チート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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57 清き魂?

 

 

「一面の森であるっ!」

 

 

ヴォルと再開してから数日後。

俺はアイスランドにある鬱蒼とした森を訪れた。目の前には森…というか山と、大きな滝がある。

かなりの落差がある荘厳な滝が美しくて素晴らしい!マイナスイオンでまくりである。ちょっと寒いけど。

 

 

「こんなところで…何の用事?」

「んーちょっと探しもの」

 

 

俺の少し後ろにいたヴォルは、滝から細かな水の粒子が飛んできてるのを嫌そうに見つめ、杖を振るって自分の周りに透明な壁を作った。

 

 

「探しものって?」

「麒麟」

「…麒麟、…って。…ここにいるの?…本当に?」

「ああ、昨日占っただろ?水晶玉はこの滝を写したって事は、間違いなくこの辺にいる」

 

 

麒麟とは、魔法界においてもっとも尊い魔法生物である。

人の魂を見ることが出来て、過去には魔法界の次の指導者を決める役割を担っていたとか。グリンデルバルドは昔、麒麟を使って国際魔法連盟のトップに君臨し、魔法界の指導者になろうとしていたって過去の記事──というか、グリンデルバルドの事を書いた本で読んだ。

国際魔法連盟を黙らせるには、やっぱ麒麟を使役させるのがもっとも手っ取り早いだろう。エリートには俺の呪いが効かないかもしれないし、一応、考えられる保険はかけておくべきだ。

麒麟の居場所を占った時にこの目の前にある大きな滝が見えた。勿論地理や観光名所に疎い俺は全くこの滝がどこの国にあるのかはらわからなかったが。ミネルバが暫く考えた後「アイスランドにある滝ですね」と教えてくれた。滝の場所を調べて実際見てみれば、水晶で見た滝と全く同じでミネルバの言葉は間違いではなかったのだ。…何でみんなそんなに外国の観光名所とか地理に詳しいんだろ。俺が興味ないだけか?

 

 

 

「…麒麟まで呪うつもり?…グリンデルバルドの二の舞になるんじゃないかな」

「そんな罪深いことしねーよ。ふつーにお辞儀してもらうんだよ」

「……ノアに、首を垂れるかな…」

「は?余裕だろ。俺の魂ほど完璧なものはない!」

 

 

いや、無理なら諦めるけどさ。

俺の美貌とチート能力が宿る魂なら、いけるんじゃね?ってわりと思ってたんだよなぁ。だって、ユニコーンだってキメラだって…どんな魔法生物とも話せるんだ。お辞儀の一つくらいしてくれそうじゃね?

 

久しぶりに杖を振るいながら「 導け(ギィディッド)」と魔法を放てば、杖先が白い光線を放ち道なき道の中に道標をつくる。

さくさくと歩いていけばしばらく無言だったヴォルは難しそうな顔をして「どうだろ、無理じゃないかな」と呟く。

 

 

「そうか?わりといける気がするけどなぁ」

()()()()()()ならね」

「は?……あっ!」

 

 

一瞬、意味がわからなかったが直ぐに察してしまい、あちゃーと顔を抑える。

ヴォルは「忘れてたの?」と呆れたような声で言った。

忘れてた。魂が2つ入ってる場合麒麟はどんな反応するんだろ。

 

 

「本当。馬鹿だね」

「そうか…俺の中にはヴォルの魂があったんだ…麒麟がヴォルにお辞儀──」

 

 

ちらり、とヴォルを見る。

清き純粋な魂にしかお辞儀をしない麒麟。

 

 

「──するわけねぇな!」

「…ま、それは僕も同意する」

 

 

ヴォルの魂が清くて純粋なら、多分世界中の魂は聖人の魂ということになるだろう。

いや、まぁ、ヴォルは()()()()真っ直ぐで純粋かもしれないが。普通に殺人してるし、魂分けてるし、お辞儀される可能性が微塵もない。

 

 

「うーん…ま、無理なら良いさ。麒麟はいわば保険だから。…とりあえず会ってみよう」

「麒麟か…本物は、見たことないな」

「俺も無いなぁ。ってか、かなり 希少(レア)らしいし?」

 

 

個体数は驚くほど少ないらしい。

別に魔法使いに乱獲されたとかではなく、単純に寿命が長く、魔法族から大切にされている麒麟はかなり強いらしく、天敵も少ない。

つまり、無理に子孫を大量に産み出す必要が無いのだ。何十年──いや、百年以上を生きる麒麟は生涯に1度か2度しか出産を行わない。寿命に対して回数が少なく、結果あまり個体数が増えなかったのだろう。…まぁ、絶滅するほどでは無いけど。

 

 

森の奥へ進むうちに、気がつけば上り坂になっていた。ふ、普通に急勾配でしんどいっ!

いや、ほら、魔法使いって肉体派じゃないから!ぶっちゃけ、魔法で何でもする癖がついてて若干筋力の衰えを感じるっていうか…!

 

 

「き、筋トレしなきゃなぁ…」

 

 

モデルやってた時は、一応ストレッチとか軽い筋トレをしてたからな、勿論俺は筋トレなんかしなくても世界一美しかったけど、やっぱ…有る程度引き締まってた方が、さらに魅力はアップするし。

 

荒くなってきた呼吸を落ち着かせるために一度足を止めて大きな木の幹にもたれかかる。もし、山頂まで行くのなら、まだまだ距離はある。

 

 

「よし、飛ぶか。──ヴォル、ついて来れるか?」

「…誰に言ってるの?」

「ま、そーだよな」

 

 

ちらりとヴォルを見れば、ヴォルは不敵な笑みを見せた。

いや。偉そうに言うけどあの飛び方教えたの俺だからな?新しい移動魔法を習得した時はわりと嬉しそうにして何度も家の中でささーって移動してたのになぁ。

ふわりと浮いて、そのままヴォルに向かって合図を送り速い速度で移動する。時々後ろを振り返れば──うん、ちゃんとついてきてる。

アルバニアの森でやったように木を退けて、森の奥へ、山頂へと向かい、開けた場所に辿り着きようやく地面に降り立った。

 

 

ヴォルにこれ以上近付くなと手で合図し、白い光線が示す暗がりの中にゆっくりと向かう。

 

草が生い茂る中に、体長3メートル程で、鹿に似ているが顔は龍のようであり、尾は牛、蹄は馬。全身が鈍色の鱗で覆われた麒麟が黒々とした眼で俺をじっと見つめていた。

 

 

「…何…」

「こんにちは、俺はノア・ゾグラフ」

 

 

麒麟の声は透き通り、よく耳に馴染む美しい声だった。

俺が話しかければ、麒麟は耳をぴくぴくと動かし、少し、首を傾げる。

 

 

「言葉…わかるの?」

「ああ、そうだ。俺はお前に危害を加えるつもりは無い…なぁ、俺の魂は、お前が納得する正しいものか?」

「……うーん…?」

 

 

芝生の上に座っていた麒麟は立ち上がって俺に近付き、ふんふんと匂いを嗅ぎながら俺の胸あたりをじっと見つめた。

 

 

「不思議な魂だね…清くて穢れが無い。全てを愛して、受け入れる…至高の魂だ…」

 

 

おっ、割と好印象?

お辞儀あり得るんじゃない?──と、思ったが麒麟は俺の目を見てパチリと瞬きをし「なんで魂が二つあるの。小さい方の魂は、導き手になれないよ」と続けた。

 

 

「そっかー。…お辞儀はしてくれない?」

「魂が2つある生き物なんて初めて見たけど…」

 

 

麒麟は少し考えた後ぷるぷると首を振った。

そっかー残念だなぁ、やっぱヴォルの魂が入ってる俺には無理か。

 

 

「ノア、君の魂は…不思議。…もう一つ大きな方の…魂は……なんだろう…」

「ん?…おお」

 

 

麒麟は俺の胸元にすりすりと頭をつけ、甘えるように「うーん」と言うと尻尾を振った。

 

 

「凄く…居心地が良い、ずっとその魂を見ていたいって思うんだ」

 

 

とろんとした声で麒麟は呟く。俺がそっと艶やかな鱗に覆われている体を撫でれば、嬉しそうに目を細め俺の肩に顎を乗せた。

なんか、めちゃくちゃ大きな犬みたいだな?尻尾ぶんぶん振ってるし。

 

ふと、麒麟は離れた場所に立っているヴォルに気がつくと耳を素早く動かし、俺から体を離す。

もう1人いるとは思わなかったのかな?なんか警戒してるし。

 

 

「…ノアの中にある魂と──同じだ」

「ああ、そうそう。あいつの魂が俺の中に入ってるんだよ」

「ふーん。…だめだね。清く無い。濁ってるし、傷ついてる」

 

 

ばっさりと言い切る麒麟は嫌そうにいった。

まぁ、殺人してるからなぁ、一度だけで魂は穢れて引き裂かれるし。

 

 

「ヴォル、お前の魂は清く無いってさ」

 

 

にやりと笑えば、ヴォルはどうでも良さそうに「だろうね」と答えた。

ま、ヴォルも自分の魂が清く無いって事は当然だとわかっているのだろう。

かといって、マジで俺の魂が清いとは思わなかったけどな。たしかに俺は世界一の魔法使いで、何よりも素晴らしい魔力が育つ魂がある。

けれど、今考えているのは──世界征服だし。…世界統一か?

 

 

「ノアの中にある、アレの魂。分けれないの?それが無くなれば…」

 

 

麒麟は俺のこと目をじっと見る。

ヴォルの魂を取り出せば、お辞儀をするよって事だろう。

だけど、俺にそれは出来ない。

ちょっと困ったように笑って、麒麟の綺麗な顔を撫でた。

 

 

「分けれるけど。それするとヴォル──アイツの魂が消えちゃうからさ。大切な奴なんだよ、そんなこと出来ない」

「……そう」

 

 

綺麗は俺の手に擦り寄り、暫く沈黙した後頷いた。

 

 

「──じゃあ、ノア。私の背に乗っていいよ」

「え?…乗る?飛べんの?」

「うん。勿論」

 

 

それらしい羽はないけど。麒麟って飛べたんだ?あんまり生態について詳しく書いてある図鑑も無かったからなぁ。

麒麟は脚を折り、俺が乗りやすいように体を下げる。…一見すると、これもお辞儀っぽいな?

 

乗らせてくれるなら、まぁ──乗ってみるか。

 

麒麟の背にひょいと飛び乗り、首元にそっと手を出して添える。

途端に麒麟はぐっと立ち上がり、そのまま強く地面を駆け──当然のように飛び上がり何もない空を踏み締めて飛んだ。

 

 

「おおーー!す、すげえ!」

 

 

守りが一望できるほど飛び上がった麒麟は何もない所で止まると、「空って気持ちいいよね」と楽しげに言った。

確かに、悪くない。箒とも飛行術とも違う、生き物と一緒に空を駆けるのは、また別の感覚だ。

 

 

日の光を浴びてキラキラと輝く川の上を、麒麟は滑るように走る。羽もないのにどうやって飛んでるんだろ、まぁ確かに、麒麟って飛ぶイメージはあるな。飛ぶって言うか、空を走る?

 

 

「ねぇノア。私たちが人間を背に乗せる意味、知ってる?」

「え?なんかあったのか?」

「友好の証だよ」

「へー!ありがとう!」

 

 

確かに、お辞儀よりよっぽどわかりやすい友好の証だ。

そういや魔法生物は賢くて背に乗せることを特別視する生き物が多いよな、ヒッポグリフとかケンタウルスみたいに。

……ふぅん?

 

 

「なぁ、俺と──」

 

 

麒麟は特に考えることなく「いいよ」と答えた。その声はとても嬉しそうで、俺の魂とそばに居たいってのはどうも本当らしい。

 

 

暫く空のお散歩を楽しんだ俺と麒麟は、ヴォルの待つ広々とした空き地に戻った。

ひらりと地面に着地し、麒麟の頭を撫でれば、また嬉しそうに尻尾をぱたつかせた。うーん、かわいい…。

 

 

「よし、じゃあ帰るか」

「…なんの成果もなかったね」

「いや?そうでも無いぜ?」

 

 

ニヤリと笑い、麒麟の首を撫でる。

…逆鱗があったらどうしようかと思ったが、首の下あたりに少し違う向きで生えている鱗はなさそうだ。

 

 

 

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