チート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

36 / 76
36 ノアのために

ホグワーツでの研修期間を終えた俺は、来年度からの本採用の為に幾つか書類を持ち帰り家に戻ってきていた。

後は契約書にサインし、それを持っていけば俺は晴れてホグワーツの教師となる。

 

 

「ヴォルはいつディペット校長に言うんだ?」

「この仕事が片付いたら。…だから、くれぐれもよろしくね」

「俺に任せとけって!」

 

 

この仕事、とはマグル界で駄々をこね続けている会社との契約破棄の事だ。契約が切れてないのは後一社だけだ。他の会社は1年間俺が一切現れず目撃もされてない事から流石に諦めたようだ。マグル界でどれだけ俺を探しても、まぁ、見つかることはないから彼らの苦労は身を結ぶ事なく、終わったわけだ。

 

 

「ノア、まだ君にはかなり熱狂的なファンが多い。くれぐれも気をつけて」

「ん?俺は世界最強の魔法使いだぜ?マグルに遅れなんかとると思うか?それに、ヴォルもついてきてくれるんだろ?」

「マグル如きに何かされるとは思ってない。…マグル界でも、魔法使いはいるからね。…まぁ、…確かにノアにそんな心配しなくてもいいか」

 

 

マグルを下に見ているわけではない。

ただ俺は世界最強の魔法使いだ、流石に魔法を知らない彼らに何かされるなんて、あり得ないが、そうか、ヴォルの言葉も最もだな、人混みに紛れて不意打ちで魔法喰らわせられる可能性もあるか。熱狂的で自己中心的で妄想癖のあるファンに、トップアイドルが襲われる事も、まぁ稀にあるし。

 

 

「一応…守り魔法かけておくか」

 

 

マグル界での事務所は場所があるだけで中は既に無人なため、気にすることなくヴォルを連れて姿現しをして件の会社へ向かう。

流石に電車や市バスを使って移動すれば、間違いなく俺を見たマグルは大混乱する、せっかく鎮火しかかって俺が過去の人になりつつあるのならあまり姿を見られるのは良くないだろう。

ヴォルにタクシーを呼んでもらい、しばらく待った後なるべく顔を隠して事務所前に停車したタクシーに乗り込んだ。

 

運転手のおっちゃんは俺を見て目を見開き手を震わせながら運転をしていた。ちょっと急ブレーキ急ハンドルすぎない?事故らないでくれよ。後々の処理が面倒だからな。

 

 

「…もっと丁寧に運転しろ。──誰を乗せてると思ってる?」

「っ…は、はい!申し訳ありません…!」

「こらこら、威嚇しないのヴォル」

 

 

運転手に低く冷たい声で言うヴォルを宥めるが、ヴォルは嫌そうに眉を顰め、頬杖をつき窓の外を見た。

 

 

数十分タクシーに揺られ、目的地に到着する。このタクシー運転手が「ノアを見た」と誰かに言われたら後々面倒だった為、しっかりと降りる前にオブリビエイトをかけ、俺の存在は消しておいた。

 

 

最後の会社との契約破棄は、まぁスムーズにいっただろう。時間が経つに従ってヴォルの機嫌が急降下してたから、まぁちょっと強めに言って無理矢理サインをさせたのだが。

 

 

「はあー終わった終わった!」

「早く帰ろう。こんな所少しでも居たくない」

「はいはい。路地に行くか」

 

 

会社の事務所を出てぐっと伸びをする。通行人が俺を見てざわつき出した。──あ、やべ。通行人が目の前に現れた俺に混乱している内にさっさとヴォルの手を取って近くの路地裏に身を隠す。遠くで俺を探す声が聞こえてるし、もうちょっと奥に行かないと見られるか?

 

 

「──ノア!!」

 

 

後ろから俺を呼ぶ知らない人の声が聞こえた。

あっぶね、姿現ししなくて良かった。間違いなく見られる所だった。

振り返れば肩で息をし、頬を染め俺を見つめる女性が立っていた。間違いなく俺の熱狂的なファンの1人だろう。

 

 

「あー…」

「ノア!わたし、絶対会えるって信じてたわ!ああ、やっと会えた!ずっと探して…!」

 

 

胸を抑え感激に打ち震える女性。

俺の後ろにいたヴォルが苛立ちから舌打ちを溢すのが聞こえた。──げ、めちゃくちゃ機嫌悪い。ファンを手にかけるのは流石に、心が痛む、何とか穏便にお帰りいただきたい。魔法をかけるのは最終手段にしよう。

 

 

「もうどこにも行かないで!ずっと私の側にいてよノア!」

「ヴォル、ちょっと待ってて──」

 

 

振り返り、嫌そうに顔を歪めるヴォルに伝える。──俺は一瞬、女性から目を離した。

 

 

「──死が2人を別かつ時も!」

 

 

叫び声と共に数回の高い破裂音が響く。

刹那、俺の身体に強い衝撃が走り、体がぐらりと震えた。

 

 

「──ぐっ、げほっ」

 

 

身体を折り曲げ、込み上がってきた何かを吐く。ぼたぼたと夥しい量の血が俺の口と胸や腹から流れているのを見て、ようやく撃たれたのだと理解し、すぐに致命傷を優先的に治癒していく。

すぐ脇から緑の光線が飛び、女性を貫き、目の前で恍惚の目をしたまま女性が倒れ込むのがちらりと視界の端に映った。

 

 

「ノア!!」

 

 

ふらついた俺の身体をヴォルがすぐに支えた。…何で魔法で防げなかったんだろ。

 

不思議と痛みは無いため──体は急激に冷えるような感覚があるが──少し冷静に考えながら、身体の中にある弾丸を押し出し、残りの傷を治癒した。

 

発砲音を聞いたのか、人々のざわめきが近づいて来るのが聞こえる。

俺はヴォルの胸にもたれたまま無言で手を出し、地面に流れた俺の大量の血や、ヴォルによって殺された女性の遺体を黒い炎で包み、塵ひとつ残さず消滅させた。

 

 

「──帰る、ぞ」

 

 

全ての痕跡を消した後、俺はそれだけを呟き家まで姿現しをする。

 

家に戻った後、ヴォルが俺を近くのソファに運ぶ。…なんつー情けない顔してるんだよ、ヴォル。

 

 

「ノア、大丈夫…だよね。あんな…あんなマグルの攻撃で、君が──死ぬわけない」

「…俺は不死じゃ、ねぇよ」

 

 

長く細いため息を吐く。

怪我は全て治癒した。痛みもない、ただ、傷口が塞がったからといって、失われた血液は戻らない。強い倦怠感と、身体の震え、目の前が白く点滅する。…血を消すんじゃなくて持って帰ってれば良かったかな。

 

 

「ノア、顔色が──病院に」

「…いい、騒ぎにしたくない。…寝てれば治る」

 

 

あの女の人、俺の心臓を的確に撃ち抜いてたからなぁ。心臓普通に止まったわ。心臓が止まっても少しなら思考できるってマジだったんだな。まぁ狙われたのが頭じゃなくて良かったと思うべきか…流石に意識を失ったら魔法は使えなかったし。

 

 

「…寝る」

「ノア…」

 

 

心配そうに覗き込み、俺の頬を撫でるヴォルの指が震えていた気がしたが。それを確かめる間も無く俺は気を失った。

 

 

 

 

 

ふと目が覚めた。

暫くぼんやりと天井を見て、居間ではなく自分の寝室で寝かされているのだと気付く。ヴォルが運んでくれたんだろう。

 

 

「──っ…」

 

 

身体を起こせば頭痛がし、頭を押さえてすぐに痛みを消す。ふと、俺の足元あたりでヴォルがベッドの上に腕を乗せ、組まれた腕に頭を乗せて寝ているの事に気付く。

どれくらいの時間、気絶してたんだろ。とりあえずめちゃくちゃ喉が乾いた。

指を振り水の入ったグラスを出現させ、冷たい水を飲む。うーん、生き返った!

 

 

「…ん……」

「あ、起きた?」

「──ノア!」

 

 

ヴォルが小さな呻き声を出し、身体を起こす。声をかければ──抱きしめられた。

 

グラスに残っていた水が揺れ、ぱしゃりと跳ねて手にかかる。

 

危ねぇなぁ。そう言おうとしたが、俺を抱きしめる腕は少し震えていてそんなに心配かけてしまったのか、と、少し申し訳なく思い言葉を飲み込んだ。

 

 

「心配した?」

「…っ…当たり前だ!丸一日、目が覚めなくて…!」

「え?そんなに?寝過ぎたなぁ」

 

 

せいぜい数時間だと思っていたのにな。

押さえつけられているせいか、くぐもった声で軽く答えればヴォルはその力をさらに強めた後、ゆっくりと俺を離した。

 

 

「出血死一歩手前だったんだと、思う。…造血薬を飲ませたから…うん、少しは顔色がマシになってる」

「まじで?うーん。心臓撃ち抜かれてたからなぁ。すぐ治癒したけど、ちょっと…動揺した。何で守り魔法発動しなかったんだろ」

 

 

何で効かなかったんだろ、と首を傾げれば、ヴォルは硬い息を吐いて、俺をじろりと睨む。

 

 

「…それって、魔法に対する守り魔法でしょ」

「そりゃ──ああ、そうか。俺は銃で撃たれた…あー成程なぁ」

 

 

マグルの武器には、魔力は勿論込められていない。

魔力が無い攻撃に対してその守り魔法は発動されなかったのだろう。

そうか、魔法界暮らしが長過ぎて、危害を加えるのは魔法だと思い込んでいた。うーん、マグルの武器って結構厄介だな。

今度から、…もしマグル界に行くことがあれば、魔法攻撃だけじゃ無くて魔力の込められてない物理攻撃も防げるようにしなきゃな。

 

 

「…ノアも、人だったんだね」

 

 

ヴォルは俺の顔をじっと見つめて低く呟いた。あまりに真剣な顔に、苦笑する、人じゃなかったらなんだと思ってたんだろう、ヴィーラか?

 

 

「当たり前だろ?」

「……。…何か食べる?」

「うーん。…スープくらいならいけそう」

 

 

あまり食欲は無いし、体も怠いけど。

まぁ、何か食べてるうちに体力も回復するだろう。

ヴォルは「ちょっと待ってて」と言い部屋から出ていった。

俺は後ろ向きに倒れ、もう一度ベットの上に寝転がる。

 

 

「……びびった…」

 

 

小さく呟き、顔を手で覆う。

ヴォルの表情があまりにも泣きそうに歪んでいて、柄にも無く動揺した。

…そういや、ヴォルが泣いたとこなんて見た事ないな──想像も出来ないけど…。

 

 

暫くベットの上でごろごろと転がり、ヴォルの到着を待つ。

倦怠感はあるけど、別に病人ってわけじゃない。まぁ、でも心配させてしまったし…大人しくしとくか。

 

変身術の本を読みながら暫く待っていると、ヴォルがスープと、少しのパン、そしてワインを持って部屋に戻ってきた。

 

 

「ありがと」

「…気分はどう?」

「ちょっと怠いだけ、痛みもないし。…そんな心配しなくても大丈夫だぜ?」

 

 

ヴォルは俺に食事の乗った盆を渡すとベッドの側に丸椅子を出し座った。

俺の様子を見て少し安心したのか、いつものような表情に戻っている。…まぁ、なんとなく暗いけど。

 

 

スープを一口食べれば、じんわりと身体の中から温まってきた。あんまお腹空いてないけど、やっぱ体は栄養を求めてるのかもしれない。

いつもより時間はかかったが、何とか用意された食事を全て食べ終えることが出来た。

ヴォルは俺がちゃんと食べるところを見ないと不安…なのか、ずっと黙って見ていた。

…そんなに見られたら、なんか気まずい。

 

 

「造血薬と、栄養剤。…飲んで」

 

 

ヴォルが杖を振れば、空になった食器はふわりと浮かび1人でに部屋を出ていく。きっと目的地は台所だろう。

渡されたコップに満たされた薬は、あまり美味しそうな色をしていない。血を作る為なのかやけに赤いしドロリとしている。

 

 

「まずそう」

「全部飲んで」

「わかってるって…」

 

強めに言われてしまい、過保護過ぎやしないかと内心でそんな事を考えながら息を止め、一気にコップの中の薬を飲み干した。

まずい!ま、不味すぎる!スープであったまっていた体が一気に冷え、指先まで氷水につけたような感覚にぶるりと身体を震わせた。

 

 

「──ぁ?」

 

 

がくん、と手から力が抜けコップが落ちた。

力が入らず、そのまま横向きにベッドの上に倒れる、な、んだ…?

 

 

「──…ヴォ、ル…お前…!」

 

 

黒く塗りつぶされていく視界で、必死にヴォルを見上げる。

ヴォルはにっこりと微笑んだまま無言で俺を見下ろしていた。──その目は僅かに赤く染まっている。

 

 

「──ノア、君を苦しめるものは全部無くしてあげる」

 

 

ヴォルはベッドに倒れた俺に目線を合わせるように膝をつき、酷く甘く、どろりとした声で囁き、俺の頭を優しく撫でた。

ちょ、ま、まて。何が…何で?

 

 

「やっぱり、マグルには粛清が必要だ。あんな穢らわしい、弱小の、愚かな存在に、君が…傷付けられるなんて間違っている。…魔法族の母も、マグルの父のせいで死んだ。…ノアまで…あんな女のせいで…──大丈夫だよ、ノア。ちゃんと全てが終わったら、起こしてあげるから、──正しい世界で共に生きよう」

「ヴォ…ル…」

 

 

視界がぼんやりとして思考が虚になる。

そうか、ヴォルの母親もそうだった。きっとそれは──その過去はまだヴォルの中で突き刺さる、パンドラの箱だ。それが、俺がマグルに傷つけられ…死にかけた事で、開かれてしまった。

おそらく、飲まされたのは強力な睡眠薬だ、生ける屍のヤツか?回復魔法を──。

 

必死に解毒すれば少しずつ意識が鮮明になってきて、俺はなんとか腕に力を込めヴォルを強く見る。まだ完全に解毒はできてないが、ヴォルは俺の意識がまだあることに驚いたような顔をした後すぐに目を細め笑った。

 

 

「寝なよ、ノア。──ね?」

「寝るかっ!…ヴォル、俺はそんな事望んでな──」

ジュロース・サンメル・デュオ(深い眠りに堕ちよ)…僕が、そうしたいんだ」

「てめっ…話し、聞きやが…──」

 

 

再び手に力が篭らずベッドに力なく横たわる。

だめだ、こいつマジでヤンデレ化してる!ああそういえば孤児院時代でも俺の怪我にはうるさく反応してたっけな。せっかく、すべてうまくいきそうだったのに──。

 

 

「目覚め、て…ジジイになって、たら……ブチギレるから、な…早めに、起こしに来い…!」

 

 

流石に魔法薬と睡眠魔法のコンボではどうしても抗えない。それに、うまく魔力が練れない、なんつーもんを飲ませたんだよ!

もう運命は止められない、ならば──ヴォルのさせたいように、するしか無い。

起きた時が何年後なのか──それとも、ヴォルは俺を起こす事が出来るのか、とりあえずこの美貌を損ねる事だけは嫌だと伝え、俺は意識を飛ばした。

 

 

 

「…ノア?──やっと、眠ったか…」

 

 

リドルは死んだように眠るノアの髪を優しく手で撫でた。

こんな美しく、何よりも崇高な存在が傷付くなんて、許せるわけがない。

罵倒の一つでもするかと思ったが、最後の言葉が目覚めた時の自分の状態を心配する言葉であり、つくづくノアは奇妙な人間だと、リドルは思った。

 

 

「…ノア…僕の、たった1人の──」

 

 

 

リドルは小さな声で呟く。

杖を自分の胸に当て、何度目かのその呪文を唱えた。

呪文を唱えながら顔を隠すノアの前髪を払い、露わになったその綺麗な額に口付けを落とす。赤黒い閃光がノアを包み──消えた。

 

 

リドルは少し眉を顰め、一度苦しげに重い息を吐くとそっと魔法を使わず、その重みを感じながらノアを抱き上げた。

 

 

「僕は、もう十分待ったよ、ノア──」

 

 

ノアの手はだらりと力なく垂れたが、リドルは気にする事なく抱えたまま自身の寝室にある地下室へ向かった。その密かに作られた隠し部屋は、家主であるノアの知るものでは無かった。

 

地下部屋にはただ一つシンプルなベッドが置かれているだけだった。

その純白のベッドにノアを寝かせたリドルは、杖を振るい万全の守り魔法をかける。

 

その日、リドルは夜が明けるまで、ただノアの閉じられた顔をじっと見つめていた。

 

 

 

 

 




ヴォルと幼馴染編はここで一度終了です。

原作のヴォルデモートと、この世界のヴォルデモートは目指す先は少し違います。

ギャグの練習の為に書き始めたのに、後半全然ギャグじゃなかったですね…難しいです、ギャグ…
沢山のコメント、評価、閲覧、ありがとうございます!
いつも励みになっています。これからまだ続きますので、どうぞよろしくお願いします!



追記、アンケート設置しました。
純血主義の場合は、純血の魔法使いのみの社会を作ることが目的です。
魔法族主義の場合は、魔法族のマグルの支配を目的とします。

今この状態のヴォルは何を思っているのか、予想でアンケートに答えていただけると参考になります!よろしくお願いします。
(文章を訂正しました、前のアンケートに投票してくださってありがとうございました。)

ヴォルの思想について。

  • 純血主義100%
  • 純血主義50% 魔法族主義50%
  • 魔法族主義100%
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。