チート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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27 最後の一年

 

ついに学生としてホグワーツで過ごす、最後の年が始まった。

ヴォルは相変わらず優等生であり、模範生である。教師からの信頼も厚く、寮を超えて生徒達から羨望の眼差しで見られていた。秘密裏に結成したトム・リドルの一団の人数はその誰もを魅了出来る話術と見た目も相まって、中々に増えてきている。優れた純血の者や、この魔法界の現状に不満がある者、陰でグリンデルバルドの思想を支持していた者達を引き入れ、けっして表に出ることも、悪さの証拠も残さない集団だったが既に死喰い人としての片鱗を見せている者も居た。

 

 

「ヴォルは就職先どうすんの?」

 

 

校庭の芝生の上に寝転び、暖かい日差しを浴びながら俺は木陰で本を読むヴォルに何気なく聞いた。

 

 

「ホグワーツで闇の魔術に対する防衛術の教師になりたいかな」

「リドル先生になるのかー。悪くないけど、いきなり一歳しか変わらない生徒を教えるの…なんか気まずくねぇ?後輩がまだ在学してるし」

「そう?僕は気にしないけど。──確かに、断られるかもしれないね」

 

 

一つ年上の先輩が先生になる。

そんな経験、中々無いことだろう。

まぁヴォルはただ教師になりたいだけではなく、このホグワーツでひっそりと闇の勢力を拡大させるつもりなのだ。今は防衛する事に重きを置いている科目だが、もしヴォルが教員になれば防衛だけではすまないだろう。

 

 

「ってか、ダームストラング校の教師になれば良いんじゃね?あそこの学校は闇の魔術や実践的な決闘に力を入れてるらしいし」

「それも、考えたけどね」

 

 

そうなのか。

ヴォルは「でも」と言葉を続け顔を本から上げると、少し遠くに見えるホグワーツの古城を目を細めて見た。

 

 

「──ここが良いんだ」

 

 

その声には、確かな愛着、のようなものが含まれていた。なんだかんだ言ってホグワーツで過ごした日々はヴォルにとって楽しかったんだろうな。

 

 

「教師になれなかったら…ボージン・アンド・パークスに就職するつもりだ」

「へ?」

「ノクターン横丁にあるアンティークショップ」

「ヴォルがショップ店員ねぇ…」 

 

 

ヴォルの言葉にしみじみとつぶやく。

 

レジ打ちとかするの?ヴォルが??お金数えたりすんの??「合計12ガリオンです」とか言って笑顔で袋詰めするの?品出しとか在庫確認とかするの?「奥さん、本日の目玉商品はこちら!なんと3つ合わせて 298(ニーキュッパ)ガリオンです!」とか宣伝しちゃうの?に、似合わねぇ…!

 

そんな店…あーなんかぼんやり覚えてるような…大きなイベント以外はちょっと記憶が曖昧になってきてる。流石にもう15年以上前の記憶はあやふやだ。たしかその店で分霊箱にする物を買うんだっけ?なんか違うな…あ、殺して奪うんだっけ?

 

 

「ノアも一緒に働く?」

「うーん、俺が店員になったらこの世の秘宝全て集まりそうだな」

 

 

何せ顔面が良く、世界的に有名になりつつあるハイパーモデルノアのいる古物店である。そんなの代々伝わる秘宝をみんな喜んで持ってくるんじゃね?

 

 

「俺はもうちょっとモデル活動して…ホグワーツの教師になりたいんだ」

「…ノアが教師?…科目は?」

「そうだなぁ、呪文学か、魔法薬学か、変身術か…」

「誰かに教えるほどノアに学力があるとは思えないけどね」

「うるせー!座学は残念でも実技試験はヴォル以上の成績だって事をお忘れかな?ヴォルくん?」

 

 

くるりと寝返りをうち、芝生の上に肘をつき顎を乗せてにやにやと笑いかける。

そう、俺はチート能力のおかげで実技試験はヴォル以上の成績を収めている。今まで誰一人として負けたことはない。まぁ頭脳は平均並…より少し良いくらいなので、合計の成績でいえばそこそこな結果になっているのだが。

 

 

「せめてノアにもうちょっとまともな頭脳があれば良かったね」

「俺がヴォル並みの頭脳を持ってたら、向かうところ敵なしだな!…ま、俺は最強だから?今でも何だって思いのままさ!」

「…僕ら2人でなら、世界を変えられると思わない?」

 

 

…あれ?なんか既視感のある言葉だな。

ヴォルは静かに微笑んだ。たまに、ヴォルはこうやって優しい目で俺を見ることがある。まぁ優しい目なんて数ヶ月に一回で冷ややかな目がデフォだけど。

 

 

「俺はこの世界が好きだ」

「…そう」

 

 

俺はこの世界が好きだ、大好きだ!

征服なんてとんでもない。そんな事やる気は毛頭もない、ただ目の前で起こるさまざまなドラマを、少し離れたところから見たいだけだ。──悪趣味、と言われようがこれだけはやめるつもりはない!

 

 

上半身を起こし、太陽の光を浴びて輝く湖を見た。世界はこんなにも綺麗で──残酷だ。

まぁ、進撃の巨人のミカサちゃんの言葉はなかなか真理をついていると思う。

 

 

「──あ」

 

 

ばしゃん、と湖から巨大イカが鯉のように跳ねた。

ただのイカではなく、小山ほどある巨大イカのジャンプは少し水が掛かる程度で済む──はずもなく、俺は手を突き出し降りかかる水を防いだが、ヴォルは反応が遅れ──。

 

 

「…よっ!水も滴る良い男!」

「……」

 

 

ヴォルがこんな失態をするなんて珍しい。襲い来る水に反応が遅れるほど…それ程気にかかる何かがあったのだろうか?

水を頭から被ったヴォルの身体を手で撫でれば、すぐにその体に暖かい春風が吹きさっぱりと乾いた。ま、暖かいとはいえもうすぐ10月だしな。

 

ヴォルは乾いた身体を見て、何故か驚いたように目を見開き、勢いよく俺を見た。

 

 

「なんだよ」

「何で…血の誓いがあるのに、魔法が…」

「ああ、そりゃ…誓いは互いに戦わない、だろ?俺は()()()と思って魔法かけてねーもん」

 

 

何を驚いているのかと思ったら、何だそんなことか。

俺たちが誓ったのは、戦わない。それだけだ、何を基準にして戦わないなのかわからないが、少なくとも契約を破るような事はしていないし考えてもいない。血の契約の内容に背くことを考えただけで、肉体的に傷付くらしいし。

 

 

「多分、互いに魔法をかけないーとかなら、無理だっただろうなぁ。治癒魔法とかも、今ならかけられると思うけど」

「そうか…」

 

 

ヴォルは乾いた自分の体を見下ろしぽつりと呟くと何か考え込んでいるようだった。

 

 

「水の滴る良い男のままの方がよかった?」

「そんなわけないよ」

「ですよねー」

 

 

俺は再び空を仰ぐように寝転び、頭の後ろで腕を組んだ。

戦わない──それを深く考えるだけでも、肉体的に傷つく契約。ま、俺は戦うつもりなんて無いけど、ヴォルはこれから…どうなるんだろうなぁ。

 

遠くから昼休み終了の鐘の音が響く。

ヴォルは本を鞄の中に入れ、俺も立ち上がり服につく汚れを魔法で払った。

 

 

「ヴォルがショップ店員になったら遊びに行くよ」

「来なくていい」

 

 

からかいながらいえば、キッパリと拒絶されてしまった。いや、絶対見に行って客という立場を利用しニヤニヤしてやる!

 

 

 

 

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