作家は小説の母親だ。だからすべてをここに記す。
この前書きは本編とは関係ありません。
「私いつもと違うところあるけどわかる?」
同僚の彼女は笑顔で僕に聞いてきた。知るかよ!と答えたい気持ちをグッと抑えて考えた。僕は彼女に好意を持っている。真面目だけど、どこか子供っぽいそんな彼女が大好きだった。ここで正解を与えれたら好感度は上がるだろう。さあ、何が変わった?ぱっと見わからない。
髪型?いや、変わってない。服装は制服だから変わるはずもないし、靴もおそらく変わっていない。
わからない!
僕はこういう質問は大嫌いなのだ。普通の会話したいなら、
「○○変えたんだ~」
「へえ、似合ってるね。どこで買ったの?」
…
みたいに会話を膨らませることは容易だ。
でもこの質問は、正解しないといけない。でもわからない。しょうがない奥の手を使うか。
SNSで有名人が言っていた。こういう時は、
「何が変わってもいつでもかわいいよ」
そう言っておけば大丈夫と。
テンプレートは使いたくない性格だが、これで切り抜けよう。
いや、まて、
「かわいいよ」
を言うのか?僕が?そんなの最早告白のようなもんじゃないか。
まだ始業時間ではないが、周りに人はたくさんいる。ここでそんなこと言ったら僕が彼女のこと好きだと思われてしまう。
いや!進まないと後退するだけ。いつまで僕はうじうじしているんだ!ナチュラルに言えればなんとも思われない。そうさ、そうだよ。
「…えっとー。君は…」
言え!何が変わってもかわいいよと!
しかし、喉元までの詰まった言葉はでない。
逃げるように視線を彼女の手へ向ける。目を合わせたくなかった。…手?そうじゃん!まだあった。ネイル!僕は彼女の手を見る。
彼女の薬指には綺麗な指輪があった。
「あっ…あっ…指…」
僕は彼女の指にある宝石を指さして言った。
「ちょっと驚きすぎ~。指輪もだけど、本当に変わったのは、 みょ♡う♡じ♡」
彼女は明るく僕にだけ聞こえる声で言った。
気持ち悪くなった
泣きたくなった
吐きたかった
横になりたかった
何も考えたくなかった
叫びたかった
ただここから逃げたかった
でも僕は大人である。逃げだすことは許されなかった。
「あ、みんなには内緒で、お願いしまーす」
笑顔で彼女は言うと指輪をしまった。
彼女から僕はどう思われているのか?
平常心を保てられているだろうか?
「よーし朝礼はじめるぞー」
部長が出社し朝礼が始まる。
「今日から四月に入ってうちの部署は忙しく…」
いつもは真面目に聞いている朝礼も一切頭に入らなかった。
朝礼が終わったらすぐに僕はトイレに言った。
そこで一人泣きじゃくった。
まあ、そういうことですよ。とらえ方は任せる