チート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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最終話 ハッピーエンド 

 

 

俺は暖炉前のソファに座り、何をするわけでも無く目を閉じていた。

がちゃり、と扉が開く音がして、人が入ってくる気配がする。うーん、この足音はヴォルだな。

 

無言のまま入ってきたヴォルは、どうやら俺の隣に座ったらしい。ソファが僅かに沈む感覚がして、すぐに頬にヴォルの手が添えられた。

 

 

「ノア、また暖炉を消したね」

「んー?いや、だって…」

「身体、冷えてる」

「つけっぱなしって怖く無いか?見えないしさー…それに別に寒さ感じないし」

 

 

温かい暖炉の火はおろか、ヴォルの冷たい手の温度も、何も感じない。

マグル界を呪った弊害に、俺は季節の移り変わりを知ることが出来なくなった。

温度だけじゃ無くて、痛覚も消えている。まあ痛みがないのは良いけれど。気がつけばめちゃくちゃ身体が凍えてて動けなくなった事は何度かある。…あーでも、熱いスープ飲んで口ん中がべろべろになったのは困ったなぁ。

 

 

その度に俺の身の回りの世話をしてくれるマートル達はぷりぷり怒っていた。

まあ、聴覚を失わなかったのは良かった。思念を飛ばして話せないことも無いけど。

視力も、人がどこにいるか程度なら気配と魂の魔力を感じる事が出来るし、見えなくても割と魔法でどうにかできる。

 

 

世界を呪い続けてる俺は賢者の石もどきとヴォルの魔力を吸い取り、なんとか生きている。

多分、これが無かったら俺は眠り姫状態に逆戻りしていただろう。

今でも、時々ブレーカーが落ちるように昏睡して二日ほど目覚めない時はある。初めてそうなったとき、ヴォルとかミネルバ達はめちゃくちゃ焦ったらしい。焦る彼らを見たかったなぁ!

 

 

ヴォルはため息をついて、暖炉に火を灯した。熱は感じないし見えないけれど、パチパチと炎が爆ぜる音が聞こえる。

 

 

 

世界は俺が望んだ通りに進んでいる。

マグル界で俺は数々の奇跡の技──という名の魔法を使い、魔法使いの存在を示した。

はじめは大掛かりなドッキリかと思っていたマグルも、俺の姿が20年前と変わらない事や、手品では証明できない魔法の数々に魔法使いの存在を認めていった。俺はその後現れ出した魔法使いの中でも神として崇められ、宗教的な存在になってるとか。

 

 

魔法界でも俺の呪いにかかった人たちが俺の思想を次々と認め、声を上げた。

一人ひとりの声は小さくとも、何億人もの人が声を上げれば…魔法界はそれを無視できない。

俺に賛同する者は姿を隠す事なくマグル界へいき魔法を使い出し──はじめはその度に呪いが効かなかった各国の魔法使いが必死にオブリビエイトをかけたが、俺の写真を見たマグルは一度は忘れてもすぐに魔法についてを思い出し、結局意味がなかった。

 

魔法界からの機密保持法撤廃と、自由を求める声。マグル界からの魔法使いに対する認知に歯止めがかけられなかったこと。そしてなにより──俺が麒麟の背に乗ったという事。お辞儀よりは効果ありそうだなと思っていたが、俺の想像通り魔法界においてかなり重要な意味があったようだ。

 

 

それが原因で結局、俺の知らぬ間に魔法界とマグル界のお偉いさん達が話し合い、機密保持法はついに、その長い歴史に終止符を打った。

 

 

俺は今、魔法界では歴史上最も偉大な魔法使いとして、マグル界では神として生きている。

ぶっちゃけ初めの1.2年間はモデルしてた時よりもハードワーク過ぎて血反吐吐くかと思った!

俺の神格性を上げるためにマグル界に何度も行って内戦を止めたり難病を治した。盲目である事を悟られないようにする為にはどうしても同行者が必要であり、それはヴォルが担った。

魔法界とマグル界の共存のために様々な法律を作り替えなければならなかったし、政治的な面に関わらざるをえなかった。

 

 

「明日からの予定は?」

「明日は10時からアイスランド、14時から中国で各首脳との面会。その後は──()()()だね。明後日は各魔法学校の訪問」

「め、めんどくせー…俺お堅い話まじで苦手なんだよなぁ…」

「仕方ないね。君の仕事だ」

 

 

ヴォルは俺の手をとってグラスを握らせた。…ここまで甲斐甲斐しく世話しなくても魔法でどうにかできるんだけどなぁ。

 

グラスを傾けて口に含めば、赤ワインの味がした。

 

 

「お掃除はなぁ…騎士達が向かってるんじゃ無いのか?」

「勿論。でも、君が倒した方がいい」

「…ま、そうだな」

 

 

大きな内戦は起こっていない。だけどやっぱり反乱を企てるものは存在する。

マグルを殲滅したい魔法使い達が裏でコソコソ活動し、その度に世界にとっての警護組織となった方舟の騎士達が治安維持のため世界中を駆け巡る。

そして、俺は反乱する主犯格に呪いをかけ、さらに強く服従させていく。

 

 

はじめは魔法界もマグル界も混乱していたが、今では少しずつ、お互いの世界をすり合わせる為に模索し、良き隣人としての道を進んで行っているだろう。新しい(ことわり)になった世界に馴染めない古い考えの者は、魔法界の奥に自ら潜み、マグルと会わないようこっそりと暮らしているらしい。まぁ、それはそれでその人が望んでいるのならいいんだろう。

 

 

 

「来月の11日は、誕生祭があるから、そのつもりで」

「あーもう、そんな時期か…」

 

 

1月11日に世界統一記念日とかいうクソダサい祝日が世界で作られた。そんなわけわからん名前にするならノアの誕生日とかにしてくれよ…。

国際魔法使い連盟本部には麒麟に跨る俺の石像が立ち、サントスさんの後を引き継いで魔法界を導くのは…まぁ俺じゃ無くてヴォルがしてる。いや、だって政治とかめんどくさくてずっと関わるのは嫌だ。

ヴォルは俺を理解した上で、血の契約を結んだままだからマグルの迫害はもう出来ないし、任せても良いだろう。ヴォルがその立場になってからもう3年くらい経つけど、ちゃんと指導者として振る舞ってるらしいし。むしろ世界を好きに動かせる事に楽しさを覚えたようだし。

 

裏では俺に、マグル殺したい。とか呟くこともあるけど。苦しんでなさそうだったから多分、ヴォルなりのストレス発散か冗談…なんだろう、うん。

 

 

「…ノアの目は、いつ見えるようになるんだろうね」

 

 

ヴォルが俺の目に触れた。

痛みはなくても、普通に異物感があって目を閉じて身をひけばくすくすと笑われる。

 

 

「おまっ…眼球を触るな!デリケートなところだぞ!?」

「いや、全然違うところを見てるから、…腹が立ってね」

「…仕方ないだろ。見えねーし。…世界の呪いを解いたところで…見えるようになるのかなぁ。…あと20年くらい経ったら解呪するけどさ、そんときにはヴォルはもうおじいちゃんだな!」

「…君も、相応の歳になると思うけど」

 

 

何言ってんだみたいな刺々しい声で言われてしまった。

今俺の肉体年齢は30歳前後のはずだ。

20年後は50歳かー、ヴォルは65歳くらいになってるはずだし。まぁかなりいい歳になってるな。まったく想像出来ないけど。

 

 

世代が変わり、20年が経過した後で世界中にかけている服従の呪いを解くつもりではある。

無理矢理俺の思想に従わせなくとも、新しい世代は当然のように魔法を受け入れるだろう。

魔法使いだというだけで畏怖し迫害される事のないように、マグルだからといって下に見られ虐げられる事のないように。

もう新しい理が出来上がった後の世界には、俺の力は不必要な筈だ。…そう信じたい。

まあ…賢者の石使ってある程度長生きはするつもりだけど。ヴォルの分霊箱になっちゃったし、うっかり死んでヴォルの魂を失わせるわけにもいかない。

……世界の呪いを解いた後になら不老不死にだってなれるけれど。理として、神として存在する為にはそれもまた、必要な事なのかもしれない。…ヴォルに言ったら絶対自分も不老不死になりたいとか言いそうだからあと20年は黙っていよう。

 

 

 

「これで…よかったんだよな?」

 

 

 

ぽつりと呟く。

世界を変えた、理を変えた。

紛れもなく俺が望んだ事だ。

 

 

だけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「君の望み通りの世界になったんでしょう?」

「…そうだよな、うん。…俺ができる最も犠牲の少ない世界だ」

 

 

俺の頭脳が数々の未来を映し出しては消えた。…あまり考えると、後悔してしまいそうだから考えないでおこう。

 

この結末が、俺にとって最善だったんだ。

ハリー・ポッターの世界を、ノア・ゾグラフの世界に変えた。

数々の人を巻き込み、心を惑わせ、支配して。俺の知ってる世界では無くなったこの世界では知っているキャラが生まれない可能性が高い。

ホグワーツを訪問しても、盲目の俺には誰がジェームズなのかセブルスなのかわからなかったし。

 

 

暫く沈黙が落ちる。

だけど、それもそこまで悪くない心地よい沈黙だ。

 

ふと、デジャヴを感じた。

たしかに、俺は今まで何度も暖炉前にあるソファでヴォルと共にいろんな事を話した事がある。

だけど──これから先も、ヴォルと敵対する事なく、堂々と共に陽の目を浴びて生きていける。

それを理解した時に、ふと胸の奥から込み上げてくるのものがあった。

 

 

 

ああ、多分、俺は──。

 

 

 

「…ヴォル…ありがとう」

「何が?」

「…さあ、好きにとってくれていいよ」

 

 

 

ヴォルは何も言わなかったし、俺も何も言わなかった。

ヴォルが居るだろうところに手を伸ばせば、すぐにその手を取られ、俺の手はヴォルの頬に触れた。

手のひらから伝わる動きで、ヴォルが少し微笑んでいるのが分かる。

 

 

 

「これで、よかったんだ」

 

 

 

物語は()()()()()()()()ハッピーエンドで終わる。

それが一番いい事だ。

 

 

 

 

 




2ヶ月余りの連載でした!
いつも評価、コメント、ありがとうございました。本当に書く気力につながりました!

終わり方や物語の進め方には賛否両論あると思いますが、ノアの物語としての落とし所はここで。

いくつか、分岐点を用意しておりまして、コメントに影響されたり時々のアンケートによって結末を変えていきました。
ギャグの練習に書き始めたのに、きがつけばギャグとは…?というお話になってしまい、ギャグを期待されていた方には本当に申し訳ないです…。


初め大まかな流れを考えた時は普通に原作通りヴォルと敵対するつもりでした。その終わりだけ書いていたので活動報告にでもいつか載せたいなぁとは思っています。

ノアがこの後失われたものを取り戻すのか、ヴォルとどうなるのか、ノアはどうするのかは、ご想像にお任せします。
いくつか書きたいネタはあるので、番外編として書こうかなぁとは思いますが、とりあえずヴォルの幼馴染としてのノアの物語はこれで完結です。


この後if世界線で兄・子世代の物語を書いていこうと思ってます。
(ファンタビも書きたいのですが、まだ完結してないのでどうしようかな…と模索してます。)
興味がありましたら、ぜひお読みください!

本当に、お付き合いくださりありがとうございました!


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