽しみにしてるぜ」
牛尾と名乗ったセキュリティの人は、テーブルに置いてあったDホイール用のヘルメットを被りながら、出口の方へと歩いてく。その時、「ケッ、子供から巻き上げるクズが」と独り言をぼやいていた。
まさか、じーちゃんと関係のある人だったなんて……。
オレはその事実に驚きを隠せないでいながら、でも、そんなことより今は奪われたデッキのことを考えるのでいっぱいであった。
「あー、それと伝え忘れるところだった!」
出て行こうとしていた牛尾さんが戻ってきたため、オレはもう一度顔をあげる。
「今回の押し込み強盗だが、もしかしたらアルカディア・ムーブメントに雇われた可能性がある」
「……なに、そのアルカディア・ムーブメントって……?」
「お前の次の対戦相手が所属している、きな臭ぇ組織の名前さ。……だからこそ、度肝を抜いてやれ。人様のデッキを奪ってでしか勝てねぇような奴ら、テメーの力で蹴散らしちまえ!!」
「っ!?!?」
牛尾さんはそう言うと、自分の胸板を硬く握った拳で叩き、オレの方へと突き出してきた。
「お前も男なんだったら、泣き寝入りなんてすんじゃねぇ。誰に喧嘩を売ったのか分かってんのかって、意地見せてやれ。お前の爺さんみたいによ」
「じーちゃん、みたいに……」
それだけを言うと、牛尾さんは外に待機していた他のセキュリティの人をともだって、夜の街へと消えた。遠ざかっていくサイレンの音。やがて伸びるような低音とへ変化したそれは、静寂に移り変わる。
オレは首にかけられた千年パズルの鎖を握り、静かに目を閉じた。
「遊太……」
牛尾さんが出て行ってから少しして、もうセキュリティの人も家に居なくなった頃。もう時計の短針が4時を示そうとしていた時、ママがオレのいた一階のお店スペースへと降りてきた。
すっごく心配している顔だ……当然だよね。牛尾さん曰く、フォーチュンカップの次の対戦相手が、今回の押し込み強盗と関係しているなんて聞かされたら。
「明日の大会、棄権するわよね……?」
「僕は……」
そこで言葉を詰まらせる。
オレはどうしたいんだろう……そう自分に聞いてみても、答えが全く出てこない。
次の対戦相手――十六夜アキ。あのお姉さんがみせる、デュエルの時の目。あれはオレにも覚えのある目だ。あの人が、オレのデッキを盗むように仕組んだのだとしたら、それは許せることじゃない。
でも、あのお姉さんは、そう言うことをしないって、心のどこかでそう思っている自分がいる。
だったら、オレは――。
「やめなさい、遊太! いくらなんでも、たかがカードゲームで貴方が危険な目に遭う必要ないじゃない!?」
オレの思考を止めるように、ママが強く肩を掴んできた。
きっと、何を考えているのかバレバレなんだろう。ママはこういう時、鋭いからな……。
「分かってるよ……でも、本当に相手がやった証拠もないんだ……確かめないと……」
「だからって、それを貴方が大会に出てやる必要があるの!?」
「それは……そうだけど……」
また言葉が詰まる。
分かってる。ママが正しいことを言っているのは。
もとより、今のオレに大会を出るためのデッキがない。ブルーアイズを中心としたデッキの他に、オレは2つデッキを所持していたが、一つはばーちゃんに預かってもらってるじーちゃんのデッキだし、もう一つは今回の大会のために崩してしまった。
流石に、自分のデッキを盗まれているオレが、じーちゃんのデッキを使うわけにもいかない……そもそも、ばーちゃんだって出してくれないだろう。
それでも、やっぱり、オレは――――。
――『決勝で会おうぜ、遊太!』
――『遊太君、明日も頑張ってね! 僕も応援してるよ!』
――『儂も遊太君のデュエルを見ていると若い頃を思い出すんだよなぁ〜!』
――『今日のデュエルは手に汗握ったぜ。俺もいつか君とやってみたいもんだ』
――『お前のデュエルは、ジャックにとって心に残るものだったんだろう。ありがとう、感謝している』
――『男だったら、泣き寝入りなんてすんじゃねぇ!』
――『遊太、頑張ってね』
――――自分の気持ちから、逃げたくない。
「ママ、ごめん……やっぱり、オレは出るよ。ブルーアイズたちと勝ち上がった大会だし、みんなとの約束もある。……今を無駄にしたくない」
「っ、あんた」
ママがそう言って息を呑んだ時だ――――。
「良いじゃない、出してあげれば」
嗄れた声が、後ろからかけられた。
オレとママがそっちに振り向くと、そこにはいるはずもないばーちゃんが、杖をつきながら立っている。足腰が悪いせいで、あまり部屋から出てこないはずなのに、なんで……。
「お義母さん……!?」
「男はいつだって胸を張って生きないとねぇ……泣き虫なこの子が、ここまで言ったんだ。祖母として私は応援するよ」
ばーちゃんはそう言って、ママの横を通り過ぎてオレの前まで歩いてくる。ぷるぷると体が小刻みに震えていることから、かなり無理をしてくれているはずだ。オレは急いで立ち上がり、ばーちゃんを支えるために手を貸した。
「ばーちゃん……」
「遊太、これをあんたに返すよ」
「ちょっと、お義母さん本気ですか!?」
ばーちゃんがそう言って渡してきたのは、黄金で作られた両手サイズの箱。
受け取ると、ずっしりとした重さが伝わってくる。
「その中にはじーさんの使っていたカードが入ってる……あとは好きにしなさい」
「っ!?!?」
ばーちゃんはそれだけを言うと、また杖をついて自室へと戻っていった。ママはオレに何かを言いたそうに一瞥するも、すぐにばーちゃんの登り降りを助けるため、後を追いかけて行ってしまう。
「お義母さん、本当に良かったんですか……」
「良かったも何も、別に悪いことしてないんだから大人の口出す場面じゃないよ」
「でも……!」
「ずっと家で1人ゲームをしてたあの子が、あそこまで言うようになったんだ……祖父の幻影を追いかけていただけのあの子がね……もうダメかもしれないと思ったけど、今日、大会に出るあの子を見て確信したよ……あの子はあれでいいって」
「それは……そうですけど……。はぁ、分かりました。お義母さんには叶いませんね、ほんと」
「あと20年は年食わないとねぇ」
ママとばーちゃんが店のスペースから立ち去って、またオレだけが残った。テーブルには、じーちゃんが使っていたカードが中に入っている。初代デュエルキングの時に使っていたデッキとはまた違う、じーちゃんが長年愛していたカードたち。
オレはそっと箱の蓋に手をかけ、ゆっくりと唾を飲む。
そしてまた手を離し、腕を組んだ。
さっきからずっとこの繰り返し。
あれだけの啖呵を切ったものの、いざ組もうとすると、ブルーアイズたちを一時的に忘れることに抵抗があった。
「……」
このままブルーアイズたちを忘れると、ずっと返ってこないかもしれない。そんな良いしれぬ不安が、オレの中でこびりついて取れそうにない。ここから進まないと何も変わらないのは分かってるし、何も分からないままだってことも理解してる。それでも、言葉にできない恐怖心が、ずっとしこりのように残ってるのだ。
「本当に、あのお姉さんが盗ませたの……」
お姉さんがデュエルをしていた時に浮かべた目。あれは見覚えのある目だ。馴染み深い目だと言ってもいい。
そんな目をした人が、ここまでするのかと思ってしまう。
だから、オレは大会に出て、あのお姉さんに事の真偽を聞かないといけない。お姉さんに聞かなければいけないことがいっぱいある。
でも、それを行うための第一歩が、足を竦ませる。
「(どうすれば…………)」
オレがずっと蓋に手をかけたまま止まっている時、プルルと携帯端末が鳴った。
「通話……? こんな時間に……」
今はもう明け方と言ってもいい時間帯。こんな時間にオレに電話をかけてくる人なんていただろうか……。
オレは疲れていたこともあり、着信している番号も確認せず、通話に出る。すると相手はきちんとビデオ電話で送って来ていたようで、でかでかとその顔が表示された。
「……ジャックさん」
『怪我はないようだな、遊太』
こんな時間帯だと言うのに、ビデオ越しのジャックさんはヘルメットを装着しDホイールに跨っているらしい。激しく流れていく街灯たち、風に靡く白のコート、風を乱雑に切り裂く音。
ジャックさんはカメラから目線を外し、前を見ながら運転をするような素振りで言葉を続ける。
『お前の盗まれたデッキについては心配するな。必ず、このジャック・アトラスが決勝戦前には届けてやる』
「……そこはキングがって言わないんだね」
『ハッ、馬鹿者が。キングではなく、俺個人の思いで、お前を助けてやると言っているんだ。……それとも、それでは不服か?』
「はは……まさか。すっごく嬉しいや……めちゃくちゃ頼りになるよ」
オレがそう言うと、ジャックさんは鼻で笑い飛ばし、さらにスロットルを開けることで加速させた。さっきまでの勢いが低速走行だったと思わせるように、さらに景色の流れるスピードが上がる。
『どうせ、お前のことだ! 代わりのデッキが手に入っても、前のデッキに申し訳ないと後ろめたさを感じ、ろくに手も進まないことだろう!?』
「うっ……!」
オレはいきなり核心を突かれたことで、胸を抑えてしまう。
み、見てもないくせに、なんで分かるんだよぉ……。
もしかして、亀のゲーム屋に盗聴器とか、盗撮カメラとか仕掛けられてる? それを疑うくらい、ジャックさんの言葉は的確すぎるんだぜ……。
『だがあえて言おう、武藤遊太! デッキとは日々変化するもの! いつまでも過去の産物に縋っていては、誰も前に進むことなどできん! 大切なのは、そのデッキを胸に刻み、思いやり、愛するデュエリストの魂だ! 真に大切なものを見極めず、ハリボテの優しさにかまけ落ちぶれることこそ、最も恥入るべき行為と知れ!』
ジャックさんはそう言ってオレに喝を入れる。
言葉なんてなくても分かる。ジャックさんが、オレに伝えようとしていること。オレにやろうとしていること。
前を進むための理由をくれているのだと、痛いほど伝わってくる。
『フン。それにお前がどれだけ案じたところで、状況は進展などせん。子供にできることなど、高が知れている。……だから、俺が伝えられるべき言葉をお前にくれてやる。安心しろ、武藤遊太! お前のデッキは必ず、この俺が取り返してやる! キングでもなく、師でもなく、デュエリストでもない! ただ1人の友としての約束だ!』
「っ――――!?!?」
ああ……だめだ。
もう、我慢の限界だ……。
ずっと、我慢していた。人前ではできるだけやらないようにしようと思っていた。
どれだけ辛くても、どれだけ悲しくても。強い信念を持って、毅然と立つ姿に憧れたから、オレはいつの間にか他人の前で弱さを見せることを、心の底から嫌っていたのかもしれない。
でも、こんなに皆んなから貰ったら……こんなに心強い人たちが周りにいてくれたら……我慢できるわけないじゃないか。
「あり……がとう……! オレ、もう、デッキが返ってこないって……! でも、でも……!」
『……泣きたい時に泣け。泣く事は弱さの証明ではない。泣きたい時に泣けない事こそ、真の弱さだ。お前には俺も、母親も、そして新しくできた友もいる。お前1人を支えられるだけの土壌はあるのだからな』
それだけを告げ終わると、ジャックさんからの通信が途絶えた。
もはや、空が白み始めた時間。もうフォーチュンカップが始まるまで時間も、あまり残されていない。
デッキを作ったとしても試運転はできないだろう。どうせ、一か八かの勝負になる。
「じーちゃん、オレ、負けないよ……皆んなに背中を押されたんだ……絶対に、負けられない……」
オレはそう言って黄金の箱を開ける。
そこに入っているカードを一枚一枚見ながら、オレはオレだけのデッキを作り上げることにした。
首から下げられた千年パズルが、静かに光る。
おい、デュエルしろよ。
という冗談はさておき。
ようやくでてきたキャラというのは、ばーちゃんと牛尾さんでした!
え、牛尾さん!?あんた遊戯との記憶が!?
というのは、まぁおいおい回収いたしましょう。
そして、もうお気づきかもしれませんが、ばーちゃんに選ばれたのは杏子でした!! うわーい、おめでとーー! 最終回発情期(ファイナルファンタジー)が起こってるねぇー!
レ、レベッカ?
すまん、筆者が表杏のカプ厨なんだ……! タロットカードで恋人の二人とか好きだし、原作のアフターストーリーである映画の表遊戯のかっこよさが好きで、それに惹かれるだろう杏子みたいなシチュが好きなんだ……多分、表遊戯も杏子も、ドイツやアメリカで彼女彼氏とか何人か作るけど、最終的には落ち着くところに落ち着いた、みたいな妄想がががががガガガガガガガガガギガギガフンフンガガガガガガガ!!
はい、ということで。
奪われたブルーアイズ。
代わりに与えられた遊戯の黄金櫃。
飛び出すのは、一体なにマジシャンなんだっ!?
次回以降 ブラック・マジシャン降臨