チート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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40 執事の風格

 

 

 

「違います!ノアさん!マルフォイ家の品格を落とさぬよう、主人の右斜め後ろで控え、目線は少し下です!」

「は、はいマクゴガナル先生!」

「そう、…ほらルシウス、後ろを振り返ってノアさんを見てください──さあ、早く」

「はい…こう…ですか?」

「よろしい!…ほらノアさん!主人が用事があって振り返りました──どうしますか?」

「えーと、…こう?」

「落第です!!」

「そんなぁ…」

 

 

ダンブルドアに執事としてホグワーツに来る事を許された俺は、マルフォイ家の執事になる為に全力で特訓している。

ミネルバは相変わらずスパルタで、執事なんて見たことも無ければどんな仕事かもわからない俺は勿論、ミネルバの満足のいく執事になれなかった。

 

 

俺があまりに残念執事だった為、ミネルバは購入した執事(バトラー)について詳しく書かれた本を読みながら俺にビシバシ指導してくれる。勿論、俺も読んで完璧に頭に知識として入っている。

…だが、知識があっても、執事のような振る舞いは出来ない。

 

俺のレッスンに付き合ってくれるルシウスはかわいそうなくらいオロオロとしていた。勿論、ルシウスはマルフォイ家の長子であり、次期当主である。

由緒正しい純血貴族の彼は、ちゃんとマナーや教養もあり、どのように立ち振る舞えばいいのか理解している。

しかし、隣に俺が居る。その事でかなり緊張してるし、目を合わせるだけで真っ赤になり挙動不審になってしまう。

 

それも、仕方のない事かもなぁ…。

俺の美貌は勿論だが、ルシウスにとって俺は神に等しいらしい。流石、アブラクサスが育てただけあって俺への刷り込みは完璧だ。

毎日お祈りする時は俺の写真に祈るらしく──その神様が、自分の付き人になるなんて、ルシウスはその事を聞かされた時、たっぷり5分は思考停止していた。

 

 

「ちょっと休憩しようぜ?」

「…仕方ありませんね。入学まで1ヶ月半…それまでに何としてでもノアさんを一流の執事にしてみせます」

「…目的が変わってねぇ?」

 

 

練習の邪魔で端に寄せていた長机を近くに引き寄せれば、待ってましたとばかりにハウスエルフがティーセットの用意をテキパキと始める。…成程、こういう気遣いが必要なのか。

しかし、ハウスエルフは執事では無く、一種の下僕だ。彼らに教えを乞う事は…多分良くない。一流の執事たるもの、(へりくだ)りすぎるのも、良くない──って教科書に書いてあった。

 

 

「ルシウス、お前もちょっと休め」

「は、はい…」

 

 

ぼけっと立っていたルシウスに声を掛ければ弾かれたように何度か頷き、俺とかなり離れた場所におずおずと座る。

 

 

「…何でそんなに離れるんだ?」

「そ、れは…貴方様のような方に…私が近づくなど…本来あってはならないのです…」

「…。…アブラクサス!」

 

 

アブラクサスの名を呼びながらぱちんと銀の腕輪を弾く。すると呼ばれた事がわかったアブラクサスは、すぐに俺の側に姿を現した。

 

 

「どうされました?」

「ルシウスを躾すぎだ!…俺に対して萎縮しまくってるぞ」

「まぁ。…ノア様を神だと思ってますからね」

 

 

ルシウスと俺の距離感をチラリと見たアブラクサスは平然と答える。

それって、俺がいくら頑張って執事っぽい振る舞いが出来たとしても、ルシウスに主人らしい振る舞いが出来なければ…かなりめんどくさい事になりかねないんじゃね?

主人があんな態度を取る執事って何者だとヒソヒソされるかもしれないし。何より…マルフォイ家の品格を下げてしまうのでは無いだろうか。執事におどおどする次期当主なんて…一般人の好きそうなネタだろう。俺は、なるべくルシウスに迷惑はかけたくない。

 

 

「かといって…うーん。俺に対する感情を消すことも出来るけど。俺あんまり人の心を弄りたくないしなぁ…」

「っ…貴方様の事を忘れるなど、この感情が失われるなど…耐えられません!」

「ルシウス…」

 

 

ルシウスは顔を真っ青にして小さく叫ぶ。俺と目があった途端、ぱっと視線を下げて祈るように指を組み震える手を唇に当てていた。

…絵になる美少年だなぁ。

 

 

「ふむ……では、暫く2人でのんびりと過ごしてはいかがですか?…私も、ノア様の事は敬愛し崇めておりますが、ただ唯一の人として、です。──ルシウスは普段のノア様をまだ知りませんから、ノア様の事を同じ人だと思えないのでしょう。まずは距離を縮めてみては?」

「アブラクサスお前頭いいな!よし、ミネルバ、今日はもうレッスンは無しだ!」

「仕方ないですね…」

「光栄です。この屋敷の中…全て、好きに過ごしてください。──ルシウス、わかったか?」

「はい、父上」

 

 

ルシウスは、しゃんと背筋を伸ばしてアブラクサスを見る。静かにいうその姿はどこからどう見てもよく躾けられた貴族のものである。…んだけど、俺を見た瞬間びくりと肩を震わせあわあわしてしまうのだ。

 

視界に俺が映る度に、こうして驚かれる。

ルシウスにしてみれば、生まれて物心ついてから俺の事は神のような存在だと教えられてきた。朝晩()に祈る生活をしていたルシウスは、まだ俺が本当に今こうして存在し、話しかけているのが信じられないのだ。まだ半分夢だと思っているのかもしれない。

 

 

「ルシウス、隣においで」

「…は、……はい」

 

 

怖々と俺の隣の席に座ったルシウスの手は酷く震えていた。

うーん。緊張もここまでくるとやべえな。

 

俺は小さくため息をこぼす──と、ルシウスの目に絶望が走ってしまう。なにか不敬をはたらいたのかと自分を責め続けるルシウスは、かわいそうなほど俺に狂わされている。

 

 

「ルシウス、──この姿なら、俺の目を見れるか?」

「……!──は、はい」

「そ?んじゃ、暫くこの姿でいるよ。んで、慣れたら元の姿に少しずつ戻そう。ま、ホグワーツでは元の姿に戻る事はないけど。…少しは俺の本当の姿に慣れてくれないとなぁ」

 

 

あまり、この黒髪黒目の悪魔執事の姿でいるのは嫌なんだけど、まぁ…俺も絶えず変身魔法をかけ続ける練習になるか。

 

目の色は、赤だと目立つのでは、という尤もなミネルバの意見により黒に変えた。つまり、俺はエセ悪魔執事だ。

 

ルシウスは、俺の姿が変わったことで少しだけ表情を緩めた。とはいえ、隣にいるのは姿こそ違うが中身が俺である事に変わりはなく──ずっと固まっている。

 

 

俺をまじまじと見ていたミネルバは、静かに俺に近づくとそっと耳元で囁いた。

 

 

「…ノアさん、その姿で…烏のような羽を生やせますか?」

「…ミネルバ……。…マートルの本、読んだな?」

「さて、なんのことでしょうか」

 

 

ちらり、と見上げればミネルバはふいっと視線を逸らした。──そういえばマートルのあの大作はNo.何まで作られているのだろうか。流石にもうあんな妄想はしていないだろう、とは思うが…俺が目覚めて収まっていたマートルの中の獣も、目覚めさせてしまったのかもしれない。

 

 

ハウスエルフが持ってきた紅茶を飲みながらルシウスを見つめる。

ルシウスは美しく、気品漂う絵になる姿で紅茶を飲んでいたが。

 

 

「……!──あっ!!」

 

 

俺と目があった途端、激しく動揺し紅茶が手にかかってしまった。

 

 

「…ま、ぼちぼち頑張ろうぜ」

「は…はい、申し訳ございません…」

「いや、俺のわがままに付き合わせてるんだ、…俺の方こそ、ごめんな。…執事がくることで…何も言われなかったらいいけど」

 

 

ルシウスの赤くなった手を治癒しながら申し訳ない気持ちを吐き出す。

過保護だの流石純血貴族様だの、ヒソヒソされて灰色の学生生活を過ごさせるなんて耐えられない。

しかし、ルシウスはきょとんとした顔をすると、微かに首を傾げた。

 

 

「言わせたい者には、好きにさせればいいのでは…?程度の低い者達の声など…私は気になりませんが…」

「…そう?」

「…あっ!で、出過ぎた真似をしました…!」

 

 

一気に恐縮してしまったルシウスに苦笑いを溢す。そうやってあわあわせずに普通にしてればいいのになぁ。

 

 

「いや、言いたい事はなんでも言ってくれ。俺はルシウスの執事になるからな。気軽に命令出来るようにならないとダメだぜ?」

「めっ…命令…?そ、そんな…」

「大丈夫、お前なら出来るよ、ルシウス」

 

 

ルシウスの肩をぽんと叩けば、ルシウスは頬を赤く染めたがおずおずと頷いた。

 

 

 

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