チート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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23 とんでもないお茶会

めんどくさい事になった。──いや、そう言ったら悪いな──大変な事になった。

 

 

クリスマス休暇1日目の朝食時の大広間で、沢山の貢物やファンレターが小山を作っているのを見ていると、1通の手紙が少し遅れてひらりとその山の頂上に落ちた。

一眼見ただけで、強い呪いがかけられている事に気付いた。生徒がかけられるとは思えない、強い呪いに眉を寄せながら杖先でチョンと突き解呪する。

 

嫌だなぁ、なぁんか嫌な予感するなぁ…と思いながらその封筒を開いてみる。──その中には一枚の写真と、一行の短い手紙が書かれていた。

 

 

「──洒落が効いてるねぇ…」

 

 

その写真には、床に力なく倒れているメイソンが写っていた。写真には『Gellert Grindelwald』のサイン付き。文章は『ここで待つ』──以上!

 

 

何でこれにサインするんだよ!悪趣味過ぎるわ!ツーショにサインしろよ!此処ってどこだよ!もっとヒントくれよ!

 

色々叫びたい気持ちはあったが、俺はその写真と手紙をローブの内ポケットに入れ──とりあえず落ち着こうと深呼吸しながら紅茶を飲んだ。

 

…メイソンが攫われたのか。

何で?何でグリンデルバルドは俺に会いたいんだ?まさか、あの勧誘まだ諦めて無いのか?グリンデルバルドにとっての天敵──ダンブルドアがイギリスにいる以上、俺には手出ししないと思ったが、まさかメイソンを攫うとはなぁ…。

絶対仕事の打ち合わせでアメリカに行ってるところを攫われたんだろうな。

 

…何でメイソンが…あいつ、グリンデルバルドに姿見せてないはずなのに…──あ、…俺名刺渡したわ!自分からモデル活動してるって言ったし!うっわー…やらかした…。

 

 

「俺の馬鹿…」

「…いきなりどうしたの?」

 

 

両手で顔を覆って天を仰いだ俺を見て、ヴォルが眉を顰めて小さく聞く。

いやー…言えねぇ。流石の俺でもグリンデルバルドに会ってちょっと面倒な事になったなんて…どうせ「馬鹿だね」って言われて絶対零度の目で見られるだけだ。

 

 

「ちょっと…あー…仕事でミスった。呼び出されたから…ちょっと校長に言ってくる…」

「ふーん?ミスするなんて珍しいね」

「あー…まぁ俺も人間だから」

 

 

曖昧に言葉を濁し、すぐに立ち上がると食事中のディペット校長の元へ向かう。あーあーなんて言おう、説明…は、しなくてもいいか。今日からクリスマス休暇だし、万が一何日か戻れなくなっても、変には思われない筈だ。

 

 

「校長先生」

「ん?…ゾグラフか、どうしたかね?」

「あー…あの、ちょっと仕事で呼び出されて…急なんですけど、仕事場に行かなくちゃならなくなって…本当は今年もホグワーツに残るつもりだったんですけど…出てもいいですか?帰宅者リストに、名前書いてないですが…」

「それは…大変な事だ。勿論許可しよう。汽車は後──1時間程度で出発するが、準備は間に合うかね?」

「何とかします、ありがとうございます」

 

 

礼を言うとすぐにその場から離れ自室に戻った。

用意なんて別にする必要はない、ただグリンデルバルドがどこで俺を待っているのか、それを突き止めないと行くこともできない。

メイソンの元に姿現ししてもいいけど…ニコラスさんの所に姿現しをした時みたいに気絶したらちょっと流石に──やばそうだ。手篭めにされてしまう、色んな意味で。

 

 

ベッドに座り水晶玉を出しグリンデルバルドの現在地を確認する。浮かんできたのは…えーと…。

 

 

「どこだよ此処…わかんねーよ…」

 

 

ぽつりと呟き、頭を掻いた。

いや、マジでわからん。俺は地理にも有名なスポットにも詳しくない。気絶覚悟で姿現しするべきか?──いやーでもなぁ…。

 

 

「何してるの?」

「あー…なぁ、此処ってどこだと思う?」

 

 

部屋に戻ってきたヴォルに水晶玉を見せながら聞けば、ヴォルは少し首を捻ったが肩をすくめて首を振った。

 

 

「さあ?知らない。…どこかの城じゃない?」

「だよなぁ…」

「…?…仕事に行くんじゃないの?早く準備しないと、汽車が出るよ」

「あー…それは嘘だ。…メイソン──俺のマネージャーが攫われた。この前孤児院に来てたあいつだよ。助けに行かねーと…」

「…え?」

 

 

ヴォルは目を見開き、驚愕と戸惑いの表情で俺を見る。そうだよなぁ、まさか俺も、メイソンが攫われるなんて思ってなかった!

 

 

「…助けに行く?──ノアが?」

「俺以外に誰がいるんだ?」

「何で、…助けに行くの」

 

 

ヴォルの声は低く硬い。

グリンデルバルドの事を言うわけにもいかず「だって、大切なヤツだし」と言えばヴォルはぐっと眉を寄せ唇を噛んだ。

 

…まてよ、ヴォルさっきなんて言った?

──城?

 

 

 

「──そうか!わかった!」

 

 

ヌルメンガード城だ!きっとそうに違いない、いや、そうであってくれないと俺は世界中の城を探す羽目になる!

 

 

「ありがとう!」

「なっ──何?」

 

 

勢いよくヴォルに抱きつけば、暗い目をしていたヴォルは一瞬で元のように戻り、少し慌てたように表情を取り繕う。──なんかヴォルの様子が可笑しい。

…いや、今はメイソンを救う事が先決だ。流石に俺のせいで死なれたら俺は後悔してもしきれないし、多分、うん──グリンデルバルドを嫌いになっちゃうかも。

メイソンは俺にとって紙の上の人ではない。俺に近い人間だ。俺の、騎士だ。──助けに行かないと、またヴォルに薄情な奴だと思われる。…主人に守られる騎士ってどうなんだ。

 

 

「行ってくる!」

 

 

俺はヴォルを離し、杖を振りその場で姿現しをした。ヴォルの目が再び驚愕に見開いているのをちらりと見た後──俺は、ヌルメンガード城のほとりに立っていた。

 

 

辺りを見渡す。うん、ここだ、間違いない。水晶玉に映った城壁と同じ──だと思う。…多分。

 

 

その城は巨大で、空高く聳え立っていた。ホグワーツ城とはまた別の──どこか、暗鬱とした雰囲気がある。高い塔の頂上は雲がかかり、その先まで見通す事は出来ない。──っていうか寒い!コート着てくればよかった!うっかりした!

すっかり雪化粧の城に綺麗だなーなんて見惚れてる場合じゃない、凍死する。城の中に入りたいけど勝手に入ってもいいものか…いいか、招かれてるんだろうし!呼び出したのはあっちだ!

 

 

「おじゃましまーす」

 

 

大きな扉に向かって払うように手を動かせば、ギギギ、と鈍い音を立てゆっくり扉が開いた。

 

先には──うん、誰も居ない。

 

 

城の中は壁に沿ってポツポツと魔法の火が灯り、明るく照らされている。中も極寒だったらどうしようかと思ったが、中は快適な気温が保たれていた。

腕を擦っていた手を離し、玄関ホール──だろうか?──を進み、辺りを見渡す。

城、と言う割にはあまり生活感の無いところだなぁ。ホグワーツとは全然違う。

 

てっきり城の中にはグリンデルバルドの仲間がたくさんいて迎撃体制を整えてるかと思ったが、そういうわけでもなさそうだ。

 

メイソンを探さないとな…とりあえず、進むか。

俺は石造りの冷たい印象を与える玄関ホールを通り過ぎ、その先にある扉を開いた。

 

 

 

「──ノア、本当に来るとは…」

「グリンデルバルド…」

 

 

その先の部屋でグリンデルバルドが俺を出迎えた。

応接間のような、先ほどのホールに比べれば少し温かみを感じる装飾品や家具──大きな机に椅子がある。部屋にしては質素だが、まぁ余計な物が無くて合理的かつシンプル、ともいえるだろう。

 

無言で自分の周りに防御魔法を出しておく。流石に戦闘になれば、俺がいくら最強とはいえ──不利だ。俺は今まで戦闘行為をした事がない。勿論、逃げるが勝ち!というように、逃げ勝つ事は出来るだろう。ただ今俺はメイソンの無事を確認し、どうにか守りつつ帰還しなければならない。

今は見当たらないが、この城にはグリンデルバルドの部下がいるだろう。あまり、下手な事をするとメイソンが殺られる。

 

 

「また会えて嬉しいよ」

「はは、そうですか…」

「座りなさい」

 

 

革張りの高級そうな椅子に座るよう促され、無言で座った。うん、呪いの椅子では無い。

グリンデルバルドは机を挟んだ反対側に座り、杖を片手に持ってはいたが、優しく俺に笑いかけた。イ、イケメン…。

 

 

「さて──紅茶1杯分、お付き合い願おうか」

 

 

グリンデルバルドが指を鳴らせば机の上にティーセットが現れ、1人でにカップに紅茶を注いだ。美しい琥珀色の紅茶、うん、普通に良い匂いはするけれど、怪しさMAXである。

 

 

 

「…メイソンは無事か?」

「地下牢にいる。…そんなにあの男が大切かな?」

「──俺のミスで巻き込んだからな」

「安心しろ、眠らせているだけだ…今はね」

 

 

こういう時、悪役は大切なものが何だと分かると脅しに使うって色んなアニメやマンガで見た!…ほら、グリンデルバルドなんかニヒルに笑ってる!

 

 

「それより、俺に何の用?──俺に惚れちゃった?」

 

 

会話の主導権を握らせるわけにはいかない。こっちのペースに引き込まないと、…でもこんな経験豊かでめちゃくちゃ精神的にも鍛えられてる人を揺さぶることなんて出来るかなぁ。あー服従の呪文かけて従わせた方が手っ取り早いか?──流石に、防がれるか…?

 

瞬時に色々考えていると、グリンデルバルドは、朗らかに笑った。

 

 

「そうだ」

「…わー…俺ってすげー…」

 

 

あのグリンデルバルドまで惚れさせちゃった!?…いやいやいやんなわけねーだろ。

どう見てもこの人の目は俺に心酔してる目じゃない、もっと…そう、どちらかといえば──獣のような目だ。それも、大人の余裕たっぷりの。

 

 

「ノア、正直に言おう。──君の力に魅了されたよ。心が震えたほどだ」

「会いたくて会いたくて震える?」

「私の元に来なさい。悪いようにはしない。共に魔法界を──変えよう」

 

 

甘い言葉だった。…これは、簡単に頷いちゃダメなやつだ。

ただの口約束ではない、グリンデルバルドの言葉には魔力が宿っている──魔法契約は、破るのが難しい。炎のゴブレットがそうであったように、魔法契約は絶対だ。あの、ダンブルドアでさえ破れなかった。

…まぁ、俺の方が最強の魔法使いだけど、僅かにでも破れぬ可能性があるのなら…頷くのは愚かだろう。

 

 

グリンデルバルドの元かぁ。

いやー…うーん。どっちみち後何年かでこの人負けるからなぁ…。一味として捕まってアズカバン行きなんて絶対に嫌だしなぁ…。見た目はイケオジだから、多分俺がヴォルに出会わず…過去のこの人に出会っていたのなら、俺はこの人の側にいたかも知れない。──なんて、ふと、考えた。

 

 

「…えーと…俺まだ成人もしてないし、急にいなくなったらダンブルドア先生が不審に思うんじゃない?」

「自分からこちらに来た者をわざわざダンブルドアが追うとは思えんな」

 

 

ダメかー!ダンブルドアの名前出したら引いてくれるかと思ったのに!

 

 

「モデルに黒い噂はご法度なんでね」

「私の組織の広告塔になればいい。その魅力があればついてくる者も…多いのではないかな?」

 

 

やべー!

間違いなくその通り!いや、俺の騎士は…俺の騎士はまだ理性的だと信じたい!

うわーでも何人か普通にこっちの陣営に入りそうだし、社会人の熱狂的なファンとかもやばそう。

 

 

「い、いやー…」

「考える時間はある。…紅茶、冷めてしまうよ?」

「……」

 

 

俺が難色を示しているとあっさりとグリンデルバルドは言った。ぐぬぬ、聞く耳を持たん!

グリンデルバルドの一団には入りたくない、この人の事は嫌いじゃない。だって俺ファンタビも好きだし…でも、負け戦には興味がない。かといって、メイソンを見捨てることも出来ない。

今日は、時を止める事が出来ない。それでも最強である事には変わらないけど。

…とりあえず杖を奪うか…?前みたいに杖を奪えば、ワンチャンあるかも…?

 

 

──杖を、奪えば…?

 

 

俺はじっとグリンデルバルドが持つ杖を見た。

ニワトリの杖だ。確か…あれは、他の杖とは違い所有者の変更が特殊だ。力のある者が奪えば、たしか…殺さずとも所有者が変更されてしまう。その後、所有者以外はうまく杖を使う事が出来なくなる。

まさか、グリンデルバルドがわざわざ俺を呼び出したのって──?

 

 

「グリンデルバルド、そのニワトリの杖──」

「ニワトコの杖だ」

「あっはい」

 

 

即座に強く訂正された。惜しい!ニワトコの杖だったか!

 

 

「──もしかして、この前、俺が奪った時に…所有者が変わった?」

「……何故この杖について、そこまで詳しく知っているのか…本当に、不可思議な人だ。──ああ、その通りだ。私にとってそれは、途轍もなく耐え難い事でね」

「…俺をここに呼んだのも、本当は杖のため?」

「私の物になって欲しいと言うのも、事実だよ」

 

 

グリンデルバルドのチャームボイス!(ノア)に40のダメージ!

──って、脳内でポケモンしてる場合じゃ無い。

 

 

「杖を元に戻せば…つまり、所有者をグリンデルバルドに戻すから。俺とメイソンを帰してくれないかな。じゃないと、俺…その杖が今あなたのもので無いなら、俺は──容赦しないよ?」

「……」

 

 

──よし!

生還のルートが見えて来た!

グリンデルバルドは、俺の力を過小評価していない筈だ、計り知れないと思っている、はず!無駄な戦いは避ける人だと願うしか無い…!

 

 

「……君の杖を貰おう」

「…いいよ──どーぞ」

 

 

グリンデルバルドの言葉に素直に頷き、杖を机の上に置いた。グリンデルバルドはあっさりと杖を渡した俺が意外だったのか、少し目を見開き、すぐに細めどこか疑いの目で俺を見つめる。

俺から視線を外さないままに俺の杖を手に取った。

 

 

「で?どうすればニワトコの杖の所有者を変更出来るんだ?俺がニワトコの杖を持って、グリンデルバルドが奪えばいいのか?」

「──そうだ」

「んじゃ、ニワトコの杖を渡してくれよ」

 

 

手を差し出すが、グリンデルバルドは俺をじっと見たまま渡そうとはしない。

何だ?所有者変更したくないのか?

 

 

「君がこの杖を持ち、姿を消されては困る」

「はあ?んな事しねーよ、俺そんな杖いらないし…俺には俺の杖があるし」

「信じられると思うか?…この杖の力を知らないわけではあるまい?……ノア、紅茶を飲みなさい」

 

 

紅茶推しである。

これだけ押すってことは、間違いなくなんか盛ってるだろう。こんなところで真実薬を使う意味は無い、服従させる薬か?死ぬ──のは嫌だな。

 

 

「わかるかな?お願いでは無い。──飲みなさい、ノア」

「…メイソンを先に解放してくれるなら、…飲むよ」

 

 

死ぬのも、服従させられて傀儡になるのもごめんだが。

それよりも俺のしょうもないミスでメイソンが死ぬ方が、嫌だ。

 

 

グリンデルバルドはじっと俺を見ていたが、無言で杖を振る。

すると近くに光が集まり、床に倒れたメイソンが現れた。

 

 

「──ぅ…」

 

 

呻いてる、うん。生きてるし、本当に怪我もしてなさそうだ。何か呪いがかかっている様子もない。──良かった。

俺はメイソンに手のひらを向け、くるりと回転させた。空間がぐにゃりと歪み、覚醒しかけていたメイソンがその場から消える。

強制的に、姿現しをさせた。とりあえず、これでメイソンの命は助かった…あーよかった…!ちょっと姿現し先では大混乱してそうだけど、あそこが1番安全だし、色々わかってくれるだろう、…たぶん。

 

 

「お見事」

「…どーも」

 

 

グリンデルバルドが手で俺の前に置かれたカップを指す。

もう此処で退散した方が良いんじゃね?──あーでも、ニワトコの杖の件が片付かないと、しつこく狙われそうだな。メイソンだけでなく…他の人たちが。

 

グリンデルバルドは相変わらず優しく微笑んでいる。…まさか、好きなキャラとのデートがこんなデートになるなんて思わなかった!

 

暖かそうな湯気を出すカップを掴み、ため息を一つ。毒や、傀儡にする薬でなければ大丈夫だ、死の呪い以外は効かないように防護魔法をかけている。…これであっさり殺されたら笑うけどな。

 

ぐいっと煽った瞬間、視界が揺れ──一瞬、脳裏にヴォルが「馬鹿なの?」と言ってる心底冷ややかな表情が浮かんだ。走馬灯にしては、あんまりだ。

 

 

手からカップが滑り落ち床に落ち、つん裂くような音を出して割れた。俺は椅子に深く背を預け強制的に落ちていく意識の中、グリンデルバルドが狂気的な笑みを見せているのを、最後に見た。

 

 

 

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