告白ラッシュである。
俺、人生初のモテ期到来か!?何故か世界一の美貌の筈なのに誰も告白してこなかったもんなぁ。
「いやーモテる男は辛いぜ!」
毎日2.3人の人から告白される。女子だけではないのは、俺の美貌だから仕方がないだろう。そう、今は12月、もうすぐクリスマスだ。ホグワーツ最後のクリスマス。生徒たちは最後の思い出を作りたいのか、当たって砕けろ精神で俺に告白してくる。
このままのペースでいけばクリスマスまでにホグワーツ中の生徒から愛の告白を受ける事になりそうだ。
「はあー断るのも胸が痛むよ…」
「ノアは、誰かと付き合わないの?」
「うーん、好きな子居ないしな…ヴォルは?」
「居ないね」
まぁそうだろうなぁ。
日中はほぼ俺か愉快な仲間達と一緒だし。夜にこっそり出かけてるのはただの性処理なんだろう、…ヴォルに泣かされる女の子は多い。罪な男だな!
「ダンスパーティの相手は決まったのか?ヴォルならより取りみどり、入れ食い状態だろ」
今年はクリスマスの日に、ホグワーツでダンスパーティが開催される。この7年間一度もなかったが、多分グリンデルバルドが捕まり世間が明るく祭ごとを楽しみたい雰囲気にあるからだろう。──そう、グリンデルバルドは少し前にダンブルドア軍団により退けられ彼が作った城に投獄された。今後魔法史に語り継がれるだろうという大戦だったらしい。
ちょっと見に行こうかなぁと思ったけど、前回のようにめんどくさい事になりかねないと思って諦めた。いつ戦いが始まるかもわからなかったしなぁ。
で、その祝いなのか何なのか、ダンスパーティが開催される事になり、クリスマス休暇だというのに殆どのホグワーツ生がここに残るらしい。
俺が沢山の生徒に告白されるのも、そのダンスパーティのお誘い──という面もあるのだろう。
「僕はパートナーを決めないつもりだ」
「へえ?何でまた」
「彼女面されるのもめんどくさいしね」
「ああー…なるほどなぁ」
「…ノアは?」
「んー、俺も決めないかな」
一流モデルで注目の的の俺が個人的にパートナーを決めれば、それだけでゴシップ記事が半年は騒ぐだろう。婚約者か!?秘められた恋の行方は!?なんて言葉が踊るのは間違いない。メイソンから大事な時期だからくれぐれも気をつけるように釘を刺されてるしなぁ。
しかし、ホグワーツの美形ランキングぶっち切りで一位の俺と、二位のヴォルが誰もパートナー居ないなんて、ちょっとダンスパーティの華やかさが欠ける気がするが。
…そもそも俺、踊れないし。
「ノアが女ならパートナーにしたのに」
「へ?」
「後腐れなくていいでしょ?」
ヴォルはそういうと小さく笑う。
まぁ、確かに他の女の子はヴォルに誘われたとなれば恋人の座は私のものだ!とばかりにふんぞりかえるだろう。俺はヴォルと踊っても、そんな心配はない。
──そうか!その手があったか!
「ヴォルは踊れるのか?」
「あれだけ練習させられたらね」
「まじで?俺全然無理だわ」
授業の時間を少し使い、ダンスパーティに向けて簡単なワルツだけ練習させられてはいるが、残念ながら俺に美しさはあっても踊りのセンスは無かったようだ。ダンスなんて中学校の林間学習でキャンプファイアーを囲み同級生とマイムマイムした事しかないのだから、仕方ない。
「よし!ちょっと出てくる!」
「何いきなり。…わかった」
俺のいつもの行動には慣れっこなのか、ヴォルは少し眉を寄せたが気にしなかった。
俺は自室を飛び出し寮を抜ける。階段を駆け上がり──えーっと、この時間なら、やっぱ寮かな?
「あ、なあなあ、ミネルバ・マクゴガナル呼んできて欲しいんだけど」
「ひぃっ!!も、もちろんです!」
グリフィンドール塔の前で下級生らしい女の子に声をかければなんか人狼に出会ったような悲鳴をあげられたが、こくこくと何度も頷き寮へ走り去っていった。
壁にもたれて待っていると、息を切らせてミネルバが俺の元に走ってきた。
「ど、どうしました?」
「ああ、ごめんな。今大丈夫?」
「ええ、この後変身術の個人授業がありましたけど、ダンブルドア先生には急用が入ったとフクロウ便を飛ばしました」
ミネルバがいいなら良いけど、それって結構大事な授業じゃないのか?
まぁミネルバは俺の騎士だ、俺の用事がなによりも大切なんだろう。
ミネルバは胸を抑え何度か深呼吸し息を整えると、少しツンとすました表情で顎を少し上げながら俺を見つめる。うーん、マクゴガナル先生!って言いたくなる表情だな。
「俺にダンス教えて欲しいんだ」
「え…?…わ、私が、ですか?」
「うん」
「勿論、ノアさんの頼みとあれば…ただ、私…その、それ程うまくありませんよ?」
「良いの良いの。簡単なワルツだけで良いからさ。それに知りたいのは──」
少し体を曲げミネルバの耳元に顔を近づけ──途端にミネルバはりんごのように真っ赤になり視線を泳がせた──囁いた。
周りの生徒達に聴かれるわけにはいかない。当日まで秘密にしておかないと、楽しくないだろう?
「…なるほど、わかりました。それなら何とかなりそうです」
「ほんと?ありがとうミネルバ!」
「その日、猫耳はつけますか?」
猫のしっぽでも良いですけど。と真顔で言うミネルバに、流石につけないかなーと苦笑すれば至極残念だと言うようにため息をつかれた。
そのかわり新しい獣人になって写真を送るよと言えば、ミネルバは興奮して目をキラキラと輝かせ嬉しそうに笑う。うーん、ミネルバ妹みたいで可愛いんだよなぁ。マートルもだけど。
早速俺とミネルバは誰もいない空き教室で練習を重ねた。ミネルバは俺の思った通り──かなりスパルタだった。少しでもテンポがズレれば直ぐに一度音楽を止め間違いを指摘する。うまくいくまで何度も何度もワンフレーズのみを繰り返すのだから、マジで容赦がない!!
きっと、マートルなら俺が間違えても「そんなノア様も素敵です!むしろ立ってるだけで良いのでは?」と、言っただろう。…だから、練習相手に選ばなかったんだけど。
何とか途中で止められる事なく一曲を踊り終え、ポーズを決める。──完璧だ!
ミネルバはパンッと強く手を叩き俺に向かってにっこりと満足げに笑った。
「──いいでしょう!かなり上達しましたね!」
「は、はい…マクゴガナル先生…」
ついついマクゴガナル先生、なんて呼べば、ミネルバは少し目をぱちくりとさせたが満更でもないようで得意げに笑う。うーん、何だかハーマイオニーみたい。
「ノアさん、パートナーは決まりましたか?」
「うん、決まってる。ミネルバは?」
「私は…その、…同級生に誘われて…」
「あらやだっ!」
頬を染めて恥ずかしそうにするミネルバに、ついついオバサンみたいな反応をしてしまった。ミネルバに春!?春なのか!?この初々しい反応…っか、可愛い!
ついついミネルバの頭をぐりぐりと撫でれば、ミネルバは挙動不審になりかなり焦っていた。
「どんな男だ?付き合ってんの?」
「えっ…い、いえ、そういう…仲では無いのですが」
「えー?誘ってきたんだろ?その男は絶対ミネルバのこと好きじゃん!」
「そ、そうですかね?」
「悪い男なら俺に言えよ?懲らしめてやるから!」
「まぁ!」
ミネルバは驚き困ったような顔をしたが、それでも頬は赤く、悪戯っぽく笑った。
ーーー
クリスマスのダンスパーティ当日。
俺もヴォルも男性用の礼服に着替えていた。
深い紺のシャツに黒いドレスローブ、ネクタイの色は俺の髪に合わせた絹製のもので美しい銀色だ。いつもは弄ってない髪も、片側をかきあげ整髪料で硬め後ろに流している。
「俺、美しすぎない?大丈夫?」
「…顔だけは良いからね」
姿見に映る俺に見惚れながら振り向けば、ヴォルも丁度着替え終わったところだった。ヴォルのシャツはやや赤みがかかった黒で、ドレスローブは俺と同じものを着ている。ま、苦学生が新品のドレスローブなんて買える筈もなく、俺がプレゼントしたものだ。
「うん、ヴォルも相変わらずイケメンだぜ?ただし──」
「俺には負けるけどな。──もう何度も聞いたよ」
ヴォルは俺の口調を真似して皮肉混じりに言う。それでもその表情がどこか楽しげなのは、ヴォルも今まで暮らしてきた中で最も規模のでかいクリスマスパーティの雰囲気に当てられているのかもしれないな。
俺とヴォルは2人でスリザリン寮を出ると、パーティが開催される大広間へ向かった。
すれ違う生徒たちが何人も俺の美貌を見て頬を赤らめ感嘆の吐息を吐く。まぁ、いつもの格好ではない俺は自分で言うのもなんだが──今までの中で1番、男らしく、カッコいい!
「──あ、俺忘れ物してきたわ。ちょっと先に行ってて!」
「わかった」
ヴォルと別れた途端、ヴォルは数名の女生徒に囲まれてしまい、すぐにいつものような人の良い朗らかな笑みを浮かべ対応していた。俺がモテモテなのと同じように、なんとかしてヴォルとせめて一曲は踊りたいという女の子は多いのだろう。
「ノアさん!そ、その!私と一曲だけでも…!」
「ごめん、先約があるんだ!」
「え…ええええっ!?」
美しい淡いピンク色のドレスに身を包んだ女子に声をかけられたが、止まることなくそういえばその女の子だけでなく周りの生徒たち皆が驚き悲鳴をあげた。「誰!?」「どこの女よっ!?」「ノアと踊るなんて羨ましい!」という叫びを聞き後ろを振り返り、もう一度「ごめんな!」と言えば、生徒達に混じって驚き目を見開くヴォルと、一瞬目があった。
俺は生徒たちの喧騒から離れ、誰もいない廊下にたどり着くと、そっと空き教室に入り直ぐに支度に取り掛かった。
ーーー
大広間に続く玄関ホールや大理石の階段の至る所で生徒たちがパートナーと楽しげに会話をしダンスパーティの開催を今か今かと待っていた。
豪華絢爛な飾りが施された大広間には有名な合奏団が大広間の壇上に現れ、シックな礼服に身を包みそれぞれの楽器を手に持ち小さな音を奏で、ダンスパーティ開始時刻まで音合わせをする。
リドルは同じ寮生──所謂、トム・リドルの一団と言われる仲間たち──や、香水の甘ったるい匂いを漂わせ媚びた熱い視線を向ける女達に囲まれ、相変わらずの微笑を浮かべていたが内心ではピクリとも笑えずむしろ、苛立ちすらしていた。
──ノアにパートナーが居たなんて聞いてない。数日前は誰とも踊らないって言ってたのに。
リドルはボーイが運んできたグラスを手に取りつつ──周りの生徒達の自分への賛辞の言葉を右から左に聞き流し──スパークリングを飲みながら心の内で呟く。
隠さずとも、良いじゃないか。別にパートナーくらい、言ってくれれば──。
突如後方で大きな音が続いた。
何かが複数倒れる強い音に、誰か転倒でもしたのかと何人もが振り返る。
ホグワーツ中の生徒達が集まり、ざわついた大広間では人々の後頭部しか見えず、何が起こったのかリドルには分からなかった。
悲鳴、倒れる音。──そして静寂。
誰もが大広間の閉められた扉を怖々と見ていた。教師達は立ち上がり表情を険しくしながらさっとその場に向かう。ダンブルドアは、まさかグリンデルバルドの残党か──と、グリンデルバルドから奪ったニワトコの杖を強く握った。
バタン、と大きな音を立てて扉が開く。
その先には──彼らが今まで見たことも無い光景が広がっていて、それを見たダンブルドアは頭を抱えた。
「め…女神…」
誰かの呟きがしんとした大広間に響く。
リドルはその言葉にデジャヴを感じながらも──否定出来なかった。
深海を思わせる群青色のパーティドレスは宝石を散りばめたようなスパンコールが胸元にさりげなくあしらわれ、シンプルだがその人が着るために作られたのかと思うほど着こなしていた。美しく滑らかな質感のそのドレスよりも、さらに絹のようにさらりと流れる銀髪は緩く編まれ、ハーフアップに結い上げられている。
生徒達の視線を集めたその人──ノアはふっと軽く微笑んだ。
その途端扉を中心に皆がふらりとよろめきその場に倒れる。
そう、現れたのは魔法により女体となったノアだった。
ーーー
俺が大広間の扉を開け、近くにいた生徒達に微笑みかければ、懐かしい光景が広がる。
俺の美貌にやられて倒れる者の多いこと多いこと。
一歩足を踏み出しヒールをならせば、ざっと道が開き大広間の中心まで一気に人が避ける。
何人かが跪き指を祈るように組み──「貴方様の輝きはまるでルーマス・ソレム!」
ちらりと流し目を向ければ胸に手を当て恍惚とした顔で──「歩みだけで全てをインペリオ…!」
さっと流れた髪を後ろに払えば──「今、永久の魅惑の呪文にかけられた」
三年生の時を思い出す──いや、当時よりも明らかに倒れる者が多く俺に跪き首を垂れる生徒が多い気がするが、俺は気にすることなく開けられた道を軽い足取りで進む。
まぁ、ただの女装ではない。
魔法で完全に性別を変身させている。胸は下品でない程度にあるし、腰は蠱惑的にくびれ、なんともエロい曲線を描いている。
昔女装した時とは違い、俺は今間違いなくむせ返るような色気がある事だろう!
勿論体だけでなく、顔立ちもちゃんと女にしている。いつもより頬は丸みをおび、目は大きいだろう。鏡見てないから分からないけど…化粧も魔法で少しだけ。──濃い化粧をしなくても俺は美しいのだから無問題!
生徒たちが道を開ける先には、目を見開き俺を見つめるヴォルが居た。
「ヴォル、何か言う事があるんじゃないか?」
うん、声まで女の子だ。
いつもより高く、すっと耳に馴染む声に近くにいた生徒は耳を抑えその場に倒れた。──「祝福の鐘の音を聞いた」
「…──綺麗だ」
「いやいや、当たり前だろ?…そうじゃなくてさ」
ぽつりと、思わず溢れたようなヴォルの言葉に、笑う。綺麗に決まってるだろ!
俺は苦笑し手を差し出した。
ヴォルはそれが何を意味するのかようやく察すると手に持っていたグラスを、ヴォルの隣で顔を真っ赤にして呆然としているエイブリーに押し付けて俺の前に近づいた。
「
ヴォルはすっと膝をつき、俺の白く、いつもより華奢な手を取ると手の甲にそっと口付けを落とす。
「
俺が笑顔で答えるとヴォルは俺の手を引き、腰に手を回し舞台へ上がった。
俺はちらりと壇上の合奏団に目配せをする──と、はっとしたような表情になった彼らは直ぐに楽器を持ち直し、美しいワルツを奏でた。
その魔法が込められた音楽に引き寄せられるように、何組ものカップル達も俺たちに続いて舞台へ上がり楽しげに音に乗る。
「女性役の踊りなんていつ学んだの?」
「ん?ああ、ミネルバに教えてもらったんだ」
何とか躓くことも、ヴォルの足を踏むことも無く、美しい曲──何故か、気分が昂揚する、多分そういう魔法が込められているんだろう──に合わせ踊りながら答える。
うん、ワルツなら完璧だ!これだけしか踊れないけど。
「…僕と踊る為に?」
「折角のダンスパーティだ、花を添えるのは俺の役目だろ?」
いつもは身長がさほど変わらないが、女体になった俺は頭ひとつ分はヴォルより低く、ヒールを履いていても見上げる形になってしまう。まぁ、あまりデカすぎたら上手く踊れなかったし丁度いい身長差だろう。
「…そう」
「ま、俺も踊るならヴォルがよかったし」
「…ふーん」
素気ない返事だったが、俺にはわかる。ヴォルは超絶ご機嫌である。
まぁこの音を聞いて、世界一の美女となった俺と踊れて上機嫌にならない人間など居るわけがない!
一曲踊り終えた俺は、少し息を弾ませながらやりきった達成感をじんわりと噛み締めてた。ミネルバどこかで見てるかな?ミネルバ──いや、マクゴガナル先生のおかげで俺、完璧に踊れましたよ!
「──少し熱いね、向こうに行こう」
熱いというのは体感的な温度なのか、それとも生徒たちの無数の熱視線なのか。
ヴォルは俺の手を引き、舞台から降りると──ちゃんとエスコートされてしまい、何だか変にこそばゆい──生徒たちの視線から逃れる為に大広間の端へ移動した。
暫くちらちらと頬を染めながら何人もが俺を見ていたが、新しい曲が奏でられるとすぐにそちらに意識を向け、自分のパートナーと踊り出す。音楽は何にも勝る素晴らしい魔法じゃ!──なーんて。
「ノア」
「何──」
何だ。と、ヴォルを見上げたら、ヴォルの濃い灰色の目が俺の視界を埋め尽くしていて。
ぎりぎり口ではない頬あたりから小さなリップ音が響く。
……な、何しやがったこいつ…。
「…何…だよ」
「ダンスのお礼にこうするんだよ」
「へー、知らなかった」
まぁ外国は割と仲良い人にキスするっていうし?うん、口じゃなかったしギリオッケー?
なんか遠くでそのシーンをばっちり見た女の子たちが口を抑えて目を輝かせているけど、いいのか?
その後、俺は杖を振り元の姿に戻し服も変化させて──残念そうな声と、色男中の色男の俺に黄色い悲鳴が上がった──ダンスを踊る人たちを見ながら豪華な料理を食べた。立食パーティー?って言うんだっけ?
「あ、ヴォル、ちょっとまってて!」
ダンスが一段落ついたのか、合奏団は今までとは違う控えめな曲をバックミュージックとして大広間に響かせていた。生徒たちが思い思いの場所で談笑し食事や飲み物を取る中、見覚えのある後ろ姿を見つけ駆け寄った。
「ミネルバ!マートル!」
「ノア様!」
「ノアさん!」
ぱっと振り向いたミネルバとマートルは頬を真っ赤に染めながら俺を見てちょっと残念そうに肩をすくめる。
「ノアさん、凄く──凄く美しかったです…私、初めてです、人を見て震えたのは…」
「ノア様はやはり女神様だったのですね…!本当の姿に少しでも戻れて良かったです!」
「うんうん、ありがとな」
ミネルバの言葉は率直な賛辞だったが、マートルのはかなりずれていた。まぁ気にしないでおこう。マートルは俺が女だと未だに信じてるっぽいし。
「ダンス、失敗しないでできたよ、ミネルバのおかげだ!」
「ノアさんのお力添えが出来て、光栄の限りです」
「ミネルバも、ダンス楽しめた?」
「えっ…あ、はい…まぁ…」
「ミネルバったら、顔真っ赤にして踊ってたんですよ」
「マートル!」
にやにやと笑いながら茶化されたミネルバは恥ずかしそうに怒りながらマートルの名を呼んだが、マートルはにやにや笑いを止めなかった。流石にやつきのマートルである。
「ははっ!2人とも楽しめよ?」
「ええ、ノアさんも」
「ノア様も楽しんでくださいね!」
手を振りその場から去ろうとしたが、俺は途中で振り返りマートルとミネルバにもう一度向き合った。2人はきょとん、とした目で俺を見上げ首を傾げる。
「ミネルバ、マートル。ドレス似合ってるぜ?」
「ノアさんには負けますよ!」
「ノア様には負けます!」
本当に可愛らしい格好をしている2人を誉めたつもりが、逆に真顔で言われてしまった。
うーん。2人からの愛が重い!
途中で飲み物を2つ取り、俺は1人壁に背を預けるヴォルの元に向かった。
その後、俺はもうヴォルとは踊らなかったし、ヴォルも誰とも踊らなかった。
なかなかこういうダンスパーティも、悪いものじゃないな。ワルツ以外も踊れるようになろうかな。
「次踊る機会があったらヴォルが女性役な」
「絶対嫌だ」
「そこはオッケーしろよ」
「──ははっ!」
即座にきっぱりと却下したヴォルの言葉に脱力すれば、ヴォルは楽しげにくすくすと──珍しく、声を出して笑った。
いつも澄ましたような顔をして大人びた表情のヴォルだが、その笑顔はいつもの微笑みよりもかなり、子どもっぽく見えた。──レアすぎる。
感想にあった歩くインペリオを少し言い換えて使わせていただきました、ありがとうございます!
そして英語は誘い方を調べたのですが、全く自信が無いので間違っていてもスルーしてくださると嬉しいです…。