チート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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44 久しぶり

 

 

 

俺は見つけた戦利品を持ってホグワーツの与えられた自室へ戻る。

 

誰も入れないよう魔法をかけ、盗み聴きするための呪いがかかって居ない事も確認し、姿を元に戻した後、ようやく一息をついた。

 

机の上にトレーが置かれ、温かな湯気をあげる料理が沢山乗せられていることに気付く。

途端に空腹感を思い出して、とりあえずベッドの上に日記、指輪、ロケット、ティアラをぽんと投げ置き、椅子を引き寄せ食事にありつく。

 

うーん、ひとりで食べるのはなんか寂しいな。ずっと誰かと一緒だったからなぁ…。

 

 

「あ、そうだ」

 

 

スプーンを咥えたまま後ろに放っていた日記を掴み、くるりと右手を回す。

俺はトレーを少し奥に押しやりスペースを作ると机の上に日記を広げた。

あ、ミネストローネがついた。…トマト系って取れないんだよなぁ…まあ、いいか。

見方によっては、血のように見えて雰囲気が倍増しているように…うん、きっと見える見える!──後で怒られるか?

 

 

気を取り直して真っ白なページに『おーい、暇だから話そうぜ』と書く、インクは暫くして淡く輝き日記の中に溶けた。

 

 

『…誰?』

『ノアだ。…文字だけだったらわかんねーの?』

『ノア?…そりゃあ…わからないよ。見えるわけじゃないし』

 

 

ただの文字だが、何となくヴォルと話しているような気がして思わず笑ってしまった。懐かしいなぁ、…いや、俺にとっちゃまだ数ヶ月しか経ってないけど。

しかし、筆談はめんどくさい、レスポンスが遅いし、何より食事の手が止まってしまう。

 

俺は両効きなわけでは無い為、食べながら書こうとすればどうしてもタイミングがずれてしまう。

 

 

「筆談…めんどくさっ!」

 

 

ヴォルの『何でノアがこれを持ってるの?』の言葉に答えるためには割と長文を書かなければならない事に気がつき、思わず面倒だと正直に吐き出してしまう。

面倒なら、面倒じゃなくせばいい!

羽ペンを消した後、俺は膨大な魔力をこめながら手で日記を撫でた。

 

 

「──な、…何…?」

「よぉ」

 

 

日記からすうっとゴーストのように現れたヴォルは困惑しきった顔で床の上に立ち、自分の手や体を見ていた。そのヴォルの懐かしい姿を見た途端、俺はとんでもない事に気づいた。

 

 

「…うわ!ちょ、ちゃんと立ってみろよ!」

「ノ、ノア…?何で、僕、実体が…?」

「そんな事どーでもいいから!ほら!」

 

 

俺は椅子から立ち上がりヴォルの隣に並ぶ。

ヴォルは戸惑いつつもしっかりと立ち少し俺を見上げ──何が何だかわからないという表情をするヴォルを見て、俺はにやりと笑った。

 

 

「俺の方が背が高い!!」

「……はぁ?」

「ほらほら!一回も抜かせなかったのに…!今はヴォルを見下ろせる!…優越感!!」

 

 

16歳のヴォルと競うのはおかしいかもしれないが、それでも10センチは身長差があるだろう!!ふふん!初めてヴォルに勝った!

ヴォルの頭をポンポンと叩けば、ヴォルは嫌そうに眉を寄せて俺の手を払った。

 

 

「…僕が実体化出来たのは?」

「そりゃ、俺が魔力込めまくってるからだろ」

「………そうなんだ」

 

 

ヴォルは少し考え込むように顎を押さえてじっと床を睨んだ。

俺には不可能なんて無いんだぜ?と笑えば、「…ま、僕の考えすぎか」とヴォルは俺をじろじろと見て低く呟く。

 

ヴォルは辺りを見回した後怪訝そうに眉を顰め、ベッドの上に座った。

 

 

「ここ、どこ?…なんか、孤児院みたいで嫌だ」

「やっぱそう思う?ここはホグワーツだ」

「…ホグワーツ?…留年でもしたの?」

「んなわけあるか。…あー話せばめちゃくちゃ長くなるなぁ」

 

 

スプーンで料理を掬い食べながら向かい合うように椅子の上に胡座をかく。うーん、さて、どこから話せばいいんだろうか。

 

 

「──俺、何歳だと思う?」

「…22くらい?…成長したね」

「惜しい!見た目は24歳だけど、なんと実際は40歳である!」

 

 

多分!と心の中で呟く。

…いや、実際は30歳プラス35歳で……いや、考えるのはやめよう。精神年齢俺って低すぎか?…いやいやそれは見た目に引っ張られてるからだろう、うん。

 

ヴォルは目を見開き、俺をまじまじと見つめ首を傾げた。

 

 

「肉体年齢を止めてるの?」

「止めてねーよ。ヴォル、お前に24歳の時に眠らされて、15年くらい経ったんだ、んで、2ヶ月くらい前に起きたとこ」

「……何で、僕はノアを眠らせたんだ…?」

「さあな。俺が聞きたい」

 

 

空になった食器をトレーの上に置き、ヴォルの隣に座る。

16歳のヴォルは信じがたいような目で俺を見ていて、ちょっとだけ狼狽していた。

 

 

「えーっと…話せば長くなるんだけどな──」

 

 

俺は今ヴォル──ヴォルデモートは何をしているのかを説明した。

静かに聞いていたヴォルは大人になった自分が魔法界で名を轟かせている事に満足げにしていたが、それでも俺が話し終えると眉を寄せたまま深く考え込んでいる。

 

 

「…僕が日記に、魂と記憶を込めて分霊箱にした時は…そんな事考えてなかった」

「…そうなのか?」

「少なくとも、マグルの制圧なんて…マグルになんて興味なかったね、滅びれば良いとは思うけど。…イギリス魔法界を掌握して、純血だけにするつもりだった」

「…それ、俺に言っていいの?」

 

 

ヴォルはちらりと俺を見る。

 

 

「…ま、別に。ノアは…マグルなんて気にしないでしょ?好きにすればいいって言ったのはノア、君だ」

「………いやー…」

 

 

ヴォルは、俺に何を期待して、俺がどんな人間だと思ってたんだ!そんなに周りに興味なさそうだったか、俺?

…いや確かに言ったわ。あの時は、本当に身近な人以外、この世界の事がどこか──他人事だった。

 

ヴォルの言葉を聞く限り、16歳の──この日記を作った時のヴォルは、少なくとも原作通りの征服を考えていたらしい。それが何故変わったのか。…俺が、マグルに傷つけられたから、だろうなぁ。

 

 

「多分、俺がマグルの銃撃で死にかけて…んで、方向転換したんじゃねぇ?」

「…死にかけた?…ノア、君が?」

「ああ、まぁちょっとしたミスでな。…その次の日に俺がお前に眠らされて、その時からヴォルデモートとして活動してるっぽいし」

「………ふーん」

「…なんだよ」

 

 

16歳のヴォルは、俺の言葉に納得してないような微妙な声音で答える。

ヴォルはじっと俺を見て、少しため息を落とす。

 

 

「…多分、それだけじゃ無いでしょ」

「え?」

「僕が、ノアが殺されかけただけでマグルを制圧しようとするなんて…そんな心の優しい人間だと思う?…僕ならそのマグルと親族全て皆殺しにして、その後で魔法界を制圧する」

 

 

ヴォルは薄く笑った。

ああ、そうか。このヴォルは16歳なんだ。その後俺たちが過ごした日々の記憶は、このヴォルには無い。

 

 

「…あー…いや、割と優しかったぞ。一緒に暮らしてたし、仕事も…あー…俺の付き人したりして」

「はぁ?本気で、一緒に暮らしてたの?…それに、ノアの付き人?」

「いやまぁ色々あって」

「教えろ」

「いやぁ…」

「ノア」

 

 

ヴォルに強い声で言われ、俺は肩をすくめる。色々、の部分を言葉で告げるのは難しい。少なくとも8年もの記憶なんだ。

俺がその時何を思ったのか言葉にし難い。…ヴォルが何を思ったのかも、予想でしか無いし。

…いや、別に。隠すようななんかちょっとアレな事は何もしてない。普通に良き幼馴染だった筈だ。

 

 

あまりに強いヴォルの眼差しに、俺は降参するように両手を上げ自分の眉間に指先を当てた。

 

すっと手を引けば銀色の絹糸のようなものがキラキラと輝き俺の頭から流れ出る。

 

 

「…何、それ」

「俺の記憶。説明するの難しいし。普通の人なら見れないけど…ま、ヴォルは記憶体だし、いけるだろ」

 

 

憂いの篩なんて持ってないし。扉を開けて校長室にヴォルと行ってダンブルドアにバレたらかなりややこしい。 分霊箱(この日記)破壊されかねないしな。

 

俺はリドルがこの日記を作った日の後から、俺が眠りに着くまでのヴォルに関わる記憶を、ヴォルの頭にそっと差し込んだ。

 

 

ヴォルは顔を硬らせ身をひいたが、そのまま銀色の俺の記憶はヴォルに吸い込まれていった。

一瞬、ヴォルの目が虚になる。だがそれもほんの僅かな間でゆっくりと目を瞬かせると、顔を手で覆った。

 

 

「……なるほど」

「うん、…色々あったんだよ」

 

 

ヴォルはくぐもった声で低く呟いていたが、黙ったまま手を離し俺を見る。

 

 

「……そうだね」

「で?結局、今のヴォルは何がしたいんだと思う?」

「…さあ、あくまで見たのは…ノアの記憶だ。僕の記憶でもないし、思いでもない」

「ふーん?そんなもんか」

 

 

てっきり、今のヴォルの考えている事がわかっているのだと思ったが、そう言うものでも無いらしい。

 

 

「ただ…ノアと僕は、特別だ」

「うん?」

「…僕は、ずっとそう思っている。きっと、今もそれは変わらない」

「そりゃ、俺は特別で奇跡的な人間だが?」

「…はぁ……」

 

 

ヴォルはやけに真面目な声で言ったが。

そんなの当たり前だ。俺とヴォルは特別だと、何度もヴォルが言っていた。──それに深い意味なんて、…あったのか?

 

 

「やっぱ…ヴォルに会って話さないと本当のところはわかんねーか」

「そうなんじゃない?」

「…たまには俺の話し相手になってくれる?」

「…暇だしね、良いよ」

 

 

ヴォルは仕方がない、とため息をついたが、過去に何度か見せたように、僅かに──優しく笑っていた。

 

 

 

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