チート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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20 グリンデルバルド

アメリカ滞在は中々に忙しかった。

魔法界はメイソンの言う通り、大きな内戦も混乱も起こっていなかった。アメリカ版魔法省の組織、通称マクーザが頑張っているんだろう。グリンデルバルド本人がここに居ないというのは、本当なのかも知れない。──ま、それは違うんだけど。

 

ニューヨークで色んな人と面会し、俺の輝かしい美貌に何人もの人がぶっ倒れ、写真を撮り、カメラマンがレンズ越しに俺を見て鼻血を出し、服を変え、スタイリストが5回は変わり。

俺はこうしてニューヨーク、カルフォルニア、テキサス、ワシントン…色んな場所に移動し沢山のファンと気絶者を生み出した。

結果、行った先全ての出版社と契約を交わす事が出来た。まじでアメリカでも有名になれる気がしてきたけど──いやーちょっと俺の勢いが怖い!美しさって罪!

 

 

 

滞在しているホテルの一室で、百万ドルの夜景を見下ろす。

ついに明日はアメリカ滞在の最終日だ。

 

 

「メイソン、ヨセミテ国立公園に行こう」

「うん、最終日は観光したいかな?って思ってフリーにしてたし良いんだけど…僕も一緒かい?いや、もちろん喜んでお供するよ!」

 

 

机の上で紅茶の準備をしていたメイソンはすぐに満面の笑みで頷いた。

 

 

「俺未成年だからな、次魔法使うと退学なんだよ」

「ああ…そっか」

 

 

本来ならメイソンを連れて行くべきでは無い。メイソンはただ観光と魔石発掘、命の水探しとでも思っているんだろう、だが、まぁ俺の目的はグリンデルバルドと会う事だ。

別に深い意味はない、ただファンタビ好きとして会うチャンスがあるなら、会いたいじゃん?

 

 

「んー、メイソンちょいちょい」

 

 

手でこっちこっち、と呼べば、メイソンは首を傾げたまますぐに手を止め、ベッドに座る俺の元に駆け寄り跪き俺を見上げた。──めちゃくちゃ犬みてぇだな…。

 

 

「何だい?」

「守護魔法かけるから。明日何があるか…わからんしな」

「あー…魔獣も居るって噂だしね」

 

 

魔獣より、厄介な物かも知れないからな。

メイソンの頭に手を置き、俺が使える限り最大限の守護魔法をかけた。

途端に、俺の身体から何かが大量に減った気がして、ずっしりとした重い倦怠感が体を襲う。

 

 

「あー…うん、よし。多分 死の魔法(アバダ ケダブラ)以外は完璧に防御出来る。物理攻撃でも悪意のある魔力が込められた物は効かない」

 

 

つまり、魔法で石が飛んできても弾かれる、と言うわけだ。

 

 

「そ、そんな守護魔法…聞いたことないけど」

「俺に不可能は無い!…けど、流石に疲れたー!」

 

 

そのままベッドに倒れ込む。

メイソンの慌てた声に手をひらひらと振り大丈夫だと示し、「紅茶」と言えばすぐにメイソンは紅茶の用意を再開させた。

 

うーん、どれだけ探しても死の魔法を防ぐ魔法は無かった。無い、わけではない。愛の魔法を使えば跳ね返せるがそれって結局1人は死ぬ事になる、俺が探してるのはそういうのじゃないんだよなぁ…。

まぁ、死の魔法は当たらなければ良いから、不意をつかれ無ければ避ける方法は幾らでもある。

 

最悪、ヤバくなったらメイソンは強制離脱させよう。…後は、グリンデルバルドが魔法族には優しい人だと期待するしか無いな。

 

 

重い体を起こし、手渡された紅茶を飲みながらぼんやりと考えた。

 

 

しかし…自然公園ってめちゃくちゃ広いんだよなぁ…。そんな広大なところでたった1人を探せるだろうか?

 

 

 

ーーー

 

 

 

「んん?」

 

 

朝、目が覚めて一応グリンデルバルドの居場所を確認しておこうと思い水晶玉を出し見てみたら──どこだここ。

 

水晶玉に映ったのは、2週間前に映った自然公園とは全く異なる場所だった。どこかのカフェだろうか、白いソファと机、軽食やティーセットを運ぶウェイトレスの姿が映し出されていた。

こんな情報だけでは探すのは難しいかもしれないなぁ。

 

 

「メイソン、ここ何処かわかる?」

 

 

ダメ元で聞いてみれば、メイソンは水晶玉を覗き込み「ああ、うん」とすぐに頷いた。ま、まじで?

 

 

「何処だ?」

「ここだよ」

「へ?」

「このホテルのカフェラウンジだね」

「へ、へー…」

 

 

何でこんなホテルに?…まぁ、グリンデルバルドも滞在する…かな?

それとも、何か目的があってここに来ているのだろうか。

なんにせよ、ラッキー?

 

 

「ちょっとラウンジに行ってくる。メイソンは待ってて!」

 

 

「わかった」という声を後ろに聞きながらカフェラウンジに急いだ。早く行かないと別の場所に移動されたらまた探さないといけなくなってしまう。

 

 

ラウンジに向かい、すぐに寄ってきたボーイににこりと愛想を振り撒けば何だかめちゃくちゃ良い席に案内された。窓際の近く、他の座席から少し離れた場所。うーん!良い景色!窓の外は何故か草原が広がってるけどなんか魔法がかかってるんだろう。

そんなに広く無いラウンジだ、すぐに見つかるかと思ったが数人いる人達はどう見てもグリンデルバルドには見えない。

 

つまり、魔法で変装しているんだろう。

お尋ね者が姿も隠さずのんびり朝のティータイムなんて、そりゃしてないよな。

 

片手で丸を作り、望遠鏡のように覗き込む。

一人ひとりじっと見渡し──あの人だな。

端の席で1人座っているなんの変哲もない老人に、見えた。

服装はなかなか裕福そうだが、かと言って特徴がある顔でも、服装でもない。つまり、少し経てば記憶から霞んでしまいそうな何処にでもいるご老人。

だが、そのご老人だけがぼんやりと二重になって見えた。

 

俺はすぐに立ち上がり、一度指を鳴らす。

 

少しして近くにいるボーイにあの老人が座っている場所に紅茶を2つ持ってくるように伝え、そのご老人の側に寄ると何も断りを入れる事なく机を挟んだ前に座った。

 

 

「こんにちは、おじ様?俺、遊び相手が急用で来なくなったんだ。ちょっとお喋りでもしない?」

 

 

にこりと微笑み机に肘を乗せ身を乗り出す。ふっ…俺の美貌が1番美しく見える角度に首を傾げた後、少しだけ覗き込むように上目遣いで見る事も忘れないぜ!

ご老人は目を見開き、少し黙った後静かに首を振った。

 

 

「残念だが、他を当たってくれ」

「えー?…じゃあ、紅茶1杯分だけ──ね?」

 

 

ちょうどボーイが大きなティーポットとカップを2つ持って現れた。ボーイは俺とご老人の前に静かに置くと「ごゆっくり」と軽く頭を下げ微笑む。

 

 

「ありがとう」

 

 

手を上げて笑い返せば、ボーイは胸を抑え一瞬よろめいたが──プロ根性なのか、倒れる事なくすぐに戻っていった。

俺は指を振りティーポットを浮かせ、それぞれのカップに注ぐ。

 

 

「…1杯分、これだけだ」

 

 

ただのナンパだと思ったのか、美しい人の気まぐれだと思ったのか、それともこんな美貌を持つ俺のお茶へのお誘いを断りきれなかったのか!…は、わからないが、ご老人はそれ以上拒否すること無く注がれたカップを見てため息を吐いた。

 

 

「ふふ、ありがとう──俺の名前はノア、ノア・ゾグラフ。あなたは?」

 

 

微笑んだまま手を差し出せば、ご老人は俺の手を握った。

 

 

「私はローガン・スミス」

「ゲラート・グリンデルバルドの間違いでしょ?」

 

 

何言ってんだこいつ。…あ、偽名か?

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

びしりと場の空気が変わった。

すぐに老人に変装しているグリンデルバルドは自分の服の内ポケットに手を突っ込む。だが、そこにあるべき杖は無く、緊張し一気に警戒の色を強め、顔色を変え目の前にいるノアを睨んだ。

繋がれたままの手を振り払おうとしたが、その細腕からは想像も出来ない力で繋がれている──いや、違う、手が何故か離せない。

 

 

「俺の用事が終わったらすぐに杖は返すよ」

 

 

楽しそうな声だった。くすくすと微笑混じりの言葉は、心からこの状況を愉しんでいた。

美しい顔、耳触りの良い声──しかし、決定的に何か異質なものをグリンデルバルドは感じていた。

プレッシャー、とも言えるだろう。ダンブルドアとはまた異なる威圧感に、グリンデルバルドは久しぶりに──背筋が冷えた。

何故変装がバレたのか、かなり強い魔法をかけている。実際この姿でどれだけ道を歩いても誰も気が付かなかった。

悠々と闇祓い達の前を闊歩する事だって出来た。──それに、いつ、杖がとられたんだ。何か魔法をかけられた覚えなど、無い。

 

 

「……」

「あ、俺の手は離さないでね?まぁ、無理だと思うけど」

「……何──」

 

 

特別な秘密を伝えるように、ノアは楽しげに笑う。グリンデルバルドは表情を硬くしたまま「何のつもりか」と聞こうと口を開きかけたが、ふと周りの異常な光景に気が付いた。

 

人が少ないとは言え、先程まではそれなりの人の声が聞こえていた。だが今は耳が痛くなるほどの、静寂だ。

グリンデルバルドは目の前のノアを睨んだまま視界の端で全く動かず停止している人や、羽ばたきを途中で止め空で停止している鳥を見た。

 

 

「俺に触れてる人だけが動けるんだ」

「……そんな事が…出来るわけがない」

 

 

グリンデルバルドは苦々しく呟いた。

もし、それが本当ならこの世の全てを停止させているという事になる。特定の者を停止させる事や、周りの空間を切り取り断裂する事は可能だが、全てを、世界を停止するなど──人間の領分を遥かに超えている。そんな魔法聞いた事がない、いや、そもそも不可能な事を、考える者など居ない。──魔法は、万能ではないのだから。

 

 

「まぁ、俺は最強だからな。──変装も解いて、顔を見せてよ」

 

 

ノアはくすくすと歪な甘い声で、それでいて綺麗に笑うと空いている方の手をグリンデルバルドの目前に掲げ軽く振った。途端に、グリンデルバルドの魔法が解けその姿が露わになる。

 

苦い表情に変わりは無いが、グリンデルバルドを見た途端ノアは目を輝かせると嬉しそうに笑い、その白い頬を僅かに赤く紅潮させた。

 

グリンデルバルドは、目の前にいるノアが何故そんな表情を浮かべるのか、全くもって理解出来なかった。会えて嬉しいとでもいうのか、心から嬉しげに細められた目に、少し心が揺れる。

 

初めて声をかけられた時、自分の力に自信があったグリンデルバルドは少しも警戒しなかった。それに、あまりに目の前に座った人が美しく、楽しげに笑うものだから──まぁ、紅茶の一杯なら良いかと考えを変え頷いてしまった。

大人になりかけている、青年独特の色香が本人の美貌も相まって一層、特別な──妖しい雰囲気を醸し出していた。

まさか、この虫も殺せなさそうな美しい青年に、ここまで心が乱されるなんて、誰が想像しただろうか。

 

 

「わぁ…グリンデルバルドさんマジでイケメン…イケオジすぎる…」

「…何のつもりだ」

「え?いやーただ会いたかっただけ!」

「…馬鹿な。ダンブルドアの手先か?…こんな人間を隠していたとはな…」

「違う違う、ダンブルドア先生は無関係だって」

「…ホグワーツ生か?」

「うん、もうすぐ6年生!」

 

 

6年生。まだ、成人もしていない子どもだと知りグリンデルバルドは閉口した。

世界で最も優れ、強大な力を持つ魔法使いはダンブルドアと自身の筈だ。まさか、こんな子どもがそれをも凌駕するなんて、成人し成熟すればどれほどの力を持つのか。

 

 

──欲しい。

 

 

グリンデルバルドはノアの力を知り純粋に、その計り知れない力に惹かれた。その力さえ──この青年さえいれば自分の野望は間違いなく達成されると感じた。

だが、服従させようにも杖が無い。生半可な服従魔法では、きっとうまくいかないだろう。より大きな善の為に何としてでもこの人物が欲しい。

 

 

「それで、──ノア、私に何の用だ?」

 

 

何のためにノアが話しかけたのか分からない、ただあまり悪印象を与え過ぎるのは不味いだろう、と考えたグリンデルバルドは人を魅了するような、優しく柔らかい声でノアに聞いた。

 

 

「サインください!」

「………は?」

「あっ写真もお願いします!」

 

 

ノアの想像もしない提案に、グリンデルバルドは暫し固まった。

 

 

 

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