5D's:武藤遊戯の孫   作:ジャガイモ

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龍亞&龍可「な〜にかな〜、な〜にかな! 今回はこれ!」

《ニトロ・シンクロン》

龍亞「ニトロのシンクロ素材に使えば、ワンドローできる有能なカードだ!」
龍可「でも、ニトロのシンクロモンスターって……」
龍亞「龍可、それ以上はだめだよ」

ニトロ・シンクロン「……」ゴキゴキ





前話、難産だったのに、今回はスムーズ
地の文は減らさず、そのままになりました。

あと、前話でジャックのライフが1100になってたり、ニトロの攻撃力間違ってたりしました。
修正しております。

●のマークがありますが、これは毎度のごとく、遊星のテーマ曲を流すなら今ですよって合図です。


第六話 赤き龍よ

 ジャックL P:2200

 遊星L P  :1300

 

 ジャックのもとに降臨したのは、キングという座をともに勝ち取り、そして守り続けたドラゴン。絶対的な信頼を預け、絶対的な誇りを感じるそのモンスターに、ジャックは思わず破顔一笑せずにいられない。見上げれば、赤と黒の綺麗に入り混じった四肢が、力強く身構えていた。

 

 対して遊星は、レッド・デーモンズの召喚に目を細める。ジャックがエースモンスターを出したということは、つまりデュエルの終幕が近いということ。ジャックはレッド・デーモンズをフィニッシャーに使う傾向にあり、それを遊星も知っているからこそ焦りを感じた。

 だからと言って、今すぐに何かができるわけではない。

 冷静にフィールドを見渡し、このターンを凌ぎ切ることだけに思考を回す。

 

「壮観じゃないか。レッド・デーモンズのこの圧倒的な威圧感。魂の震えを感じるだろう、遊星。それとも、キングとレッド・デーモンズの前では、ただ怯えるだけの哀れな道化とでも呼ぼうか」

「必ず次のターンに繋いでみせる」

「ほう。ならば受け切ってみるがいい。俺とレッド・デーモンズの激情を!」

 

 ジャックが吠えれば、守備表示だったヴァルカンを攻撃表示へと戻す。

 ヴァルカンの攻撃力は、前のターンの《ジュラゲド》の効果により、3000にアップ。遊星の場に唯一残っている《ロード・ウォリアー》と互角の攻撃力に膨れ上がっていた。

 つまり、このターン、ジャックが《ロード・ウォリアー》を打ち倒し、レッド・デーモンズでトドメをさせれば、勝利が確定する事になる。

 

「バトル! いけ、ヴァルカン! 《ロード・ウォリアー》を粉砕せよ!」

「迎撃しろ、《ロード・ウォリアー》!」

 

 死した《ジュラゲド》の意思を受け継ぎ、涙を流したヴァルカンが金槌を振るった。《ロード・ウォリアー》も負けじと、背中のマントらしき部分を光らせ飛翔する。

 ぶつかり合う力と力。ヴァルカンの金槌が《ロード・ウォリアー》の装甲を砕き、《ロード・ウォリアー》の拳がヴァルカンの胴体を穿つ。

 共に粉砕し消滅するモンスターに、ジャックと遊星、両者の顔が歪んだ。

 

「これで終幕だ、遊星! レッド・デーモンズのダイレクト・アタック!

 紅蓮の鉄槌、アブソリュート・パワーフォース!」

 

 レッド・デーモンズは炎を右掌に溜め込み、遊星に向かって振り下ろす。拳に纏われた業火は、対戦プレイヤーのみだけで飽き足らず、空気を伝い大きく燃え広がった。

 このダイレクト・アタックにより、遊星の敗北が決定する。ライフは底をつき、Dホイールはデュエル終了と同時、失速して停まる。そうして、2年という長い年月の因縁に終止符が打たれると、ジャックは確信していた。

 だが、そうはならなかった。

 レッド・デーモンズが放った炎の中から、遊星がDホイールに跨って出てきたのである。しかも、一切の減速もせずに。

 

「……なるほど、罠か!」

 

 ジャックはDホイールに取り付けられたディスプレイを見て、その予感が的中したことを悟った。

 

「ああ。俺はレッド・デーモンズの攻撃に対し罠カードを発動した。《トゥルース・リインフォース》。このカードは、デッキから星2以下のモンスターを守備表示で特殊召喚するカード」

「壁モンスターで防ぐとはな! ”流石だ”と言いたいところだが、キングのデュエルに戦う意思なきモンスターは殲滅されるのが理。守るだけでは、話にならん!」

「っ、《ジャンク・コンバーター》すまない」

 

 遊星はレッド・デーモンズに焼き払われた《ジャンク・コンバーター》を墓地に送る。自分を守るためとはいえ、砕かれるのを承知で遊星が場に出したことに変わりない。自身の不甲斐なさを呪う意味でも、遊星は謝罪の言葉を口にしたのだ。

 

 ジャックはそんな遊星を見て嗤う。

 やはり似ていると確信したのだろう。墓地に送られるモンスターへの心遣い。自身に変化させるきっかけを与えた遊太を自然と重ねずにいられなかった。遊太も《クリボー》を墓地に送るときは、感謝の言葉を口にしている。

 

「まだまだこれから、ということだな。

 ならば、俺はメインフェイズ2に移行し、カードを1枚伏せてターンエンド! エンドフェイズ時、レッド・デーモンズの強制効果が発動するが、破壊されるモンスターは俺の場にいない。さぁ、お前の力を見せてみろ、遊星!」

「望むところだ、ジャック!」

 

 遊星S P C  :4 ⇨ 5

 ジャックS P C:3 ⇨ 4

 

 遊星の手札は現在2枚。そのうちの1枚は《Sp -エンジェル・バトン》。フィールドには伏せられたカードが1枚あるのみ。さっきの遊星のターン、大量展開からの2体シンクロという離れ技により、リソースは限られた分しか残っていなかった。

 けれども、それだけの理由で遊星が諦めることはない。どれだけ不可能に近いとしても、どれだけ敗北に近いとしても、遊星には負けられない想いがある。仲間たちとの絆、そして旧友との因縁の決着。遊星を強くさせるものが、彼の胸には秘められている。

 

「俺のターン!!」

 

 雄叫びとともに引き抜かれる1枚のカード。

 横目で遊星はそれを確認すると、意思が固まった瞳を尖らせる。

 

「俺は手札から《Sp -エンジェル・バトン》を発動! 自分用S P Cが2つ以上ある場合に発動することができる。自分のデッキからカードを2枚ドローし、その後、手札から1枚カードを墓地へ送る」

 

 遊星は2枚のカードをドローしたのち、すぐさま手札からカードを1枚墓地へと送る。墓地は決して「さよなら」という意味ではない。墓地に行くことで、真価を発揮できるモンスターだっている。

 

「手札を増やす算段だろうが軽率すぎたな、遊星。俺の場には《便乗》がある。このカードの効果により、相手がドローフェイズ以外でドローした場合、俺もデッキから2枚ドローできる」

 

 ジャックは不機嫌そうに眉を顰めると、デッキトップから2枚のカードを引いた。

 

「引きたいなら、引かせてやる。俺はさらに《Sp -貪欲な壺》を発動!」

「正気か、遊星!?」

「ああ。これは勝利に必要なピースだ。《Sp -貪欲な壺》は自分のS P Cを2つ取り除くことで発動できる。墓地のモンスター5体をデッキへと戻し、その後、2枚ドローする」

 

 大きく舌を出す金持ちそうな顔をした壺が、ゲラゲラと下品に哄笑する。貪欲な壺へと吸い込まれるのは《ジャンク・シンクロン》、《チューニング・サポーター》、《クイック・シンクロン》、《ロード・ウォリアー》、《ニトロ・ウォリアー》の5体だ。それらモンスターたちが全員壺に収まれば、貪欲な壺の口から2枚のカードが吐き出された。きちんと涎がついていないところを見ると、彼は彼なりに気を遣っていることが窺える。この壺は、どうやら仕事ができる有能な壺らしい。(謙虚な何かを見ながら)

 遊星は、自身の手札に舞い込んできた2枚のカードを見て、静かに笑みを浮かべた。ジャックも《便乗》の効果でさらに2枚ドローする。

 

 遊星S P C:5 ⇨ 3

 

 ●

 

「覚えているか。お前がまだサテライトに居た時、俺に告げた言葉を」

「……」

 

 遊星の言葉にジャックは海馬に眠る記憶を呼び起こした。

 あれは、まだジャックが遊星たちとつるんでいた頃。互いの腕を磨くため、果てなき夢を見るためにデュエルを楽しんでいた頃。ジャックが遊星へと告げた言葉。

”デュエルとは、モンスターだけでは勝てない。罠だけでも、魔法だけでも勝てはしない。全てが一体となってこそ意味をなす。そして、その勝利を築き上げるために、最も必要なものはここにある!”

 遊星はその答えをずっと探していたのだろう。ジャックに負け続けている理由としてではなく、己がどうやってデュエルと向き合うかを考えるために。

 そうして見つかった。遊星は自分なりに答えを探し、見出したのだ。

 

「お前はそれが何か言わなかった。だが俺は、その答えを見つけた」

「聞いてやろう! その答えを!」

 

 ならば、ジャックは聞いてやらなければいけない。

 遊星が何を感じ、どのような結論をくだしたのかを。

 彼のうちに眠る——熱き決闘者の終着点を。

 

 遊星はゆったりと目を閉じ、再度開く。ジャックの想いに全力で応えるため、神経のひとつひとつをフル稼働させる。そうして手を胸の位置にまで上げれば、親指で己の心臓がある部分を指し示した。

 

「すべてのカードを信じるデュエリストの魂!」

 

 これが、不動遊星が出した答え。

 不必要なものなど何もない。カード1枚1枚を信じ、自分の力として昇華する。

 ”やはり似ている”

 ジャックは鉄面皮を貼り付けたまま、内心でそう吐露した。後ろで走り抜ける遊星に、ジャックは自ずと遊太を重ね合わせていた。1人で出来ないことも、誰かと力を合わせることで成し遂げる。

 最初は弱者の考えだと一蹴した。キングとなるためには不要だと切り捨てた。

 しかし、初めて追い込まれた時、ジャックも彼らと同じものが見えた気がしたのだ。だからこそ、遊太と初めてデュエルした時にスターダストを使った。

 ジャックにはジャックの、遊星には遊星の、見えるけど見えないものが支柱として存在する。たとえ、それは両者間で認識できないものだとしても、彼らの魂に刻み込まれているに違いない。

 

「その魂が、このカードを再び俺の手札へ呼び戻した。どのモンスターも、どのカードも、破壊され、リリースされることに意味があった。全てはこの時のために! 見せてやる、これが俺とカードたちの絆の力だ!」

 

 遊星が宣言すれば手札から見慣れたモンスターが飛び出してくる。エンジンを背負い、ゴーグルを装着して、オレンジ色の装甲で光を反射する。

 

「来い、《ジャンク・シンクロン》!」

 

 デッキへと戻したカードが、そのまま遊星の手札へと舞い戻った。

《ジャンク・シンクロン》——遊星を支え、遊星とともに歩み、遊星とともに駆け抜けたモンスター。

 カードが見せた信頼のような力。遊星の言う「デュエリストの魂」が《ジャンク・シンクロン》に命を吹き込んだようにさえ思えた。

 

「《ジャンク・シンクロン》のモンスター効果! 墓地の《ジャンク・コンバーター》を特殊召喚する! さらに手札の《ドッペル・ウォリアー》のモンスター効果! 墓地からモンスターを特殊召喚したことにより、このモンスターを手札から特殊召喚できる!」

 

 次々と現れるモンスターたち。そのうちの一体は、両手両足にコンポジット端子をつけ、お尻からHDMIケーブルを伸ばした《ジャンク・コンバーター》である。

 

《ジャンク・コンバーター》

地属性|星2|戦士族/効果

攻400守200

 

「さらに、永続罠(エンジェル・リフト)! このカードにより、墓地の星2以下のモンスターを守備表示で特殊召喚できる! 甦れ《ニトロ・シンクロン》!」

 

 まだ出番くれるんすか、という感情を体現するかのように、感極まって泣いている《ニトロ・シンクロン》が墓地より舞い戻る。さっきまで掲げていた「《ニトロ》シンクロを増やせ」のプラカードは無い。代わりに「《クイック・シンクロン》を禁止カードに」と書かれた紙が手に握られていた。

 

「ここからが本当の第2幕だ! 俺は(レベル)2の《ドッペル・ウォリアー》に星3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

 

《ジャンク・シンクロン》が背中についているリコイルスターターを引っ張れば、エンジンが稼働を始める。

 2体のモンスターが円形フレームと星に転じれば、遊星の頭上に光の筋が迸った。

 

「集いし星が、新たな力を呼び起こす——光差す道となれ!

 シンクロ召喚——再び舞い戻れ、《ジャンク・ウォリアー》!」

 

 ヴァルカンにより戻された《ジャンク・ウォリアー》が拳を二つ合わせて現れる。さっきはきちんと活躍できなかったため、今度こそはという意気込みもあるのだろう。そんな彼の肩についているジェット口から、これまた先程と同じように、2体の《ドッペル・トークン》が飛び出してきた。2体の《ドッペル・トークン》は風に棚引かれている《ジャンク・ウォリアー》のマフラーにしがみついている。

 

「《ジャンク・ウォリアー》のモンスター効果! さらに、チェーンしてシンクロ素材となった《ドッペル・ウォリアー》のモンスター効果! 《ドッペル・トークン》を2体特殊召喚し、《ジャンク・ウォリアー》の攻撃力は3800までアップする! パワー・オブ・フェローズ!」

 

 再出勤してきた出来る先輩を見て、後輩たちは黄色い声援を上げた。我らがヒーロー、とでも言わんばかりのはしゃぎっぷりである。声援を受けた《ジャンク・ウォリアー》も、悪い気分では無いのか、肩をぶんぶんと振り回し、目の前に佇むレッド・デーモンズを睨んだ。

 さあ、アニメO Pの再現といこうじゃないか——自然とそう言っているような気がする。

 

「レッド・デーモンズの攻撃力を超えてきたか!」

「これだけじゃないぞ、ジャック! 俺は星2《ジャンク・コンバーター》に星2《ニトロ・シンクロン》をチューニング! シンクロ召喚——いでよ、《アームズ・エイド》!」

 

 2本の円形フレームと2つの星から、赤い爪を持つ腕そのものが現れる。《ジャンク・ウォリアー》は《アームズ・エイド》を見て、更なるパワーアップに心を踊らせた。

 

《アームズ・エイド》

光属性|星4|機械族/シンクロ/効果

攻1800守1200

 

「シンクロ素材となった(ジャンク・コンバーター)の効果発動! 墓地より、《シンクロン》チューナーモンスターを1体特殊召喚できる! 俺はもう一度《ニトロ・シンクロン》を特殊召喚!」

「なにっ、まだチューナーモンスターを出せるのか」

 

 本日3度目の出勤に、流石の《ニトロ・シンクロン》もへばってきたのか、荒い息遣いで墓地より走って戻ってきた。あと何回こうやって呼び出されるのだろうと、心内で戦々恐々している。今のうちにインパクトを与え、今後の出番を増やそうと目論む姿はもうない。

 

「これで最後だ! 星4《アームズ・エイド》、星1《ドッペル・トークン》2体に、星2《ニトロ・シンクロン》をチューニング!」

 

 更なるパワーアップを夢見ていた《ジャンク・ウォリアー》が、驚きの表情をする。

 だが、そんなもの尻目に《アームズ・エイド》は、《ジャンク・ウォリアー》のマフラーに捕まっていた2体を捕らえて、合計6つの星となった。《ニトロ・シンクロン》も遊星の「最後」という言葉を信じ、2つの星から2本の円形フレームへと転じる。

 迸る一条の光。森羅万象を飲み込むほど美しく、何より神々しく輝く光景に、プレイヤーだけでなく、モンスターたちまでもが目を眩ませた。

 

「集いし願いが、新たに輝く星となる——光差す道となれ!

 シンクロ召喚——飛翔せよ! 《スターダスト・ドラゴン》!」

 

 大いなる風を受けて、銀翼が空に広がる。猛々しく舞うドラゴンに誰もが見惚れ、時の流れが悠久であるかのように錯覚する。白銀の肢体は、暗澹たる夜空に浮かぶことで一層と映えており、さながら風光明媚が如く完成されていた。

 ここに2対のドラゴンが場に出揃った。片や悪魔と見間違うほど力強いドラゴン。片や天使を彷彿とさせる麗しいドラゴン。お互いがお互いを意識するがために、レッド・デーモンズとスターダストの2体は、天に向かって咆哮する。

 刹那、ジャックと遊星——両者の腕に痛みが走った。

 

 

 

 

 

遊太視点

 

 オレと狭霧さんは完全に言葉を失っていた。

 目の前で繰り広げられているのは、プロの世界ですらお目にかかれないだろう白熱したデュエル。あの2人に匹敵するデュエリストが、この街にどれほどいるのだろうかも、見当がつかない。

 そもそも、ジャックさんは完全に自分と出会った時より強くなっている。多分、戦っているチャレンジャー側も、そんなジャックさんに引き伸ばされる形で力を発揮しているのだろう。デュエルの楽しさを知り、デュエリストとなって日が浅いオレでも、そのくらいはわかるんだぜ。

 だからこそ、手に汗握るこのデュエルに、オレは息を呑んでいた。生半可な感想を漏らしてしまえば、それだけで2人の戦いにケチをつけるような気がしたからだ。龍亞や龍可がここにいても同じことだろう。特に龍亞なんて、普段の活発さとは真逆の反応を溢していたに違いない。

 

 そっと隣にいる狭霧さんを横目で確認してみる。最初はジャックさんを応援していた狭霧さんも、今では静寂を作り出す一員となっていた。両手を組み、胸の位置まであげて、祈るようにジャックさんを見守っている。序盤の余裕な態度なんてもう無い。あるのは、愛しい人が勝つ瞬間を、ただ黙って切望する乙女だけだ。

 

 こんなの見せられたら、心の内が熱くならずにはいられないぜ。これが、いわゆる「デュエリストの魂」というやつなのだろうか。じーちゃんとやっていた時も、こんな感じになっていたような気がする。

 あー、もうデュエルしたくなってきたぜ! 帰ったらママに頼んで、今日作り上げたデッキを回す! なんなら、これが終わった後、悪魔に頼めばいいんじゃない!?

 こうなるよう仕向けるために、ジャックさんに呼ばれたと思ったら苛立ちも浮かぶが、それ以上に闘争心が煽られる。そっと腰に携えたデッキホルダーに手を置けば、昨日と同じく「クリクリー」と可愛らしい鳴き声が耳に入った。

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

”なんだ……今の痛みは”

 

 遊星は自身の右腕をチラリと見る。

 スターダストを出した瞬間感じた、焼けるような痛み。2体のドラゴンの咆哮に呼応するように痛みが走ったのは気のせいだろうか。

 疑念が遊星の頭の中で渦巻くが、改めてジャックを見る。今なお闘気を孕ませているジャックに、無駄な思考は不要と判断し、遊星は無理やり思考を切り替えた。

 

”破壊耐性を付けたか”

 

 相反するジャックは感じた痛みなど気にせず、スターダストを見上げて、そう思った。

 ジャックの場には伏せカードが1枚。これが相手のモンスターを破壊する類の効果カードなら、遊星の読みは正解だろう。間違いだったとしても、スターダストの効果で、レッド・デーモンズの強制効果にチェーンできる。スターダストとレッド・デーモンズの相性は最悪だった。

 しかし、

 

「バトル! 《ジャンク・ウォリアー》よ、レッド・デーモンズに攻撃!」

 

 ジェット口から炎を噴き出し、《ジャンク・ウォリアー》が攻撃姿勢に入った。

 と、同時にジャックは腕を横に振るう。

 

「キングの前で横行は許さん! 永続トラップ発動! 《デモンズ・チェーン》!」

 

 ジャックの罠カードから青い悪魔が這い出てきた。青い悪魔は、今なおレッド・デーモンズに殴りかかろうとしている《ジャンク・ウォリアー》に向けて、鎖を投げ放つ。鎖は《ジャンク・ウォリアー》の身体を縛ると、力を吸い取るように結ばれた。

 

「《ジャンク・ウォリアー》!?」

「この鎖に縛られたモンスターは、攻撃することができず、さらに効果をも無効される。よって、《ジャンク・ウォリアー》の攻撃力は2300に戻る!」

 

 必死に抜け出そうともがく《ジャンク・ウォリアー》だが、青い悪魔が鎖をさらに強く絞る。絶対に抜け出させないという意思が感じ取れた。

 

《ジャンク・ウォリアー》

攻3800 ⇨ 攻2300

 

「これで終わりか、遊星! 所詮、ただの道化にできることは、この程度ということか!」

「っ、まだデュエルは終わっていないぞ、ジャック! 俺はカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

 他人が聞けば負け惜しみのように聞こえなくもない。

 だが、幼少期から付き合いのあるジャックは分かる。遊星は虚勢だけで、吠えたりしないということを。遊星は着々と目的のために努力し、その一手一手を打てる男だということを。

 だからこそ、ジャックも最後まで気を抜かない。楽観視したりしない。遊星という旧友を嫌というほど知っているから。

 

 ジャックS P C:4 ⇨ 5

 遊星S P C  :3 ⇨ 4

 

「俺のターン!!」

 

 渾身のドローから、ジャックの気概が伝わってくる。

 このターンの終了時、もしスターダストを残してしまえば、レッド・デーモンズの強制効果でスターダストだけが残る。それは暗にジャックの敗北を示唆していた。

 

「《Sp -エンジェル・バトン》を俺も発動するぞ、遊星! 2枚ドローし、デッキからカードを1枚墓地へ送る。そして、《Sp -スピード・フュージョン》を発動! このカードはS P Cが4つ以上ある時に発動できる。俺は手札の《ビック・ピース・ゴーレム》と《ミッド・ピース・ゴーレム》を手札融合! 現れよ、我が僕《マルチ・ピース・ゴーレム》!」

 

 大、中の大きさの岩石モンスターが手を合わし、光に包まれる。光から出てきたのは、城壁を連想させるような、堅牢な岩石の体を持つモンスター。研磨された岩の体は、綻びひとつ見えないほどであった。

《マルチ・ピース・ゴーレム》は従者のように、レッド・デーモンズの前に立ちはだかる。

 

《マルチ・ピース・ゴーレム》

地属性|星7|岩石族/融合/効果

攻2600|守1300

 

「策を弄するため、このキングの手札を増やしたことを後悔するがいい! 《Sp -スター・フォース》! 自身のS P Cが4つ以上ある時に発動できる! 《マルチ・ピース・ゴーレム》を除外し、このモンスターの星ひとつにつき攻撃力を100ポイントアップさせる! さぁ、僕の魂を食らい糧とせよ、レッド・デーモンズ!」

 

 レッド・デーモンズが《マルチ・ピース・ゴーレム》を掴み、炎で溶かして捕食する。食われる側の《マルチ・ピース・ゴーレム》は悔いた表情もせず、なされるがまま、レッド・デーモンズの胃袋へと収まった。これが王への忠義というものなのだろうか。レッド・デーモンズも《マルチ・ピース・ゴーレム》の意志を感じ取ったらしく、スターダストに強い眼差しを向けた。

 

《レッド・デーモンズ・ドラゴン》攻3000 ⇨ 攻3700

 

「このまま、《ジャンク・ウォリアー》を攻撃して終幕というのは実に呆気ない……俺とお前、そしてレッド・デーモンズとスターダスト! 互いのエースモンスターをぶつけ、ねじ伏せることでキングのデュエルは完成する!」

「キングのデュエルとやらに興味はないが、お前がそのつもりなら受けて立つまでだ! 罠カード発動! 《シンクロ・ストライク》! シンクロ召喚したモンスターの攻撃力を、シンクロ素材に使用したモンスター1体につき、500アップさせる! カードの心を今ひとつに!」

 

 スターダストの周りに、シンクロ素材となって消えたモンスターたちが集結する。その数なんと4体。《ドッペル・トークン》2体がスターダストの両肩に乗り、《アームズ・エイド》が腕に装着され、《ニトロ・シンクロン》が地面に寝転がっている。スターダストは頼もしい仲間たちに目を光らせ、両翼で風を作り上げた。

 

《スターダスト・ドラゴン》攻2500 ⇨ 攻4500

 

「4体シンクロ召喚はこれを狙っていたのだな! だが、キングは常に二歩先をいく!  《Sp -オーバー・ブースト》! 効果で自分用S P Cを4つ増やし、さらに《Sp -スピード・エナジー》を発動! S P Cひとつにつき、レッド・デーモンズの攻撃力を×200アップさせる! 我がスピードを糧とし、王者の威光を示せ!」

 

 ジャックの純白のDホイール——ホイール・オブ・フォーチュンが一気に加速する。それに応じ、レッド・デーモンズも高らかに雄叫びをあげた。

 

 ジャックS P C:5 ⇨ 7

《レッド・デーモンズ・ドラゴン》 攻3700 ⇨ 攻5100

 

「……」

「フハハハハ! これで、お前の場に伏せカードはもう無い! このキングの一撃を持って、貴様のスターダストに引導を渡してやろう! バトル!」

 

 ジャックがバトルフェイズの移行を宣言した時だ。さっきと同じ痛みが、遊星とジャックの右腕に襲った。ジャックが堪らず疼く腕を見てみれば、赤い痣が袖を超え、浮き出ている。

 

 遊星もジャックの違和感に気がついていた。自身と同じく、右腕に浮かび上がっている刻印。文様に違いはあれど、何らかの因果関係があることは確かである。

 

 両者がお互いの右腕を睨み、そして己のエースモンスターであるドラゴンを見上げる。

 レッド・デーモンズとスターダスト。まるで共鳴するかのように喉を震わせ、甲高い唸り声をあげた2体。神話の戦いを想起させるその勇姿は、何者をも寄せ付けない神秘を宿しているようにさえ思えた。

 

「クゥ、この程度でこのキングの攻撃は止まらん! レッド・デーモンズよ、スターダストを粉砕せよ! 王者の咆哮! 灼熱のクリムゾン・ヘルフレア!!」

「っ——迎え撃て、スターダスト! 響け! シューティング・ソニック!!」

 

 喉奥に留められた猛炎と、突風の塊。それらが示し合わせたかのように射出される。ぶつかり合う二対の攻撃は、霧散することもなく拮抗し続けた。

 そのせいなのか、はたまた定められた運命故なのか。

 レッド・デーモンズとスターダストを飲み込むように赤き龍が姿を現す。デュエルスタジアム全体を覆うほどに巨大、かつ膨大な力の奔流がジャックと遊星を襲う。

 やがて赤き龍は天へ昇っていき、この世のものとは思えない鳴き声を落とした——。

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 オレたちの前に赤き龍が現れた。

 あまりにも大きく、気高く、神々しいその姿に、もはや目は釘付けとなっていた。

 気がつけば、デュエルは途中で中断されていた。ジャックさんとチャレンジャーの男が、Dホイールを止めていたのだ。ライフも、スターダストとレッド・デーモンズがぶつかりあう寸前のままである。

 

「どうなって……今のはデュエルスタジアムの仕掛け?」

 

 オレがそう漏らせば、隣で腰を抜かしていた狭霧さんが首を横にふる。

 

「あんなの設計されていないし、そもそも今は私たち以外いないはず……」

「じゃあ、ソリッド・ヴィジョンじゃないの!?」

「それこそあり得ないわよ! アトラス様はサイコデュエリストじゃないはずよ!」

 

 狭霧さんが強く言うもんだから、オレも言葉を詰まらせてしまった。

 サイコデュエリストというのは、デュエルモンスターズのカードを実体化させる能力を持った人間のことである。世界総人口の数%にも満たない人数が、それに該当するとママが言っていた。

 確かに、ジャックさんがオレの前でカードを実体化させたことはない。

 だったら、対戦相手がそういう超能力を備えている?

 それもあり得ない。そもそも赤き龍のようなモンスターを召喚したプレイヤーはいなかった。

 

「と、とにかく、下に降りようよ! ジャックさんたちのDホイールは転倒しちゃってるし、もしかしたら怪我をしてるかも!」

「え、ええ! そうよね! アトラス様の身に何かあったら……」

 

 狭霧さんの顔色が著しく悪くなった。

 多分、最愛の人が大変な怪我をしたところを想像したのかな。

 

 狭霧さんの案内でオレたちはスタジアムのコースへと降りた。選手出入り口のところから外に出れば、なぜかヘリコプターとか、セキュリティの人とかが、たくさん……。

 うわー、なんか厄介ごとの臭いがするぜ。

 憶測で言うなら、サテライトの人を捕まえにきたのかもしれない。狭霧さんも「不法侵入」って言ってたくらいだし、正規ルートでシティに来たわけではないのだろう。そういう人たちは、教育プログラムなるものを収容所で受けさせられると聞いたことがある。

 

 案の定と言うべきか、予感的中と喜ぶべきか、サテライトの人はセキュリティに捕まった。

 別にシティに来ただけなんなら、捕まえなくてもいいのに。マーカーも入ってないところを見る限り、悪い人じゃないと思う。それに、あの人のデュエルからは、芯の強さを感じ取れた。

 子供のオレが何を言っても無駄だろう。ていうか、オレも補導される時間帯だし。とりあえず、ジャックさんに一言くらい言ってから帰ろう。

 そう思って、サテライトの人が連れられるのを、じっと見つめたままの悪魔に声を掛けた。

 

「遊太か?」

「あ、うん……怪我とかないの?」

「フン、いらん心配だ」

 

 ジャックさんはそう言って、オレの頭を撫でる。

 

「なーっ、子供扱いしないでよ! 僕もう11歳なのに!」

 

 オレの抗議文句口答えなど意に介さないようで、ジャックさんは愛車に乗った。

 

「デュエルは終わりだ、遊太。帰りもアイツに頼んである。フォーチュンカップまでに腕を磨いておけよ」

「あんなデュエルの後に、普通そんなこと言う?」

「フッ」

 

 鼻で一笑した悪魔は、そのままデュエルスタジアムを去ってしまった。

 サテライトの人との関係。

 デュエル中に現れた赤き龍について。

 色々と聞くべきことがあったはずなのに、オレはそれを聞かなかった。きっと、今はそれを知るべきではないと、無意識に自分で判断したからだ。悪魔もオレの気持ちを見透かしてたがために、何も言わなかったのだろう。

 

「楽しそうな顔してたなぁ」

 

 去り際、ジャックさんはどこか肩の荷が降りた顔つきになっていた。

 




Sp -貪欲な壺に関して
こんなんアニメにあったか? と思った方がいると思います。
率直に言うと、存在しません、アニメには。
これはDSのゲームにあったものを使用しています!
流石にアニメだけのSpだと、デュエルの幅が脳筋になってしまいますので……


架空ライディング・デュエル。
初めてやりましたけど、めちゃくちゃ難しかったですね!
今回のデュエルの勝敗(真相)は、次回に書くと思います。
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