チート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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03 俺の美貌に酔いな!

 

 

「ダイコン横丁!」

「ダイアゴン横丁だよ」

 

 

俺とヴォルは早速ダイコン横丁──もとい、ダイアゴン横丁を訪れた。沢山の魔法使いや魔女、見慣れない生き物、摩訶不思議な道具やお菓子の数々、そしてなにより会話がもう俺たちのいた世界とは違う。

奥様達が井戸端会議していてもその話題は野菜の値上げに対する苦言では無く、クビナシイモリの肝臓の値上がりについての苦言だった。その肝臓どうすんの?食べるの??

 

 

 

「何から買う?」

「杖だ、行こう」

 

 

ヴォルも流石にこの世界に浮き足立っているようでどこか楽しげだ。うん、わかるよ!今までの退屈で窮屈な世界とは全く違うもんな!

 

 

 

「杖って、場所知ってるのか?」

「知らない、けど…歩いてれば見つかるでしょ」

 

 

ヴォルにしては珍しい割と適当な返事だった。いつもなによりも簡潔に!無駄なんて大嫌い!なヴォルだったが、流石にこの場においてはウィンドウショッピングを楽しみたいのかもしれない。

 

 

「適当に歩いてもいいけど、俺の美貌に犯罪者が出ないうちにしような?」

 

 

そう言うと俺はちらりと俺を見てぽかんと口を開け真っ赤に顔を染めている男に向かって微笑んだ。男は「ヴィーラ…」と呆然と呟くと壁に激突した。

後ろを振り返れば死屍累々、俺の歩いた痕跡に残るのは鼻血だけだ──。カッコ悪いな。

 

ヴォルもチラリと後ろを振り返りため息をついた。

ヴォルは幼い頃から俺を知っていてある程度俺の美貌に免疫が出来ている、まぁヴォル本人が人並み外れた美貌を持っているし、美形には慣れたものなのだろう。

だが免疫のない人達は違う、俺を見るだけで茹蛸のように顔を赤くする者、興奮しすぎて鼻血を出す者、恋人らしき人に引っ叩かれる者、「お、お、お嬢ちゃんイイ魔法を教えてあげようはあはあ」と言う者──有象無象が俺に 一撃必殺(ノックアウト)されていた。

 

俺の美貌が素晴らしすぎてもはやアズカバン行き!とならないためにも早く買い物をすませてしまいたい。シャレにならん!

 

 

「…早く行こうか、…ほら、あの看板は杖じゃない?」

 

 

ヴォルが俺の手を握る。その瞬間周りの有象無象はヴォルを睨んだが、ヴォルの顔の良さにすごすごと退散した。

そんな人達にもにっこりと俺は微笑みかけ投げキッスをしてみれば少なく見積もっても10人が胸を押さえてその場に倒れた。

 

 

「やっべ、俺ってば死の魔法使わなくても人を殺したかも」

「…そんな魔法あるの?」

「あるだろ、多分」

 

 

うっかりしてた。アブラカタブラ──あれ?なんか違う?──の事をぽつりと揶揄ればヴォルは目敏く反応した、こういう力!って感じの魔法が大好きになる片鱗が見え隠れしてるぞ、目を輝かすな。

 

 

そんな事を話しながら到着したのはオリバンダーの杖屋さん。カラン、と小気味いい音を立てて扉を潜れば見渡す限りの杖の山。

 

 

「壮・観!」

「…まさか、これ全部…杖…?」

 

ヴォルはぐるりと店内を見渡した。まぁそう言いたくなる気持ちもわかる。天井まである高い棚全てに杖の箱が収められていて店内の薄暗い奥までそれは続いている。埃を被り蜘蛛の巣が張っているものもある…売り物なんだから綺麗にしてあげなよ…杖ちゃん可哀想…。

 

 

「いらっしゃいませ」

「うぉうびびった!!」

 

 

いきなり暗がりから声がした。

店の奥からゆらりとふたつの眼が輝きながら現れる。えーと。

 

 

「守護霊はバジリスクですか?」

「はは、面白いお嬢ちゃんだね」

 

 

オリバンダーまで俺の性別を間違えている!

まぁ杖選びに性別は関係無いだろうからあえてその間違いを訂正する事はない。女の子のように可愛い俺が悪い。

 

 

「こんにちは!杖を買いにきました!」

「よしよし…さて、どちらからがいいかな?」

 

 

オリバンダーは小さな魔法使いと魔女かっこ仮かっことじを優しい目で見る。ヴォルは直ぐに「僕からだ」と言うと胸を張り一歩前に進み出た。

 

 

「よろしい。君の名前は?」

「トム・マールヴォロ・リドル」

「それではリドルさん、どっちが杖腕かな?」

 

 

こうしてヴォルの杖選びが始まった。

オリバンダーは小さなメジャーを浮遊させながらヴォルの身体の色々な部分を測っていく。鼻の高さや腕の長さ、股下の長さ…。

 

 

「脚なっが!!」

 

 

つい率直な感想を言ってしまうくらいそのメジャーが止まったメモリの数字はとんでもないものだった。間違いない、ヴォルは闇の帝王笑になるんじゃなくてモデルになった方がいい。この美貌が将来蛇みたいになるなんてまぁ…悲しすぎる…世界の損失だ、冒涜だ!

 

 

「よし、ではまず──サンザシの木にドラゴンの心臓の琴線、34センチ、しなりやすく強靭。さあ、どうぞ」

「…あぁ」

 

 

オリバンダーは棚から一つの箱を取り出すとそっと蓋を開け、中から黒い杖を取り出した。ヴォルはそれをしげしげと見つめる。その目は不思議と輝いていて、将来闇に染まる、といっても今はまだ11歳の子どもだ、きっと魔法使いの証…特別な杖が嬉しいのだろうな。可愛いやつめ!

 

 

ヴォルは杖をしっかりと持ち軽く振ってみた。途端にガシャン!と机の上に置いてあった花瓶が粉砕する。それを見てヴォルは満足そうだったのは、もともと破壊的な性格をしているからだろう。──でも、これは正解の印ではないんだよなぁ。喜んでるところ悪いけど。

 

 

「いかんいかん、次はこれじゃ。──カシノキにユニコーンの毛、32センチ、良質で柔らかい」

「……」

 

 

ヴォルがまたも杖を振った。

今度は店の窓が粉砕破壊された。ヴォルは「これはいいな」と納得したように頷いていたけれど、いやいやどう考えてもダメだろう。ほらオリバンダーも「いかんいかん」って言ってる。

 

 

「次はこれじゃ。イチイの木に不死鳥の尾羽、34センチ、とても強力」

 

 

さっきのでも良かったのに、と言いたそうなヴォルだったが杖選びはやはり専門家の意見を聞くのが賢いのだと、ちゃんとわかっているようで文句も言わず杖を受け取るとぱっと振り下ろす。

 

今度は何も割れなかった。その代わりに杖先から黒と銀色の光が溢れて店の中に広がる。幻想的、とも言える光景にヴォルは少し目を見開いた。今までの反応と全く違う事に気がついたのだろう。…これだ、と思ったのかもしれない。

 

 

「おおー綺麗だなあ」

「へぇ…これが正解なんだ」

「ブラボー!リドルさんの杖はこれで決まりですな。さあ次はお嬢ちゃん、前へ来なさい」

「よし!」

 

 

ヴォルは自分の杖をしげしげと見ながら俺とその場所を交代した。ヴォルと同じようにオリバンダーは俺の身体の至る所を測ると、店の奥に杖を取りに行く。

 

 

「良かったな、杖が決まって!」

「うん…これで、色んな魔法を…使えるようになるんだ…」

 

 

その声はしみじみとした嬉しさが滲み出ていた。早く色々な魔法を学び、試してみたくて仕方がないのだろう。──そういや、マグル界で魔法使ったら退学になるのって知ってるのかな?…いや、まだ入学してないから今は使ってもギリセーフ?杖なしで俺もヴォルも魔法を使っていたけどアズカバン送りにはならなかったもんなぁ…そのあたり謎だ。

 

 

「さてさてお嬢ちゃん、名前は?」

「ノア・ゾグラフ」

「おお、君に相応しい美しい名前じゃ…ふむ、──さあ、ゾグラフさん。ナナカマドの木にドラゴンの心臓の琴線、32センチ、柔らかい」

「わーい!」

 

 

笑顔で受け取りびゅん!と振り上げた。つい心の中でウィンガーディアム・レビオーサ!なんて唱えちゃったりし──て──あれれ?

 

 

「何という事でしょう」

 

 

これぞ、匠の技かもしれない。

店中の床の上にあったものが浮遊した。勿論俺やヴォル、オリバンダーも例外ではなく床上3センチのところに浮遊しているし、杖を納めている棚は降り積もった埃を吐き出しながら浮いた。

 

 

「い、いかんいかん!ちょ、ちょっとまっとれ!」

 

 

オリバンダーは器用に空をかき、平泳ぎしながらスイスイと店の奥に進む。そ、そのまま進むんだ?

 

 

「ノア、おろしてよ」

「無理無理、杖が言う事聞かねーもん」

「もん、じゃないよ」

 

 

ふわふわと浮いているヴォルは嫌そうにいうが、そうは言っても何度杖を振り下ろしても俺たち全てが浮遊したままだった。

しばらくして今度はバタフライでオリバンダーが戻ってくる。なかなかバイタリティ溢れた老人だな!

 

 

「はぁはぁ…よ、よし、次はこれじゃ。ギンヨウボタイジュ、ヒニクツの尾羽。30センチ、バネがある」

「──ほいっとな!」

 

 

受け取ったそれで、また杖を振るった。今度は心の中でついついルーモス!なんて唱えちゃったり。だってほら、ユニバでも使えたからね?

 

 

「まっ眩し!!」

「う、うむ、これもいかん!」

 

 

目が潰れる!!杖先から強烈な光が溢れてオリバンダーのちょっと薄い頭部に激突し、そのちょっと薄い頭部が信じられないほど光り輝き出した。ハゲてないのに!ハゲてないのに!!

 

頭だけ電球になってしまったオリバンダーは頭を手で抑えながら──それでも光は溢れていた──すぐに引っ込んだ。暫くガタガタと音が響き、そしてまた現れた。手には5個くらい箱を持っている。…これ全部試すの?

 

 

 

 

結局そのあと18本の杖を試したが、俺に合う杖は一向に見つからない。もう店の中はここだけ戦争地帯かというほど荒れ果て、ヴォルなんて5本目あたりから店から出て行きさっさと一人退散してしまった。酷すぎる!冷酷すぎる!!──まぁ俺の5本目の魔法が天井に黒々とした雷雲を作ったせいだろう。うん。

 

 

何故生きているのかわからないが、雷に撃たれ黒焦げになったオリバンダーは身体中からぷすぷすと煙と焦げの臭いを漂わせながら目だけは爛々と輝き楽しげに俺に杖を渡し続けた。

 

 

「心配なさるな!必ずぴったりの杖を見つけて見せる!…さあ次はとっておき、これじゃ!」

「おおー…お?…真っ白」

「美しかろう?もう見た目に全フリした杖じゃが、君にピッタリじゃ。ヤマナラシの木、水仙の花、34センチ、良質でしなりが良い」

 

 

 

19本目の杖は今まで見た杖の中で最も美しく、俺が持つに相応しい!象牙のように滑らかで、持ってみると不思議と手に馴染んだ。

空を横切るように杖を振れば、杖先から銀色の光が溢れ戦場地だった店内をダイアモンドダストのように舞う。

 

 

「ブラボー!これじゃ!これで決まりじゃ!──あー良かった」

「心の声が漏れてますよ!」

「…やっと終わった?」

 

 

カラン、とベルの音が鳴り、何やら大きな袋を持ったヴォルが戻ってきた。俺が苦戦してる間にショッピングを満喫したなこいつ!!

 

 

「決まりましたよ、お待たせしましたな…」

 

 

やれやれ、と言いたげにオリバンダーは肩をぐるぐると回しぼきぼき音を響かせる。俺は自分のものになった杖をしっかりと握って「よろしく!」と小さく杖に語りかけた。ヴォルは何やってるんだと言いたげな目だったが、オリバンダーは嬉しそうにうんうんと深く頷く。杖が、主人を選ぶらしいしな!俺みたいなパーフェクトヒューマンを選ぶなんてこの杖は中々目の付け所がいいな!

 

 

俺の分の資金も持っていたヴォルがオリバンダーが言った金額をきちんと払い。俺たちはやっと杖選びを完了した。

 

 

店から出て、大荷物のヴォルを見上げその袋をジロジロと見る。…なんだ、お菓子でも買ったのかと思ったけど、来年の教科書か。──あれ?一人分しかなく無い?

 

 

「なんだ、自分の分しか買わなかったのか?ケチな野郎だなぁ俺の分も買ってくれれば良かったのに、金はあるだろ?」

「それが、無いんだよね。あの先生は古本で買わなきゃならないって言ってたでしょ」

「──俺が古本か!」

「僕、他人のお下がりだなんて絶対に嫌だから」

 

 

ぷい、とヴォルはそっぽを向き絶対に渡してなるものかとその袋を抱きしめた。くそっ、まぁわかってはいたさ!

本屋へ向かいながら、なんとか新品を買う事は出来ないかと考える。俺だって古本は嫌だ!書き込みだけならまだしも、知らんやつの体液がついてたり毛が挟まってたら俺は憤死する!

 

 

「ちっ…仕方ない。最終手段だ。本屋に行くぞ、どっちだ?」

「え?あっちだけど。…古本屋は反対方向だよ」

 

 

二つの場所を順に指し示すヴォルに、俺は「チッ、チッ、チッ」とセブルスせんせーよろしく指を振った。

 

 

「──イケメンなだけでは、どうにもならんらしい」

「はぁ?」

「トム・リドル。1つ聞こう、俺の美貌は世界ランク何番目かな?」

「1番目じゃ無い?ぶっちぎりで」

「さよう。──トム・リドル。人は美しいものに近づく為に…古来から贄を捧げてきたのだよ…そう、例えば金とか金とか金とか」

 

 

にやりと笑えば、ヴォルは胡散臭そうな目で俺を見るだけだったが、そんな目を気にする事なく俺は颯爽と本屋の戸を開けた。

 

 

 

 

 

 

「ほーら俺の美貌にひれ伏しな!どうだ!新品の教科書ゲットだぜ!」

「君って……品性を何処で無くしてきたんだい?」

 

 

ジャジャーンと数々の新品の教科書を見せびらかす。うん、リストに書いてあった教科書は無事全て手に入れることが出来た。

どうやったって?簡単だ、ちょっと店員に近づいて「私、パパから貰ったお金を新しいスケスケでひらひらのパンティを買うのにつかっちゃったの…どうしましょう、新しい教科書こんなに必要なのに…困ったわ…」と潤んだ目で言えばイチコロだった。

店員は俺の下半身を食い入るように見つめその鼻下を伸ばしリストにある教科書を全てに持ってきた。

「これを美しい君にプレゼントするよ!」だなんて言ってくれたものだから有り難く受け取り「ありがとう!チュッ♡」と投げキッスを送ってサービスサービスゥ!とばかりにちらりと服を上げてヘソを見せれば、店員は投げキッスを必死に掴んで唇に当て、恍惚の表情で前屈みになっていた。

うん、正常な反応でよろしい!

 

 

 

 

「よーし、後は制服だな!…まさか、制服の金も使ったか?」

「…いや、多分…大丈夫だと思う」

 

 

ヴォルは袋の中に入っている金貨を確認して答える。まぁ、制服分は流石に残していると思っていた。教科書が古本よりも、制服が古い方が辛い。何より美しい俺に合わない!

 

俺たちは洋装店へ向かい、新しい制服一式を購入した。なんとなく、中学生時代の制服採寸を思い出した。あー、懐かしい。

 

 

 

「金はまだ余ってる?」

「…そうだね、少しは」

 

 

かなり萎んでしまった袋を揺らし、小気味いい音を立てながらヴォルが言った。ふむ、もう必要なものは買ったし、ここらで少し休憩でもしたい。ずっと歩きっぱ立っぱで俺のしなやかな細い脚が筋肉質になってしまうのは避けなければならない。

 

 

「あそこ、アイスクリーム屋だって!行こう行こう!」

「ま、…そうだね。ちょっと魔法界の食べ物って…気になるし」

 

 

 

俺の提案にヴォルも頷く。

いや、アイスは普通だろ。ゲロ味とか耳糞味とかのアイスなんて食べたく無いけど?

 

ヴォルは空いている手で俺の手を握る。

──いつもより、その手は少し暖かく感じた。

ちらりと見上げれば、その目は楽しそうに細められダイアゴン横丁を眺めている。色んなものを見る目はキラキラと少年らしく輝き、喜びと興奮が滲んでいた。

 

こうしてれば、まじで普通の美少年だよな。あと数年したら闇にどっぷり沼って鼻を無くした禿頭になるなんて誰が想像出来たでしょうか。

これこそ衝撃のビフォーアフター!

 

 

 

 

 

 

 

 

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