チート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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友情なのですが。
やや人を選ぶような、恋愛を匂わす箇所があります。
あくまで敬愛と独占欲です。一応。


番外編 ドラコ・マルフォイ

 

 

ある日、俺は久しぶりにマルフォイ邸を訪れていた。

 

 

「ノア様!」

「ルシウス、結婚式ぶりだな」

 

 

門の前で姿現しをすれば、すぐに懐かしい声が聞こえた。訪れる時間をあらかじめ伝えていたから、きっとそれに合わせて待っていてくれたんだろう。

 

 

「ええ…今日は、忙しいなか…お時間をとっていただきありがとうございます」

「んー?いやいや、俺も会いたかったから」

 

 

肘にトン、と触れる感覚があり、俺はそのままルシウスの腕を掴んだ。

盲目である事を知っているルシウスは、俺と2人きりになれば──まぁ滅多にないが──こうして、ちゃんと気遣ってくれる。

今日はヴォルはそばに居ない。大体いつも居るけど…今日は仕事じゃない、完全プライベートだからな。

 

 

「ようこそ、マルフォイ邸へ」

 

 

俺はルシウスの執事だったのに、いつの間にかルシウスが俺の執事みたいになってしまったなぁ。…ルシウスが執事とか、似合わなさすぎる!

 

 

「ああ、ノア様!ようこそいらっしゃいました!」

 

 

マルフォイ邸に入ればすぐに足音が駆け寄ってきて、アブラクサスの声がした。

当然のように出迎えるけれど、今日上級騎士の4人はみんな仕事だった筈だ。

 

 

「あれ、アブラクサス今日仕事じゃなかった?」

「ノア様が訪問するのですよ?休みますよそんなの」

「…そんなのって…」

「ご心配なく。優秀な部下がおりますので」

「いや、別に良いけどさ」

 

 

少しくらい休んでも、直近で何か重大な案件は無かったと思うし。もう世界を変えて…かなり経つからなぁ。反乱の声も年々聞こえなくなってきてる。まぁ、より巧妙に隠れている可能性もあるから、油断は出来ないけど。

 

 

「こちらです、ノア様」

 

 

俺はアブラクサスとルシウスに案内され、長い廊下を歩いた。

どこを何回曲がってどの階段を登ったのかはわからないけれど、ふいに2人は足を止めてコンコンとノックをする。

どうやら、目的の部屋に到着したらしいな。

 

 

「ナルシッサ。入ってもいいかな」

「ええ…勿論です」

 

 

ルシウスが優しい声で聞けば、扉の向こうから綺麗なナルシッサの返事が帰ってきた。

ルシウスとナルシッサの結婚式では会ったことあるけど、こうやって個人的に会うのは初めてだな。──執事の時は、ノーカンだとして。

 

ルシウスに手を引かれて部屋の中に入れば「ソファはこちらです」と座る場所まで案内された。全く初めての場所はこうなるから──ちょっと恥ずかしい。白杖持つべきなんだろうけど…世間に盲目だとバレたく無いからそれも難しい。ノア・ゾグラフは完璧じゃないといけないから。

 

 

「ごめんな、ナルシッサ。こんな大変な時に」

「いえ…ようこそおいでくださいました、ノア陛下。お会いできて光栄です」

「そんな畏まらなくていいのに」

 

 

ちょっと笑えば、戸惑いながら「そんな…」と口籠るナルシッサの声が聞こえる。

まぁ、ナルシッサは俺に免疫の無い一般人であり、しっかり呪いがかかってるから…そうなってしまうのも仕方がないか。

 

 

「で、あの子はどこにいるんだ?…寝てるかな?」

「ああ、今連れてきますね」

 

 

ルシウスがすぐにそう言って、一度足音が遠ざかったが、すぐに俺のそばに近づいてきた。

そう、今日俺はルシウスとナルシッサの息子が生まれたと2人に聞いて会いにきた。

どうしても見てほしいと言われ、目は見えないけど…と思いつつ、触れることはできるし、俺も──赤ちゃんドラコ、気になるし。

 

 

 

「先週生まれました、息子です」

「先週!?思ったより生まれたてだな!?…ちょ、ちょっと待って、俺全身清めるから。──オッケー」

 

 

新生児っていつまでだっけ?一ヶ月だっけ??

とりあえず全身の隅々まで綺麗にして、そっと手を差し出せば、すぐにルシウスが俺の手を掴んでふやりと温かいものに触れさせた。

 

 

「う──わ。…あったかいな…」

 

 

多分、触れたのは赤ちゃんの腕…だと思う。もち肌で暖かく、想像以上に細い。もっと赤ちゃんってぷにぷにしてると思ってたけど、生まれて1週間ってこれが普通なのか?

 

 

「ノア様。よければ抱いてください」

「…え!?俺目見えないんだぜ!?生まれたては流石に怖いな…」

「大丈夫ですよ」

 

 

目が見えないから、落としたら…とか考えてしまう。こんな生まれたての赤ちゃんに魔法使って大丈夫なのかどうかも微妙だし。あんま小さい時に俺の魔力浴びせたら…なんか悪影響出そうで怖い!

 

だけど、赤ちゃんを抱いてみたいのも、事実だ。だって、この赤ちゃんは…間違いなく、ドラコ・マルフォイだ。

 

 

「…よし、じゃあ…腕の中に乗せてくれるか?…抱き方、おかしかったら教えてくれよ」

「はい、わかりました」

 

 

俺はソファにしっかりと座り、赤ちゃんって確かこんな感じで抱っこしてた…よな?と、腕を曲げる。そっと、何か毛布に包まれたものが腕に触れ、俺はびくりと肩を震わせた。

 

 

「ま、まって!」

「ノア様、腕はもう少し──はい、ここで大丈夫です」

「えっ!?いけてる?まじでいけてる??」

「大丈夫ですよノア様。赤子は腕の中で寝てます。……孫ですが羨ましい」

 

 

俺の隣に座っていたアブラクサスが腕の位置をやんわりと修正してくれて、俺は何とか赤ちゃんを抱っこする事が出来た。

まあ、殆ど毛布を抱いてると言っても良いかもしれないけど。

 

 

「え。めっちゃ軽い…こんなものなのか?」

「そんなものですよ、ノア様」

「これから、どんどん大きくなるのですよノア陛下」

「まじで…」

 

 

赤ちゃんのほっぺに触れてみたい!と思ってそっと右手を外し、赤ちゃんの顔があるだろうあたりでウロウロと迷っていたら──いや、だって万が一目とかに指が入ったら洒落にならん!──「頬は、ここですよ」とルシウスが優しく案内してくれた。

 

 

ふに、とした感覚が指先から伝わる。

か…かわ…可愛い!見えないけど、わかる。うん、もうこのぷにぷに加減でわかる。絶対可愛くなる!!──まぁ、ドラコだしな。

 

 

「この子の名前は?」

 

 

知ってるけど、まだ教えてもらって無いからドラコなんて呼んだら驚くだろう。

早く名前を呼びたくて、期待を込めてルシウスが居るだろう方向を見れば、想像より下からルシウスの声が聞こえた。

 

 

「まだ決めておりません」

「え?そうなんだ」

 

 

声の場所からして、これは──俺に跪いてるっぽいな。そんな事しなくていいのに。

…あ、いや。俺が赤ちゃん落としてもすぐ抱えられるようにかな?

 

 

「それで…その…本日、お越しいただいたのは──その、ですね…」

「…ん?」

「あー……その」

 

 

ルシウスは歯切れ悪く口籠っている。

気配からして狼狽…いや、違うな、悩んでいるのか。

 

 

「どうした?」

「…私の、息子の…名付けをしていただけないかと…」

「……は?」

 

 

いや、名付けって…名付けって何?ハリーのでいうシリウスみたいなもん??そういやシリウスって名付け親じゃ無い説あるけど本当はどうだったんだろう今度何かのタイミングでちょっと聞いてみようかなぁ。

 

 

「も、申し訳ありません!出過ぎた願いでした…!」

「──え、あ、ごめん。普通にびっくりして思考停止してたわ」

 

 

ルシウスが声を震わせてすぐに頭を下げる気配がした。

すぐにその肩を叩いて大丈夫だと伝えたかったけど、腕の中に赤ちゃんがいる状況で動くことなんて無理だ!

 

 

「名付けかー…いい、けど…」

「ほ、本当ですか!?」

「くっ…羨ましい!私だって本当は我が子(ルシウス)が生まれた時、ノア様に名付けてもらいたかったんです!」

 

 

ルシウスはぱっと明るい安堵したような声を出したが、アブラクサスは悔しそうに唸った。あールシウスが生まれた時は、俺はヴォルに眠らされていたからなぁ。

 

 

「ノア陛下…!ありがとうございます。ノア陛下に名付けられた…一生の誇りとして、この子は過ごしていけます…」

「そうだと俺も嬉しいよ…。うーん、名前なぁ…」

 

 

いや、ドラコ一択だが??

ドラコ以外にどんな名前がいいのかわからん。

えーと、アブラクサスもルシウスも、多分神話系の名前なんだよな。

…あーアブラクサスは、その名前に近いドラゴンが居たっけ。

…んで、ラテン語でドラゴンは…ドラコだからっていう理由だったんじゃなかった?ダメだ、流石にキャラの名前の由来まではうろ覚えだけど…。

よ、よし。由来は?って聞かれても答えられる!!ドラゴンと蛇を表すドラコからとりましたって言える!マルフォイ家の家紋には蛇がいるからそんなに不思議じゃないはず!

 

 

「…ドラコ・マルフォイとか…どうかな?」

「ドラコ…?」

「ドラコ…」

 

 

ルシウスとナルシッサがぽつりと呟き、沈黙した。

えっダメ!?ダメか!?いやいや、ドラコ以外にふさわしい名前なんて考えられないし、時期的にも間違いなくこの子はドラコだ…!

 

 

「ドラコ…良い名前です」

「ええ!とっても、マルフォイ家にピッタリです!ありがとうございます、ノア陛下」

「気に入ってもらえてよかった…」

 

 

ルシウスとナルシッサは嬉しそうに言った。その言葉には、多分嘘は無い、と思う!

無事、ドラコで決定したようで、ほっと胸を撫で下ろす。

あーあ。ドラコの顔が見れたらなぁ…後10年くらいは、見れないし…。

 

 

「…俺が、名付け親って事か」

「孫──ドラコの後見人になっていただければ、さらに嬉しいのですが」

 

 

アブラクサスが隣から呟く。

しかし本人もそれは無理だと思っているのか、冗談の色合いが強い言葉だった。

 

 

「いいよ、俺──ドラコの後見人になる。いいかな?」

「は、はい!勿論です!」

「ノア様、私は冗談のつもりだったのですが…」

「んー。名付け親だからな!まぁ、ルシウスとナルシッサに万が一なんてのはないから、必要無いとは思うけど」

 

 

世界はそこそこ平和だし、第二次魔法戦争なんて起こらない。

だけど──間違いなく、ルシウスとナルシッサはドラコよりも先に亡くなるだろう。その後で、俺が力になれることがあるのなら…ドラコの力になってあげよう。──ほら、名付け親だし?

 

俺はドラコの頬を撫で、そのまま丸い額を撫でた。

ふわふわとした柔らかな髪が指にあたる。きっと、美しいプラチナブロンドなんだろう。

 

 

 

「…ドラコ、君の人生が幸福でありますように」

 

 

俺はそっと身を屈めて、ドラコの小さな額に口付けた。…多分、かなりの加護がドラコにかかった筈だ。

一生幸せに暮らしてほしい、まじで、原作では散々だったからなぁ…いや、…ま、自業自得だったけど。

 

 

「あっ!ごめん、赤ちゃんにキスするもんじゃないよな!?ごめんナルシッサ…」

「え?…い、いえ!そんな…あまりにも美しくて、魅入っていました…大丈夫です、ノア陛下は清いので…」

「いいですねぇ私もノア様に名付け親になって欲しかったです、本当…ドラコ…羨ましい…」

「父上…」

 

 

まだ名付けのことで言うアブラクサスに、ルシウスは呆れたようなため息をついた。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

俺がドラコの名付け親兼後見人になってから6年が経った。

時々マルフォイ家を訪れ、誕生日などはちゃんとお祝いしに行ってるから、そこそこ交流はあるしドラコは俺によく懐いてくれてると言えるだろう。

 

 

 

今日は昼から仕事がなく、日帰り旅行に行くほど時間の余裕もなかったからマルフォイ邸に遊びに来た。珍しくヴォルもいるのは、この後ヴォルと外食予定だからである。

 

扉のノッカーを打ち鳴らせば、ぱたぱたと軽い足音がしてがちゃっと扉が開いた。

 

 

「ノア!」

「やあ、ドラコ」

「ドラコ!!陛下とお呼びなさいとあれほど…!」

 

 

ぼすん、と腹辺りに衝撃があり、ぎゅっと背中に手を回される。いや、背中ってか、高さが足りてなくて尻だなこれ。

 

ドラコの後を追いかけてきたのだろうナルシッサが息を切らせ、声を震わせて叫ぶ。

どれだけ仲が良くても、不敬を働くわけにはいかないとナルシッサは何度もドラコを指導したが、ドラコは俺に対する呼び方を変えなかった。

 

 

「気にするなナルシッサ。ドラコは俺の名付け子だからな」

「ノア、僕に会いに来たんだろ?…1人…じゃないんだな」

「ああ、今日はヴォルも一緒だよ」

 

 

嬉しそうなドラコの声は、最後の方はなんか嫌そうに吐き捨てられた。

ドラコとヴォルはなんか相性が良くないらしく、ドラコはヴォルを無視するし、ヴォルも「あのガキには品性がない」と珍しく、純血なのに文句を言う。

 

 

「今日はどうしたんだ?……あ!入ってノア!僕が手を繋いであげる!」

「ありがとう、ドラコは優しいなぁ」

「へへ!」

 

 

俺が盲目な事も知っているドラコは、きゅっと小さな温かい手で俺ので繋ぎ、応接間まで案内した。ナルシッサはオロオロとしたまま先にどこかへと向かってしまった。…いきなり来すぎたかな?昨日には伝えてたけど。

 

 

「ノア、ここに座って?」

「はいはい」

「ヴォルデモートは仕方ないからそっち座っていいぞ」

「……」

 

 

部屋の中の温度が3度は下がったなこりゃ。

 

この世界では大虐殺してないとはいえ、大虐殺しかけていたヴォルデモート卿にそんな風に話しかけられるのは無知ゆえなのか、俺の加護があるからなのか。

ヴォルデモートと対等に話すなんて、俺か上級騎士の4人しかいないからなぁ…。

 

 

「僕は──ここ!」

「おー。…重くなったなぁドラコ!」

「……おい」

「僕、もう6歳だからな!夜だって、一人で寝ているんだ!」

「えー?すごいじゃん!」

「あ、でも。ノアが泊まりに来た時は一緒に寝ような!」

「うん?ああ、いいぜ!」

「……おい」

「…何だ?ヴォルデモート──うわ!やめろ!降ろせ!」

 

 

 

俺の膝の上に跨って俺の首元に腕を絡ませていたドラコの重みがなくなった。

多分ドラコの反応を見るに、ヴォルが魔法を使って無理矢理引き剥がしたんだろう。微妙に風が感じるから、ドラコは首根っこ摘まれた猫──いや、ケナガイタチみたいになってジタバタしてるんだろうな。

 

 

「貴様。──自分の目の前にいる人間と対等だとでも思っているのか?…無知にも程がある。子どもとて、無礼は許せん」

 

 

ヴォルの地を這うような低い声が響き、ドラコが怯えたように息を呑んだ。あれ?わりとマジで怒ってるなこれ。

 

 

「…っ…ノアーー!」

「まだドラコは子どもなんだから…ほら、おいでドラコ」

「ううー!」

 

 

ぱちっと指を鳴らせばドラコがふわふわと俺の胸の中に飛び込んだ。よほど怖かったのか俺の胸に顔を埋めて震えている。

可哀想に!まだ子どもなんだ。ちょっとくらい調子に乗っちゃうだろう。ほら俺とヴォルも子どもの時はなかなかやばかったし…。

 

 

「ヴォル、ドラコは俺の名付け子だし、俺は気にして無いよ」

「……」

 

 

ヴォルから小さな舌打ちが聞こえた。

かなり視線を感じる──が、これは多分ドラコを睨んでるな。ヴォルの冷たい眼差しとか、そんなのドラコ耐えられなさそうだ!

 

 

俺はドラコをヴォルの視線から守るように抱きしめて、よしよしと頭を撫でた。

 

 

「ノア…」

「ん?」

「大きくなったら…僕のお嫁さんになってくれないか?」

「んん?良いけど?」

「ノア!!何を言って──」

「本当!?やったーー!!」

 

 

ドラコはぎゅっと俺を強く抱きしめて頬擦りした。ふわりと子ども特有のなんか甘い匂いがする。うーん、後5年くらいで魔法を解いて、早く顔が見たい!!視力が戻ったら、いいけど…!

 

 

「…そんな、約束…馬鹿なのか?」

「はー?いやいや…」

 

 

ヴォルは低い声で唸る。

俺はぱちんと指を鳴らし、俺とヴォル以外に声が聞こえないようにして喋った。

 

 

「いや、子どもの戯言だろ?パパと結婚するーとか、それと同じだって!」

「………どうだろうね」

 

 

流石にこんな会話をドラコ本人の前ではできない。

ドラコは「あっ!また秘密の話をしてるな!?」と不満げに叫んだけど、まぁ仕方ない。

 

 

「心配性だなあ!ドラコはきっとホグワーツで彼女できるだろ?大丈夫大丈夫!」

「……はぁ…」

 

 

もう一度指を鳴らし、ドラコの言う秘密の話を終了する。

ちょうどその時ハウスエルフと共にナルシッサが現れて、ティーセットを運んできた。

 

 

数時間滞在した後、そろそろ帰ろうか、と俺とヴォルは立ち上がった。

はじめはしょぼんとして大人しかったドラコも、玄関口についたとたん「まだ遊びたい!」と駄々をこねだしてしまった。

ナルシッサが懸命に宥め、時には叱っているが──ドラコはひしっと俺に抱きついて離れない。

 

 

「ドラコ、また来るから」

「絶対?」

「絶対だよ」

「…ノア、この家に住んじゃえばいいのに。…そうだ!そうすれば、毎日会えるだろ?ノアも僕に会いたいよな?」

「んー…」

 

 

いやードラコと毎日一緒はちょっと疲れそうだな。可愛いけど。…なんて少し思ってしまった。

どう返事を返そう、と悩んでいると、ヴォルが魔法を使ったのか俺とドラコを引き剥がし、俺の腰辺りに手を回しぐっと抱き寄せた。

 

 

「ノアの帰る場所は、私の所だ──帰るぞ」

「え?あ、うん。またなードラコ!」

 

 

俺を掴んだままヴォルは姿くらましをしたようで、多分、俺たちの家に戻ったんだと思う。

 

 

「…アブラクサスに孫を教育するよう伝えないとな…」

「いやーアブラクサスまじでドラコに甘いからなー。俺も甘いからなー」

「……君の威厳が損なわれる」

「身内くらい、いいだろー?」

「…そもそも、勝手に名付けて…後見人になるし…」

「ん?ヴォルにも子どもができたら名付けてやるから!!」

「……、…はぁ…」

 

 

ヴォルは俺の首筋に額をつけて、重々しいため息を吐く。

僅かに体重がかけられていて、ちょっと重いな。何だ、勝手に名付け親になった事で怒ってたのか?もしヴォルが望むなら、ヴォルの子どもの名前の一つや二つつけてやるから!

そんな気持ちを込めて、ヴォルの背中をぽんぽんと叩いた。

 

 

「…あのガキの匂いがする」

「まぁ、そりゃあ、何時間もくっついてたからなあ」

「…スコージファイ」

 

 

すんすんと首筋の匂いを嗅いでいたヴォルが嫌そうに呟き、すぐに清めた。

清めるほど嫌な匂いじゃ無いんだけどな。上品な甘い匂いというか、子どもらしいシャンプーの匂いというか。

ヴォルは俺からドラコの残り香がなくなって、ようやく満足したのか俺から身体を離すと「じゃあ、どこに食べに行く?」なんていつものように聞いてきた。

 

 

「そうだなぁ。ワイン飲みたい気分」

「じゃあフランス料理にしようか」

 

 

ヴォルは俺の手を握り、楽しげに答えた。

 

 

 

因みに、10年経ってもドラコが俺と結婚する気満々だったから、流石に俺は自分の考えのなさをちょっと呪ったし、ヴォルは超絶不機嫌になるし、ルシウスとアブラクサスはノリノリだしでとんでもない修羅場が訪れることになるのだが──また先の話だ。

 

 

 


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