チート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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番外編 人狼化研究その1

 

 

リーマス・ルーピンはホグワーツを卒業したが彼の忌まわしき()()という性質のため、就職する事が叶わなかった。

本当ならば、方舟の騎士団か──教師になりたかったがどう考えても無理だと始めから諦め応募することは無かった。

 

社会的地位が無いに等しい人狼は、就職する事が難しい。日雇いの仕事を幾つもこなし、なんとか賃金を稼いでいるがその日その日を生きるので精一杯であり、やり甲斐は勿論、なかった。

 

 

夜遅く、魔法薬になる野草を採取するバイトから自宅へ戻ったリーマスは、疲れ切りベッドにぼすんと倒れ込み目を閉じる。

 

 

リーマスは数年前に卒業したホグワーツでの日々を思い出し、胸が締め付けられるような苦しみを感じた。

 

人狼だと知っても嫌う事なくそばに居てくれたかけがえのない友人たちと、以前のように毎日は会えない。

とはいえ、一週間に一度はなんだかんだ会っているのだが、それは何よりも心安らぐ楽しい時間でもあり──充実した日々を、社会と繋がっている彼らを見るとどうしようもなく羨ましく思ってしまう自分に気付かされ、独りになった時に何度も自己嫌悪していた。

 

 

ため息をついた時、階下で両親の悲鳴と共に食器が割れる音が聞こえてきた。

 

 

「父さん!母さん!!」

 

 

何かあったのかとすぐに杖を持ち階段を駆け下りれば、広くはないリビングで2人揃って腰を抜かしぽかんとしている両親をすぐに見つける事ができた。

すぐに駆け寄り辺りを見渡し──特に怪しい人物がいるわけではないと分かると、ほっと胸を撫で下ろして年老いた両親を心配そうな目で見た。一体、腰を抜かすほど何があったのだろうか。

 

 

「リ、リーマス!こ、これ…!」

 

 

リーマスの母、ホープ・ルーピンは震える手で握りしめていた手紙を差し出した。

その手紙を受け取ったリーマスは、書かれている内容を読み──両親のようにぽかんと口を開いた。

 

 

 

ーーー

 

 

 

数日後。

ルーピン一家は彼らが持つ中で最も見栄えが良く、高価な服に身を包み家の玄関前で両親と共にそわそわと落ち着きなくその時を待っていた。

 

 

「ドッキリ…とかじゃないわよね。ほら、あなたの友達のジェームズってこう言うの好きじゃない?」

「いや…ジェームズでも流石に…」

 

 

リーマスはホープの言葉に苦笑する。

在学中は悪戯ばかりしていたジェームズも、流石にこんな悪戯は仕掛けないだろう。リーマスはそう思いながらも、これがジェームズの悪戯ならば──呆れはするがむしろ納得できる。

それ程、信じられない事だった。

 

落ち着きなく何度も腕時計を見ていたリーマスの父、ライアスが「時間だ」と震える声で呟く。

リーマスとホープは姿勢を正し、硬い表情で前方を見つめた。

 

突如バジン、と姿現し独特の音と共に──ノアがふわりと地面に足をつけて現れた。

飾り気のないシンプルな淡い水色のシャツに黒いパンツ、何処にでもいそうなそのラフ格好もノアが着ればドレスコードかのように何故か輝いて見えた。

 

リーマスは在学中、何度かホグワーツ訪問に訪れたノアを見た事がある。

新入生の組分け前にノアが突然現れた時のことは、今でも鮮明に思い出せる。

あまりの浮世離れした美しさ、目の前にいるにも関わらずまだそれが信じられないリーマス達は息を呑んでただ、ノアを見つめた。

 

 

「こんにちは」

 

 

ノアはにこりと微笑み、慌ててリーマス達は頭を深くさげ「こ、こんにちは、今日はおいでくださりありがとうございます」と緊張が滲む硬い声で伝える。

 

 

「ごめんね、いきなり」

「い、いえ…そんな」

「リーマス・ルーピンだね?はじめまして、ノア・ゾグラフだ。…よろしく」

「よ、よろしくお願いします!お目にかかれ、光栄です…!」

 

 

ノアが差し出した手を見て、リーマスはズボンで手を何度も拭き震える手を差し出し、しっかりと握った。優しい微笑みとは裏腹にひやりと冷たい手だったが、リーマスの緊張と興奮の熱を冷ますには丁度よかっただろう。

 

 

「…ふふ、そんなに畏まらなくてもいいのに…」

 

 

ノアは何が楽しいのか、白い頬をほのかに赤く染めてくすくすと笑う。

リーマスはこの人を前にして畏まらずずけずけと話す事ができる者がいるのなら見てみたい──実は親友の1人であるジェームズが、その唯一の人物なのだが──と思った。

 

 

「さて…ホープ、ライアス。…リーマスをちょっと連れて行っていいか?」

「ど、どうぞ!!」

「ええ、いつまででも…!」

 

 

名を呼ばれた2人は顔を見て真っ赤に染めながら何度もうなずきリーマスの背を押した。

押されたリーマスは「ちょ、ちょっと!」と言いながらもノアの近くに立つ。

 

身長はリーマスの方が僅かに高いだろう。思わず見下ろすような形になってしまい、不敬にあたらないのかと狼狽したが、ノアは微笑んだままリーマスの服の袖を掴み、そのまま腕を絡ませた。

あまりの距離の近さに、リーマスは眩暈に似たものを感じ、倒れそうになったもののなんとか意識を保った。

 

 

「じゃあ──本部に行こうか」

「は、はい」

 

 

ふわりと漂った甘い香りに、リーマスはドキドキとしながら頷く。

ノアはすぐにリーマスを連れて姿くらましをして、方舟の騎士団本部へと移動した。

 

 

 

ーーー

 

 

リーマス!リーマス・ルーピンと話している!

ぶっちゃけそれだけでテンション上がる。姿が見れないのが残念でならないが、仕方がない。いつか見れるだろうと期待しておこう。

 

ああーリーマスの授業受けたいな…いやでもこの世界では教師にはならないのかなぁ…別にホグワーツの闇の魔術に対する防衛術はヴォルに呪われてないし。…あれ、今誰が教師なんだろ。

 

 

「さ、リーマス。座って座って」

「し…失礼します」

 

 

リーマスを掴んでいた手を離して近くに椅子と机を出現させた。見えないけど多分それなりに立派な椅子と机…だと思う、昔家具を選ぶセンスは壊滅だとヴォルに言われたからセンスがいい椅子かどうかはわからないけど。

自分の後ろにも椅子を出現させて座り、にこりと微笑めばなんか狼狽えながらリーマスが座ったのを、気配で感じた。

 

 

 

「リーマス、君をここに呼んだのは…人狼についてだ」

「…陛下は、ご存じなのですね」

「まぁね」

 

 

リーマスに陛下だなんて言われるのはなんかこそばゆいな、できたら名前で呼んで欲しいけど…無理かなぁ…もうちょっと仲良くなってからお願いしてみよう。

あんまり、一般人と仲良すぎるのも、威厳が無くなっちゃうし周りの嫉妬も凄いし…難しいところだ。

 

 

「ちょっと人狼について研究したくてね、力を貸してくれると嬉しいな」

「…はい、勿論です。この身が少しでも役に立つのなら…」

「うん、めちゃくちゃ役立つ!俺の理論が正しければ、人狼に変身することなく過ごせると思うんだよね」

「…えっ……そんな──そんな事が…?」

「理論的にはね、それを証明するために君が必要なんだ」

 

 

リーマスは動揺している。

まぁ今は脱狼薬で人狼になっても人間としての理性を留めておくことしか出来ないから、もし人狼に変身する事がなくなれば──人狼は、もう魔法界にとって差別の対象ではなくなる。

 

ずっと思ってたんだよな、人狼に代わる事なく過ごす事が出来ないのかなって。むしろ、それを考える人がいなかったのか不思議でならないんだけど。人狼の事を本気で考える人なんて、今までいなかったのかなぁ。

 

 

人狼は、満月の光を浴びて変身してしまう。

満月とは、魔法族にとって特別なもので、その日は魔力が誰だって向上する。それは俺のチート能力の一つで把握済みだ。

時を止めるその能力は、月の満ち欠けに影響される。つまり、月はそれ程、多大なる影響を与えるんだろう。

 

人狼に噛みつかれた事によりその性質を移される。一種の病気のようなものだ。

満月がトリガーである病気。その呪いとも言える病気を完治する事は出来なくとも、抑えることは不可能ではないはず。

 

まぁこの論理が正しいかどうかは不明だが、割といけそうな気がするんだよな。

 

 

「満月の1週間前からここで過ごして欲しいな。…あ、勿論給料は発生する。…そうだな、1日100ガリオンくらいでいい?」

「は…?…ひゃ…ひゃく…?い、1日ですよね?」

「うん、足りないかな?200ガリオンくらい?」

 

 

普通、幾らが妥当なんだろう。

俺は何億ガリオンって持ってるから、ぶっちゃけその辺の価値観があやふやなりつつある。えーと、1ガリオンをマグルの金で換算すると…今相場どれくらいだろう。魔法界って割と物によって相場が違うからよくわからないんだよなぁ。100ガリオンって10万くらい?もうちょっとレート下がってるかな。

 

本業騎士達は月に500〜800ガリオンに設定してたような、気がする。マクゴナガルはホグワーツより給料が良いって言ってたから、高給だとは思う。

まぁ全盛期の俺は1日で500ガリオンを稼ぐなんて余裕だったしなぁ。経理は俺が担当してないからぶっちゃけわからない。

俺の世界でも治験ってかなり高額だったし、リーマスが今後行うのは人体実験もいいところだし、もうちょいあげてもいいかな?

 

 

「そ、そんな!多すぎます!!」

「え?そう?…じゃあ、間をとって150ガリオンでどう?」

「それでも、貰いすぎです…」

「少なくないならいいや、じゃあ150ガリオンで、決まり!契約書にサインしてね」

「は…はい」

 

 

リーマスが頷いたのをみて、俺は手のひらを回転させ契約書を取り出す。

ついでに羽ペンも取り出して机の上にふわりと着地させれば、ことり、と羽ペンを持つ音と、暫くしてカリカリとサインする音が響く。

 

 

「…書き、ました」

「ありがとう!丁度1週間後に満月だから…早速今日からお願いするよ」

「はい…」

 

 

一体何をされるのか心配なのか、リーマスの声は硬いし不安げだ。ちょっと細胞と血が欲しいだけだし、うん、身体的負荷はそんなに無いと思う。…あーでも脱狼薬飲んでない時の情報も欲しいな。

 

リーマスに向けて微笑みかければ、リーマスはなんか息を呑んで「よろしくお願いします」と真剣な声で言った。

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

研究記録

 

1985.08.02

被験体名リーマス・J・ルーピン

脱狼薬服用。

 

満月まで1週間。

マグルの遺伝子研究者との共同研究初日。

リーマスの細胞や血液を採取し、マグル、そして一般魔法族としてリーマスの父、ライアス・ルーピン、他騎士5名。さらにノア・ゾグラフの物と比較。

 

結果、魔法族にはその細胞に特別な遺伝子を持つことが確認された。

さらに、リーマス・ルーピンにのみ他者とは異なる細胞を検出、これを人狼遺伝子(Werewolf Gene)と命名。

 

魔力値は測定初日である今日を0として日々計測するものとする。

因みに、ノア・ゾグラフの魔力値は測定不能の為今後計測はしないものとする。

 

 

 

1985.08.04

 

被験体リーマス・ルーピンの魔力値は僅かに上昇。他の比較対象も同等の上昇があり、格段目立った変化はないといえるだろう。

 

 

 

1985.08.09

 

被験体リーマス・ルーピン

天候、晴天

脱狼薬服用の為、人間としての理性は保つ。

その細胞と血液を調べた結果、WW遺伝子のみで構成された細胞を採取する事に成功。

ヒトとしての遺伝子情報は発見出来ず。

 

マグル界の脳波計を使用し測定。人間の時と変化はなし。

魔力値は他者と比較しても目立つ上昇は無し。

唾液をサンプルとして採取。

 

 

この日研究にミネルバ・マクゴナガルが参加。アニメーガスとなりその細胞と血液を提供。

猫となったミネルバ・マクゴナガルの細胞は猫と同等であることが分かった。

マグル界にある脳波計を使用し測定。ミネルバ・マクゴナガルも人間の時と変化はなし。

 

 

 

1985.08.10

 

被験体リーマス・ルーピンの細胞や血液は人間のものと同等。

魔力値も他者と比較してもこれといった差は無し。

倦怠感、体の痛みからまともに動けない様子。

 

ノアの提案により、犬の脳波を測定。

ノアが騎士一名を変身術を使用し犬に変身させた時の脳波は、犬が示す脳波と同等。

 

 

 

 

1985.09.08

 

被験体リーマス・ルーピン

天候、晴天

脱狼薬 不使用

 

人狼化を確認

脳波は乱れ、人であった時との変化が著しい。

あまりに凶暴化していた為、ノアにより眠らされる。

 

脱狼薬は脳に影響を及ぼしているのだと証明された。

おそらく、脳細胞のみに働きかける薬なのだろうというのがマグルの医者の見解。

 

 

 

1985.10.07

 

被験体リーマス・ルーピン 地下に隔離

天候、晴れ時々曇り

脱狼薬服用

 

人狼化を確認

 

 

 

1985.11.07〜08

 

被験体リーマス・ルーピン

ノア・ゾグラフと共に月が現れる時刻、ニュージーランドへ移動、そちらは朝のため観光をして過ごす。

夜が来る前にふたたび他国へ移動。

 

8日帰国。

人狼化、確認されず

 

 

1985.12.06

 

被験体リーマス・ルーピン

天候、ノア・ゾグラフの手により本部上空、夜間常に月が隠れる程の曇天

脱狼薬服用

 

人狼化、月が昇る時刻より数分遅れて確認

 

 

 

 

 

1986.01.05

 

被験体リーマス・ルーピン

天候 晴れ

脱狼薬 未使用

人狼化のち、すぐにノアにより眠らされる。

 

 

被験体A

秘密裏に人狼に噛まれる。

 

 

 

 

1986.02.05

 

被験体リーマス・ルーピン

天候 雨

脱狼薬使用

人狼化確認

 

 

被験体A

人狼化、確認されず

 

 

 

1986.03.02

 

被験体リーマス・ルーピン

天候、ノア・ゾグラフの手により世界全域、夜間常に月が隠れる程の曇天

脱狼薬服用

 

人狼化、確認されず

 

 

 

 

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