あれから俺は賢者の石もどきを2つ作り上げた。
姿を変えてノクターン横丁で必要な素材を買い、グリンゴッツに行きお金をおろした。いつの間にやら金が増えていたけど、多分まだ発売されてる写真集の売り上げが自動的に入ってきているのだろう。まじで働かなくても暮らしていけるなこれ。
そういや、ヴォルに「家のローン返済滞ってますが?」と言ったら全力で無視された。…まぁ、今革命家?侵略者?として活動してるヴォルは実質無職だから金なんて無いのかもしれない。……もしかして俺の金庫から勝手に金使ってたりするのだろうか。…いや、いいけどさ。今は共犯者みたいなもんだし。
今日は8月31日。明日からホグワーツでは新学期が始まる。
その前に俺は、一つやらなければならない事がある。
「こんばんは、ダンブルドア先生」
「……こんばんは、ノア」
俺が姿現しで校長室に現れても、ダンブルドアは特に驚くことはない。ただ、静かな目で俺を見ていた。
「俺、明日からここには来ません、今日はそのご挨拶にきました」
「…理由を、聞いてもいいかね?」
「そのつもりです。…ほら、時間も残ってますしね」
部屋の中央にいつものように椅子と机、紅茶セットを出現させて座り、両手を広げて「どうぞ?」と促せばダンブルドアは無言でその席についた。
「俺、ヴォルに会いました」
「…それで?話は出来たのかのう」
「ええ、出来ましたよ」
「…血の誓いは?」
「継続中です、ヴォルは破棄を望みませんでしたし、俺も…まぁ、望んでません」
紅茶を一口飲めば、ダンブルドアは探るような眼差しで俺を見据え、長いため息を吐き出した。
「ダンブルドア。俺は──ヴォルと共に生きます」
「それは…わしに対する宣戦布告ととっていいのかね?」
きらりと眼鏡の奥の目が光る。
その眼差しは生徒達に見せる柔和で優しいものではなく、肩書きを捨てたアルバス・ダンブルドアというただの魔法使いが見せる、冷たいものだった。
俺は、この人が好きだ。誰よりも自分に厳しく、誰よりも賢く、理解してしまうからこそ自分の心を殺す事になっても世界の正しさを求める。
この人の心が、好きだ。
だからそんな目で見られると…ちょっと辛い。だけど、俺はこの世界で俺の物語を終わらせると決めた。
俺の世界はこの人にとっては正しくないのかもしれない。──だけど、何が正解かなんて、結局、最後に世界に立ち続けた者が正解に、なるのだろう。
「俺は、俺が思う正しい世界に変える。…大丈夫です、前に言ったように…マグルの制圧は望んでません。魔法界とマグル界がお互いを周知し、混ざり合う。そんな世界に変えます。もし、あなたが…俺の世界を否定するのなら──そうなるかもしれませんね」
「ノア…不可能な事を夢見るほど、君はまだ子どもだったのかね?」
呆れて、揶揄うようなその言葉に、俺は小さく笑った。
「ダンブルドア。…あなたは夢を見ない、つまらない大人になってしまったんですか?」
輝く妄想に焦がれ夢を見る。
それは子どもだけに許された権利ではない。大人だって、誰だって、望めば──そう、なんだって出来る。世界に縛られ、責任を学んだ大人は、それを忘れがちだけど。
俺の言葉にダンブルドアは沈黙した後、悲しそうに笑った。
「わしは、子ども達に夢を見させる…そう、在りたいのじゃよ」
ダンブルドアは紅茶に一切手をつけず、立ち上がった。その手には、杖が握られ俺へ向けられている。
「ダンブルドア。俺と戦うつもりですか」
「わしは、君を止めなければならん」
「──その杖。ニワトコの杖でしょう。いいんですか、所有者が変わりますよ」
「…この杖の事を、何故それ程知っているのかね」
「──さあ?」
俺は笑って、目の前にある机や紅茶セットを消し、そのままぐるりと世界を反転させた。
校長室が突如真っ白な世界に変わる。薄ぼんやりとした地面しか見えない、無限に続く白い世界。現実と非現実の狭間に隔離されたがダンブルドアは全く動揺せず、俺に杖を振るう。
杖先から出た白い光線を手で弾き、そのまま威力を倍増させ反射させる。その先にダンブルドアはいなくて、すぐに俺は杖を取り出し後ろに光線を放つ。
何度も姿現しを繰り返し、そのたびに白い光線が飛び交い互いの脇をかすめていく──死の呪文を放ってこないのは、ダンブルドアの優しさ、なのだろうか。
接近戦では埒があかないと思ったのか、ダンブルドアは離れた場所に移動し、杖を天に向けて掲げる。途端に何も無かった白い空が暗雲に覆われ、雷鳴が轟く。
「──やべっ──うぉ!?」
カッと世界が白く光った途端、鼓膜が破れるかと思うほどの轟音、咄嗟に頭上に防壁を貼ったがびりびりと手が痺れた。
とんでもない雷撃に、肌がぴりぴりと痛む。
ダンブルドアは自然現象をも作り出すのか!俺って自然現象だけは、ちゃんと守らないと当たっちゃうんだよなぁ。普通の魔法はオートで弾けるけど。
足元を見れば、真っ白な床が真っ黒に焦げて地面が抉れてる。なんつー威力だ、直撃したら普通に死んでるぞこれ!全然優しくねーわ!
またも頭上の雷雲が怪しい音を立てていて、俺は腕を大きく薙ぎ、烈風を出現させ黒々とした雲を飛ばす。ついでに特大竜巻をいくつも発生させ、そのままダンブルドアの元へ四方八方から挟み込むように突き進めた。
──あ、やり過ぎた。
一瞬、殺してしまったか。と思ったが、微かな地響きが鳴り、そのまま足元が大きく揺れる。
「流石、ダンブルドアは強いなー」
地面に立っていることが出来ず、ふわりと浮いて足元に出来た大きな地割れを見下ろす。地獄まで続きそうな程深く割れているその先は真っ暗だったが──暗黒の中に真っ赤な物がぐらぐらと蠢いているのが見え、再び守りをかけ直す。
地下から爆発し流出したのは、灼熱のマグマだろうか。俺の守りを破るほどではないが、じわりと熱が伝わる。…めちゃくちゃ殺すつもりなのか、俺なら防ぐことができると思ってるのか。
ダンブルドアの強みは、底知れぬ魔力と魔法センスだろうな。自然現象をここまで自在に操り、膨大な魔力を消費する魔法を連発できる魔法使いが、世界で何人いるんだろ、俺とダンブルドアと…ヴォルもいけるのかな?
魔力切れるまで続けるつもりなのかなぁ。ダンブルドアが俺の魔法をどれだけ防げるのかわからないから、下手に魔法使いたくないし。…実は、人と戦うなんて初めてだから、手加減出来ないんだよなぁ。
「ま、そんな事も言ってられないか」
杖を振るい、足元から出ているマグマを一瞬で全て凍らせる。
10メートルくらいあるだろうか。尖った形のまま固まった氷塊の上にふわりと降り立ち、軽く爪先で弾けば、氷塊はパッと小さな無数の粒になりキラキラと拡散した。
そのまま地面へ落下し──衝突の瞬間、自分の足元から放射線状に閃光を走らせた。
「──くっ…!」
ダンブルドアはその光を弾いたが、無数のそれはただの光ではなく、一本の光が防壁を貫きダンブルドアの胸を貫いた。
球体のようなダンブルドアの防壁は、無数の穴が開き──じわじわと解けていく。
俺はすっかり地割れしまくって元の白い世界のかけらもない床をゆっくりと歩きダンブルドアの元へ近づいた。
ダンブルドアは、胸を押さえて膝をついている。眉間に皺を寄せ──俺を睨み上げる。
「何を──」
「ま、ちょっとね」
杖を振るい、ダンブルドアの手からニワトコの杖を奪う。めちゃくちゃ強いよなこの杖。俺はいらんけど…間違いなく所有者変わったし、どうしたもんか。
「動けないですよね?」
まあ、そりゃそうだ。俺はダンブルドアを地面に動けないように固定している。
ニワトコの杖は俺の手元にあるし、流石に杖無しで魔法を放ってくる事は──あっても、自然現象を創造する事は出来ないはずだ。
「さてさて、──仕上げです」
俺は杖先をダンブルドアの額につける。
ダンブルドアは、覚悟を決めたみたいな目を向けるだけで、俺に恩情や情けを乞う事はない。
「…ノア、どうか。──正しい世界を作ってくれ」
「ええ、勿論、そのつもりです」
最後まで、尊い人だった。
信念を曲げず、自分を貫き通す。
ダンブルドアは目を閉じる事なく、キラキラとした青い瞳で、俺を見ていた。
そして、俺はダンブルドアに──呪いを放つ。
現実と非現実の狭間の世界から戻った俺は、特に何も壊れていない校長室をぐるりと見渡す。
変化は、校長であるダンブルドアが居ない事だろう。
「あー疲れた。俺、戦いって向いてないわ」
ため息を吐き、肩を揉み首を左右に倒せばごきっと音がした。
「ねーダンブルドア、そう思いますよね?ってかあなた俺殺す気満々だったでしょ。俺じゃ無かったら即死でしたよ」
後ろを振り返れば、困惑し声も出せないダンブルドアが立っていた。
「これは──…何、…何を…」
「めちゃくちゃ美少年ですねぇ!」
俺の胸の高さほどしかないダンブルドアを見下ろせば、ダンブルドアは困惑したまま自分の皺一つない手を見て、俺を呆然と見上げる。
理解できずわけがわからないと言った顔のダンブルドアの前に大きな姿見を出現させれば──ダンブルドアは、ぽかんとした顔で自分の姿を見たあと、いつものように頭痛がしてきたのか、頭を押さえた。
「……ノア、戻しなさい」
「嫌です。あ、ねぇせっかくなんで写真一枚いいですか?若きアルバス少年と!」
ダンブルドアの見た目は、多分ホグワーツ入学前くらいだろう。
ただ姿を幼くしただけではない。ちょっと彼の魂の時間を一時的に奪い、過去に戻した。記憶を失ったら面倒だったから、記憶だけは残したけど。
わざわざ幼くさせたのは、魔力の根源である魂を戻せば──ダンブルドアも人だ、この年齢の時に使えた魔法しか、使えなくなる。使おうとすればある程度は可能かも知れないが、それには魔力がどうしても不足していて結局、使い方が分かっても使いこなせない。
擬似、逆転時計魔法というべきだろうか。あれは中身も戻ってたけどなぁ。
イケオジだったからきっと美少年だったんだろうなぁ、って思ってたけど。…うん、美少年だな。
「そんなだぼたぼの服じゃなくて、可愛いのに変えてあげますねー」
指を鳴らし、俺が幼いときに着ていたような白いシャツと黒い半ズボン、サスペンダ、白いハイソックスに服装を変えれば──完璧な美少年の出来上がりである!
そのままくるりと手を反転させカメラを出して写真を撮れば、笑顔の俺と額を押さえたままのダンブルドアが写った。
「あ、ニワトコの杖どうします?所有権移ってますけど。自分の杖ってあるんですか?」
「……ああ、ある…」
「そ?んじゃいいや」
俺はくるくると指先で弄んでいたニワトコの杖をポケットの中に突っ込んだ。ダンブルドアはじっと杖を見てたけど、返せとは言わない。
「この、呪いはいつとけるのかね」
「ん?」
にっこり、と笑えば、ダンブルドアの表情が変わる。
もしかして一生このままなのか、と愕然としてるダンブルドアの肩をぽんぽんと叩けば鬱陶しそうに振り払われた。
「ははっ!明日までには、解きますよ。校長先生が美少年じゃあ…みんな困りますしね?」
俺が解かなければ一生このままなんだけどな。まぁ、このまま…というか、この年齢から歳をとりなおすって言った方が確実だけど。
「ダンブルドア、世界を変えた後、また会いましょう!」
俺は苦い表情をしているダンブルドアの前から、パッと姿を消した。
アンケートご協力ありがとうございます!
参考にさせていただきます。
ヴォルとノアの関係について。匂わせ程度にしか2人の関係を示唆していませんが、今後どんな未来がみたいですか?
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このまま変わらない、あくまで親愛。
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恋愛の意味での愛に気がつく。
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さっさとノアは抱かれるべき。