イケオジ!イケオジすぎる!!
変装するなんてもったいない、まじでイケメンじゃん…ああっ!若い時も見たかったなぁ…!
サインくださいって言ったけどグリンデルバルドは何も言わなくなっちゃった。あれ?こんな有名人ならファンからの写真やサインなんて経験済みじゃないのか?サインが無理なら写真だけでも撮ってみせる!
優しい声だったし、想像通り魔法族には優しいみたいだな、いやー初めから魔法見せといて良かった…まぁこのホテルは魔法族しか使わないけど、念のため念のため。
杖を奪ったのは、ニワトリの杖…じゃ無くてえーと。──何だっけ?忘れた。──ニワトリの杖は最強だから、流石にちょこっと警戒して奪った。
俺の神様から授けられたチート能力その3!
時をほぼ、止められる!ザ・ワールドでは5秒だが、俺は最大で5分だ。ただし満月を中心に3日間…72時間のうちの5分しか使えないし、完全に停止しているわけではない。
細切れに使えるが、合計5分を超えればもう止まらなくなって勝手に世界は動き出してしまう。発動条件がややシビアで限定的な能力だが、それでも世界を止められる能力は、俺が考える中で超チートだと思う。
初めて使ったけど、魔力消費が半端ないな、これ。メイソンにかけた守護魔法の比じゃねぇ。体からどんどん力が抜けていくのがわかる。けど、止めるのをやめたら、周りが動くし…グリンデルバルドは本当の顔を隠すだろう。いかんいかん、イケオジとのツーショのために頑張れ俺!
「写真…?」
「うん!俺、そのために来たんだー!」
片手を繋いだまま反対の手のひらをクルリと回転させカメラを出現させる。
そのまま隣に周り「はい、スマイル!」なんて言ってパシャリ。
「わー!すげー!」
お、俺グリンデルバルドと写真取っちゃった!
グリンデルバルドの顔はちっとも笑ってなかったけど気にしない。
「…これで満足か?」
「うん!ありがとうー!」
指を鳴らし、ぱっと手を離し元の椅子に座る。
途端にグリンデルバルドは顔を元の老人に戻し辺りを見渡した。
先ほどのような人の微かな会話が聞こえ、ボーイは注文を取りに向かっている。窓の向こうでは白い鳥が一羽空へ飛んだ。
「そろそろ杖を返して欲しいのだが」
「ああ、忘れてた。──はいどーぞ」
内ポケットからグリンデルバルドのニワトリの杖を出して机の上にコトリと置いた。
それをそっと手に取ったグリンデルバルドは、机の上に手を置いたまま杖先を何気なく俺の胸に向けた。
「ノア、私の仲間にならないか?」
「え?」
「君のような力を持つ者が来てくれると嬉しい。それに…君は、この魔法界に不満はないか?何故…力を持つ者が退けられ、疎まれ、阻害されなければならないか…疑問に思った事があるだろう?」
「うーん」
勧誘されてる?
だけど、俺の理想とこの人の理想は違う。
俺には崇高な思想も、世界を変える気も、全てを救う気も無い。
俺はただ、今を楽しく生きる事ができればそれで充分だ!
あっ!でもファンタビキャラには会いたい…あー…ニュート今どこにいるんだろ?戦争終わってからでも会えるといえば、会えるからいいか。
「いや!遠慮するよ!俺イギリスで活動してるモデルなんだけど、アメリカにはその一環で来てて…いつかマグル界にも進出しなきゃなんねーし、モデルに黒い噂は御法度だろ?」
ジャケットの胸ポケットから名刺を取り出し机の上に置いた。所属事務所と俺の小さな写真、それに名前が書いてあるもので、アメリカに来る前にメイソンから渡されていた。
「じゃ、縁が合えば、また!」
グリンデルバルドは何か言いかけていたが、何を言ったのか聞く前に俺は指を鳴らし時を止めた。
あー!疲れる!めちゃくちゃ疲れる!気力や精力が削がれていく!
「さっさと帰ろっと」
ここを戦争地帯にするわけにも行かないしな。俺はメイソンがいる部屋まで姿現しをし、そしてまた指を鳴らした。
「──あれ?いつの間に戻ったの?」
「さっき。帰るぞ」
「え?自然公園は?」
「もう良いんだ、ここに用は無い」
俺は首を傾げるメイソンの腕を掴み纏められていた鞄を掴んでそのまま孤児院の自室へ姿現しをした。
場所さえわかれば無問題!
しかし、まぁグリンデルバルドかっこよかったなー!いつ戦争終わるんだっけ?イギリスには来ないみたいだし、残念だなぁ。いつかまた会いたいけど、それは幽閉されてる城でしか──無理だろうなぁ。
ーーー
グリンデルバルドは「待て」とノアに言おうとし、口を開いたが──目の前からノアは消えていた。
いきなり消えた。姿現しではない、あの独特の音はしなかった。灯りが消えるように、ふっとその姿は消え、残り香すらこの場には無い。
一瞬、白昼夢でも見たのかと思ったが、机に視線を落とせば白い名刺と共に、2人分のカップがそこにはあった。
「ノア・ゾグラフ──」
グリンデルバルドは無造作に置かれた名刺を手に取り、ノアの名前を呟いた。
ーーー
自室ですぐにメイソンとは別れ、──何やらこれからのために色々準備があるらしい、仕事の内容は全て任せているからよくわからない──俺はヴォルの部屋へ向かった。
「ただいま!あー!疲れた!」
「…おかえり」
ベッドに腰掛け本を開いているヴォルにぶつからないようにベッドにダイブする。ぎしりとスプリング音を立ててベッドが軋み、少しの反発で身体が揺れる。
「お土産買ってるから、後で持ってくるよ」
「…うん」
「んー?」
ヴォルは些か元気が無さそうだった。…いや、心ここに在らず、というべきか。
ははーん?俺に会えなくて寂しかったんだろうな!可愛いやつめ!
からかってやろ!と思って身体を起こし、ヴォルの隣に座りニマニマ笑いながらヴォルを見て──あ、こいつ。
俺はすっと目を細め、ヴォルを観察する。その指には、前までなかった指輪がはめられている。──ゴーントの指輪だ。それを持つ意味を、俺だけは知っている。
「何があった?言いたくないなら言わなくてもいいけど」
「──…ゴーント家に行った。どんな素晴らしい血でも…あんな状況になってしまうなんてね、失望したよ。……近くに…僕の…──父親の家もあってね、のうのうと生きてた、許せるわけないよね。魔女の母を捨てて!ただの低脳の、マグルのくせに!」
「殺したんだな」
ヴォルは興奮していて、少し荒くなった呼吸を抑えるために何度か深呼吸をし、ゆるりと俺を見ると頷いた。
悪意のある殺人にヴォルの魂は穢れ引き裂かれた。
しかし、ヴォルの目は微塵も後悔も苦悩も浮かんでない、寧ろ以前より凶悪に光り輝いていると言っていいだろう。いつもの暗い灰色の瞳が、僅かに朱に染まっている。
「ああ、殺してやった。──そう、僕はやり遂げた」
「良かったな」
「…、…」
目標を達成出来た喜びを思い出したのか、噛み締めるように言うヴォルにそう伝えたが、俺の言葉を聞いたヴォルは目を見開き眉をひそめた。
「──ノア、本気で言ってる?」
「何が?」
「…君の真意が、わからない。…僕は、人を殺した。…その返答が…
酷い言われようだな。
……そんなに狂ってるか?
いや、だって知ってたし。ヴォルが自分の父親の家族たちを殺すことも、その犯罪にゴーント家の者が濡れ衣を着せられるのも。
それに、ヴォルの憂いがさっぱり消える事は、良かった事だろ?
「狂ってねーよ。俺は、普通さ。ヴォルが殺したくて、殺したんならいいんじゃね?納得してるなら──よかったんだろ?」
ヴォルは息を飲み、何故か苦虫を噛み潰したような表情になる。俺は正直困惑した。何でこんな表情を見せるのかさっぱり分からない。ヴォルなら嬉しがりそうなものなのに、何でそんな──苦しそうな目で俺を見るんだ?
「──ノア、君は…自分の範囲外の事は…
吐き捨てられたヴォルの言葉に、俺は胸に剣が刺されたのかと思った。
──ああ、そうか。成程、普通は人殺しなんて聞けば、それが自分に関係無くとも、そりゃ驚愕して非難して罵倒するよな。
俺だって元いた世界では、理不尽な殺人を──自分と関係がないと分かりながら嫌悪した。それなのに、この世界では、あまりそんな気持ちが芽生えない。悲劇だな、とは思う。それだけだ。
ここはハリポタの世界だ。
…だから、どうしても交流のある
もうこの世界で何年も過ごしている。ヴォルや騎士達の事は俺
「──俺はそんな人間なんだよ、ヴォル」
自分のあまりにも薄情でどうしようもない部分に気が付き、少しだけ苦笑した。
ヴォルの言葉は、俺にとって紛れもない真実だ。
「幻滅した?」
「…別に、わかってたしね」
「そ、ならいいや」
「…そういうところだよ」
ヴォルはため息を零し、手につけている指輪を撫でた。
目を伏せたヴォルが何を考えているのか、もう俺にはわからない。
きっと薄情な奴だなぁとでも思われているんだろう。