よく話題沸騰の人気ドラマが最終回に近付くにつれ○○ショックとか言う言葉が流行ると思う。
今、間違いなくホグワーツはとあるショックに包み込まれている、そう──ノア・ショックだ。
生徒たちは俺が居なくなるホグワーツに耐えられず泣き出す者や心を病む者が続出した。勉強する気が起こらず、試験前だというのに皆ぐったりとしている。うーん、今年は間違いなくホグワーツ史上最もテストの点が悪くなるだろうな!
もうすぐ卒業だ。
N.E.W.Tテストを終えた俺たち7年生は9月を迎えれば、新たな世界に旅立っていくのだ。
就職が思うようにいかない生徒たちは嘆き焦っているようだが、それも僅かであり殆どの生徒たちは既に進路先を決めている。
ヴォルは勿論成績優秀でオール
因みに俺の成績は変身術、呪文学は
俺はこのままモデルを続け、芸能活動をさらに活性化させるつもりだ。メイソンの願いであるマグル界での進出も、既にイギリスやフランス、アメリカで有名な事務所に売り込み同時契約をしている。
ま、売り込みなんてしなくても俺の姿を見せれば皆ぽーっとした顔になって彼方から契約を持ちかけた、その事もありかなり俺にとって優位な契約が結べただろう。
「ヴォルは卒業したら、どこで暮らすんだ?」
「アパートを借りるつもり、孤児院には居たくないしね」
「そうか、場所教えてくれよ。遊びに行くから」
「…ノアはどうするの?」
「んー、家を買ってもいいんだけど、帰れそうにないし。…ホテル暮らしかな」
「……ま、そうだよね」
ヴォルは俺を見て小さくため息を吐き、残念そうに目を伏せた。ん?…ああ、そういえば何年か前に卒業したら家買って一緒に暮らす?とか言ったな。冗談のつもりだったけど、期待してたのか?
「ヴォル、今でも俺と一緒に暮らしたいのか?」
「…別に。金の面で助かるなって思っただけ」
家賃も馬鹿に出来ないし。と貧しいヴォルは呟く。確かになぁ、暫く働いてある程度の給料手に入れるまではなかなか厳しい生活になるだろう。魔法省に勤めれば給料良いのに。
「ふーん?じゃあ家買うよ。一緒に暮らそうぜ。どんな家がいい?」
「…本当に?」
「俺は殆ど帰らないと思うけどな。好きに使って良いし」
俺は机の引き出しから魔法カタログを取り出し「家」と呟き本を撫でる。するとぱらぱらと本は勝手に捲れ、売り出し中の家が載っている箇所で止まった。通販で家まで買えるとか便利だなぁ。まぁ、ここでできるのは仮契約で、ちゃんと購入する為には店頭に行かないといけないけど。
「…守りが強い家がいいな」
「そうだなぁ」
俺はヴォルのベッドに座り、隣にいるヴォルに家のページを見せる。ちゃっかり要望を出すあたり、こいつはじめからそのつもりだったな…。
「んー、魔法飛行ネットワークはいるだろ。んでー…」
「…魔法飛行ネットワークはいらないんじゃない?君の熱烈なファンが来ることになるよ。…書斎が欲しい。地下牢も」
「確かにそうかも。──書斎はともかく、地下牢って普通の家にいらねーだろ…」
「そう?便利だと思うけど」
不思議そうに首を傾げるヴォルだが、その顔をするのは俺だと思うぞ。
地下牢は兎も角、隠し部屋は欲しいな。魔法の家っぽくてワクワクするし!
「家の守りは俺がかけるよ、それが一番最強だからな!…あ、俺が居ないからって家をヤリ部屋にすんなよ?」
「しないよ。誰も入れない」
「いや、別に友達…知人くらい招待してもいいけど」
ヴォルはカタログをペラペラと捲る、んー、あんまり、これだ!という家は無いな。
「…僕、本当に今はお金無いけど。ちゃんと払うから」
「俺は有り余ってるからいいけどなぁ…。…んじゃ。出世払いで。35年ローンにしてやるよ」
確かに、全額払われた家では落ち着かないのかもしれないな。ヴォルは俺と対等になりたいような、そんな気もするし。…その気持ちもわからないことも無い。
住む場所はこの辺りが良いとか、家の間取りはこんなのが良い、とか決めていると何だか家庭を持ったような奇妙な気持ちになるな。
…俺はこの世界で誰かと結婚したり、子どもをもったり、出来るのだろうか…俺並みの美貌を持つ人と早く運命的な出逢いがしたい…!
「ま、ある程度の家と敷地を買って適当に改造しようぜ?隠し部屋も作りたいしな」
「そうだね」
「じゃあ場所は──ここでいいか?卒業したら、すぐに契約結んで…ちょっとメイソンに事情説明して1週間くらい休み取るよ」
ヴォルが頷いたのを見て、羽ペンで一つの家に丸をつける。途端にその家はぶるりと震え『発売中』から『仮契約済み』と家の謳い文句が変わった。
よし、後は指定の口座に契約金突っ込んだら大丈夫だな。
カタログ本を閉じて机の上にぽんと投げる。あー食器とか家具とかも買わなきゃなぁ。…ヴォル、35年ローンで大丈夫なのか?こいつ金ないくせに中々高級品が好きだからなぁ。──ヴォル、破産するんじゃね?闇の帝王が自己破産するとか笑えないぞ?
「…僕と暮らすことは内緒にした方がいいんじゃない?トップモデルが誰かと暮らしてるなんて事が漏れたら…──スキャンダルは厳禁なんでしょ?」
「あー…そうか?」
「そうだよ」
ヴォルは真剣な顔で頷く。
女性と暮らすなら兎も角、相手は男のヴォルだ。誰も気にしないとは思うが──いや、まぁ俺は男女問わず魅力するからな、…残念ながら女パートナーが居ない俺は実は同性愛者じゃ無いのかという噂があるのは知ってるし。
「じゃ、内緒にするよ」
俺がそういえばヴォルは満足げに目を細め薄く笑う。それを見ながら俺は立ち上がりぐっと背を伸ばす。
「俺、ちょっと校長に呼ばれてるんだ。行ってくる」
「行ってらっしゃい」
「あ、カタログで家具を探しといてくれよ」
「…どんなのでもいい?」
「エグい呪いがかかってないなら良いさ」
手を振りながらそう答え、俺は校長室に向かった。うーん、何の用事だろう。俺のサインでも欲しいのかな?
校長室に入れば、ディペッド校長が優しい目で俺を迎え入れた。校長室、やっぱダンブルドアが校長の時とは違うなー。
「やぁ、ノア。さあ…座りなさい」
「はーい」
校長はにこりと微笑み机の上にティーセットを出し俺を歓迎した。向かい合うように座った校長は、俺が温かい紅茶を飲んだのを見て嬉しそうに目を細める。
「ノア、君はこのまま芸能活動を続ける気かね?」
「はい、後…そうですね、3年から5年…程度ですが」
「おや、やめてしまうのかい?勿体ない…実は私の妻もノアの大ファンでね──ここにサインを貰えるかな?」
「勿論ですよ!」
まじでサインだったのか。
ファンサービス旺盛な俺はすぐに頷き、出された俺の最新写真集を受け取り、くるりと手を回しペンを出し慣れた手つきでサインをした。
「ありがとう。何よりも喜ぶだろう」
「ファンに支えられて俺は成り立ってますからねー」
これくらいいつでも良いですよ、と言えば校長は朗らかに笑った。もうかなりの老年に見えるが、その目は輝いていて優しい。校長になるには目の輝きが必要なのか?
「君の仕事が落ち着いたら…つまり、芸能活動を辞めてしまったら。…ホグワーツの教師になるつもりはないかね?」
「え?──い、良いんですか?やった!実は俺ここの教師になりたいなー!って思ってたんです!」
「そうか、それならちょうどいい…私ももう歳だ。後はゆっくり余生を妻と過ごしたいと思っていてね…。ノア、これは…誰にもまだ内密にして欲しいのだが、次期校長にはダンブルドアを推薦するつもりだ。変身術の教員に空きが出たら…君にその教師になって欲しい。君以上の適任は居ないからね」
校長はサプライズプレゼントを披露するように楽しげに俺に言う。変身術か!それなら大丈夫だ!──あれ、ミネルバっていつ変身術の教師になったんだろ。…親世代では既に教師だったよな?…ま。いいか。ミネルバより俺の方が才能あるのは間違いないし。
「ありがとうございます、必ず連絡します!」
「楽しみに待っているよ」
その後ほのぼのとしたお茶会をした後、俺は浮き足立ちながら自室に戻った。
よし!これで、これで親世代を見る事ができる!
卒業した後、俺の未来は安定だな!
そして、ついに俺とヴォルはホグワーツを卒業した。
ホグワーツ中の生徒が泣き俺の名前を叫ぶ光景は中々に壮絶な光景だった。「いかないでー!」「いやぁ!」「ノア様ー!」沢山の悲痛な嘆きの声に手を振り「またな!」と言えば皆泣きながらもちぎれそうなくらいに手を振っていた。
ホグワーツ特急に乗り、流れる景色を見つめる。
もうこの汽車に乗ることは無い。──少なくとも数年は。
ヴォルもまた車窓を眺め、遠くなっていくホグワーツ城を見つめていた。
7年間…色々あったなぁ。楽しかったし、面白かった、中にはヒヤリとした出来事もあったけど──うん、楽しかったな!
外の景色を見ていたヴォルは、ちらりと俺を見つめる。
「ノア、僕らはもう──子どもじゃない、大人だ。何だって出来る」
「そうだな。とりあえず家買おうぜ!」
「…。…そうだね」
ヴォルは何かいいたそうに口を開いたが何も言わずにまた窓の外を見た。
何とか休みもとったし、後は家買って、家具を揃えて──うん、やる事が多い。
「これからもよろしくな、ヴォル」
「…うん、よろしくノア」
改めて──ホグワーツに来た時のように、手を差し出せば、ヴォルはあの時と同じように微笑み、俺の手を握った。