1955年、ネウロイとの戦争に終止符を打つべく結成された599部隊、通称<ファイナルウィッチーズ>。その隊長、リベリオン出身のジュディ・ボイドは二人のウィッチ、ガガーリンとアームストロングと共に、地球最後の巣へと向かっていた。
単発の一話完結です


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ファイナルウィッチーズ

人類とネウロイの戦い──―

それが始まってから既に十年以上が経過した1955年。

その世界のとある場所の空をウィッチ達が飛んでいた。

三人で編隊を組んでいるこの部隊は、

現役のウィッチの中でも最強クラスの魔女が集められていた。

 

「そういえば、今日ってベルリンが解放されてからちょうど10年の日なんだねー」

 

左を飛んでいた、三人の中で一番小柄な少女が言った。

彼女の名は、ユリア・ガガーリン。

オラーシャのウィッチで、部隊の中で最年少ながら、多くの戦果をあげていた。

 

「そうだな。多くの犠牲を出した戦いだった。我々は、あの日を忘れてはならん」

 

右側にいたウィッチ、メアリー・アームストロングが返した。

リベリオン合衆国のウィッチだ。

常に冷静に状況を判断できる彼女は、部隊に欠かせないベテランだった。

 

「そう……。あれからもう10年経つのね……」

 

編隊のリーダーで、中央を飛ぶウィッチ。

ジュディ・ボイドの名前を持つこのリベリオンの少女には不思議な能力があった。

彼女はその能力を持って、人類最後で最強のウィッチと呼ばれていた。

 

 

 

ベルリン解放から10年──―

人類は多くの犠牲を払いながらも、確実にネウロイから世界を取り戻しつつあった。

1946年にはワルシャワを、

1947年にはミンスクを、

そして1950年には壮絶な死闘の上、オラーシャの首都モスクワを解放した。

 

しかしネウロイも黙ってはいなかった。

確かに追い詰められてはいるものの、強化を繰り返し人類に対抗していた。

そして残りわずかとなった巣の中で、しぶとく生き残っていた。

 

今、三人が向かっているのは、地球最後のネウロイの巣と言われている場所だった。

それはモスクワから南東に6000km程にある町、ウランバートルを包み込んでいた。

<Xanadu(ザナドゥ)>と名付けられたこの巣を破壊できれば、

この長く続いた戦争に終止符を打てると考えられていた。

 

だがここに巣食うネウロイは、これまで確認されていたどの種類の敵よりも強化されており、

並のウィッチでは近づくこともできない有様だった。

 

そこで編成されたのが、ボイドをリーダーとするウィッチ部隊、599部隊だった。

ここには世界から選りすぐりのエリートが集まっており、

この部隊を持ってすれば戦争を終わらせられる、と期待されていた。

つまり人類最後のウィッチ部隊、<ファイナル・ウィッチーズ>という事だ。

 

 

 

「……前方に複数の小型ネウロイが見えるわ」

 

ボイドが早速、敵を視認した。

 

「うえぇ!?もう来たの!?」

「慌てるなガガーリン。敵の本拠地だ。迎撃されるのは当然だろう」

 

三人が戦闘態勢に入る。

 

「全機、増槽を投棄し、ブレイク。……いくわよ」

「「了解!」」

 

ボイドの指示で編隊は散開し、戦闘に突入した。

 

 

「手厚い歓迎だねー!何だか楽しくなってきたよー!」

「油断するな、ここで落ちたら洒落にならん」

 

アームストロングとガガーリンは二手に分かれて戦っている。

最強クラスのウィッチなだけあって、次々と小型ネウロイを落としていく。

敵からすれば、恐ろしい存在だろう。

 

「よゆーよゆー、やっぱウチらって最強?」

「そうやってすぐ調子に乗るのが、お前の悪い癖だな、ガガーリン」

 

ak47とm16の銃声が響き渡る。

 

二人がネウロイ相手に無双している間、ボイドは高度を上げ周囲を警戒していた。

そこで遥か向こう側から、とてつもなく強い反応があるのを察知した。

 

「これはもしや……、巣の本体……?」

 

ボイドはこの強い反応が、ネウロイの巣の心臓部から来ていると直感した。

地球最後の巣は目前に迫りつつあった。

 

「二人とも、聞いて。この先に、強いネウロイの反応があるの。

 もしかしたら、Xanadu(ザナドゥ)のコアかもしれない」

 

戦闘中の二人に無線で報告する。

 

「えー、それホント!?」

「遂に決戦の時が来たか」

 

小型ネウロイを殲滅しつつ、通信は続く。

 

「ここを攻略すれば、戦争を終わらせられるかもしれない。

 でも、三人だけで突撃するのはリスクも大きいわ。

 そこで、二人の意見を聞きたいの。

 突入するべきか、撤退するべきか……」

 

ボイドが二人に判断を求める。

 

「いっちゃえいっちゃえ!」

「行こう。この戦争を終わらせよう」

 

二人の答えはイエスだった。

 

「……分かったわ。行きましょう」

 

周辺のネウロイを全滅させ、三人は再び編隊を組んだ。

 

 

 

「……いよいよ戦争も終わりかぁ」

「ガガーリン。勝った気になるのは、まだ早いぞ」

 

アームストロングが戒める。

 

「えー、ウチら三人が揃ってるんだから、勝ったも同然じゃん」

「そうやって油断する奴から、戦場では死んでいくんだ」

 

二人の険悪な空気を、ボイドが宥めた。

 

「まぁまぁ、相変わらず二人とも仲が悪いのね」

 

するとガガーリンが、ボイドの隣に飛んできた。

 

「ねぇ、ボイドは戦争が終わったら何するの?」

「……知らないわよ、そんなの」

「ちぇー、つれないなぁー」

 

ガガーリンは露骨に不満そうな顔をする。

 

「私さぁ、一つだけやりたいことがあるんだー」

「……何よ」

「言ってもいいけど、バカにしないでよねー」

 

アームストロングも隣に飛んできた。

 

「私も気になるな。言ってみろ」

 

「……宇宙に行きたいんだ、私。

 そこでこの星がどんな姿なのか、見てみたいんだよねー。

 もしホントに青色だったら、こう言ってみたいんだ。

 『地球は青かった』……って」

 

当時1955年では、人類の宇宙進出など到底考えられない時代だった。

ガガーリンの言葉に、ボイドは笑みを浮かべた。

 

「なにそれ、バカみたい」

「あー、ひっどーい!せっかく人が夢を語ったのにー!」

 

普段は無表情なアームストロングも、笑みを浮かべる。

 

「そうだな、ガガーリン。お前は馬鹿者だ」

「ちょっとー、アームストロングまで!」

 

ガガーリンはご機嫌斜めだ。

 

「だがお前が馬鹿者なら、私は大馬鹿者だな」

「えー、どうして?」

 

アームストロングも夢を語り出す。

 

「私はな、月に行きたいんだ、月に。

 そこで人類で初めて、月面に自分の足跡を残したいんだ。

 降り立ったときのセリフまで考えてあるぞ」

 

「ひゃははは!なにそれ、バッカみたーい!」

 

ガガーリンは大声で笑い始める。

 

「……ブーメラン刺さってるわよ、ガガーリン」

「アハハ、だってあまりにもおかしくて」

「お前も大概だろう、ガガーリン」

 

戦場の真っ只中なのに、三人は面白おかしい会話をしていた。

 

 

 

「……さて、お喋りはここまでね」

「……そうみたいだね」

「あれがネウロイの巣か……」

 

再び、部隊に緊張が走る。

巣の中心は目と鼻の先にあった。

 

「いくわよ、599部隊<ファイナルウィッチーズ>発進!」

「「了解!」」

 

三人はネウロイの巣へと突っ込んでいった。

 

 

*

 

 

「これがXanadu(ザナドゥ)の内部ね……」

「なんか、やなかんじー」

「コアはどこだ?そこを叩けば全てが終わる」

 

三人は巣の中心へと進んでいく。

どういうわけか、ネウロイは反撃してこなかった。

 

「ねー、巣の中のくせに、ネウロイ少なくなーい?」

「言われてみれば、そうね……」

「構わん。先に進むぞ」

 

違和感を覚えつつも、コアの探索を続ける。

 

 

「……っ!全機、戦闘態勢に入って!上からよ!」

 

急にボイドが二人に指示を出す。

 

「え?わああぁ!ホントだ!」

「奴らの最後の足搔きか……!」

 

急いで編隊を解き、戦闘を開始する。

 

「やばいよやばいよ!これ多すぎるよ!」

「落ち着け、ガガーリン!仲間を見失うな!」

 

ネウロイは、まるで蛆虫のようにそこら中から湧いてきた。

 

「……数が多すぎるわね」

「モスクワのときよりはマシだが……」

「はやくなんとかしてよー!」

 

応戦するも、敵は無尽蔵に出現してきた。

 

 

「仕方ない、私の能力を使いましょう」

「おっ、きたきたー!」

「頼むぞ、ボイド」

 

ボイドが魔法の準備を始めた。

 

「空を制する、大いなる鷲よ!我に力を与え給え!」

 

詠唱と共に、ボイドのストライカーユニットが光に包まれる。

 

「<セイバー>が変わっていくよー!?」

「あれが、あいつの能力……」

 

三人が履いているストライカーユニット、

ボイドの<セイバー>、

ガガーリンの<ファゴット>、

アームストロングの<パンサー>はジェットストライカーだった。

開発当初から高い性能を示していたジェットは、燃費や安定性に問題があった。

その後、改良が進み5年程前からは、レシプロからジェットへ換装していった。

 

しかし、ボイドは満足していなかった。

自分には、もっと強いストライカーユニットの構想がある。

ボイドの能力は、その構想を具現化するものだった。

 

「顕現せよ、<イーグル>!」

 

<セイバー>のユニットが完全に変異する。

新たなユニット、<イーグル>を纏ったボイドが戦闘に移る。

 

「40秒で終わらせるわ」

 

そう言うと彼女は、凄まじい勢いでネウロイを殲滅していく。

 

「はやっ!めちゃくちゃはやいよ!」

「大いなる鷲、イーグルか……」

 

宣言通り、ネウロイの群れは40秒で片付いた。

 

 

「ふぅ。これで全部かしら?」

 

そこへ、別の敵が襲いかかる。

 

「わわわ、今度はもっとヤバそうだよー!」

「なんて機動力だ。<イーグル>以上か……?」

 

新手は<イーグル>を履いたボイドすらも振り切ってしまう程の敵だった。

 

「こうなったら……」

 

ボイドは再び詠唱を始める。

 

「また何か唱えてるよー!」

「<イーグル>以上のユニットがあるのか……?」

 

「奮闘せし、戦う隼よ!我に勇気を与え給え!」

 

再び、ストライカーユニットが光に包まれる。

 

「君臨せよ!<ファルコン>!」

 

新たなユニット、<ファルコン>が誕生する。

それは<イーグル>よりも小型なユニットだった。

 

「なんかカッコイイよー!」

「さしずめ、ファイティングファルコンって名前か?」

 

襲い来る無数のレーザーを、ボイドは余裕そうにかわしていく。

そして敵のコアにM16の弾丸を打ち込んだ。

 

「とどめよ」

 

新手のネウロイも、粉々に散っていく。

 

「やっぱり、ボイドはすごいや!」

「伊達に我々のリーダーを努めているわけではないな」

 

ネウロイは掃討され、周囲に静けさが残った。

 

 

「はぁっ、はぁっ……」

 

突然、ボイドを猛烈な疲労感が襲う。

 

「ボイドー、しっかりしてー!」

「おい、どうしたボイド!」

 

能力を一気に使用した影響で、魔力の消耗が激しくなっていた。

 

「はぁっ、大丈夫……。まだ戦えるわ……!」

 

無理矢理飛ぼうとするボイドを、二人は引き止めた。

 

「無理はするな。一旦休もう」

「そーだよー、休憩大事!」

 

ひとまず、ボイドを地上で休ませることにした。

 

「はぁっ、悪いわね、二人共……」

 

ユニットの出力を切り、地上に横たわらせる。

 

「しばらくここで休んでいろ」

「大丈夫ー?ボイドー」

 

「うーん、眠くなって……」

 

少しすると、ボイドは眠ってしまった。

 

「ありゃ、寝ちゃったよー?」

「無理もない、そっとしておけ」

 

ボイドを見守る二人。

そこへ、ネウロイのレーザーが飛んできた。

 

「くそっ!こんなときに!」

「ちょっとー、卑怯だぞー!」

 

突然の攻撃に二人はシールドを張り、防御する。

ボイドに当たっては、命取りだ。

 

「このままじゃまずい。奴らを倒すぞ!」

「ボイドー、ちょっと休んでてねー!」

 

そう言って二人はボイドを置いて、飛んで行った。

 

 

*

 

 

ボイドは夢を見ていた。

 

 

「大丈夫ですか?えーっと、名前は……」

「……ボイドです」

 

数年前の戦場で、とあるウィッチが少女を助けていた。

 

「ボイドちゃんだね。怪我はない?」

「はい……。大丈夫です……」

 

まだその少女は小さく、幼い年齢だった。

 

「よかったぁ。おうちの場所は分かる?」

「……自分だけで帰れます」

 

ウィッチの方はかなりのベテランだったようだ。

 

「宮藤、何をやっているんだ?早く戻れ」

「……ごめんね。私、もう行かなきゃ」

「はい……。助けてくれて、ありがとうございました……」

 

 

*

 

 

「この野郎!ちょこまかと動きやがって!」

「ウチら二人がかりでも、これはキツイなー」

 

アームストロングとガガーリンが戦っていたのは、新種のネウロイだった。

スルメイカのような独特のフォルムとは裏腹に、凄まじい速さで移動していた。

 

ボイド(あいつ)が健在なら、対抗できたかもしれないが……」

「あれ?アームストロングが弱音を吐くなんて珍しいじゃん」

 

歴戦の二人を持ってしても、敵わない敵。

その敵が、膨大なエネルギーを蓄積し始めた。

 

「なんか、ヤバい攻撃が来そうだよー!」

「まずい、シールドを展開しろ!」

 

ネウロイが極太のレーザーを解き放つ。

二人はシールドを使って防御しているが……

 

「ぐうううぅッ!これは……!」

「ちょっと……、耐えられないかもね……!」

 

あまりのパワーにシールドごと押されていく。

そこに追い打ちを掛けるように、ネウロイはレーザーの出力を高めた。

 

「くぉおおおおッ!?」

「うわあああァッ!?」

 

さらなる攻撃で、二人はシールド諸共吹き飛ばされた。

 

「ぐはっ!」

「うっ!?」

 

そして、地面に向かって強く叩きつけられた。

 

 

*

 

 

「……はっ!?」

 

何かが叩きつけられるような音で、ボイドは目を覚ました。

 

「気が付いたか、ボイド……」

「ごめんねー。私たち、やられちゃった……」

 

そこには、ボロボロになったアームストロングとガガーリンの姿があった。

シールドを張っていたおかげで、致命傷にはならなかったものの、

これ以上の戦闘は不可能という状態だった。

 

「なにがあったの、二人共!?」

 

「あのスルメイカみたいな奴にやられたんだ……」

「もう戦うのは無理かもー……」

 

上を見上げると、そのネウロイが飛行していた。

勝ち誇ったように、我が物顔で空を飛んでいた。

 

「……そう。アイツがやったのね……」

 

「ボイド……、本部に伝えてくれないか……?これ以上の作戦継続は不可能と……」

 

アームストロングに従い、ボイドは本部に連絡を送る。

 

「こちら599部隊、隊長のボイド、聞こえますか?」

 

だが返答が来ない。

通信にはザザザー、という強いノイズが入っていた。

 

電波妨害(ジャミング)……、ね」

 

「そうか……。無線は通じないか……」

「……ここで終わりなのかな、私たち……」

 

ガガーリンは自分たちの最後を覚悟した。

 

実は、この599部隊は2年前に設立した当初は9人のウィッチで構成されていた。

だが激しい戦乱の中で、徐々に負傷が酷くなり、離脱するウィッチが出始めた。

いや、負傷だけならまだ幸運だったかもしれない。

中には戦闘の最中に致命傷を負い、そのまま命を落としたウィッチも少なくなかった。

そして現在では当初の三分の一に当たる、3人のウィッチしか残っていなかった。

 

「まぁ、いずれこうなることは覚悟していたさ……」

「いよいよ私たちの番、ってことだね……」

 

いよいよ二人が運命を察した、その時だった。

 

「もう嫌なの!」

 

突然、ボイドが大声で叫んだ。

 

「もう、仲間が傷ついて亡くなっていく様を見るのは嫌なの!」

 

「ボイド、何をいって──―

「何があっても、あなた達は絶対に死なせないわ!生きて、平和な世界を一緒に作るのよ!」

 

そう言って、ボイドは仰向けの体を何とか起こした。

 

「まだ行けるわよね、私……?」

 

少しの時間、仮眠をとっていたおかげか、魔力は回復しつつあった。

 

「あのネウロイの攻略法は……」

 

ボイドが空を見上げる。

 

「もう無理だよー、ボイド……」

「あいつは<ファルコン>と同じ、いやそれ以上のスピードだぞ……」

 

<イーグル>より機敏な<ファルコン>でも追いつけない相手──―。

 

「考えるのよ、私──―。自分が思い付く限りの最強のストライカーユニットを──―。

 <イーグル>や<ファルコン>よりも更に強い存在を──―」

 

今のジェットストライカーを遥かに凌ぐ性能を持った、<イーグル>や<ファルコン>──―。

それすらを凌駕するユニットなど、果たして考えられるだろうか?

 

「…………」

「ボイドが必死に考えているよー」

「出来るのか……?そんなことが……?」

 

長い思考の時間──―。

 

 

 

 

 

「……あるわ」

 

「「えっ?」」

 

ボイドが遂に口を開く。

 

「思いついたの、最強のストライカーユニットを……」

 

そう言うとボイドが魔法の詠唱の準備を始める。

 

「ウソでしょ……。ホントに思い付くなんて……」

「一体、何をするつもりだ……?」

 

「空を制する者……、否、それを超え、空を支配する者よ!

 鷲や戦う隼を超越し、全ての上に立つ猛禽よ!顕現せよ!」

 

詠唱と共に、ボイドは光に包まれる。

それは先程の光よりも更に強いものだった。

 

「わー、まぶしいよー!」

「これは一体……?」

 

そして、ボイドが手を天に掲げるとそのユニットは誕生した。

 

「舞い降りよ!ラプター!」

 

次の瞬間、ボイドは姿を消した。

それとほぼ同じタイミングで、上を旋回していたスルメイカ型のネウロイが倒された。

 

「何だ……、何が起こっているんだ!?」

「ボイドが見えない……、でもすごいことになってるよ!」

 

周辺のネウロイも次々と倒されていく。

どこかでボイドが戦っているのは分かっていたが、それが見えなかった。

 

「これは……もしやステルス!?」

「すてるすー?なにそれ?」

 

アームストロングは何か気が付いたようだ。

 

「あぁ、聞いたことがある……。敵から見えなくなることで、一方的に攻撃できる技術のことだ。それを具現化させるとは……」

「……よくわからないけど、とにかくすごい技術なんだねー!」

 

<ラプター>のユニットを履いたボイドが攻撃していく。

敵はどこから攻撃を受けたか、わからないまま殲滅されていった。

 

「ターゲット、ロックオン……」

 

前方に複数いる中型ネウロイ──―。

それをレーダーのような目で捕捉すると、

 

「FOX3!」

 

脚部のユニットから、ミサイルのようなものが射出された。

それらのミサイルは、それぞれネウロイのコアに高速かつ正確に向かっていった。

 

「すごいよ!ネウロイの群れが……!」

「あれが<ラプター>の力……」

 

辺りの敵は一掃された。

残りはXanadu(ザナドゥ)のコアだけだった。

 

「さぁ、終わらせましょう……」

 

ボイドは巣の頂上に向かって急上昇し始めた。

追いつく者は、誰一人いなかった。

 

 

*

 

 

「これが最後のコアね……」

 

地球最後の巣、Xanadu(ザナドゥ)のコア──―。

これを破壊すれば、長かった戦争は終わる──―。

 

「これで終わりよ……。あなたも、そして私も……」

 

足をコアへと向ける。

そして装着していた<ラプター>のユニットを取り外した。

 

「ありがとう……。みんな……」

 

ユニットはコアへと直撃し、大きな亀裂が入った。

そして次の瞬間、閃光と共に最後のコアは砕け散った──―。

 

 

*

 

 

地上にいたアームストロングとガガーリンは異変に気が付いた。

 

「……見ろ、ネウロイの巣が……」

「崩壊していくねー……」

 

ボロボロと崩れていく最後の巣──―。

 

「……あれ?地面が……」

「おい、このままここに居たらまずいんじゃないか?」

 

二人がいた地面が徐々に陥没していく。

 

「まずい、ストライカーを点けろ!撤退するぞ!」

 

アームストロングが撤退を始めようとする。

 

「えぇ!?でもボイドは……」

「いいから早く来い!崩落に巻き込まれるぞ!」

 

ためらうガガーリンを無理矢理引っ張って、二人は崩壊する巣を後にした。

ボイドの姿はそこに見当たらなかった。

 

 

 

「ねぇ、ボイドはどこにいったの?」

「さぁな。アイツのことだ。自力で帰ってくるだろう」

 

帰投する二人──―。

基地に戻った後、アームストロングは今回の戦果を上層部に報告した。

最後の巣、Xanadu(ザナドゥ)を破壊したというニュースは、たちまち世界中に流れた。

各国の首脳陣達は共同で、人類の対ネウロイ戦争における勝利を宣言した。

1955年──―。

こうして、長きに渡る人類とネウロイの戦いに終止符が打たれた。

 

 

 

*

 

 

 

1969年7月20日──―。

全世界のテレビが、ある映像を中継していた。

それは人類が、初めて月へと到達させた宇宙船、アポロ11号からの映像だった。

 

「ヒューストン、こちら静かの基地。イーグルは着陸した」

 

月へ降りた宇宙船から、一人の人物が現れた。

宇宙服を着たこの人物こそ、元599部隊の一人、メアリー・アームストロングだった。

戦後、軍を退役した後、NASAに加入して活動していた。

宇宙船から降りた彼女は、月面への第一歩を踏み出した。

 

「これは一人の人間にとって小さな一歩だが、人類にとっては大きな一歩だ」。

 

後に教科書にまで載るこのセリフは、あの戦争のときから考えていた言葉だった。

この日からおよそ8年前の1961年4月12日、

かつて共に戦ったユリア・ガガーリンが、人類初の有人宇宙飛行に成功していた。

彼女たちは終戦から時を経て、自分たちの夢を叶えていたのだった。

 

「さぁ、我々の旗を立てよう」

 

アームストロングは宇宙船から、祖国リベリオン合衆国の旗を取り出すと、月面へと立てた。

そしてアポロ11号へ戻ると、地球への帰路についた。

 

 

 

*

 

 

 

ピンポーン。

ある所に建っていた家のインターホンが鳴らされた。

 

「はい。どちら様でしょうか?」

 

それはアームストロングの家だった。

 

「よっ。久しぶりだねー」

「お前……、まさかガガーリンか!?」

 

ベルを鳴らしたのは、かつての戦友ガガーリンだった。

月から帰った後、リハビリをしていたアームストロングの元を訪ねたのだ。

二人が出会ったのは終戦以来、実に10年以上経っての再会だった。

 

「お互い、年を取ったな」

「いいお酒を持ってきたんだ。一緒に飲もうよ」

 

酒の瓶を開け、二人は夜遅くまで飲み明かした。

そこで一緒に戦っていた頃の話をたくさん語った。

戦争のこと、祖国のこと、そしてボイドのこと──―。

 

「ねぇ、久しぶりにボイドに会いに行こうよ」

「そうだな……。久しく顔を合わせていなかったからな」

 

 

酔いつぶれ、昼まで爆睡したあと、二人は列車でボイドのところに向かった。

 

「久しぶりー、ボイド。元気にしてた?」

「おいボイド、聞いてくれよ。私達は自分の夢を叶えたぞ!」

 

二人が話しかけている場所には、小さな石碑が建てられていた。

そこには、こう記されていた。

 

 

 

 

 

 

 

【ジュディ・ボイド ここに眠る】

1936~1955

 

 

 

 

 

 




キャラ&元ネタ解説

ジュディ・ボイド
リベリオン出身、19歳、大佐
使用武器:M16
ストライカー:<セイバー>F-86セイバーから
       <イーグル>F-15イーグルから
       <ファルコン>F-16ファイティングファルコンから
       <ラプター>F-22ラプターから
能力:ストライカー具現化(自身の考えたストライカーユニットを具現化する)
モデル:ジョン・ボイド
アメリカ空軍出身のパイロット。朝鮮戦争に従軍後、独自の戦闘機理論を建て、後の米軍戦闘機開発に大きな影響を与える。現在でも世界で運用されているF-15イーグルや、F-16ファイティングファルコンなどの開発にも携わっている。


ユリア・ガガーリン
オラーシャ出身、14歳、中尉
使用武器:AK-47カラシニコフ
ストライカー:<ファゴット>mig-15ファゴットが元ネタ
モデル:ユーリイ・ガガーリン
ソビエト連邦出身の宇宙飛行士。人類初の有人宇宙飛行を達成した人物であり、彼が宇宙で発した「地球は青かった、神はいなかった。」は、有名な言葉である。後にパイロットとしてソ連空軍に所属していたが、1968年事故で亡くなっている。


メアリー・アームストロング
リベリオン出身、18歳、中佐
使用武器:M16
ストライカー:<パンサー>F9Fパンサーが元ネタ
モデル:ニール・アームストロング
アメリカ海軍のパイロットとして朝鮮戦争を経験した後、テストパイロットを経て宇宙飛行士へ。アポロ計画に参加し、1969年に人類初の月面着陸を成功させる。
ちなみにテストパイロット時代、チャックイェーガー(シャーリーのモデルの人)とX-15に乗り、一悶着を起こしたことがある。


その他
ウランバートル:現在のモンゴルの首都
ザナドゥ:モンゴル皇帝フビライ・ハンが中国の上都に設けた都
「40秒で~」:ジョンボイドの異名<40秒ボイド>から
スルメイカ型ネウロイ:中国の戦闘機J20がモチーフ
FOX3:アクティブホーミングミサイル発射時のコールサイン


*

長くなりましたが、最後まで読んで頂きありがとうございます。
個人的に書きたいことは全部書けたので満足しています。
戦闘機パイロットは、どうしても第二次世界大戦の人物ばかりがピックアップされがちですが、
戦後にもこうした異色の経歴を持つパイロットがいることを知ってもらえたら嬉しいです。
感想および評価をお待ちしております。

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