有情のヒーローアカデミア(ただし本人はヒーローにあらず)   作:激流を制するは静水

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大変お待たせいたしました、第十一話。
展開は考えてあったんですが、途中書いた部分が保存されてなかったり、今後登場させられるかわからない後半のゲストたちとの会話で悩みまくりと難産でした。


第十一話 全てを解き放て!真なる継承の時!!

 A組の生徒たちは戦慄していた。

 

 ある者は遠くから見て尚、存在感をその身に感じ。

 

 ある者は近付くにつれて、恐怖が膨れ上がり。

 

 そしてある者は間近で見るそれに、絶望で心が埋め尽くされる。

 

 その名の通り、それは――『悪夢』だった。

 

 

 

 

 

「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!」

 

「これは一筋縄ではいかなそうだな……!」

 

 

 負傷した相澤と、それを守る出久、蛙吹、峰田。この四人を守りながら、トキは眼前の存在と闘わねばならない。並のヒーローどころか、ベテランのヒーローでもほとんどの者が闘うことそのものに難色を示すであろう相手を前にしようと、トキが『撤退』を選ぶことはなかった。

 

 今、この『悪夢』とまともに戦えるのは自分だけ。であるならば彼が取る道は唯一つ。

 

 

「たとえ勝てぬとしても、オールマイト先生たちが来るまでの時間は稼いで見せる!」

 

 

 自分がここで倒れれば確実に出久たちは殺されるだろう。そんなことをさせはしない、とトキは強い意思を持って構える。

 

 容赦無く振るわれる悪夢の豪腕。避ければ背後の出久らが危ないと瞬時に理解したトキは、硬気功を使い防御を固めるが――

 

 

「ぐうっ!?」

 

 

 洗練されたトキの硬気功を以ってしても、防ぎきれない強烈な一撃による衝撃が全身を襲う。

 

 

 

 

 

「へえ……やっぱりあいつチート野郎だな。悪夢の一撃を受けて倒れるどころか五体満足なんて」

 

 

 被害を受けないように遠くから見ていた死柄木は、先程トキに肩の関節を外された怒りを忘れたかのように喜々として呟いた。自身や(オマケ程度にしか考えてなかったが)連れてきたヴィランたちを軽く一蹴したトキが苦悶の表情を浮かべていることが嬉しくてしょうがないのだ。

 

 

「けどどうするつもりだ?悪夢にはその体の大きさから『超再生』も『ショック吸収』も付けられなかったらしいが……その分、ステータスは軒並み底上げ。しかも元が相当な奴だったみたいだし」

 

 

 死柄木の言葉の意味、それはこの後に悪夢がとった『構え』にあった。

 

 

 

 

 

 トキは全身を襲う痛みに歯を食いしばり、その場に踏みとどまった。背後からはトキの身を案じる出久らの声が聞こえるが、今回ばかりはそちらに気を向けていられる状況ではない。

 

 

(この程度の痛みは修行で幾度となく受けた……兄さんと決戦の際はもっと苦しいものだった。そこは問題ない。だが、彼らを守りながらというのはやはり厳しい。それに……!?)

 

 

 トキは直後、悪夢がある構えをとったことに目を見開く。脳無は我武者羅に暴れると表現出来る戦い方だったが、悪夢のそれは違う。しっかり構えをとる――それだけでも元となった人物が戦い慣れしていたのだろうと推測は出来るのだが、その構えがトキにとって最悪の事態を招くこととなった。

 

 悪夢がとったのは、まるで金剛力士像――仁王と呼ばれる阿形と吽形、その二つを合わせたような構え。

 

 

「こ……この構えは羅漢仁王拳!?」

 

「羅漢仁王拳!?」

 

「何だよそれ!?名前からしてヤバそうなモンじゃねーか!!」

 

 

 トキが口にした羅漢仁王拳という言葉に真っ先に反応した出久、そして峰田。

 

 

「羅漢仁王拳……五千年の歴史を持つ古代インド拳法の殺人拳だ。しかし、その無限の破壊力と比例するように残忍獰猛な殺人拳ゆえに時の皇帝から禁じ手とされ、伝える者は既にいないはず……!!」

 

「「「は……破壊力無限の殺人拳!?」」」

 

 

 このトキの説明には二人に加え蛙吹も動揺してしまう。それはそうだろう、そんな拳法を知性など欠片もないような巨大な化け物が使っているのだから。

 

 だが、それ以上の難題がトキには降りかかっている。その問題とは北斗神拳に連なるもの――即ち北斗神拳の掟である、『伝承者以外は他流との闘いで奥義を封じねばならず、次代に北斗神拳を伝えてはならない』ということ。

 

 次代に伝えてならないのはまだいい、この場において問題なのは奥義を封じねばならないという方だ。この悪夢に対して神仙術や、北斗神拳の奥義以外の技で太刀打ち出来るとはトキから見ても不可能に近い。

 

 

(今のわたしに奥義抜きでこの強敵を打ち倒せるのか……!?だが、やるしかない。未来のために守らねばならぬ者たちがわたしの後ろにはいるのだ!!)

 

 

 そう決意したトキは、唯一『相手が死体をベースに作られた改造人間』である点に着目した。つまり相手を死に至らしめるような技を使うことが出来る――再び眠らせることが出来るということだ。

 

 ヒーローではないとしても、元の世界のような場所ではない上、医者である以上無闇やたらと殺生はしたくないし、生徒たちに見せたくもない。しかし死柄木自らがそう言ったということ、そして何より羅漢仁王拳が元々この世界に存在していたとは思えないことから、トキは悪夢に対して常人であれば死に直結するだろう技を使うことを決めた。

 

 

(あの技はまだ未完成……ならば仙氣発勁、その全力を叩き込むしかない!!)

 

 

 トキは気を急速に練り上げ、その全てを右手に集約する。そして悪夢へと助走をつけて胸元へと低く、早く跳躍。当然、それに合わせるように悪夢も拳を繰り出すも――

 

 

(……!ここだ!)

 

 

 バレルロールの要領で体をひねりつつ、敢えて気を練らずにおいた左手で流すように捌き、見事悪夢の懐へと飛び込んだ。

 

 

「すごい!ギリギリの瞬間を見極めて、相手にスキを作らせつつ一気に至近距離戦へ持ち込んだ!」

 

「よっしゃー!相手を触れるならトキ先生の勝ちは決まったも同然だぜ!」

 

 

 出久と峰田が興奮気味に叫び、蛙吹も声には出さないが片手でガッツポーズをしている。三人の期待に応えんと、トキは気を練り込んでいた右掌に左拳を添え、両手に気を纏わせた。剣道などでもそうであるように、片手で行うよりも両手で行った方がバランスが取れ、その結果、力――この場合は気――を込めやすく威力が上がるのだ。

 

 遂にトキは悪夢の腹部へと両掌を触れさせ――

 

 

「真・仙氣発勁!!」

 

 

 練り上げた気の全てを悪夢の体内へと叩き込んだ。

 

 凄まじい光と衝撃が悪夢を中心に巻き起こる。真・仙氣発勁はあくまでダメージを与えるに留まっていた仙氣発勁と違い、完全に相手の体内を破壊する技だ。さすがにそれをトキの気の質や練度で叩き込まれれば如何に強大な悪夢と言えどもただでは済まない――出久たちだけでなく、死柄木や黒霧さえもそう思っていた。

 

 だが、悪夢はその場の全ての者の予想を超える。

 

 真・仙氣発勁を打ち込んで着地したトキは、突如感じた悪寒にその場からすぐさま後退した。すると、間髪入れずにトキが今までいた所へ悪夢の剛拳が振り下ろされたのだ。

 

 

「まさか……!?」

 

「う……嘘だろ!?何であのトキ先生のヤバそうな技をモロに受けてあんな平然としてんだよ!?」

 

(もしや……!)

 

 

 出久たちが驚愕する中、トキはある仮説を立てる。本来、気というのは体が大きければ大きいほど、溜められる量も比例して大きくなる。無論例外はあるが。

 

 質に関しては別としても、悪夢の大きさはトキの五倍以上……さらに、死柄木の呟きもトキには聞こえていた。『ステータスを軒並み底上げ』――もし、それが体内にも適用されていたら?

 

 強化された内臓、加えて大容量の気による防御。羅漢仁王拳を使うことから、気の質もかなりのものだろう。脳無の性質から、おそらく思考ではなく生前に会得したことを体が覚えており、所謂『本能』で動いているのだろうが――。

 

 

(だとすれば、気による体内へのダメージはほぼ効果が無い……!やはり確実に倒すには北斗神拳の奥義を使う他ない。だが……)

 

 

 そんなトキのことなどお構い無しに、悪夢は羅漢仁王拳の技を繰り出そうとする。

 

 羅漢仁王拳は風圧を自在に操る。その真骨頂とも言うべき技――風殺金剛拳。悪夢は幾度となく風を巻き起こし、最後はそれを重ねるように――

 

 

「オ゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」

 

 

 トキに向けて両手で撃ち出した。強化改造を受けた悪夢の風殺金剛拳、まともに食らえばトキとてただでは済むまい。

 

 しかし、予想外の事態は重なる。

 

 無事であった脳無が飛び出し、ちょうど風殺金剛拳の射線上に入ったのだ。トキを倒すため、という脳無の単純な思考ではあったが、悪夢にとって明確に敵と認定したトキ以外はどうでも良かった。

 

 無防備な背後に常識外れの風圧の直撃を受け、ショック吸収の個性をも簡単に貫通し、超再生も間に合わぬほどの一撃を受けた脳無は即座に機能を停止。脳無というクッション役――ほとんど役に立たなかったが――のおかけで、トキは腕をクロスさせて防御し、かつ硬気功でそれをさらに軽減する準備が出来た。

 

 だが、悪夢の圧倒的殺傷力を持つ風殺金剛拳はそこまで防御を厚くしても、いとも容易くトキを吹き飛ばし――

 

 

「ぐわあああああ!!」

 

「「「トキ先生ぇぇぇ!!」」」

 

 

 激突した施設を瓦礫に変えながら、トキ自身も瓦礫の下敷きになってしまった。

 涙を浮かべ、瓦礫を見る出久たちに対して、死柄木はまたも子供のように笑い始める。

 

 

「っはははは!!凄いじゃないか悪夢!!あのチート野郎を一方的に倒すなんて!!脳無が駄目になったが、お釣りが出るほどの戦果だ!!超再生もショック吸収も目じゃないならオールマイトにだって絶対に勝てる!!」

 

 

 目の前の敵が消えた悪夢は、さらなる敵を求めて辺りを見回し――出久たちが目に入った。……が、タイミング良くと言うべきか、もう少し早く来てくれと言うべきなのか、オールマイトを含めた雄英のプロヒーローたちが遂に到着。

 

 

「もう大丈夫!私たちが来……ってデカァ!?何だこのヴィランは!?『巨大化』の個性でも持っているのか!?」

 

「オールマイトぉぉぉ!!」

 

「オールマイト!トキ先生が!!」

 

「何……!?」

 

 

 出久ら三人の表情と視線の先には瓦礫と化したUSJの施設。そして眼前の巨大ヴィラン・悪夢――

 

 

「トキ先生、たった一人でヴィランに立ち向かって……!」

 

「何ということだ……!」

 

 

 自分が油断して仮眠をとっている間に、生徒たちは危険に晒され相澤も重症、そしてトキは……。

 

 

(全く自分が情けない!!誰より命の重さを理解し、助けるべく戦っていた彼の命を落とさせてしまった!!あれほど他の先生方からも言われていたというのに……!!)

 

 

 己の失態に自責の念に苛まれるオールマイトだが、いつまでも自分を責めている場合ではない。トキが命がけで稼いだ時間、決して無駄にはすまいと彼は眼前の悪夢へと立ち塞がる。

 

 

「行くぞヴィラン……!体の大きさだけで私を倒せると思うな!!Plus Ultra!この程度の困難を乗り越えられなければ、トキくんに合わせる顔がない!!」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 オールマイトに勝手に死んだことにされていたトキだが、瓦礫の下でまだ生きていた。そもそも脳無がクッション代わりになって風圧を軽減したこともあり、ダメージはあれど十分戦闘続行は可能。

 

 しかし、北斗神拳の奥義が使えぬ状態ではやはり決め手に欠ける。オールマイトたちが到着したであろう声を聴きながら、どうすればいいかと目を伏せると、トキの意識は何かに導かれるように遠くなっていった。

 

 

 

 

 

「……っ……ここは……」

 

 

 トキが目を開けると、そこは太陽が照らす雲海が足元に広がる場所であった。草木や水はないが不思議と穏やかさだけがその場を支配する神秘的な空間。

 

 

「今までのことは夢だったのか?……いや、元よりわたしは天へと帰った身……心の奥底にあった願望があまりに現実味を帯びた夢として現れたのだろう」

 

「い〜や、違うな。むしろ今の状況の方が夢だぜ」

 

「!?」

 

 

 何者かに背後から声をかけられ、驚くトキ。これでも北斗神拳を学んだ身、特に暗殺拳である北斗神拳では背後を取ることはあれど、取られても余裕で反撃出来るように鍛えられている。

 

 にも関わらず背後を取られ、かつ自分の死を感じたというのは、即ち北斗の拳に連なる者――それも桁外れの実力者に他ならない。

 

 その顔を見るべく後ろを向くと、そこに居たのは――

 

 

「よう」

 

「ケ……ケンシロウ……!?」

 

「ん?俺、お前に名乗った覚えはないぞ」

 

 

 可愛がっていた義弟かと思ったが、当人がそう言ったようによく見れば髪の長さが違い、服もジャケット姿ではなく漢服……何より、ケンシロウはタバコを吸わない。

 

 

「……失礼した。どうやら義弟と間違えてしまったようだ」

 

「へえ、俺と同じ名前で俺とそっくりな義弟か。会ってみたいもんだな」

 

 

 スパーッとタバコをふかしながら言うその男、一見無作法に見えてもトキは何故か不快感を感じなかった。逆にありのままを見せる蒼天のような快活さが垣間見える。

 

 

「しかし、羅門も継承者に恵まれ過ぎたな。だいぶ悩んだんだろうぜ。もしもたらればでお前たちの誰がなってもおかしくない……ん?いや、一人ちょっと……って奴がいた気がするが……まあ、いいか」

 

「羅門……!それは師父のかつての名!貴方が何故それを!?」

 

「んん?あいつは俺の弟だからな。異母弟だよ異母弟」

 

 

 ココ重要、と宙に『異母弟』と書くような動作をしながら笑うその男を見て、トキは思い出す。羅門――リュウケンがかつて話してくれた、『蒼天のようだった兄』のことを。

 

 

「まさか、貴方は……第62代北斗神拳伝承者の……!!」

 

「第62代北斗神拳伝承者、霞拳志郎」

 

 

 一瞬、トキさえ息を呑む迫力を出したと思えば、すぐさま先程までの空気に戻り「よろしく頼むぜ、甥っ子」と笑う拳志郎。飄々としながらもストレスを感じさせないのは、拳志郎の纏う独特の空気からか。

 

 

「……申し遅れました、わたしは……」

 

「知ってるぜ、トキだろ。俺でもあんなに綺麗に技は出せない。俺のはお前たちでいう剛拳だからな」

 

「恐縮です」

 

「あー、そんなに畏まるな。折角の叔父と甥の対面だぜ?もう少し気楽にいこう」

 

 

 師父もそうだが、歴代の北斗神拳伝承者は厳格だと思い込んでいたトキは、リュウケンが言っていたように拳志郎は蒼天の如く大きな器を持った男のようだと僅かに微笑んだ。

 

 

「そうそう、肩の力を抜け。それでだ……お前、このままでいいのか?」

 

「このまま、とは?」

 

「さっき言っただろ。この状況の方が夢だってな。ぶっちゃけ、あの……何だ……オールマイティー、だったか?そいつとあのデカブツじゃ、良くて相打ちだ。デカいだけならまだしも羅漢仁王拳なんてもんを使うとなれば話は別、そいつが鍛えてるのは分かるが相手の使う拳法が悪過ぎる」

 

 

 拳志郎の言う通り、あの規格外のパワーで羅漢仁王拳を放つ悪夢相手では、圧倒的な身体能力と豊富な経験を持つオールマイトであっても勝利は厳しいだろう。羅漢仁王拳は格闘技術云々だけで破れるような拳法ではないのだ。

 

 

「……その通りでしょう。北斗神拳ならば可能性はある……しかし、伝承者ではないわたしは奥義を使ってはならない。それが北斗の掟」

 

「そうだ。それ故に俺も修行時代、他の流派に喧嘩を売られても奥義を使わなかった。使えなかったが正しいな」

 

 

 真面目な表情で言う拳志郎。しかし……

 

 

「ならなっちまえばいいだろ、伝承者」

 

「……は?」

 

 

 相変わらずタバコをふかしながら笑う拳志郎。だが言ってることはとんでもない。

 

 伝承者になれ、と簡単に言うが北斗神拳の伝承者になるのは容易いことではないことぐらい、伝承者である拳志郎なら分かっているはずだ。

 

 

「何をいきなり……!?」

 

「今、お前が生きている世界には北斗神拳どころか、北斗孫家拳(ほくとそんかけん)北斗曹家拳(ほくとそうかけん)北斗劉家拳(ほくとりゅうかけん)、そして北斗神拳の原点とも言える西斗月拳(せいとげっけん)すらも存在しない。そう、あの世界で北斗神拳を使えるのはお前だけだ」

 

「……!やはり、北斗神拳はあの世界に存在しなかったのか……」

 

「ああ。ならお前が伝承者を名乗っても問題ないだろ」

 

 

 無茶苦茶を言う拳志郎ではあったが、確かに理に適っている。実質的に、トキがあの世界で最初の北斗神拳伝承者――つまり創始者となるというわけだ。

 

 

「もしそれが恐れ多いってんなら、栄光の初代様に直接伺ったらどうだ?ほれ」

 

「!?」

 

 

 軽く言った拳志郎の隣にはトキの見知らぬ人物が立っていた。その人物こそ、北斗宗家に生まれた、北斗神拳創始者のシュケンその人である。

 

 

「貴方は……!!」

 

「第64代北斗神拳伝承者候補、トキよ。お前は北斗神拳を伝承して何を成す?」

 

 

 シュケンの問いに、トキは少し目を伏せた後、その目を開いて真っ直ぐシュケンの目を見て語った。

 

 

「わたしは予てより北斗神拳の伝承者となったときは、北斗神拳を医学に使おうと考えておりました。そして、それは今も変わりません」

 

「悪を……あの世界ではヴィランと呼ばれる存在を倒すのではなく、か?」

 

「必要とあればわたしもその為に拳を振るいましょう。しかし、悪を倒すことだけが人を救う方法ではない。まずは各々の命が未来を手にすること、その果てに新たな道が開ける可能性がある」

 

「……そうか。では、もう一つ問おう。お前にとって、愛とは如何なるものか?」

 

 

 北斗神拳の究極の到達点――それこそが『愛』である。代々北斗神拳伝承者は、同じく北斗宗家の血を引く『北斗琉拳』の一族に『愛を説く』ことを創始者たるシュケンは伝えていた。詳しいことは省くが、トキもこの北斗琉拳とは関わりがある者だ。

 

 

「……一言では言い表せませんが、強いて言うなら『愛』は相手のことを真に想うことと、わたしは考えています」

 

「ほう……?」

 

「己が気持ちの押しつけは『愛』にあらず『欲』……本当の意味で相手を尊重し、理解し合い、それらを経て様々な形で想い合うもの――それが、わたしの考える『愛』です。恋愛、情愛、親愛……愛とはいくつもの形があります。そして……そのいずれも、正しく愛と呼ぶには相手のことも考えてこそだと」

 

「……良き答えを聞いた」

 

 

 シュケンは満足げに微笑み、頷くとシュケンは告げる。

 

 

「トキよ、今この時より名乗るが良い」

 

「は……?」

 

 

 突然のことにトキが理解しきれずに聞き返すと、隣でタバコをふかしていた拳志郎が笑いながらトキを指差しつつ、声を張り上げた。

 

 

「お前がこの世界で、最初の伝承者だ!!」

 

「!!」

 

「こう言えば意味が通じるだろ。初代に認められたんだよ、お前は」

 

「わたしが……」

 

「しかしまあ……肩書きが問題だよなあ。第何代って名乗ると不自然だし……お!『北斗神拳新世界創始者』ってのはどうだ?なかなか良いと思うぜ、俺は」

 

 

 ドヤ顔で言う拳志郎。確かにそう悪くはないし、トキとしても真面目に考えてくれただろう拳志郎の意見を、先程自分が言ったように『尊重』し、そうすることに決めた。

 

 

「では……今後はそう名乗らせて頂きましょう」

 

「こっから戻ったら、まず言う相手がいるだろう?」

 

「ふ……確かにその通りでした」

 

 

 穏やかな時間――しかし、いつまでもここにいるわけにはいかない。ヒーローならばこういうだろう――『救いを求める声が聞こえる』と。

 

 そんなトキの心を察し、シュケンと拳志郎は最後にとあるものをトキへと渡すことにする。

 

 

「新たなる伝承者にして創始者、トキよ。お前に我らが記憶を託そう」

 

「記憶……?」

 

「ああ。俺や初代はお前にとって『過去』に生きた者だ。その記憶を受け継ぐのは俺たちを『未来』に語り継ぐ上で必要だろう?それに――」

 

 

 拳志郎はトキの後ろを指差しながら言う。

 

 

「そいつらの記憶にはお前が逝った後の記憶もあるからな。そっちまで知ろうとは思わないだろう?」

 

「っ――!?」

 

 

 トキがその言葉の意味に気づいて後ろを向けば――

 

 

「ケンシロウ……!兄さん……!」

 

 

 穏やかに微笑む義弟(ケンシロウ)と……かつて自分を抱えて崖を登ってくれた時のように、誰かを守ろうとしていた、野心無き頃の――トキが真に目標とした実兄(ラオウ)が腕組みしながら、片や優しく、片や力強く頷いていた。

 

 その姿にトキは瞼が熱くなるが、必死に堪え天帰掌の構えで返すと、二人もまたその構えで返してくれた。例え一時の夢でも構わない――そう思いながら、トキは再びシュケンと拳志郎の方に向き直り、今度こそ二人から記憶を受け継いでいく。

 

 北斗神拳の始まりや、拳志郎が過ごしてきた戦いの日々、多くの朋友(ポンヨウ)たちとの出会いと別れ――そして、北斗神拳の究極秘奥義も。

 

 それらが全てトキの中に流れ込み終わったとき、再び世界は眩さを増していく。

 

 

――また会おうぜ、甥っ子。いや、朋友――

 

 

 拳志郎の、蒼天の如く晴れやかな声を聞き――

 

 

 

 

 

 新たなる『北斗の拳(物語)』が本当の幕を開ける。

 

 


 

 

 時は来たぁ!!

 

 悪夢に苦戦するオールマイトの危機に、北斗神拳の奥義を解禁したトキが今再び立ち上がる!!

 

 

 次回!有情のヒーローアカデミア!!

 

 『悪夢よ眠れ!地上最強の拳、北斗神拳!!』

 

 

「その目でしかと見るがいい……『闘神の化身(インドラ・リバース)』と呼ばれる北斗神拳を!!」




霞拳志郎、ケンシロウ、ラオウ……ここらへんは鉄板ですよ、でも展開上必要だったとはいえシュケンを出すことになろうとは私も思いませんでしたよ、ええ。
リュウケンがいない?会話分で羅門って名前が呼ばれてたからセーフ。
ジャギがいない上に影も形もない?『夢っぽい所』にはいませんよ、あの御仁は。うん。

次回!服が破けるのはトキか、オールマイトか、根津校長か!?
……なんでだろう、根津校長が混じっても違和感感じない自分がいる。

もし、他にも北斗キャラを出すとしたら

  • ケンシロウ
  • ジャギ
  • ラオウ
  • レイ
  • シュウ
  • サウザー
  • ハート様
  • アミバ
  • むしろトキ兄さんを強化しよう
  • ……霞拳志郎(蒼天の拳)
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