有情のヒーローアカデミア(ただし本人はヒーローにあらず)   作:激流を制するは静水

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お待たせいたしました。悩みまくった結果、拳王様が原作より遥かにパワーアップしてしまいました。
リアルシャドーだし別にいいよね!……と思ったのも束の間、いやリアルシャドーだと強くし過ぎたらガチで死ぬじゃん……と考え、最終的にブッ飛んだ展開に。

強いて言うならAFOもテコ入れしないと冗談抜きでヒーロー側のワンサイドゲームになりかねないなと。

追伸:誤字脱字報告、並びに多くのお気に入りや高評価、そしてたくさんのご感想ありがとうございます。個別にお返事はほとんどしておりませんが、全て作者にとってとてつもない原動力となってます。不定期更新かつ、拙い作品と作者ですが、これからもどうかよろしくお願いいたします。


第十六話 奥義天将奔烈!目指した兄は未だ遠く!!

 遂に始まったトキと、リアルシャドーによって生み出されたラオウによる仮想模擬戦。

 

 しかし、ラオウはリアルシャドーとは思えぬほど明確な意思を持ち、もはやそれは模擬戦ではなく――かつてトキが生まれ育った、あの世界における強者同士の死闘そのものであった。

 

 

 

 

 

「はあっ!!」

 

 

 トキの鋭い手刀がラオウを狙い繰り出される。以前初めての戦闘訓練にて、爆豪の秘孔新膻中を突いて動きを止めたものと同じ……しかし、その一撃は速度、精度、そして込められた気迫はあの時の比ではない。

 

 

(あれが決まれば勝負は終わったも同然……!)

 

(ラオウは避けるか、捌くか……どう出る!?)

 

 

 出久とオールマイト、ワン・フォー・オールの継承者師弟は両者の一挙一動を見逃すまいと集中している。真の達人同士の闘いは、一瞬で驚くほどの駆け引きがされるものであり、当然の如く彼らの闘いでもそれは同様。

 他にも相澤やミリオ、加えて格闘技をやっている尾白もそれを理解しており、他の生徒や教師たち以上に注視していた。

 

 だが、ラオウは彼らの想像の上を行く。

 

 ドスッという鈍い音と同時に、ラオウは新膻中を突かれたのである。これには全員――それこそトキすらも――予想外としか言いようがなかった。

 

 

(突かれただと!?あれだけの動きをしていながら……)

 

(確かに彼は巨体だが、今までの動きを見る限りでは鈍いというわけではない……もしや、肉を切らせて骨を断つ作戦か!?)

 

 

 相澤とミリオはやはりと言うか訝しむ。一見ミリオの考えが一番濃厚ではあるのだが、それは体の一部が封じられた場合であり、新膻中を突いたときの『術者の言葉がかからぬ限り動きを封じられる』という状況下では叶わぬものだ。

 

 一部を除き、誰もがトキの勝利を確信するもトキ本人はラオウのとった行動の意味を理解し、即座に防御態勢に移行した。何故ならば――

 

 

『ぬうん!!』

 

 

 一瞬動きが止まったラオウは凄まじい闘気を発し、ケンシロウのように新膻中に突かれた状態を自力で簡単に解除してしまったのだ。

 

 そのままラオウはその剛拳をもってトキを防御の上から軽々と吹き飛ばし、何事もなかったかのようにその場に仁王立ち。質実剛健、威風堂々。その言葉を体現したかのような闘いに出久たちは圧倒される。

 

 

「ば……爆豪が瞬殺されたあの技を正面から受けて、あっさり打ち破りやがった……!!」

 

「あれが肉体を鍛え抜いた姿……!漢すぎるだろ!!」

 

「振るわれし拳は破壊の鉄槌、そしてその肉体は鉄壁の城塞が如し……!」

 

「……個性って何だっけ……?」

 

 

 生徒たちは上鳴を皮切りに様々な反応を見せており、峰田など個性のあり方を考え出してしまう始末。それほどまでにラオウの戦法は度肝を抜くものだった。

 

 

『技の冴えも気迫も以前とは比べものにならぬ……さすがトキよ。だがその程度の戦い方ではこのラオウを打ち破ることなど出来ぬと、身に沁みて理解していよう。出し惜しみは不要!北斗神拳のみならず、お前が得た全てをもって挑んでくるがよい!!』

 

 

 そう吼えたラオウは、トキが既に北斗神拳以外の術技を修得したことを知っている。トキ自身も薄々勘づいていたが、ある時を境に敢えてラオウが言い出すまで使わずにいた。

 

 

「あなたならば気づくと思っていた反面、気づかぬフリをするならそのまま隠しておこうと思ったが……同時にその言葉を待っていたわたしがいる」

 

 

 小さく笑みを浮かべた後、トキは静かに気を練り両手に纏わせる。その構えから出久はすぐに理解した。あのUSJ襲撃事件の際に見せた技……『真・仙氣発勁』を放つのだと。本来なら直撃すれば相手の体内を完全に破壊するほどの極技――それを使わねば痛手を与えられぬであろうほどの相手、それがラオウ。

 

 

(けど……あの悪夢というヴィランが特別だったとはいえ、何故だろう……トキ先生のあの技でもラオウに決定打が与えられると思えないのは……!)

 

 

 この時、既に出久は少しずつ強者としての階段を登り始めていた。無意識のうちに相手の力量を感じ取っているのがその何よりの証拠。

 

 そんな出久の様子は露知らず、トキは意を決して再びラオウに挑みかかる。

 

 

『小細工を捨てて真っ向より仕掛けるか!それもまた良し!!』

 

「兄さんが自ら作ったスキをついたところで、それはただ誘い込まれているだけに過ぎぬ!ならばこそわたし自身の手でスキを無理矢理作り出す!!」

 

『むうっ!?』

 

 

 先程トキを吹き飛ばしたときよりも早く、重い拳がトキに振るわれるが――

 

 

「流・仙氣発勁ッ!!」

 

『ぬう!これは!?』

 

 

 寸でのところでラオウの剛拳を回避しつつ、振るわれた右腕に滑らせるよう、トキは同じく右手をラオウの右腕に添えて仙氣発勁を叩き込み、大きく弾く。そしてバランスを崩したラオウの腹部に、今度は左手を添え――

 

 

「真・仙氣発勁!!」

 

『ぬおおおおっ!?』

 

 

 ラオウの全身を凄まじい衝撃が襲い、体が宙に浮かされる。

 

 

「決まったか!?」

 

「いや、ラオウは五体満足で存命してる!おそらく咄嗟に闘気というもので相殺したんだ!」

 

「咄嗟にしたって防御しきれるモンじゃねえだろあの攻撃!どんだけ化け物なんだよ!?」

 

 

 出久の言う通り、ラオウはトキに拳を弾かれた時点でトキが放ってくる技の危険さを理解し、攻撃ではなく防御に闘気を集中させ、真・仙氣発勁の威力を可能な限り減少させていた。トキが込めた気の量や質は尋常ではないが、即座に対応するラオウもまた恐るべき判断力と、それを実現する能力を有した峰田いわく『化け物』だろう。

 

 しかし、トキの狙いは更に先にあった。

 

 その事に気づいたのはラオウ、そして相澤。そう、トキの真骨頂は空中戦。浮かせたラオウを追い、華麗なムーンサルトで宙を舞うトキ。

 

 無防備となったラオウに放たれるは――

 

 

「天翔百烈拳!!」

 

「ぐおおおおおっ!!」

 

 

 かつて元の世界で戦ったときとは違う、万全かつより洗練された天翔百烈拳。目にも止まらぬ早さで叩き込まれたそれは如何にラオウと言えどただでは済まず、体に無数の拳の跡を残しながら吐血する。

 

 だが、ラオウもまた黙ってやられるはずがない。落下を始める直前に驚くべき威力を持った蹴りをトキに炸裂させた。

 

 

「ぐはあっ!!」

 

 

 先に技を決めたトキの方が大きく放物線を描きながら吹き飛び、トキとラオウ双方が痛み分けといった形で空中戦は幕を閉じた。

 

 

「お……おい、これホントに模擬戦だよな?トキ先生もあのラオウってのも本気で相手を倒しにかかってないか!?」

 

「そりゃそうだろ。北斗の拳の使い手同士が本気でやりあえば、ああなるのは当たり前だ。俺がそうだったからな」

 

「「「!?」」」

 

 

 切島の焦った発言に誰も聞いたことのない声が返事を返し、オールマイトや根津校長らも一斉にそちらを向くと――

 

 

 

 

 

「しかしまあラオウの方は俺が知ってる奴らより恐ろしくタフだし、トキの方も割とえげつない技を使うねえ。こりゃあ羅門が悩むわけだ」

 

「「「どちら様ですか!?」」」

 

 

 

 

 

 漢服を着た長身の、服の上からでもわかるほど鍛え上げられた肉体を持った男が煙草をふかして腕を組み見学していた。しかも、その男は誰だという質問に対し……。

 

 

「ん?ああ、俺はあいつらの叔父だよ。甥共々ヨロシク」

 

「あ、ハイ。よろしく……」

 

「じゃねーだろぉぉぉ!!いつの間にいたのとか、叔父にしちゃ若過ぎだろとかそんなんどーでもいいんだよ!ベクトルが違うとはいえトキ先生もラオウもイケメンだと思ったけど、ここにきて叔父までイケメンとかどうなってんだあの人の家系は!!」

 

 

 やはり峰田はブレなかった。とはいえ上鳴も同じことを思ってたりするのだが、わかりきってるので放置。

 

 ちなみに、あくまでトキとラオウはリュウケンの養子なのでこの男――霞拳志郎と直接的な血縁関係はない……と思われる。風貌からしてケンシロウや、その実兄であるヒョウとはありそうだが、詳しくは不明なのでこの件はとりあえず置いておく。

 

 外野が騒いでいる間に、互いに攻撃を受けたトキとラオウが再び立ち上がり、睨み合う。しかしそこでラオウはふと優しい表情になり――

 

 

『今の天翔百烈拳、実に見事。さすが北斗神拳史上最も華麗な技を持つ男よ』

 

「兄さん……」

 

『故に次の一撃で此度の闘いの全てを決しようぞ。お前が倒れるか、それとも我が最大の奥義をも耐え抜き、このラオウを打ち負かすか――勝負と行こうではないか!!』

 

 

 トキの実力を認め、その上で『最大の奥義』を放つと言い切った。それに応じるかのように構えを取るトキを見てラオウは小さく笑い、次の瞬間には目を見開き、両手を大きく左右に開いてそこから上下で放物線を描きつつ円を作る。

 

 

『ぬううううん……!!』

 

「これは……!?」

 

 

 ラオウが腕を動かすだけで大地が揺れ、大気が震え、少しずつ眼前のラオウの体が大きくなっていくような錯覚さえ覚える。

 

 

「……あれはヤバイな」

 

「え!?」

 

「闘気の練り方が半端じゃない。下手な食らい方をすれば一発でお陀仏だ。拳王の二つ名は伊達じゃないってことか」

 

「そんな……!これは模擬戦ではないのですか!?」

 

「北斗の拳……特に北斗神拳の本気の組手ってのは文字通り命がけだ。伝承者候補同士で相手の秘孔を突き合うなんざ普通のことさ。最初に北斗天帰掌をやっただろう?あれは誤って相手の拳で命を失う事になろうと、相手を怨まず天に帰るって意味なんだよ」

 

「「「ッ!?」」」

 

 

 焦り気味な八百万の質問を、拳志郎は冷静にバッサリと切り捨てた。拳志郎自身、北斗三家拳を使う者たちと死闘を繰り広げただけあって、目の前の光景も当然の事と捉えている。

 

 だが生徒たちや、教師たちはそうもいかない。

 

 何としても止めなければ――そう考えて動こうとしたとき、凄まじい殺気が全員に放たれた。

 

 その主は――拳志郎。

 

 

「黙って見届けろ。あれはあいつら自身が望んだ決着のつけ方だ。ただの勝負じゃない、北斗の星の下に生まれし者たちが背負った宿命……立場は違えど己の信念のもとに拳を振るうあいつらの勝負の邪魔をする事は俺が許さん。第62代北斗神拳伝承者としてお前らに言っておく。

 

 

北斗の文句は俺に言えぇ!!

 

 

 拳志郎のあまりの迫力に、生徒はおろかオールマイトすら黙らされてしまう。これが北斗神拳伝承者――長き歴史を持つ究極の最強拳・北斗神拳を受け継いできた者の纏う気迫なのだと改めて思い知らされる。

 

 そして、当のトキは――

 

 

(あれはわたしの知らぬ奥義……おそらくは兄さんが独力で編み出したものなのだろう。初見でもわかる!これから放たれる奥義の凄まじさが!生半可な防御など意味は成さぬ……どうする!?)

 

(トキよ……いくらお前といえど、この奥義を受ければただでは済むまい。お前がこの状況を打破するためには『あの奥義』を今ここで得る他ないのだ。既にお前は『哀しみ』を得ていよう……資格は十分、このラオウの前でその奥義を会得し、見事この窮地を脱してみよ!!)

 

 

 カッとラオウの目が再度見開かれ、遂にラオウが編み出した最大の奥義――無敵の拳と名付けたそれが放たれる。

 

 

『受けてみよ!天将奔烈!!』

 

 

 ――それは激流どころではなかった。

 

 圧倒的な質と量の闘気の波動。大地を抉り、その余波で一時的に景色が歪むほど膨大な力の奔流。それは轟音と共に容易にトキを呑み込み、出久たちはもちろん拳志郎さえも冷や汗を垂らすほどの衝撃を与えた。

 

 

「な……何だよ今の……!?」

 

「トキ先生は無事なの!?」

 

「わからん。俺もある程度は予想していたが、ここまで馬鹿げた威力とは思わなかったぜ」

 

 

 拳志郎をも唸らせるラオウ無敵の拳、天将奔烈。単純な攻撃力であれば間違いなく最強クラスの奥義と言えるだろう。それをまともに受けたトキは――

 

 

 

 

 

「……うっ……」

 

「「「!!」」」

 

 

 

 

 

 なんと力無く片膝をついているものの、天将奔烈を放たれる前と同じ姿のまま。どういうことかと全員が騒ぎ出す……いや、騒がぬ者が二人いた。

 

 ラオウ、そして拳志郎だ。

 

 二人とも穏やかな表情でトキを見つめている。

 

 

『……改めて称賛しよう。それでこそ我が弟よ』

 

「まさかあの土壇場で『無想転生(むそうてんせい)』を会得するとはな。それとも元々会得済みだったのか?どっちにせよ大したもんだ」

 

「「「『無想転生』?」」」

 

 

 北斗神拳と関わりのある三人を除き、誰もが首を傾げる。それはそうだろう、何故ならば――

 

 

「北斗神拳究極奥義『無想転生』。無から転じて生を拾うという意味合いがあってな――」

 

「すみません、長くなりそうなんで出来たら簡単に……」

 

「何だよ、究極奥義なんだからせっかく熱く語ってやろうとしたのに。ざっくばらんに言うとだな、透明化。もっとわかりやすく言うなら無敵状態になるってことだ」

 

「「「無敵!?」」」

 

「透明化……!?それはミリオの個性『透過』と同じってことじゃないか……!そんなものを奥義とする流派があるなんて……」

 

「いや、それだけじゃない」

 

 

 天喰の言葉に続くように、引き合いに出されたミリオが口を挟む。

 

 

「それだけじゃないってどういうこと?教えて教えて!」

 

「う〜ん……俺も感覚的なものだからよくわからないけど、俺の『透過』とは何かが決定的に違う気がするんだ」

 

「ほう、無想転生の持つ特異性に朧げながらきづくとは、お前なかなか鍛えているな」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 元気溌剌と応えるミリオに拳志郎も笑みを浮かべる。味方には優しく頼もしく、悪や外道に辛辣な二人は何気にウマが合うようだ。

 

 

「よし、蒼天のようなお前に敬意を表し、無想転生の特性……その一部を教えてやろう。教えたところでそう易易と破られるようなものでもないし、仮に破られたとしても戦えなくなるわけでもない。それに()()()()()()からな」

 

「「「!?」」」

 

 

 果たしてこの驚きは究極奥義たる無想転生の特性を教えてくれることになのか、それとも――無想転生のさらに上の何かがあるということになのか、或いはその両方か。

 

 

「さて、今から教える無想転生の特性の一つ、それは……無想転生を破るには無想転生しかない、ということだ。まあ何らかの外的要因で自分から解除するように仕向けたりすることも出来るっちゃ出来るんだが……トキ(あいつ)相手にそれは悪手だな」

 

「つまり、トキ先生のあの技を破るには……いや、最低でも互角に戦うには北斗神拳を使うものでなければならないと!?」

 

「それも同じ境地に至った、な。ただ北斗の拳を使うだけの奴じゃそもそも無想転生を会得した奴の相手にすらならない。逆に無想転生を会得した者同士で戦うと――」

 

「「「た……戦うと!?」」」

 

 

 ゴクリと息を呑んで拳志郎の次の言葉を待つ見学者一同。しかしこの拳志郎、同じ『ケンシロウ』でもそこは違った。

 

 

「んふふ……どうなるだろうねえ。それは俺以外の奴に聞くか、自分の目で見た方が驚くだろうぜ」

 

「「「えええええ!?」」」

 

「こ……ここまで引っ張ってそれかよ!」

 

「何言ってんだ。いつまでも他人に引っ張られる奴が『ヒーロー』になんてなれると思ってんのか?」

 

 

 拳志郎の『ヒーロー』発言に驚くが、真に驚くべきなのは次に続けられた言葉であった。

 

 

「『ヒーロー』ならよ、良くも悪くも引っ張る側にいろ。誰かが迷ったとき、悩んだとき、苦しんだとき……どうしようもないときにお前らが引っ張ってやれ。天の星が夜空を照らすように、そいつらを導く星になってやれ」

 

 

 誰かを導く星になれ――その言葉は生徒たちだけでなく、教師たちの心に残る言葉となった。そんな拳志郎だが、少しずつ足元から光が溢れ姿が薄れていく。そして、それはラオウも同じ。

 

 

「兄さん……まさかあの奥義をわたしに修得させるために……!?」

 

『ふ……何を言う。おれはお前を倒す気で天将奔烈を撃った、それをお前は死中に活を見出し、無想転生にてそれを回避した。ただそれだけのことよ』

 

 

 そういうラオウであったが、彼の表情は最期にケンシロウを認めたときの優しい表情だ。トキにとって憧れであり、目標であった兄。元の世界ではついぞ超えることが出来なかったが――

 

 

「……どうやら、わたしは今ようやく兄さんがいる場所に辿り着いたばかりのようだ。超えるのはまだまだ先……目指す頂がやっと見えるようになった、というところらしい」

 

 

 まさかの敗北宣言。ラオウと拳志郎以外が驚きはするも、それ以上はない。何故ならばトキもまた満足げに微笑んでいるからだ。

 

 彼にとって、ラオウは永遠に目指すべき存在。

 

 それを実感出来たことは、無想転生を修得したこと以上にトキにとって大きな収穫。そんなトキに頷き、次にラオウが見たのは――なんと爆豪。

 

 

『小僧、爆豪と言ったな』

 

「!!」

 

 

 いつの間にか眼前にいたラオウに爆豪は体を強張らせるが、そんな爆豪にラオウはトキのような穏やかな笑みを浮かべつつ頭を撫でる。

 

 

『その齢にしてこのラオウに挑まんとした気迫、見事だ』

 

「「「!?」」」

 

『強くなれ!!男なら強くな』

 

 

 この瞬間、爆豪勝己は悟った。自分が目指すのはNo.1ヒーローたるオールマイトだけではない。自分よりも圧倒的に格上でありながら、自分を認めてくれたこの強さ、そして器も計り知れない拳王――ラオウもまたそうなのだと。

 

 

「……ッたりめーだ……!俺は絶対にオールマイトも……アンタも超える『男』になってやる!!そんときは俺と勝負しろや!!()()!!」

 

 

 あの爆豪が相手をちゃんとした二つ名で呼んだ!?と誰もが別の意味で目を見開いている。出久など顔がトキやラオウ、拳志郎らと同じ世紀末風になるほどの驚きっぷり。

 

 そんな爆豪に応えるよう、ラオウは静かに拳を突き出した。爆豪もまた、拳を突き出しラオウの拳にぶつける。これを見た切島と、B組の切島というべき鉄哲は絶賛男泣き。

 

 

「ふふ……この『回帰拳合(かいきけんごう)の地』にこんな大勢がいっぺんに来たのは初めてだが、退屈だったここでこんな熱い場面を見られるとはな。存外ここも悪くねえな」

 

「回帰拳合の……?」

 

「それについちゃあ今は知らなくてもいいさ。俺が出会った強敵(やつ)の言葉を借りるなら、今は『運命の旅を楽しめ!』……ここにいる奴ら全員な」

 

 

 相変わらず深い意味がありそうな短い言葉を連発する男、霞拳志郎。

 

 

「じゃあな。今度は俺とやろうぜ、甥っ子(トキ)――」

 

 

 最後まで蒼天の如き笑みを絶やさず消えていく拳志郎。それを見届けたラオウは再びトキへと向き直り、自身が伝えるべきことを伝えていく。

 

 

『おれとまたこうして相まみえることが出来るかはわからぬ。だがお前が強き心をもって望めば、お前が知る男たちとここで出会うことも出来よう』

 

「それは……!」

 

『そして……注意するがよい。この回帰拳合の地には……()()()がおらぬ。お前と同じく『そちら側』にいる可能性がある!!ゆめゆめ油断するなよ、トキ』

 

 

 ラオウが示す者たち、それが誰なのか。前者はともかく後者は後で思い返さねばなるまい、とトキも考えラオウの言葉に頷いた。

 

 いよいよ、別れの時。

 

 

『トキ、そしてその友と教え子たちよ。次の再会がいつになるかはわからぬ。だが次にあったとき、お前たちがこのラオウを唸らせるほどに成長していることを期待しておるぞ。仮に次が無かったとしても、さらなる強さを得た我が弟……そして多くの可能性を秘めた若き英傑の卵たちに出会えたことで――』

 

 

 ラオウは闘気を限界まで集約した拳を天に突き上げ――

 

 

 

『我が生涯に一片の悔いなし!!』

 

 

 

 放たれた闘気が天と地を結ぶ柱のように立ち昇った。拳志郎同様、見る者を最後まで圧倒したラオウ。彼が消えると一気に光が爆ぜ――

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 ――気がつくと、トキを始め全員が元の体育館にいた。何も壊れている様子はなく、皆が皆キョロキョロと周囲を見回している。

 

 

「え……あれ……?」

 

「も、もしかして今の今までリアルシャドーだったの!?」

 

「いや、それにしてはさっきまでの感覚が残り過ぎてる……!」

 

「……そうだ!時間!……嘘、ほとんど経ってない」

 

 

 幻なのか、それとも別の何かだったのか。ざわめき出す者たちを一喝したのはラオウが認めた少年、爆豪。

 

 

「信じたくないなら信じなきゃいいだろうが。ギャーギャー言ってんじゃねーよモブ共」

 

「おい、爆豪!おま……「拳王はいた!!」ッ!!

 

「お前らがどう言おうが関係ねえ。あれを見て何も思わねえならそれがお前らの限界だ。俺は覚えてる、そして忘れはしねえ……!あの強さを!デカさを!!」

 

 

 怒りではなく、純粋に闘志を燃やす爆豪を見て、半信半疑になっていた者たちはしっかりと認識し直した。あの場所で出会った二人の男たちのこと、そして短い時間の中で言われた重みのある言葉の数々。

 

 何より、彼らが確かにいたという事実がもう一つ。

 

 それは――

 

 

「その通りだ、爆豪。わたしも覚えている……この身に受けた兄さんの拳の重さを」

 

 

 ――マジでボロボロになっている、天将奔烈を無想転生で間一髪回避したトキそのもの。

 

 

「「「トキ先生ぇぇぇ!?」」」

 

「ほ……保健車!!救急室ー!!」

 

「落ち着くんだ麗日くん!逆になって……あれ?逆でも別に間違いはないのか」

 

「変なとこで落ち着いてんじゃねーよ飯田!!保健の先生……ってトキ先生じゃん!!」

 

「アンタは飯田の言うとおり落ち着け!普通に考えてリカバリーガールがいるでしょ!!」

 

 

 トキ本人は落ち着いているのだが、リアルシャドーだからなのかは別としてラオウから何発ももらったトキは口もとから血は出ているし、服は破けて大きな痣や擦り傷切り傷も結構ある。

 

 お約束の『自分では何とも思わないが、傍から見れば大惨事(というほどのものでもない)』というやつだ。

 

 こうして、参加した者全てに多大な影響を与え……仮想模擬戦は終了。トキはリカバリーガールに傷ついたことを珍しがられながら治療を受けつつ、ラオウの最後の言葉を反芻する。

 

 もしかすると、レイやサウザーらとも拳を交え、出久らの成長の糧として見せることが出来るかもしれない。同時に、ラオウが警告していた人物が誰なのかを考えつつも、ラオウや拳志郎との出会いで一皮むけたであろう教え子たちの活躍を願い、雄英体育祭の開催を楽しみに待つのであった。

 

 


 

 

 オリンピックに変わる新たな祭典!

 

 数多の思いが交差する雄英のビッグイベント、雄英体育祭が遂に開催の時を迎える!!

 

 

 次回!有情のヒーローアカデミア!

 

 『雄英体育祭開幕!今年の一年生は何かが違う!!』

 

 

「ちょっと待ってコレ涙より血の方が流れんじゃねーのか!?」

 

「ご協力ありがとうございます、根津校長」




はい、拳志郎とラオウの名言ぶち込みたいがための展開になりました今回。
少なくともこの闘いだけでトキはもちろん、出久や爆豪、それに漢二名は少なくとも強化フラグが立ちました。
とりあえず下地は整った!これで他の北斗キャラや蒼天キャラもゲスト参戦くらいは出来る!
……何か敵に回しちゃヤベーやつ出した気もするけど。

トキ兄さんの強化案は……

  • 南斗聖拳の技の一部
  • 記憶継承したし、極十字聖拳や西斗月拳など
  • 波紋法など、無理のない範囲で他作品の技
  • 北斗or蒼天キャラとコンビかチームに
  • 「全部やっちまえ!ヒャッハァァァ!!」
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