チート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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その後の世界
番外編 ノアと幸せの形


 

 

俺が世界を変えてからおよそ10年が経った1981年の8月のある日。

 

この日、俺はベインと共にとある家を訪れることになっていた。

 

 

「ノアが会いに行くだなんて!きっと凄く喜ぶよ」

「そうかな?そうだといいけど」

「勿論さ!」

 

 

ベインはウキウキといったように楽しげに笑う。

盲目になって約10年、俺は外出する時は真っ黒なサングラスをかけてその視線がずれている事を悟られないようにしていた。まぁ、この生活にも慣れたしこんなものつけなくても相手の声の位置で大体の目の場所がわかるんだけどな。

 

だけど俺の騎士達は過保護なのか、俺と外出する時はいつも腕を掴むように口うるさく言うから、今日も仕方なくベインの腕を掴んでいる。

はじめは俺に触れられるたびに悲鳴を上げ「ノ、ノノノノア!だだだっだめだよ!」と言っていたベインも今ではすっかり慣れている。

 

ちなみに、ベイン、マートル、ミネルバ、アブラクサスの4人は上級騎士として、他の騎士とはまた違う立場にあり、騎士達を纏める要となってくれている。彼らは──アブラクサスは別として──元の仕事を辞め、今では新しく設置された大きな城のような方舟の騎士団本部で働いている。

方舟の騎士団本部は、新しい世界になったこの世界の警護団体であり、秩序だ。

新しい法律で、魔法族はマグルを、マグルは魔法族を理由もなく虐げる事は重罪となっている。もし、罪を犯せば新しく出来た…というよりも、再利用している元死喰い人集会所、現牢獄に入れられてしまう。

その判断基準は、まぁ、俺かヴォル、そして俺が認めた優れた開心術士により調査されるため、嘘をつくことはできない。嘘をついてもすぐにバレるしな。

 

 

 

「ここだよ!楽しみだなぁ、僕も初めて会うんだよね」

 

 

ベインは足を止め、扉のノッカーを打ち鳴らした。

すぐにぱたぱたと足音が響き、ガチャリと扉が開く音がする。

 

 

「いらっしゃい!久しぶりね、ベインさん!」

「久しぶりリリー、ジェームズは相変わらずかな?」

「ええ、相変わらずシリウス達と馬鹿な事してるわ。昨日も誕生祭だーっていって夜遅くまで馬鹿騒ぎしてたの。もう誕生日から半月も経つのに、本当困っちゃうわ!」

 

 

柔らかく、幸せそうな暖かい声だ。

くっ…!今ほど目が見えていたらいいのにって思った事はない!!

ハリポタファンとして、今リリーの顔が見れないのは拷問に近い!!

 

 

「それで──ああっ!ノ、ノア様!?も、もう来てらしたんですか!?」

「ごめんね、はじめまして。俺は…って知ってるか」

「勿論です!…えっと、私はリリー・ポッターです、ようこそおいでくださいました!」

 

 

リリーの声は緊張して、上擦っている。

まぁ、俺の呪いがしっかり効いている証拠でもあるが──なんとなく申し訳ない。

 

 

「そんな畏まらなくていいよ。ベインの家族は俺の家族みたいなもんさ」

「そ、そんな…!──あっ!どうぞお入りください!」

「ありがとう。…あ、これ。つまらないものですが、誕生日祝いもかねて」

 

 

リリーが居るだろう方向に、準備していためちゃくちゃ高級で可愛い(らしい、マートルとミネルバに用意してもらったから間違いではない筈だ)ベビー服と高級菓子が入った紙袋を渡す。

 

リリーは息を呑んで、俺の手から紙袋をそっと受け取った。彼女の魂が激しく動揺してるのが見てとれる。

 

 

「あ、ありがとうございます!!」

「ううん、ごめんな?急に…」

「いいえ!──ようこそポッター家へ!」

 

 

リリーに促され、俺とベインはその家の中に入る。

うーん、知らない場所はやっぱ少し身構えるな、転ばないように気をつけないと。

 

俺は、ベインの動きに合わせてゆっくりとその家の中に足を踏み入れた。

 

 

 

ーーー

 

 

リリー・ポッターとジェームズ・ポッターはそれを手紙で伝えられた時激しく動揺していた。

いや、動揺というよりも驚愕だろう。

 

 

「な、なんでノア様がこの家にいらっしゃるの!?」

「さあ…?あー、僕のおじさんが上級騎士だからかな?ノアさんとすっごく親しいってずっと言ってたけど…本当だったんだ…」

「ベインさんが!?まぁ…どうしましょう!家の中をピカピカにしないとっ!」

 

 

リリーは混乱したまま部屋の中を大改造レベルで掃除し、埃ひとつ落ちていないように磨きあげた。

まぁ、この家は結婚した時に買ったものでまだかなり綺麗だったのだが。

 

リリーにとってノアは、他の魔法族やマグルと同じく神様のように尊く、世界で唯一の偉大な魔法使いだ。おいそれと一般人である自分が交流する事機会があるなど夢にも思っていなかった。

ジェームズにとってノアは、確かに偉大な魔法使いである。世界を統一した、類を見ない非凡な才能と確かな力を持つ魔法使いだと思っている。

だが、彼は──他の魔法族やマグルほど、ノアに対して陶酔していない。

ただ、親やベインからノアの偉大さや素晴らしさを聞いていた為、凄い人なのだろうと思い尊敬は、していた。

 

 

 

「ジェームズ!ベインさんとノア様がいらっしゃったわ!」

 

 

ジェームズは妻、リリーの上擦った声に顔を上げる。リリーの頬は自分でもなかなか見た事が無いほど赤く染められ、どう見てもテンションが上がっていた。

 

 

「ジェームズ!久しぶりだね!」

「久しぶりベイン!会えて嬉しいよ」

 

 

まず部屋に入ってきたベインにジェームズはにっこりと微笑む。

世界が変革し、騎士であるベインは多忙を極めなかなか会うことが出来なかったが、世界が統一する前はよく遊んだり、家に泊まりに行った事があったのだ。

 

ジェームズはベインの後ろに静かに立つノアを見て少し、息を飲む。

真っ黒なサングラスはかけているが、成程、陶酔するのもわかるほどの美貌だ。もう40歳近いとは聞いているが、その見た目はどう見ても30代前半にしか見えない。きっと肉体年齢を止める魔法をかけているのだろう。

 

 

「はじめまして、ジェームズ・ポッターです。ようこそポッター家へ!」

「ノア・ゾグラフだ。…ありがとう、ごめんな急に…この日しか都合をつけれなくて」

 

 

ジェームズは少し悩んだが──こんな偉大な人に握手を求めてもいいのだろうか──手を差し出す。するとノアはベインにとん、と肘を突かれた後ゆっくりと手を差し出した。

握った手は、日溜まりのような温かな声とは裏腹にひんやりと冷たい。だが、しっかりと握り返してくれるのをみると、握手のタイミングはややズレていたが一般人と握手する事が嫌ではないのだろう。

 

リリーはすぐに紅茶の用意をするためにキッチンに向かう──この日のために用意した高級な紅茶だった──ジェームズがベインとノアにリビングの中央にあるソファに座るよう勧めれば、彼らはゆっくりとソファに座った。

 

ジェームズはノアの前に座り、ついまじまじと彼の姿を見てしまった。

 

今でも信じられない、写真や新聞の見出しでは見た事がある。それに何度か学生時代ホグワーツで訪問に来ていた彼の姿を目撃している。

それでも、まさか──ノア・ゾグラフが!世界で最も有名なこの人が、目の前にいるなんて──信じられない。

 

 

そんなジェームズの考えが伝わったのか、ノアは口元に手を当てくすくすと面白そうに微笑んだ。

 

 

「俺がここに来てるのが、不思議?」

「え…ええ、そりゃあ…」

「ははっ!…変なジェームズ」

 

 

ノアがジェームズの名前を低く、甘く呼んだその瞬間、ジェームズはぞくりとしたものが体を駆け巡るのを感じた。

呼吸が出来ないほど、胸が締め付けられる。

瞳を見せないでこれだ、もし──その目を見たらどうなるのだろうか。美しい瞳だとは聞いている、見てみたいような、見たくないような。

 

 

リリーが紅茶セットを運び、机の上に置く。彼女がそれぞれのカップに紅茶を入れ、「どうぞ」と頬を赤らめながら伝えれば、ノアは優しく微笑んだ。

ふわりとした良い匂いに、ノアは少し視線を下げて指を軽く振る。するとふわりとカップが浮かび、ノアの手元に飛んでいった。

 

 

「──美味しい」

「気に入っていただけて、良かったです」

 

 

リリーはほっと表情を緩めた。

もし気に入られず──何か不敬をはたらいてしまえばどうなるのかと、気が気では無かったのだ。

紅茶を運んでいたトレイを浮かせふわりとキッチンにある棚へ戻したリリーは、いそいそとジェームズの隣に腰掛けた。

 

暫くはお互い紅茶飲みながら近状報告を交わし、和やかな時間が過ぎる。

だが、ノアは聞き役に徹し一言も口を挟む事なく微かな笑みを口元に作ったまま静かにジェームズとリリーとベインの声に耳をすませていた。

 

 

「──ふぇ…」

 

 

小さい泣き声が響いた。

リリーはすぐにベビーベッドへ近づき、腹の上に乗せられていたタオルを足で思い切り蹴り目を覚ました赤子を抱き上げる。

 

 

「ああ、ハリー、起きちゃったの?泣かないで?」

 

 

リリーは懸命にあやしたが、ハリーはぐずぐすと目を擦りながらリリーに向かって手を伸ばし、必死に抱きつく。母の胸に抱かれても、不満げな泣き声を止める事はなかった。

 

 

「リリー、その子がハリーかい?」

 

 

ベインはリリーに駆け寄り嬉しそうに微笑む。腕の中で抱かれているハリーは、ちらりとベインを見ると、ちょうど人見知りをしてしまう時期なのか一際大きく泣いた。

だが、ベインは「ジェームズもこうだったなぁ」と懐かしく思っただけで、嫌な気持ちにはちっともならなかった。

 

 

「ええ、そうよ」

「僕にとっては孫のようなものだね!うわぁ!ハリー…はじめまして、ベインだよ!」

 

 

ベインは優しい顔をしてリリーの腕に抱かれているハリーに目を合わせるように身を屈める。

リリーの胸元に顔を押し付けているハリーは「うー…」と声を上げ、見知らぬ男の大人にいやいやと首を振る。

ジェームズはノアから視線を外し、なんとかハリーを笑わせようと変顔をするベインを見てくすくすと笑った。嫌がる様子も可愛い、愛しい我が子に思わず口元が綻んでしまう。

 

 

「──俺に、ハリーを抱かせてくれないか?」

 

 

ノアはサングラスをいつの間にか外し、美しく輝くブルーグレーの瞳で、リリーを見つめた。

美しい瞳に見据えられたリリーは顔を赤くしたが、少し悩むように視線を彷徨かせる。

一歳を越えたばかりのハリーは、かなり人見知りをしてしまう。ノアに対しても泣いてしまうかもしれない──不快にさせたらどうしよう。

 

しかし、ノアは優しく笑うとリリーの胸に顔を押し付けちらちらとノアを伺うハリーに向かって柔らかく告げた。

 

 

「おいで、ハリー」

「…うー!」

「わっ!──ハ、ハリー!」

 

 

ハリーはリリーの腕の中で、降ろせというようにもがく、慌ててリリーが床におろせば、まだたどたどしい足取りでハリーはノアの元まで向かい、その足にぽすんと体当たりをするように抱きついた。

 

 

「…良い子だね、ハリー」

 

 

ノアはそっとハリーの脇の下に手を差し、抱き上げる。

向かい合うようにして膝の上に乗せれば、ハリーはノアの顔をじっと見つめた後、にぱっと満面の笑みを見せた。

 

 

「あー!」

 

 

ハリーはきゃっきゃと楽しそうな声を上げながらノアの頬を小さな手でぺたぺたと触る。あまりに無遠慮な触れ方に、リリーとジェームズは顔を引き攣らせたがベインは「赤ちゃんと触れ合うノア!最高!!」と興奮していた。

 

 

「…ちっちゃいなぁ」

 

 

ノアは小さく呟いた。

ハリーはまだ一歳になったばかりであり言葉はわからない。ただ嬉しそうに笑い、頬を真っ赤に染めてノアにぺたぺた触れていた。

 

 

 

「…ハリー…俺はノアだよ」

 

 

 

宗教画のワンシーンのような、慈愛に満ちたノアの横顔にジェームズ達は息を飲む。何故か、そこだけスポットライトを浴びているかのように、キラキラと輝いて見えたのだ。

たしかに、陶酔するのもわかる──それほど、畏れてしまうほどの美しさだ。

 

 

ノアは愛おしげにハリーを見つめ、その柔い頬を撫でていた。

まるで壊れ物を扱うかのように、酷く、優しく。ハリーは頬を撫でられくすぐったそうにくすくすと笑う。

ノアの手は優しく頬を撫でた後、ハリーの綺麗な額に伸び、何かを確認するように何度も撫でた。

 

 

幸せで素晴らしい光景にベインは内心で最高のシャッターチャンスを逃した!と悔しがっていたが、ふと、ハリーの頬にきらりと輝くものが落ちたことに気がついた。

 

 

「…ノア?」

 

 

それがノアの涙だと気がついたのはすぐで、ベインはどうしたのかと慌てて駆け寄り顔を覗き込む。

 

ノアは、慈愛に満ちた目で微笑んだまま、ぽたぽたと涙を流していた。

 

 

「ノア、ど──どうしたの?涙が…」

「ん?……あー、ううん、大丈夫」

 

 

ノアは言われて初めて自分が泣いているのだと気付いたのか、ぱちりと不思議そうに瞬きをした後、困ったように微笑み涙を拭った。

 

ベインは、初めて見たノアの泣き顔に──動揺した、ノアが涙を流すところなんて、想像もできなかったのだ。

ただ、その涙はあまりにも美しく、慈雨のようであり──ノアは涙も完璧!カメラ持って来ればよかった!いや、むしろフラスコがあればその涙を永久保存できたのに!!──と2度目の激しい後悔をした。

 

 

リリーはまさか、ハリーが何か粗相をしたのか──例えばオムツから漏れてしまったとか──と思い、顔をさっと青ざめるとノアの前に跪き、ハリーを受け取ろうと手を差し出す。顔を蒼白にして動揺した彼女の声は喉から出なかった。

 

だがノアはそんなリリーに気が付かず「ちっちゃー」とまた、ハリーの柔らかな頬を撫でる。

 

無視された!やっぱり何かしでかしてしまったのか!!とリリーが衝撃を受け何も動けないでいると、正気に戻ったベインが「あ」と呟きノアの隣に行くとトントンと肩を叩く。

 

 

「ん?」

「リリーがきてるよ」

「あー…ごめん、ずっとハリー抱っこしてたらダメだな」

「えっ…い、いえ!むしろ、すみません…!」

 

 

リリーは何かしてしまったのかと慌てて頭を下げる。ノアはようやくリリーが居る方を見ると、困ったように微笑み、ハリーの肩をぽん、と一度優しく叩いた。

 

 

「ハリー、お母さんのところに行こうなー?」

「うー?」

「ハリー、おいで?」

 

 

 

リリーはおずおずとノアからハリーを受け取ると、すっかり上機嫌になったハリーを抱き上げる。ハリーはノアには人見知りをせず、むしろもっと抱いていてほしいと言うようにノアに手を伸ばしたが、ノアはリリーに向けて微笑んだまま、ハリーが差し伸べている手には反応を返さない。

 

ノアの様子をじっと見ていたジェームズは、その違和感に気がつき──ぽつりと呟いた。

 

 

「…まさか、目が…?」

 

 

ノアはふっとジェームズを見る。

しっかりと、目があっているような気がする。いや、僕の気のせいかもしれない、だが──ノアは朗らかな笑みを浮かべたまま頷いた。

 

 

「みんなには内緒だぜ?…そ、俺目が見えないんだよね。ちょっと色々あって」

 

 

ノアは肩をすくめ茶目っ気たっぷりに言うと──美しく儚い雰囲気が、急にガラリと変わった──胸ポケットに挿していたサングラスをかけた。

 

 

ああ、なるほど。その為のサングラスだったのかとジェームズは納得する。

しかし、ノア・ゾグラフが盲目だったなんて聞いた事がない、たしかに大衆の前に現れる時はいつもそばに騎士が居たが、ただの付き人か何かかと思っていた。

盲目だから、そばにいるのか。

 

 

「──さ、もうそろそろ時間だよ、ノア」

「ん?もうそんな時間かぁ…」

 

 

ベインに声をかけられ、ノアは立ち上がる。

ベインは盲目だとバレたのだから、と気にせずノアの手を取り、ノアもまた何も言わずにその手からするりと肘あたりに手を滑らせるといつものように腕を絡ませた。

 

 

「君たちに会えてよかった」

「…こちらこそ、いつでも来てくださいね」

「ハリー、ノア様の事が大好きみたいなんです、ぜひいらしてください!」

 

 

ノアは嬉しそうに笑うと、大きく頷いた。

 

 

「また、くるよ」

 

 

ジェームズとリリーとハリーに見送られながらベインとノアはポッター家から出てすぐに姿現しをし騎士団本部に帰る。

 

 

「ノア、そんなにハリーと会えて嬉しかったの?」

「ああ…うん。……幸せなあの子を知りたかったんだ。あーあ、目が見えてたらなぁ…」

 

 

ノアは残念そうにため息をついたが、仕方がないかと苦笑し、ぐっと腕を高く伸ばした。

 

 





盲目設定だと、ノア視点で書けなくて難しいですね…。


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