チート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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24 違和感に気が付かなかった

 

「くっ…!殺せ!」

 

(ノア)は声を震わせながら叫んだ。

手につけられている手錠は魔法が使えないようにする特殊な魔法具らしい。ノアを見下ろすグリンデルバルドは目を細め不敵な笑みを浮かべ、ノアにゆっくりと近づく。

せめてもの抵抗で、必死にノアがもがいたが、じゃらじゃらと天井から繋がれている鎖がぶつかり、不快な音が響いただけだった。

 

 

「悪い子にはお仕置きが必要だ…」

「なっ…!や、やめ…!」

 

 

グリンデルバルドが杖を振るとノアの服がびりびりに敗れて弾け飛んだ。何故か肌が傷ひとつつかないのもはやお約束なんだろう。

露わになった裸体、──何故か靴下は履いたままだった──ノアは寒さか、それともこれから起こることを理解しての恐怖か、蒼白な顔で震えていた。 

 

グリンデルバルドはにやりと笑い、ノアに手を伸ばし固く閉じた足を無理矢理開かせ、そのまま首筋を舐め上げ──。

 

 

 

 

「───はっ!!」

 

 

 

俺は意識を覚醒させた。──な、何だ、夢か。

どうりでエロ漫画で見た展開だと思ったんだよ!

 

地下牢にでもぶちこまれたり拘束具の一つでもつけられて、夢のようにくっ殺展開かと思ったが、目の前にはグリンデルバルドが居て、意識を失う前と同じように、俺は椅子に座っていた。俺の息子もテントを張ってない、ちょっとやばかったな。

 

 

「──驚いたな、もう目覚めたのか」

「いやー夢で良かった。童貞の前に処女を失うところだった…」

「…何を言っている?」

「あ、こっちの話です。中途半端で残念なような安心したような微妙な夢を見た…何の薬だったんだ?」

 

 

淫夢薬か?

 

 

「わからないかな?」

 

 

淫夢薬か。

──いや、なら途中で夢が終わる訳ないか、あ、いや別にヤられたいわけでは無い。うん。ただ俺がヤられそうなのを第三者の目線で見ていたから──夢ってそんなもんだろ?──あ、俺ってマジで美しいなちょっと続き見たいかもって見惚れてしまっただけで、うん。

 

俺はまだ少し鈍い頭を抑えながら身体を起こし、床に砕け散り水溜りを作る紅茶を見ながらぼんやりと考える。

うーん、苦しくはない。

思考もだんだんはっきりしてきた。

自分の意識は、ちゃんとあるし…傀儡にされたわけでもない。

まぁ、殺されることはないだろうと思ってたけど。

──けど、なんだろう。この、喪失感は。

 

 

「……魔力か」

「そう。君の力は厄介だからな」

「…はぁ…」

 

 

魔力を失ったら俺はただの世界一の絶世の美青年である!

試しに砕けているカップを直そうと強く思ってみたが、カップは僅かに震えるだけで直らなかった。…動くってことは魔力がゼロになってるわけじゃないのか。…グリンデルバルドは気付いてない…か?

大方、魔力を一時的に失わせる薬だろう。そんなのあったなんて魔法使いクラッシャーじゃん!!

 

 

「杖の主導権を返してもらおうかな」

「…はいはい」

 

 

俺が魔力を失わない限り安心出来なかったんだろう。そりゃ、世界最強の俺と、世界最強の杖が合わさったら凄い事になりそうだ。ただでさえ最強なのに、敵無しどころか俺の好きに世界だって作れてしまうかもしれない。

けど、俺はこの世界が好きだ、今後生まれてくる親世代とも会わなきゃならない!悪役にはなれない!

 

 

渡されたニワトコの杖を持った途端、グリンデルバルドが俺の杖を使い武装解除魔法を俺に放つ。バチンと強い音と衝撃がして、俺の手からニワトコの杖が飛んだ。

空でうまくキャッチしたグリンデルバルドは、何かを確かめるように杖を振る。

 

 

「──おぉ!?」

 

 

途端に俺たちの周りに青い炎が円を作り揺らめいた。熱っ!──くはないな。

 

 

「…杖は、私の元に帰ってきたようだ」

 

 

グリンデルバルドは満足気に言うと杖を再度振り、青い炎を消した。

良かった!と言うことは俺はもう用無しだよな。

 

 

「じゃあ俺はもう帰ります」

「──帰すとでも?」

 

 

机の上にある俺の杖を手に取り、立ち上がってくるりと背を向け入ってきた扉に向かおうとしたら、腕を掴まれ引き寄せられた。俺は驚いてグリンデルバルドを見上げて──くっ!顔が良い!

俺には負ける、それは間違いない。だがこの大人の色気はまだ俺には出せない!くやしい!

 

 

「ノア、君は魔力が戻ってないだろう。そのままの状態でどこにどうやって帰るつもりだ?」

「誰のせいですか、誰の!」

「私かな?」

 

 

にこりと微笑まれる。

…グリンデルバルドって、めちゃくちゃ口の上手い詐欺師っぽかったもんなぁ…俺の魔力が戻るまでの間で、俺を陥落させるつもりなのだろう。

一刻も早く此処から出たい。ホグワーツのクリスマスディナー食べたい、俺が居ないとヴォルは一人で三角の帽子をかぶってクラッカーを鳴らす寂しいクリスマスを過ごす事になる!──可哀想じゃん!

 

しかし、まぁ…魔力が戻らないとどうする事も出来ないのも事実だが、勝機はある。グリンデルバルドは俺の力の全貌を、この世界で最強である俺の力を理解していない。魔力を失わせる薬?そんなもので世界最高最強の魔法使いである俺が抑えられるとでも思ったのか?

 

 

「いや、帰るよ」

「…いけない子だ」

 

 

バリトンボイスで囁かれる。

さっきの夢は正夢だったのか!?やめろ!俺は何度も言うがノーマルだ!…くっ殺な展開にさせるものか!残念だな俺はただでヤられる程、安い美青年じゃないんだよ!

 

 

グリンデルバルドの腕の中でくるりとまわり、向かい合う。不敵な笑みを浮かべていたグリンデルバルドの表情が、少し変わった。

 

 

「──俺をあんま舐めない方が良いぜ?」

 

 

失われていた魔力が少しずつ戻っていくのを感じる。

 

俺はグリンデルバルドの手を繋ぎ指を絡め、顔をぐっと近づけて笑った。グリンデルバルドが眉を顰め、小さく呻く。──気が付いた時には、もう遅い!

 

 

「残念、俺の方が強い」

「貴様…私の──魔力を…」

「ふふ、わからせてやろーか?」

 

 

眉を顰めるグリンデルバルドの耳元で囁き、息を呑む彼の肩を強く押すと、そのまま俺はふわりと空に浮いた。

少しでも魔力が戻ったのなら、あとは簡単だ。俺の少ない魔力を使い、グリンデルバルドが持つ魔力全てを奪い、自分のものにした。身体がカッと熱くなる。──うーん、他人の魔力ってなんか、なんか気持ち悪いな。

 

 

部屋の中に、まるで嵐のように風が吹き荒れ窓が、城が、軋む。

 

 

「さようならグリンデルバルド!」

 

 

俺は高らかに宣言し、来た時と同じように姿現しをした。

逃げるが勝ち!ってね!

 

 

 

 

 

「───っと」

 

 

軽い足取りで床に降り立ち、ぐるりと辺りを見渡す。うん、ホグワーツの自室だ。

あー何とか、無事帰って来れて良かった。

もう軽い気持ちに革命家に会いに行こうだなんて思っちゃダメだな、うん、反省反省。

 

 

「「ノア!」」

「ただいま、ヴォル──お…?」

 

 

 

部屋の少し離れた場所にヴォルとメイソンを見つけ、ほっと安心した途端──緊張の糸が途切れたのか、ぐらりと視界が揺れ足から力が抜ける。

床と正面衝突だ、と思っていたら駆け寄ってきたヴォルに抱き止められ何とか床とキッスする事は無かった。

他人の魔力なんて吸い取って使うもんじゃないな、めちゃくちゃ気持ち悪い。例えるなら忘年会でしこたま酒をちゃんぽんしたような猛烈な吐き気とダルさと目眩。──あれはもう最終手段でしか使いたくないなぁ。グリンデルバルドと俺の魔力の相性悪かったのかも。…魔力に相性なんてあるのか疑問だが。

 

 

「…メイソン、怪我は?」

 

 

俺の背中に回っていたヴォルの手に力が篭った。…なんだよ、ちょっと苦しいぞ。

メイソンは狼狽え、顔を蒼白にさせながらこくこくと何度も頷く。

 

 

「なんとも、無いよ。それよりノア!君の方が…!」

「メイソンが無事なら、いいんだ」

 

 

メイソンは瞳を揺らし、泣きそうに顔を歪めている。そりゃ、怖かったよなぁ…いきなりグリンデルバルドに攫われて訳がわからなかっただろう。もう俺のマネージャーやってくれないかも。

 

 

「ごめん、ヴォル…ちょっと座らせてくれないか?」

「……」

 

 

俺の言葉にヴォルは無言で俺を抱き上げ──所謂姫抱きというやつだが、まぁその方が運びやすいのだろう。──ベッドに座らせた。勝手に身体が後ろに倒れそうになるのを何とか堪え、隣に座ったヴォルに支えられながら、メイソンを見上げる。

 

何だか申し訳なくて、何も言えずへらりと笑いかけたらメイソンの目から涙が出て溢れ俺の側に膝をつきそのまま俺の足に縋るように抱きついた。

 

大の大人が肩を震わせて泣く姿なんて初めて見た。…さ、さすがに申し訳ない。

手を伸ばし頭を撫でて「ごめんな」と呟けば、メイソンは泣きながら首を振った。

 

 

「…ヴォル、この事を知ってるのは…?」

 

 

ヴォルは何故か、かなり不機嫌そうだった。…不機嫌というか、なんか──なんだ?何でそんなに嫌そうな顔をしてるんだ。

 

 

「……僕だけだ。…ノアがわざわざ校長に嘘をついたからね。…知られたく無いんだろうと思って…とりあえず、あの人はこの部屋から出てないよ」 

 

 

何度も校長室に行こうとするの、止めるの大変だったんだから。とヴォルは低く吐き捨てる。

 

 

「ありがとう、流石ヴォルだな」

 

 

流石俺の幼馴染、俺のことをよく分かってる!グリンデルバルドが手を出さない補償があるのは、ダンブルドアがいるこのホグワーツだけだ。メイソンを此処に無理矢理転送させる事は難しく無い、だがヴォル以外に知られたら──それこそ、ダンブルドアに知られたらめちゃくちゃ面倒な事になる。折角疑いが晴れてきてるのに、また逆戻りだ!それだけは避けたかった。

ヴォルなら、俺の考えを理解してくれるだろう、何より校長やダンブルドアに助けなんて求めないだろうと信じていた。 

 

 

「何があったのか、僕には説明してくれるんだよね」

「ああ…その前に──メイソン」

 

 

俺の声にメイソンは涙に濡れた目を上げた。

俺は杖先をメイソンの額に突きつけ「 オブリビエイト(忘れろ)」と囁く。ついでに眠り魔法もかけておこう。──全ては悪い夢だったんだ。

驚愕に目を見開いていたメイソンの目はぼんやりと虚になり、そのまま目を閉じて俺の足にもたれかかって眠った。

 

また、メイソンが狙われないとも限らない。暫く俺の関係者にはイギリスから出ないように言わないとなぁ。

 

杖を振るい、メイソンを浮遊させ俺のベッドに寝かせながらぼんやりと思う。グリンデルバルド、めちゃくちゃイケメンで怖い人だった。うーん、敵意はあんまり感じなかったけど、やっぱり最強でも──守るのって難しいんだな。

俺の体力が戻るまで、メイソンには寝てて貰おう。記憶も少しいじって、グリンデルバルドに攫われたことは忘れてもらおう。俺の過激なファンが犯人って事にしとこうか。…事務所にも、しばらくはイギリスから出ないように伝えないと。後で連絡しなきゃ。…や、やることが多すぎる…! 

 

ヴォルをチラリと見れば、俺が説明するまでは寝かせないとでも言いたいのか、強い目で俺を見ていた。疲れたし眠いし気持ち悪いけど、…ヴォルには説明をしないとな。

 

 

「グリンデルバルド、知ってるよな?」

「そりゃあ…」

「メイソンがグリンデルバルドに攫われたんだ。まぁ、狙いは俺だったんだけどな。…んで、助けに行って今に至る」

「……何で、グリンデルバルドなんかに狙われるの?」

「あー…この前アメリカ行った時にちょっとした好奇心で話しかけちゃって」

「はぁ?」

「それで、ちょっと興味持たれたみたい」

「…馬鹿なの?」

「馬鹿なんだよ。流石に反省した」

 

 

走馬灯?で見た通りの冷ややかな絶対零度の視線で射抜かれる。

流石に、今回ばかりは俺のミス、ちょっと考え無し過ぎたな。何も反論できない!

 

 

「……守るものがあるのって、大変なんだな」

 

 

俺はヴォルの肩に頭を乗せて呟いた。

俺が最強でも、周りは普通の人間だ、すぐに命の炎は消えてしまう。大切な者が、守りたい人が増えるほど──難しくなる。

最強すぎるのも、考えものだなぁ。

 

 

「…そんなの、作らなければいい」

「いやー…もう遅いな」

「………そんなに、あの男が大切なんだね」

「そりゃあそうだ。──…ヴォル?」

 

 

隣からの気配が、何だかいつもと違う気がしてヴォルの顔を覗き込む。

ヴォルは何でもないというように、微笑した。その笑顔は、俺には見せることが無かった、上辺だけの作られた笑顔だった。

 

 

「何、怒ってんの?」

「…別に」

「俺に、そんな顔で笑うなよ」

「いつも通りだよ」

 

 

いや、美しい完璧な微笑だけどな。俺にはそんな顔をしなかっただろ?…何で──。

 

俺は訳がわからず閉口した。

だめだ、思考がまとまらない、でも、何か──ヴォルに言わなければいけない、このままだととんでもないことになりそうな、そんな嫌な予感がした。

 

 

「…あー…ヴォル?」

 

 

まとまらない思考を必死に働かせ、ヴォルが何故そんな…そんな目をしているのか考えた。

ヴォルは、多分、俺の思い違いでなければ、それなりに俺を大切に──思ってくれている。多分、そう、信じたい。つまり、心配してくれていたのか…な?

 

 

「何?」

「…その…あー…心配かけてごめんな?」

 

 

そう思ったが、なぜかヴォルは少し──傷付いたような目を、一瞬だけ見せた。

見間違いかと思う程の刹那的な感情の揺れに、俺は言葉を間違えたのだと理解する。

 

 

「ヴォル──」

「ノア、疲れてるんでしょ?休んだら?」

 

 

ヴォルの言葉は優しいのに、声の響きは酷く冷たい。

な、なんだよ。これドラマとかで見たことあるぞ、ドロドロ系のドラマで…不倫した男が妻のいつもと違う微妙な優しさに背筋凍るやつじゃん!何で俺が二股した男みたいな気持ちにならなきゃなんねぇんだよ!二股とか、した事ねぇよ!童貞なめんな!

…え?──もしかして、ヴォルがこんな状態なのって…。

 

 

 

ヴォルはさっと立ち上がる。

俺は、つい──ヴォルの腕を取った。掴まれると思ってなかったのか、ヴォルはバランスを崩しあっさり俺の腕の中に収まった。

 

 

「──何」

「ヴォル、──」

 

 

一度言葉を区切った。

いや、…まさか、ヴォルが、ヴォルデモートが?闇の帝王が?…嫉妬するわけ、ないよな?そんな、子どもみたいな独占欲をいつまでも俺に持つわけないよな。確かに昔…ホグワーツに来る前は俺に執着していたように見えた、でもそれは同じ力を持つ俺だったから、あの場で2人が特別だったから。その感情なんて、魔法界に来て、薄れたと思っていた。…俺に本性を見せるのは、昔から知っている()()()()()()、じゃないのか?

そんな──もし俺の想像があっているのならヴォルはもう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「──俺にとって、ヴォルはただ1人の幼馴染だ」

「……そうだね。──うん、わかってるよ」

「…そっか」

 

 

ヴォルのため息が静かな部屋に響いた。

ヴォルは俺の腕の中から出て立ち上がり俺を見下ろす。いつも通りの表情に、少しだけ、安心した。良かった、──伝わったんだろう。

 

 

「顔色悪いよ」

「んー…少し休むわ。ヴォル、3時間後に起こして。…ヴォルのベッドで寝ていい?」

「仕方ないね、いいよ。…おやすみ」

「…ありがと、おやすみ」

 

 

俺のベッドにはメイソンが寝ている。

礼を言ってそのままベッドに寝転び、すぐに目を閉じた。

起きたらやらなきゃならないことがたくさんある。

それに少し、思考がまともに働くようになったら、ちょっと…色々考えないとな。ヴォルの事も、しっかり考えないと──。

 

 

ヴォルが、俺の頭を撫でていた。…珍しい、ホグワーツに来る前は、よくこうやって寝かしつけられていたっけ。

 

俺はすぐに意識を手放し、ベッドから香るヴォルのほのかな匂いに包まれながら眠りに落ちた。

 

 

 

 

(俺はヴォルにかける言葉を間違えた。はっきりと、ヴォルも大切だと言えば良かったんだ。その事を後悔するのは、まだまだ先の話だけど。)

 

 

 




グリンデルバルド編はお終いです。
この時グリンデルバルドがどこに居て何をしていたのかまだ明かされてないので、きっと間違ってます…ファンタビが進めば、こっそり書き直すかもしれません。

そしてお察しの通り、ヴォルとノアの感情は暫くすれ違います。今の予定は、ですが!
ノアが転生者でハリポタファンである限りどうしても事前情報に引っ張られてなかなか噛み合いません。
可哀想なヴォルと、一生童貞のノアです。

いつも感想や評価ありがとうございます!
皆さんのコメント、面白くてにやにやしながら見てます笑

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