チート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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ヴォルデモートと作る世界編
54 俺と、ワルツを。


 

 

俺はルシウスとマルフォイ邸まで戻った後、心配そうに俺らの帰りを待っていた騎士達にルシウスを預けてから家に戻った。

何もまだ、説明はしてない。ヴォルと話し合ってからじゃないと騎士達にも何も伝えられない。

 

 

「埃っぽいな…」

 

 

久しぶりに戻った家は、埃が積もって空気も澱んでる。

すぐに魔法で清めながら廊下を歩き、居間の扉を開ける。…まだヴォルは来てないな。

 

居間もざっと清めて、暖炉に火を灯し、その前にある大きなソファに座って、ヴォルが来るのを静かに待つ。

 

…来るよな?…うん、来るはず。これで来なかったら正直めんどくさい、あの古城の場所はもうわかって目印をこっそりつけたからとりあえずいつでも行けるけど…。

 

来なかったらどうしようかなーなんて考えてたら、背後から姿現し独特の音が聞こえた。顔だけ動かして後ろを見れば、先程会った時と同じ格好のヴォルが少し離れた場所で俺を見下ろしている。

 

 

「んなところで立ってないで、座れよ。…あ、眠らせようったって無駄だぜ?絶対破れない守りかけてるから」

「……そう」

 

 

ちょっと左側にズレてヴォルが座る場所を空け、隣りをぽんぽんと叩く。ヴォルは小さなため息をついてから、隣に座った。

長い足を組んで、俺をじっと見ていたが、残念そうに微笑んだ。

 

 

「…後少しで目醒めさせるつもりだったんだけど…いつ、目醒めたの」

「3年くらい前かな」

「何…?…2年前、確認した時には眠っていたのに」

 

 

怪訝な顔をするヴォル。

え?いつ確認しに来たんだ?ってか、俺はずっとマルフォイ邸かホグワーツに居たのに──いや、待てよ。

 

 

「2年前…。…あ、もしかして、クリスマス?」

「……そうだよ」

「…あれ、夢じゃなかったのかよ!」

 

 

危ねぇな!もしあの時俺が自室で寝るか、マルフォイ邸に居たら目醒めてた事バレてたじゃん!未来は間違いなく変わってたな…。

 

 

「その日だけ、たまたまここに来てたんだよ」

「…普段は、ここじゃなくて…どこで過ごしてるの?」

「えー?…ま、色々?」

 

 

ヴォルの機嫌が急降下してる。

細められた目が俺を突き刺す、いやいや、そんな「何勝手な事してんの?」みたいな目で見られても困るんだけど。

 

 

「…話って何?──眠らせていた苦情でも言う?見た目は老いずに──ちゃんと、そのままでしょう」

「まぁな、目醒めてジジイじゃなくてよかったよ。…ヴォルの姿を見てると、40代の俺も中々良さそうだけどな?──ワインか、ブランデー、どっちが良い?」

 

 

指を振り机の上にグラスを出す。懐かしい、これで暇が合えばヴォルと良くここで、飲んでたなぁ。

 

 

「──どちらでも」

「そ?じゃあ赤ワインにしよ」

 

 

ちょっと距離離れてるけどアブラクサスんとこから拝借しよう。まぁこれは俺の金で買ってマルフォイ邸のワインセラーに置いてあったものだから盗んだわけじゃない、うん。

 

赤ワインとチョコが現れ、ワイン瓶が勝手に2つのグラスに真っ赤なワインを注ぐ。俺はすぐにグラスを持って一口。うーん、うまい!

ヴォルは俺が飲んだのを見た後で、少しだけ口をつけた。

 

 

 

「なあ、ヴォル。ヴォルは1月11日に──どうするつもりなんだ?機密保持法の撤廃を要求した所で、叶えられるわけがないって…わかってるんだろ?」

「ああ、そうだろうね。叶えられなかったら──その日、ノアの姿になり世界に現れて、マグルへの恨みを伝え…各国に配置した君の信者に群衆を煽らせて…マグル同士殺し合わせて、数を減らすつもりだよ。死んだはずのノアが蘇り、マグルの粛清を望んでると理解させる」

「やっぱり?…でもさ…流石に、俺の信者を煽ったところで…暴動が起きるか?」

 

 

ってか、俺はマグルに恨みなんて無いけどさ。流石に殺人は大罪だ。そんな罪を──俺の信者でファンだとしても、そんな罪を犯すか?

 

普通に上手く行く気がせず、率直にヴォルに聞けば、ヴォルは少し黙った後で意地悪く笑う。

 

 

「…ノアが目醒めてから、何処にいたのか…まぁ大方、君の騎士の所だろう?…君の騎士は──優しいね?」

「…何、だよ」

 

 

くすくすとヴォルは冷たく、楽しそうに笑う。どこか酷く柔らかい声音でヴォルは含みを持たせて囁き、赤ワインを一口飲んだ後で俺を目を細めて見た。

 

 

「ノアがマグルに撃たれて重傷を負った後──まぁ、僕がそう見せたんだけど──マグル界では2.3日後にはノアが死んだと言う情報が回った。マグルに撃たれて殺されたってね。その後…そうだね、確か200人は超えてたかな?」

「……何──」

 

 

世界のトップアイドルが、ファンに殺されたり怪我をさせられる事は稀にある。

そして、世界一のアイドルが死んだ時──嘆いて後を追う者が、確かに存在している。

俺はそれに気付き、ぐっと唇を噛んだ。その顔を見てヴォルはまた、笑う。

 

 

「大丈夫、死んだのはマグルだけだ。自殺者も居たけど、殺された加害者の関係者を含めると──それくらいかな?」

 

 

マグルだけだし、気にする事ないよ。と軽くヴォルは言う。ヴォルはとことんマグル嫌いだし、その命を軽視している。

俺のせいで、どれだけの未来が変わったのか──最早、それを想像する事が出来ないくらいに、沢山の命が終わったのか。

アブラクサス達は優しい、きっと、俺にそれを伝える事がどうしても出来なかったんだろうな。

 

 

全盛期では無いとはいえ、騎士達の情報から俺の熱心な信者は変わらずに居ると聞いている。俺が変わらぬ姿で蘇り姿を現せば、マグル界は俺を奇跡の人だと、イエス・キリストの再来だと思ってさらに盲目なまでに俺に堕ちるだろう。

その俺が、マグルの粛清を望むのなら──魔法族達はマグルを鏖殺し、マグルの信者もまた、互いに殺し合う。マグルの狂信者は喜んで命を捨てるかもしれない。

ああ、その可能性は充分にあり得る。

 

 

「…そうか。…なら、まぁ…うん。俺がマグルと信者を煽れば──そうだな、多分マグルの数は半分にはなるかもな」

「良い案でしょう?…ああ、本当は世界が変わってから、君を起こすつもりだったけど…もう起きてるなら、ノアがする?」

 

 

とんでもない事をさらりと言うな。

俺は殺戮を扇動するつもりは一切ない。俺の目の開いているうちは、──もう、無駄な血を流させたく無い。

 

 

「──しねぇよ。んな事」

「じゃあ、黙って見てて」

「出来るか、馬鹿」

「……ノア、僕と──戦うつもり?」

 

 

ヴォルはグラスを机に置いて、低い声で呟く。

今、血の誓いのペンダントはヴォルが身離さず持っている筈だ。ヴォルが微塵も苦しんでいる様子がないのを見ると、やっぱりヴォルは俺に対して何をしているのか気付いていない。──ヴォルの行う全てが、俺の心を傷付けているのだと、理解出来ていない。

 

 

「戦わない。…俺は──そうだな、今日は話をしに来たんだ」

 

 

立ち上がればヴォルはぴくりと指を動かした。その指が無意識に何をしようとしていたのかは──考えたくないな。

 

 

俺はヴォルの前に立ち、俺より一回り以上離れてしまったヴォルを見下ろす。

…やっぱイケメンだなぁ、いや、蛇面俺様が嫌いなわけじゃないけど、そのままの美しさで居てくれてよかったと思う俺がいるのも事実だ。そのまま成長したヴォルを、俺はずっと見たかった。本当は、共に教師になって過ごす未来を1番──望んでいたけれど。

 

 

「ヴォル」

 

 

俺は、ソファに座るヴォルの前に膝をつく。驚いたようにヴォルが目を見開き、俺を見下ろした。俺が誰かの前に膝をつくなんて、信じられないんだろうな、──ま、確かに初めてだ。

 

ヴォルの、やけに青白い手に自分の手を重ねる。氷みたいに冷たいな、指先壊死してない?俺より色白ってか、青白いし病人みたいな手だな。

 

 

「ノア……何?」

 

 

ヴォルはするりと指をあげ、俺の手に絡ませた。ヴォルは嬉しそうに、小首を傾げる。さらり、とヴォルの長い前髪が流れ目元に影をつくる。

 

 

「俺は…今まで、ずっと本心を誰にも──ヴォルにも、悟られたくなかった。踏み込ませなかった、──心を開かなかった」

「…そうだね」

「それは、ヴォル…お前を信頼していなかったわけじゃない。…ただ──」

 

 

少し言い淀む。

ヴォルは、俺の事を神聖化している節がある。そんな俺がただの人間だと知って──彼は俺から離れていかないだろうか。

 

 

「…俺は、……怖かった」

「…怖い?──君が?」

 

 

ヴォルは眉を顰め、懐疑的な目で俺を見つめる。

 

 

「ああ。…俺は──ただの平凡な男なんだよ、ずっとそうだ、何年もただ虚勢を張ってるだけの、道化で、…弱い人間だ。──俺は、人と深く関われば生じる責任を取りたくなかった。…人と向き合う事を避けていた、ただ、世界を少し離れたところで見れたら充分だったんだ」

 

 

俺はハリー・ポッターの世界を、なるべく──壊したく無かった。

だから、彼らとは深く関わるのを避けていた。原作とは大きく乖離した後で、ようやくこの世界は別物だと気付いた時には、もう全てが遅かった。俺とヴォルの間には、透明な薄い膜が出来てしまっていた。

 

 

 

「……」

「だけど──今は、違う。俺は…ヴォルと、共に歩みたいと思ってる。それは──多分、昔からそう思っていた、…どうしても、言えなかったけど…俺にとって…ヴォル、お前が1番…大切な人だ。ヴォルとは、深く関わりたい。ずっと、側に居たいと──思ってる」

 

 

 

 

冷たいヴォルの手を強く握る。

俺の紛れもない本心だ。俺は、たった1人の幼馴染と共に歩みたい。ずっと、側に居たいし、幸せになって欲しいと心からそう思う。

自分で言ってて、めちゃくちゃ自己中な発言だし、今更な言葉だとは思う。

ヴォルが受け入れるのか、突き放すのかは──俺の頭脳を持ってしても、わからない。何故なら、俺はヴォルの本心を理解してないからだ。

 

 

ヴォルは暫く黙っていたけれど、長いため息を吐くと、どこか寂しそうな目で俺を見る。

 

 

「…何か企んでる?」

「何も、俺の本音だ」

「本当に?」

本当(マジ)だぜ?」

「…そういう、茶化すところが悪い癖なんだよ、ノア」

「あー、ごめん。性分なんだよ」

 

 

無理だったか、そりゃ、そうだよな。

誤魔化すように力なく笑う。

日記のヴォルが「手遅れだ」って言ってたしなぁ。ただ、うん、俺はヴォルに本心を告げる、そう決めていたんだ。

 

 

俺は立ち上がり手を離そうと思ったけれど、強く絡んだヴォルの指は俺を逃さなかった。

ヴォルの少し長い爪が俺の手の甲に食い込む。

 

 

「ノア、──本当に、側に居てくれる?」

「…ああ、そうだ。ヴォルが嫌じゃないなら」

「……別に、嫌じゃないよ」

「まぁ──ヴォルって割と俺の事好きだもんな」

「……見た目はね」

 

 

やや緊張感に張り詰めていた真剣な空気はふっと弛緩する。ヴォルはようやく掴んでいた手の力を緩め、昔と変わらずの視線で俺を見上げる。

 

わかってくれた──のかな?

ヴォルの心を理解出来てない俺はその答えがわからないけれど、まぁ──拒絶されてない事は確かだろう。

ヴォルは、昔と変わらない、ごく稀に見せる優しい目で俺を見ていた。

 

 

内心で安堵のため息を漏らし、気を取り直すように俺はヴォルが座る隣に戻り、じっとヴォルの顔を覗き込む。「何?」と首を傾げるその顔についてる仮面に手を伸ばせば、ヴォルはちょっと嫌そうに眉を寄せ俺の手を払った。

 

 

「…何、やめてよ」

「傷、あるんだって?見せてみろよ」

「……嫌だ」

「何で?減るもんじゃないし。ってか、外見に頓着無かったのに…傷は隠すんだな?」

 

 

ヴォルは自分の顔が父親に瓜二つだからか、どれだけイケメンでも気にせず分霊箱作りまくってその顔面を崩壊させていたし、全く気にして無かった。…まぁそれは、本の中でのヴォルデモートだけど、今目の前にいるヴォルも──自分の顔は好きでは無かったし、怪我しても気にしなさそうだったけどな。トップに立つカリスマ性を保つためか?

見た目化け物寄りよりも、イケメンの方が群衆の心は掴みやすいだろうしなぁ。

 

 

「…ノアは、この顔が好きなんでしょう」

「は?そりゃそう──…まさか、俺のため?」

 

 

ヴォルは視線を逸らした。

たしかに、俺は自分の顔が嫌いだと言うヴォルに、その顔が好きだと伝えた事がある。そりゃ、蛇面よりはイケメンの方がいいじゃん、普通に。鼻無くすよりはさ。

いや、それでも。まさかヴォルがそんな事を気にするとは微塵も思わなかったぞ。

俺がその綺麗な顔が好きだといったから、怪我を隠して見せないようにしているのか?

そうなら──いや、まじでこいつ俺の事好きじゃねえ?ちょっと、マートルの言葉もありがち間違ってなかったり…?

いやいや、うん、執着と親愛だろう──多分。

 

 

「そりゃ、俺はヴォルの顔は好きだから嬉しいけど。…いいじゃん、見せてくれよ」

「………」

 

 

まぁ、ともかく。治せる傷なら、治してあげたい。

と呟けば、今度はヴォルは抵抗する事なく──ちょっとムッとしてたけど──されるがまま、仮面がその顔から離れる。

 

赤黒く引き攣るその傷跡は、たしかに火傷痕のように酷い。身体中にあるって言ってたけど、なんか闇の魔法習得する時に負った怪我かな?魔力を伴う怪我は、残りやすいからなぁ。

 

指で皮膚の色が違う箇所を撫でれば、ヴォルの瞼がぴくりと震える。あ、目元だし触らない方が良かったか?ってか、痛かったりするのかな。

 

 

「痛むか?」

「いや、痛くはない」

「ふーん?治してやろうか?」

「……無理だと思うよ。…分霊箱を作った時に出来たものだし」

「え?あれから、作ったのか?…何を分霊箱にしたんだ?血の誓いのペンダントか?」

 

 

分霊箱を作った影響なら、治す事は無理だな。身体的な傷は治せても、魂が負った怪我は治せない。…いや、方法は有るけど多分ヴォルには無理な方法だ。殺人を心から後悔すれば、魂は修復される。…けど、少なくとも今のヴォルにはできないだろう。

 

分霊箱か…どれを分霊箱にしたんだろうな、探したけど、見つからなかったし。あり得るのは誓いのペンダントくらいだと思う。

 

 

ヴォルは傷を撫でていた俺の手を無言で掴むと、俺の目をじっと見て、そのまま頭の先から足先まで舐めるようにじっくりと見る。…何だよ。

 

 

「ノア」

「…なんだよ」

「…君って、本当に──わからない?」

「は?」

「生き物を分霊箱にしたのは初めてだからね」

「…、……はああ!?ヴォル、お前っ…!まさか、俺を──!」

「言ったでしょ。…ノアを分霊箱にしたいって」

 

 

いや、言ってたけどさぁ!

それは、ダメだろ!ってか俺は無断でそんな事するわけないって信用してたんだぞ!俺の尊厳ガン無視じゃん!

 

 

思わず批難的な目で睨んだけれど、ヴォルは涼しい顔をして俺の手を離すと、空いたグラスに赤ワインを注いで何食わぬ顔で飲む。

 

 

俺は自分の胸に手を当てて目を閉じ、意識を集中させた。

俺の、魂の輪郭をなぞれば──ああ、くそっ!マジで別の魂が身体の中にある!うっ…わかったら、なんか…こう、変な感じだ、体の中に別のものが入っているなんて──出来れば知りたく無かった異物感がある。

 

 

「マジか…」

「ノアも、僕を分霊箱にしてもいいよ」

「何でそうなるんだよ…」

「共に、生きてくれるんでしょう?」

「それとこれは話が別だ!」

 

 

頭を抱えて唸れば、ヴォルは楽しげに笑っていた。自分の手で俺の感情が揺れるのが面白くて仕方がないらしい。──性格が歪んでる!サディストか!いや!昔っからサディストだな!

 

 

──ああ、そうか!

俺がヴォルの夢を見たと思っていたのも、魂が繋がっていたからだ。そういや原作のハリーも同じような事になっていた。

 

それに、ヴォルの日記!流石に魔力注ぎ込むだけじゃ実体化なんて無理だったんだな。その時は俺が最強の魔法使いだから不可能を可能にしたんだと思っていた。だけど、違う。魔力だけじゃなくて、俺の中にあるヴォルの魂が影響していたのか!

 

魂、リリース出来ないかなぁ。

……、…ダメだ、俺の身体からヴォルの魂を引き剥がす事は出来そうだけど、返す事は出来ない、俺の直感がそう告げてる。それをした瞬間にヴォルの魂は消滅するだろう。

ヴォルの魂を、壊す事は──俺には出来ない。

 

 

「──っ…日記と、指輪と…俺だけだな?」

「うん、そうだね」

「…あっさりと白状しやがって…」

「ずっと、僕は言っていたつもりだ。気付いてないフリをしてたのか、本当に気付かなかったのか──ノア、君が欲しいと」

「…俺の鈍感さを舐めるなよ?何年人の気持ちを見て見ぬフリしてたと思ってるんだ!」

「清々しいほどに、自業自得だね」

「ああ、全くその通りだ!」

 

 

だからこそ、ヴォルを本気で責められない。

きっと俺がもっとヴォルを理解していたなら、簡単にその可能性に辿り着いていただろう。……ってか、分霊箱にするのって戦いにならねぇの?ヴォルは本気で俺と生きる為だけに分霊箱にしたって言うのか?

 

俺はソファの背に身体を預け、足を投げ出して暫く黙った。

多分、俺が思う以上に──ヴォルは俺に執着してるようだ。それが分かった今…やっぱり──メイソンを呪ったのは、ヴォルなんだろうな。

 

 

「ヴォル、お前メイソンの親と、メイソンを呪っただろう」

「ああ…うん、だってあいつのせいでノアはマグル界に進出なんて馬鹿な事をさせられていたからね。結局、マグル界に出たせいでノアは銃撃を喰らったんだし──もっと早めに処理してれば良かった」

「……」

 

 

黙り込んだ俺を見て、ヴォルは薄く微笑みながら白い皿からチョコを手に取ると、体を俺に寄せ、手を伸ばし──俺の唇にチョコを押し付ける。

 

 

「食べなよ、ノアはこれが好きだよね」

「……、…」

 

 

薄く口を開けばヴォルの冷たい指がチョコを押し入れて、唇に触れた。

ああ、クソ苦い。

 

 

「ヴォル。俺は本心を言うと決めた」

「うん、…それが?」

 

 

胸に沸々と湧き起こるのは、俺の後悔からくる怒りだろう、その相手はヴォルでもあり、俺自身でもある。

 

俺はソファに預けていた背を起こし、ヴォルを見た。ヴォルも、俺から視線を離さない。

これは、今までの俺ならヴォルには言わなかったかもしれない。けれどヴォルが俺の心を理解する為には必要な事だ。

 

 

「ヴォル──ヴォルデモート。お前が俺にした事は俺を傷付けている。俺に対する戦いだ」

「何を…誓いは反応してない。僕の行動は、ノアを傷付けてなんか──」

 

 

やっぱり、ヴォルにとっての判断基準はそれだったか。

ヴォルは、誓いが自らの首を絞めないから、こうして俺の心を攻撃し続ける事が出来る。──そりゃそうだ、ヴォルは俺の心なんてわかっちゃいない。お互いに、一切分かってなかったんだ。

 

 

「それは、ヴォルがそう思い込んでるからだ。俺にとって──メイソンは大切な人だった、死んで、呪われて、それを知った時…俺の心は間違いなく傷付いた!」

 

 

胸の奥から溢れ出る感情のままに叫び、俺は立ち上がる。ヴォルを見下ろせば、ヴォルは本当にそんな事を一切考えなかったのだろう、驚愕し目を見開く。

 

 

「っ…俺は!マグル界の制圧なんて、彼らを奴隷化する事なんて…虐殺なんて望んでない!俺はあのままの世界が好きだった!愛していた!──っだから、ヴォル、お前がした事は…俺の心を攻撃しているのと同じなんだよ!」

「何、を──」

 

 

ヴォルは小さく呟いた。俺の辛そうな表情と、叫びの意味に──それが嘘ではないと理解したヴォルは、目を一瞬揺らした。

 

 

「ぐっ…!!」

 

 

途端に苦しげに身体を曲げ、喉を掻きむしる。その手すら、細かく震えていて誓いの凶暴性がよくわかる。

今までしてきた事の意味に気付いたヴォルに、血の誓いはその行為を許さない。ぶつんとヴォルの首元から飛んだ誓いのペンダントは机の上に落ち、その鋭利な切っ先を机に突き立てギリギリと長い傷を作る。皿やグラス、ワイン瓶が倒れ床に落ちて割れた。

 

ヴォルは、身体を曲げたまま呻き、もがく。うまく呼吸が出来ない程に、その誓いはヴォルを責める。

 

 

攻撃を考えるだけで、その気配を察知する誓いだ、自分が何をしたのか理解したヴォルを襲う苦しみは、俺が経験した以上のものだろう。

 

 

「っ──ぐ、ぅっ…!」

「…理解しただろ?だから、もうそれを考えるのは止めろ。──じゃないと、誓いが手脚を裂くぞ」

 

 

苦しげに呻き、身体を震わせ額に汗を滲ませるヴォルを見下ろしながら呟く。

……苦しそうだな、マジで。……誓いを破棄した方が良いか?

机に無数の傷をつけるペンダントは真っ赤に光り輝き、裏切りを許さず怒り狂っているようだ。

 

 

「考えを止めないなら、誓いのペンダントを破壊する。このままだと──」

「っ…駄目だ…!」

「……死ぬぞ?」

 

 

息も絶え絶えにヴォルは叫び、苦しげに俺を睨む。ペンダントを破壊されるのが嫌なら、さっさと考えを改めないと──本当に、誓いがヴォルを殺しかねない。

 

 

「ヴォル」

「──だ、めだ…!」

 

 

ヴォルは強く目を閉じ、絞り出すように吐き出す。

すると、ようやく──ようやく、誓いのペンダントは動きを鈍くし、机からヴォルの首元に飛んでいった。

 

しん、と鎮まる部屋にヴォルの荒く苦しげな呼吸音が響く。暫く呼吸を整えていたヴォルは、ゆっくりと袖を捲り──青白い肌に残る鎖の赤黒い痕を見下ろしていた。服で隠れて見えないが、きっと首にも同じような痕が残っているだろう。──所々肌の色が一部違うのは、分霊箱を作ったせいで出来た痕だな。

 

 

 

「──わかっただろ。これで、ヴォル。お前はこの誓いがある限りマグル界を制圧できない。俺の信者を利用しての虐殺と、戦争の誘発は不可能になった」

「…、…」

「──血の誓い、壊すか?多分、俺には出来るけど」

 

 

 

ヴォルは胸あたりの服をぐっと掴む…きっとその下にペンダントがあるんだろう。俺の行動を今まで縛っていたように、これからはそのペンダントがヴォルを縛る。

 

誓いに苦しめられていない今、ヴォルが破壊を望むのなら。

それは──多分、俺との決別も、意味する。

俺を傷付けていると分かった上で、マグル界を制圧したいのなら、俺はヴォルと戦わなければならない。誓いがなくなれば、それは簡単に出来るだろう。

側に居る、ずっと側にいたい。──だけど、 幼馴染(ヴォル)の愚行を止めるのは俺の役目だ。

 

 

ヴォルは前髪をかきあげ、長く細いため息をついて椅子にもたれかかる。

そのまま手で顔を隠した。──表情を読まれないようにしているんだろうな。

 

 

今、ヴォルは揺れているのだろうか。

誓いのペンダントは間違いなくヴォルを縛る。だが──俺を縛る事も出来る。

ヴォルは世界に対して、俺が傷付くような事を行使出来なくなったが、今はまだ──俺も、ヴォルに対して何もできない。完璧なまでに均衡状態だ。

どちらの方がメリットがあるのか、考えを巡らせているのだろう。

ヴォルはかなり、長い間黙っていたが、ようやく顔から手を離すと感情を欠いた瞳で俺を見る。その目は、薄らと赤く光っていた。

 

 

「ノア、君はどうしたい?」

「え?…俺?」

「僕にばかり決めさせるのはフェアじゃない。…本心を告げると、決めたんだろ?…どうしたい?」

 

 

聞かれるとは思ってなかったな。

うーん、どうしたいか…ねぇ。

ぶっちゃけ、厄介な誓いだと思う。言いたいことも中々言えないこの誓いは破壊した方が間違いなく良いだろう。

けれど、そうすれば──きっと、ヴォルは俺に失望する。うん、多分。俺がそう思うんだから、間違いない。

 

 

「破壊したくない、かな。…厄介な誓いだとは思う。そのせいで2年も外に出れなかったし色々不便だったからな!…けど、まぁ──その誓いが、ヴォルをもう2度と傷付けないのなら…」

「…ノアの為だと…思ってたんだけどな」

 

 

ヴォルはぽつりと呟いた。

彼らしくない、弱々しい微かな自嘲混じりの声だ。

 

 

「わかってるさ、だから誓いはヴォルを傷付けなかったんだし。別に、恨んでない。辛くないかと言われると…ま、嘘にはなるけどさ。メイソンは戻らないから」

 

 

死者を蘇らせる事も、俺なら出来るが、俺たちと同じような生者にはなれない。ゴーストでもない別の存在になってしまう。それを死んだ彼らは知っている。多分、死んだ後に天啓のように理解するんだろう、もう世界には戻れないと。

 

 

「…誓いは、壊さない」

 

 

ヴォルは、はっきりと断言した。

色々なものを秤にかけた上で、それを決めたのなら──うん、これで俺の考える世界に大きく近づいた。

 

 

「──そうか、うん。…それがいいと思う」

「…だけど。…死喰い人達をいまさら止める事は…不可能だ」

 

 

ノアも、それはわかってる筈だ。とヴォルは呟く。

まぁ、それもわかってる。

今、きっと俺は世界に姿を見せる事が出来るようになっている。

ヴォルが俺に対しての攻撃を今──考えていないのなら、俺が世界に姿を表す事は何の問題もなく、誓いは反応をしない。

 

だが、俺が平然と魔法界に戻って、ヴォルが「マグル界の制圧やっぱ止めます」なんて言えば、間違いなく全ヘイトはヴォルに向かうし、全国各地でただ暴れたいだけの無法者が我慢の限界を迎え狂ったように暴動を繰り返すだろう。

最悪、ノア派と純血思想派の死喰い人達の戦争になって魔法界が大混乱する。

 

 

「わかってるさ。そこで、一つ提案だ」

「…何?」

 

 

俺はにやりと笑い、ヴォルに手を差し出す。

 

 

俺と、世界を変えよう(change the world together!)!」

 

 

 

俺は今まで世界を変えるつもりはなかった。

だが、これが()()()()()()()()()()ならば、俺は俺のせいで歪んでしまった世界を正しい形に変えなければならない。

バッドエンドなんて俺は見たくない、どうせなら、ハッピーエンドの方が良いに決まってるだろ?

 

 

「…… 喜んで(I’d love to)

 

 

ヴォルは虚を()かれたような顔をした後、少し呆れたような顔で笑い──俺の手をとった。

 

 

 

 

 





アンケートのご協力、ありがとうございます!
ヴォルはノアの前だけ昔のように話し、他の人の前にはヴォルデモート卿らしく話します。


察しの通り私は過去のと対比が大好きな人間です。
英文は自信がないので間違えていましたら温かい目でスルーお願いします…
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