俺は世界最強の魔法使いであり、世界最高のハイパートップモデルとなった。
世界を股にかけた生活も、もうすぐ3年目となる。俺は21歳になったが、俺の見た目は自己ベストを更新し続け成長するたびに美しさを増している。それに比例するかのように、俺の過激なファンも増えているのだが。まぁ、トップモデルの定めだといえるだろう。
因みに、ヴォルは少し前にボージン・アンド・バークスの店を辞めた。かなり引き止められたらしいが、見聞を広める為にと強く言い今はニート…無職だ。
ヴォルはハッフルパフのカップは入手していない。手に入れたい気持ちはあるが、それ程固執しているわけでも無さそうだ。今は他にやる事があるから、とか言ってたな。無職なのに。
「仕事、辞めてどうするんだ?」
「次の就職先は決めてる」
「へ?そうなのか?」
ソファに座り、ウイスキーを飲んでいたヴォルは軽く答えた。へえ、いつの間に…ってか、これで未来は確実に変わったな。…主要キャラが生まれない世界になったらどうしよう…ちょ、ちょっとそれは困る…ヴォルが平穏に過ごせるのは、嬉しいけど。
「うん、ノアの事務所だ」
にっこりと、何かを間違いなく企んでいる顔でヴォルは笑った。
「え?モデルすんの?まぁヴォルの顔面なら問題無さそうだけど」
「しないよ。見せ物になるなんて嫌だし」
「見せ物って…」
見せ物って!一応俺の仕事なんですけど?
まぁ、ヴォルはモデルなんてしそうに無いな、とは思っていた。絶対人気出ると思うけど。
「週明けからノアの付き人になる。…聞いてない?」
「は、…はあぁ?聞いてねーわ!…い、いや、メイソンの代わりに人を雇うとは…言ってたけど」
メイソンが仕事を辞めて故郷に帰ることになったと聞いたのは数日前だ。両親共に病気で寝たきりになってしまったらしい。兄弟がいないメイソンは、かなり悩んだが──高齢の両親の側にいる事を決めた。
メイソンの両親はマグルだ…これから、気軽に会うことも出来なくなる、かもしれないな。
正直、メイソンとずっと2人でやってきたから、めちゃくちゃ…残念だけど。こればっかりは仕方ないからなぁ。
メイソンは気丈に「僕の夢は叶えられたから、良いんだよ」と笑ってたけど。──どう見ても泣き腫らした後の目だったし。
「不服?」
「いや、嬉しいよ!普通に、めちゃくちゃ!」
今までメイソン1人で全てやっていたのも、俺の付き人になる人は俺に完全に魅了されない事が絶対条件だ、メイソンはまぁ、俺に心酔しているがオフとオンの区別はついている。何より、俺と
過去に何人か雇った事はある、だがどの人も俺に魅惑の呪文をかけようとしたり、愛の妙薬入りの飲み物を飲ませようとした。そういう理由で、メイソンが俺のマネージャー兼付き人として今まで頑張ってくれていたのだ。
そりゃ、ヴォルなら安全だけど。
「なら、いいでしょ」
「うーん。いいけど、次の就職先探しとけよ?俺、後1.2年で辞めるつもりだ。ホグワーツの教師になる」
「…それ、本気だったんだ」
「まぁな」
「…ノアが辞める時に、僕ももう一度志願しようかな」
若すぎるからって断られたけど。今なら大丈夫だろうし。とヴォルは気軽にいう。
うーん、確かに。確かに今ヴォルはギリギリ闇落ちしてない…いや、何人か殺したか。
それさえバレなければこのままなら教員になれるかも?まぁ、それを決めるのは俺じゃ無いからなんとも言えないけど。まだダンブルドア先生は校長では無いって聞いたし。ダンブルドア先生が校長になる前ならワンチャンあるんじゃね?
「でも…いいのか?俺、マグル界にも行くけど」
「嫌だけど。…我慢するさ」
…いや、待てよ。
マグル界──マグルの印象最悪のヴォルが、マグルの知り合いとか出来て、意外と悪い奴らじゃ無いって思えば…闇落ちルート完全回避じゃね?
今、ヴォルって何考えてるんだろ。勿論闇の魔術は好きみたいだし、エイブリー達との交友も途絶えてないし。…かと言って魔法界の征服と混血の追放をあんまり考えてる雰囲気でもないしなぁ。
そもそも、混血の追放って、めちゃくちゃブーメランじゃね?俺なんて両親マグルだぞ。俺も追放する気か?
「じゃあ…まぁ、よろしく」
「こちらこそ」
「…仕事場でも会うって変な感じしそうだな…。それにしても、メイソン…両親共に急に倒れるって不運だよなぁ」
「本当にね」
ヴォルは薄く笑ったまま丸い氷が溶けて少し色が薄くなったいるウイスキーを飲んだ。
…俺も飲もうかな。
「チョコってまだあった?」
「あるよ」
ヴォルが手を振れば戸棚が開き魔法界で有名なチョコ専門店のものがふわりと漂い机の上に乗った。俺の分の大きな氷入りグラスも少し後からふわふわと現れる。
珍しいな、このチョコ高いし、何か良いことでもあったのか?
就職決まった祝いに買ったのかな、…可愛いところもあるじゃん!
「ヴォルの脱無職に乾杯!」
「…他に言い方無いの」
「ヴォルの再就職に乾杯!」
「……ま、いいか。…乾杯」
ウイスキーの入ったグラスを合わせれば小気味いい音が小さく響いた。
口の中にチョコを入れてじんわりと溶かし、甘苦い味を楽しむ。
ウイスキーにはやっぱチョコだなぁ。ナッツ系でもいいけど。
ヴォルも俺も、酒には割と強いほうだし嫌いでは無いため、時間が合えばこうやって一緒に晩酌をする。
一度、限界まで挑戦してみよう!と俺の思いつきで大量のワインやウイスキー、シャンパンを買い込みがばがば飲んでみた。
酔ってるヴォルを見てみたかったが、ヴォルはちっとも顔色を変えず涼しい顔で何本ものワインを空けていた。
俺はというと。どうやらこの体は飲み過ぎると眠くなってしまうようで、ヴォルが酔っ払う前に寝落ちしてしまった。
泣き上戸や笑い上戸になるヴォルを見たかったが、残念ながらヴォルはかなりの酒豪だった。
週明けに俺と一緒に事務所に来たヴォルは、まず初めにデカい倉庫の3つが俺への
「…なにこれ」
「呪いのこもった貢物」
「…こんなに?」
「まぁな、熱烈なファンからの死へのお誘いや、愛の妙薬。同業者からの恨み辛みが込められた呪物。呪いの手紙。顔面崩壊のアイテム。…ま、そんなとこかな」
「…意外と恨まれてるんだ」
「愛と憎悪は紙一重なんだよ、ヴォル君?」
だからこの倉庫のものは触らないほうがいいぜ?と言えば「使えそうな呪具だけもらってもいいかな」なんて楽しげに飄々と言われた。
そうか、メイソンが手に負えられなかったものも、ヴォルなら確かになんとでも出来そうだな。一つ一つ解呪するのも面倒で、今まではある程度溜まったら俺がまとめて消してたけど。
「まー…いいけど、そんな暇無いと思うな。…ほら、俺のスケジュール」
「……ノア、今までよく体調崩さなかったね」
ヴォルは俺が渡した手帳を開き、暫く無言で見ていたが、そのハードスケジュールが信じ難いのか感心と呆れ混じりに呟いた。
「自分に疲労回復魔法かけ続けてるからな」
「…。…ま、いいや。じゃあ行こうか」
「ん、わかった。今日からよろしくな、新人君?」
「馬鹿言ってないで、早く」
仕事モードのヴォルはなかなかにノリが悪かったが、数日間一緒に働けば、やっぱりヴォルってめちゃくちゃ有能だとしみじみと思った。
新人なのにいつの間に仕事を覚えたのか的確なスケジュール調整をし、先方への贈り物も欠かさない、物腰の柔らかく謙虚で仕事が出来て尚且つイケメンのヴォルはすぐに事務所内で信頼された。
メイソンも有能だったけど、やっぱヴォルってすげえな。
まぁ、マグル界の事も一応幼少期に過ごした世界ではあるからなのか、この仕事に就くにあたって学んだのか、何とかなってたし。…マグル界に行く時はいつも嫌そうだったのは、まぁ仕方ないか。
なんでヴォルが俺の付き人になったのか。
はじめは疑問だったが、暫くしてわかった。ヴォルは、俺が撮影してるときにこっそり抜け出して世界各地の魔法を学んでるようだ。…確かに死喰い人引き連れて旅するよりは、安全だし、撮影が終わる前には戻ってるから…まぁ、いいか。