ヴォルは
しかし犯人が捕まらなければホグワーツの厳戒態勢が解かれる事は無かった為、俺の知ってる通りハグリッドが彼の飼っている厄介な蜘蛛のせいにされ犯人といわれ──ホグワーツを退校する事となった。
ああーごめんなハグリッド、まぁ、うん。蜘蛛を飼うのはバジリスクを匿うのと同じくらいやばかったからな?あれ繁殖したらホグワーツがバイオハザードみたいになるからな?見つかったらどっちみち退校だっただろう。
一応、ホグワーツは以前のような日常を取り戻したと言える。ただ1人マートルだけはいつもの日常とはいかなかったようだが、楽しそうなので無問題だろう。
俺は相変わらずヴォルの隣に居たし、ヴォルもまた、俺の隣に居た。
5年目が終わり、俺たちはまた夏季休暇を孤児院で過ごす事となる。イギリスにあるこの孤児院は成人となる21歳までは、ここにいる事が許されている。まぁ、許されているとはいえ大体が18歳で孤児院を出る。
将来俺とヴォルは魔法界で生きていくだろう、魔法族の成人年齢は17歳だ。その後どうするか…まぁ、働くだろう。
俺のモデル活動はもう軌道に乗りまくっている。働かないでも楽に暮らせるが、俺の美貌を知らない魔法族が居るなんて…それこそ悲劇だと思う、うん。
「アメリカぁ?」
「そうさ!ノア、君の名前はイギリス中に広まっている!世界に羽ばたく時が来たんだ!」
「今?…なんか、あっちやばいらしいじゃん?」
「だからこそ、だよ!」
夏季休暇が始まった初日、俺のマネージャーのメイソンは目を興奮で輝かせながら孤児院を訪れ、そんな事を唐突に言い出した。
彼は俺を世界に知らしめる事が使命だと思っているようで、親子ほど歳が離れた男だが、目は少年のそれと同じ輝きを持つ。
「闇に支配されている今!君のような存在が救いになるんだよ!君は光そのものだ!見るだけで幸せな気持ちになる!闇を照らす救いの使徒だ!」
「そ、そうかぁ?流石にやばくね?」
メイソンは俺の騎士に負けず劣らず、盲信的で狂っている。あんな戦争の真っ只中に行くなんて…流石に不謹慎過ぎない?色々と。
「いいや!今がチャンスだ!乗るしかないこのビッグウェーブにっ!──それに、グリンデルバルドは多分アメリカにはいないと思う、ヨーロッパの何処かじゃない?表面上アメリカは今落ち着いてるって聞いてるよ…ま、多少事件はあるようだけどさ!」
ぐっとガッツポーズを決めるメイソンはもはや俺の話を聞こうとはしない、もう有名な出版社とアポとってあるんだー!と楽しげに…なんと今日からの予定を話した。今日出発するって、俺に予定があったらどうするつもりだ。
それに、えーと、グリンデルバルドって今どこにいるんだっけ。ヨーロッパだっけ?アメリカだっけ??…ダメだ、分からん。この辺まだ曖昧だったしなぁ…。それに残念ながら俺は世界の地理がいまいち怪しい。ぶっちゃけ何処から何処までがヨーロッパなのかわからん。…俺が馬鹿なわけではない、うん、中身は日本人だし、ずっとイギリスから出てないし!地球儀なんて見てないし!!
昔ヴォルと通ったスクールで教えられたことなんてホグワーツでの生活で綺麗さっぱり消えてしまった!
……いや、待てよ?
「ちょっと
「え?ノア…君って預言者だったの?」
「俺に不可能はない!」
杖を振り透明な水晶玉を出現させ手を翳す。暫くすると1つの光景がぼんやりと浮かんできた。うーん、…何処だここ。
メイソンは隣からひょこりと顔を出し水晶玉に映った景色を見た。暫く彼も首を捻っていたが、「あっ!」と声を出し手を叩く。
「ここ、ヨセミテ国立公園だね」
「…公園?」
「うん、アメリカのカリフォルニア州にあるよ、公園っていっても…自然公園だね。めちゃくちゃ広いよ。霊山として有名でね、なんでもそこでしか手に入らない希少な魔石の群生地なんだってさ。魔力があの場では満ちてるみたいで──命の水があるんじゃないかって噂もあるぐらいだよ。まぁまだ見つかって無いらしいけど…」
「ふーん…ここの近くまで行ってもいいか?」
「命の水探しでもするの?」
「──秘密」
にっこりと笑えばメイソンは「ぐはっ」と叫び胸を抑えその場に崩れ落ちた。
うん、メイソンと旅行するのは別にいい、けどその間に心臓発作で死ぬんじゃね?
「ちょっとヴォルに伝えてくるわー」
メイソンがぴくぴくと痙攣し倒れたまま頷いたのを見て、隣の部屋まで行き扉をノックなしで開けた。
ヴォルは勉強机に向かってホグワーツから出された宿題に取り掛かっているところだった。真面目君かよ!
「俺、ちょっと出かけてくる」
「どこに?」
「ん?アメリカ」
「……はぁ?…ちょっとどころじゃないでしょ。…それに、イギリス以外は…今危険だって──まぁ、ノアなら大丈夫か」
戦争地帯でも1人生き残りそうだもんね、とヴォルは納得したように呟く。いやいや──まぁその通りだろうな!
「どのくらい行くの?」
「さあ……──メイソン!滞在予定はー?!」
「──2週間だよー!」
「長いな!?…2週間らしい」
「ふーん。まぁお土産楽しみにしてるよ。…僕も、ちょっとやりたいことあったしね」
「お互い頑張ろうぜ!」
こうして俺のうき★ドキ♡アメリカ旅行が始まった。
長距離移動はポートキーであっという間にアメリカに入国し、後はなんと鉄道と市バスで移動した。何の戸惑いも無く切符を買い駅員に見せるメイソンを見ていると、彼は少し不思議そうに首を傾げた。
「何だい?」
「いや…メイソンってマグル生まれ?」
「あれ?言ってなかったっけ?そうだよ。マグル生まれマグル界育ちさ。両親ともにマグルだからね」
「ああ…だから、汽車の乗り方にも詳しいんだな」
普通、魔法界で暮らしているのなら、こうして簡単にマグルにまぎれて移動する事は出来ない。
メイソンの服装は何処からどう見てもその辺にいるマグルと至って変わらない。まぁ、俺も今は普通の格好をしているが。
「ノア、僕はいつか君をマグル界でもデビューさせたいんだ!」
「え?…マグル界でも?」
その発言はあまりにも突拍子のないものだった。この時代マグル界と魔法界は交わる事は無い、機密保持違反者には重い罰則が科される事となる。
メイソンは目を輝かせ、夢を語る少年のように無垢な表情で頷いた。
「そうさ!秘密保持しなければならないのはわかっているよ。でも魔法使いとバレなければ無問題さ!ノアは魔法界だけで留まっていい存在じゃないんだよ、マグル界にも進出し、その名を両方の世界に残すんだ!」
「…はは、世界征服じゃん」
「いいね!ノアならそれも夢じゃないよ!いつか──いつか、きっとノアの名前を皆が覚え、ノアの姿を皆が知る事になる!君は全てを手に入れる事が出来るんだ!」
興奮し力説するメイソンは、何だか新興宗教を進める胡散臭さすら感じた。
グリンデルバルドとも、ヴォルデモートとも違う。己の美貌一つで世界征服!
──いやいやいや、ねーわ。流石に。いや、ある意味でハッピーな世界になるのか?…こいつ騎士になれそうなくらいちょっと危ういな。
「メイソン、これやるよ」
「えっ!ノ、ノアからのプレゼント…!?」
手をくるりと回し銀色のブレスレットを出現させる。それを手渡せばまるで途轍もなく高価な物を受け取ったかのように、メイソンのそれを受け取った手は震えていた。
「俺の仲間の印」
「何たる光栄!」
「
冗談混じりに信者だと言えば、メイソンは神妙な顔をして頷き、そのブレスレットを腕に嵌めた。
「それ、俺が皆を集めたい時は少し熱くなって俺の側に姿現しが出来るようになってるから、メイソンは大人だしいつでも来れるな」
「ええ!?凄いね…」
「後、ある程度の守りも掛かってる。護身アイテムとしても優秀だから」
「す、凄い…」
「まーね。俺に不可能はない」
「…ノア…きみ、本当に世界征服出来るんじゃない?」
メイソンの目は真剣そのものだった。それは、モデルとして世界征服するという意味なのか、それとも、全く別の意味なのか。
「ノア王国、作っちゃう?」
にやりと笑えば、メイソンは頬を紅潮させどっぷりと俺に堕ちた目を向け、恍惚とした表情で頷いた。うーん!俺の美貌は罪深い!