チート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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61 クリスマスプレゼント

 

 

クリスマスの日。

この日に俺のオフショット写真集は魔法界とマグル界に同時発売された。

何の事前情報もなかったいきなりの発売に、ファン達は喜びの悲鳴を上げ写真集は飛ぶように売れた。

魔法界でもマグル界でも常にSOLDOUT、品薄状態になり、一冊の写真集を巡って乱闘まで起こっているようだ。

俺の名前と姿を世界中が思い出し、過去に思いを馳せつつ奇跡の人を亡くしたという事実を思い出し──まぁそれは誤りだが──悲しみにくれていた。

1月11日には、マグル会で大きな祭りごとが行われる事が決まったそうだ。慌てて決まった事だが、ノアを悼み思い出すイベントとして俺の等身大よりもおおきなパネルが用意される予定だと、マグル界の動向を探っていたマートルが教えてくれた。

 

 

クリスマスは家族か恋人と過ごす日である。

だが俺には家族も恋人も残念なことに…まじで残念だがいない為、家でヴォルと、麒麟と過ごしていた。

 

 

「男2人でクリスマスって…」

「今更だね」

「いや、まぁそうだけどさぁ…」

 

 

カナッペとローストした七面鳥をつまみにスパイスを加え軽く煮出したモルドワインを飲む。ちなみに、この料理は買ったわけでは無くヴォルが作った。勿論魔法を使いながら料理していたが、凝り性なのかなんなのか…見た目もホテルとかで出てきそうなほど普通におしゃれで豪華だし、味も美味しい。

 

まぁしんみり飲んで食べるのは性に合わないしつまらない。

せっかくだから2人だけだけど楽しもうと、あらかじめ買っていたなんか無駄にでかいクラッカーを取り出し、思いっきり紐を引っ張った。

 

 

「メリークリスマーース!!」

 

 

と、言いながら引っ張ったつもりだったけれど、俺の声はクラッカーから出た爆音によりかき消された。

大砲でも撃ったのかというほどの轟音に、耳鳴りがし、頭の中で爆発音が鈍く反響している。魔法界のクラッカー凶悪すぎないか?

 

 

ヴォルは嫌そうに眉を顰め、クラッカーから飛び出た色とりどりの紙吹雪やハツカネズミと白兎、クリスマスツリーの形を模したネオンがぎらつく三角帽子を見る。

 

 

「五月蝿すぎる」

「いやー。凶悪だな」

 

 

俺は部屋の中をぴょんぴょんと跳ねる白兎とすたこらさっさと部屋の端まで逃げてしまったハツカネズミを見ながら机の上にポトリと落ちたド派手な三角帽子を被った。

滑稽なその帽子も、俺が被ると世界の最先端のファッションに見えてしまうのだから、俺ってやっぱりすごいな!

 

 

「そういえば。1月11日に…ノアはどこで姿を現すつもり?イギリス魔法省?…それとも、ホグワーツ?」

「ん?あー。国際魔法使い連盟本部」

「…本部に?…あそこは、姿現しできないようになってるけど…まあ、ノアなら出来るか」

「ああ。…ヴォルを先に転送させるからさ、秘密保持法の撤廃が棄却されたあとに…ま、俺と手を組んだって伝えればいい。俺が死んだと思って信じない人は多いだろうから…その時に俺は姿を現す。ヒーローは遅れて登場するもんだからな!」

 

 

カナッペを食べつつ軽い口調で言えば、ヴォルは「ヒーローよりも、ヴィランだね」と呟く。

 

 

「ヴィランがヒーローの皮を被るんだ。…俺は、そうなる」

「…そうだね」

 

 

ヴォルはワインを飲みつつ薄く笑った。

俺はヒーローにはなれないが、ヒーローを偽る事は出来る。

世界にとって俺がヒーローになるのか、とんでもないヴィランになるのかは俺の魔法にかかっていると言っても過言ではないだろう。

 

 

「…なんか、作戦に綻びがないか不安になってきた」

 

 

世界を呪う。

今まで誰もやった事がない奇跡を俺は起こさなければならない。…うん、俺からいける、大丈夫だ、と自分に言い聞かせてはいたが、やっぱ100パーセントの自信はない。血は流さないと、俺は自分に誓った。勿論、血を流し恐怖で支配する方が、まぁ…手っ取り早いのは事実だが。

 

 

「失敗すれば、世界中で戦争が起きるだけだね」

「…だけって…」

 

 

気軽に言うが、とんでもない事だ。

もし、万が一失敗すれば、闇払い達が死喰い人を捕らえようとし、抵抗する死喰い人との戦いになり──世界中で血が流れる。追い詰められた死喰い人や、ヴォルの思想に賛同していた者は道連れとして沢山の尊い命を葬るだろう。

 

 

「じゃあ、このクリスマスが最後の平和なクリスマスになるかもしれないな」

「退廃した世界で過ごすのも、悪くないと思うよ」

「…物騒な奴だな」

 

 

大きな戦争により退廃した世界でヴォルとダンスを踊るつもりはない。

ヴォルは俺の嫌そうな表情を見て何故か楽しそうにニヒルな笑みを浮かべていた。

 

 

「1月11日に、俺は自分にかけてる防御魔法を消す。ちょっと特別な魔法をかけ続けてるんだけどさ、これめちゃくちゃ魔力消費がえげつないから…流石に、全世界を呪う時の弊害になるし」

「──そう。…わかった」

 

 

ヴォルは暫く黙ってから頷いた。

とりあえずこれを伝えていれば万が一、世界を呪う事が失敗して俺が反動で動けなくなり、俺たちを捕らえようとする魔法使いに攻撃魔法をかけられそうになってもヴォルが守って…くれると信じたい。うん、多分──ヴォルなら守ってくれるだろう。

 

 

「俺の騎士達には流石に荷が重すぎるからな。頼りにしてるぜ?」

「……はいはい」

「そんなヴォルに、ノアサンタからのクリスマスプレゼントだ!」

 

 

俺はじじゃーん!と口で言いながらポケットからニワトコの杖を出した。

ヴォルはその杖を見て少し怪訝な顔をした。…あ、流石にこのつえがニワトコの杖だとは気がつかないか?お伽噺のようなものだもんなぁ。

 

 

「これ、世界最強のニワトコの杖」

「…、…これが?……なんで持ってるの」

「ん?ダンブルドアと決闘して勝って、貰ってきた」

「……いつの間に…ダンブルドアは、死んでないけど」

「殺すわけないだろ。…所持者を殺さなくても、所有権を移動させる方法はあるんだよ。今は俺の杖だけど…いらないし」

 

 

ヴォルの手に渡せば、ヴォルはまじまじとその杖を見つめ指先で撫でた。何百年…いや、千年以上の時を経ているその杖は使い込まれて表面が滑らかな色を放っている。だが、少しも古びた雰囲気ではなく、奇妙な程に綺麗だ。

 

 

「この杖はさ、多分…主人との絆なんて必要無いんだ。ただ力のある者に、強い感情を持つものに渡っていく。…俺は、この杖を本気で必要としていないし──ヴォルは、欲しいだろ?」

「……欲しい。…どうやって、所有権を移すんだ?」

 

 

俺はヴォルの手からニワトコの杖を取り、くるくると指先で弄びながら笑った。

たしかに俺は世界一の力があるが、俺は杖を望んでいないし…今は、強い感情につき動かされてもいない。グリンデルバルドが武装解除魔法で所有権を取り戻したように、ヴォルも俺に武装解除をすればきっとこの杖はヴォルを主人だと認識する。

ヴォルは俺の次くらいには力があり、なおかつ杖を渇望している。

 

 

「俺に武装解除をすればいい。俺が許可してるし、戦いにはならないしな」

「…そんな事で?」

「ああ、ただ…ちゃんと、心からニワトコの杖を望めよ?」

 

 

ヴォルは内ポケットから自分の杖を取り出すと、暫く目を閉じて──薄く赤色に染まる目を開き、俺の手に向かって杖を振るった。

バチッと静電気のような衝撃と共に俺の手からニワトコの杖が離れる。

くるくると宙を回って飛ぶニワトコの杖を、ヴォルはすぐに掴んだ。

 

 

「…本当に、これで?」

「多分な。…試してみるか」

 

 

俺はヴォルの肩にぽんと手を乗せ、現実と非現実の狭間に移動した。

瞬き一つの間で真っ白で淡い世界になった場所に俺とヴォルは立っていた。ヴォルはすぐに辺りを見渡して、ここが先程居た場所ではないと分かると怪訝な顔をしたが──深く突っ込む事はなかった。

 

 

「…悪霊の炎よ(フィーンドファイア)

 

 

ニワトコの杖を軽くヴォルは振りながら低く呟く。

途端に杖先から灼熱の炎が噴射され、それは真っ白な世界を燃やし尽くすかのように突き進む。獅子や蛇、キメラの姿に変わり口を凶暴に開きながら悪例の炎は進むが、焼殺する対象がいる訳では無い為消える事無く何もない空間を燃やすだけだった。

 

 

「あっついなー」

 

 

熱風が髪をあおり、じんわりとした熱を感じる。じんわり、だけで済んでいるのは俺自身に守り魔法をかけているからだろう。

 

ヴォルは目を見開いてその炎を見ていたが、杖を一振りしてぱっと消すと、杖を掲げながら所々ある節を撫でた。

 

 

「…すごいな…たしかに威力が桁違いだ」

「ちゃんと、ニワトコの杖はヴォルの物になってるな。…それがあれば、使えない魔法は無いし、威力も上がる。…ま、うまく使えよ?」

 

 

俺は、既にどんな魔法でも使えるから、必要無いけれど。血の契約があるヴォルなら…変な事には使わないだろう。

 

 

「ありがとう」

「…大事に使えよ?」

 

 

ぶっちゃけ、ホグワーツ創立者の遺品よりもかなり貴重で取り扱いが難しい杖だからな。伝説で、お伽噺とされていた世界最強の杖なんだ。

 

 

俺は指を鳴らし元の世界に戻り、ソファに座り直してワインを飲んだ。

…俺には待ってても無駄な杖だったからヴォルにあげたけど、それを知ったらダンブルドアは怒るかなぁ…。未来永劫頭痛が治らないかもしれないな。

 

ヴォルは大切なものを扱うようにそっと自分の胸ポケットにニワトコの杖を入れたあと、ふと思いついたように俺の目を見た。

 

 

「…威力が上がるなら、ノアが持って世界を呪った方がいいんじゃない?」

「…いや、世界最強の俺と、世界最強の杖が合わさった魔法は──危険すぎる。俺の呪いが効きすぎて、傀儡にする可能性があるからさ。ちょっと思想を操りたいだけだからなぁ」

「…君がいいなら、良いけど」

 

 

呪いすぎても駄目なんだ。

世界を俺に服従させるが、傀儡のような思考のない人形にしたい訳ではない。──ただ、俺が提言する思想を受け入れさせたいだけだ。

 

 

いや、十分とんでもないことか?

…なんか、ちょっと自分の価値観と論理感がヤバくなってきてる気がする。

 

 

 

 

 

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