有情のヒーローアカデミア(ただし本人はヒーローにあらず)   作:激流を制するは静水

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トキ兄さん、早速問題に直面する。
現代社会じゃ仕方ないけど、あの世界で生きてきたならこっちもまた仕方ないよね的なことですね、コレ。
それにあっちは世界が世紀末、ヒロアカは人間が世紀末(個性的な意味で)。
……いや、向こうも平均身長が高かったり大多数のモブモヒカンがムキムキマッチョだったりと大概ですけど。


第二話 今を生きる者たちのために!の巻

 彼が無個性でありながら並みのヒーローを上回る活躍をしたことは瞬く間に世間に報じられた。しかし、そんな彼にも困ったことが起きてしまう。

 

 そう、戸籍問題。

 

 今の彼には戸籍がない。家に関してはぶっちゃけ監獄でケンシロウを待っていたことがあったりしたため、然程問題ではなかったが……。これではこの世界においてまともな職にありつけず、今はまだしも後々響いてくることは目に見えている。人を助ける前に助けられる側になることなど一目瞭然だ。

 

 だが、彼の行いを聞き即座に動いた者たちがいる。

 

 国立雄英高等学校――通称雄英高校。

 

 その校長である根津と、何より彼を欲したリカバリーガール。この二名がトキと接触を試みた。

 

 例によってリカバリーガールはともかく、二足歩行してスーツを着たネズミを見たトキはしばし絶句するが、思い返せば異形が町を平然と歩くくらいなのだから、と割と早く納得。命に色はないのだと改めて実感したそうな。

 

 

 

 

 

「こちらの頼みに応じてくれてありがとう。僕は国立雄英高等学校校長の根津、見ての通りネズミさ!いや本当は犬か熊かもしれないけどそこは気にしないでほしいのさ。ちなみに僕の個性は『ハイスペック』、まあ簡単に言うとものすごく頭が良いと思ってくれればいいのさ!」

 

「同じく私は雄英高校看護教諭のリカバリーガール、個性は『癒し』だよ。あんたの噂は聞いている……というより知らない人はほとんどいないだろうね。ここまで早く広まるなんて予想外にも程があった」

 

「初めまして、トキと申します。遠路遥々私を探してこちらまで来てくれたようで……宿無しの身の上、申し訳ありません」

 

 

 深々と頭を下げるトキに、根津とリカバリーガールは少々困惑する。それだけの実力がありながら宿無しというのはどういうことなのか?考えられるのはその実力が無個性差別派によって危険と判断され、命を狙われているというのが一番濃厚だが……。

 

 

「ちょっと信じられないね。それだけの力があるなら仮に宿無しだとしても、何処かに住み込みで働くとか食い扶持には困らんだろう?」

 

「そこです。恥ずかしながら、今のわたしには正規に働くということさえ困難なのです」

 

「んん?どういうことなのか詳しく聞かせてもらってもいいかな?」

 

「もちろんです。貴方たちがこうして三人だけで話せる場を用意してくれて助かりました。貴方たちは信頼出来る人物だと、目を見れば分かります」

 

 

 穏やかな表情でそう言ったトキは、瞬時に顔を引き締め強い意思を持って二人の顔を見る。雰囲気がガラリと変わったトキに一瞬驚くも、長年の経験から敵意ではなく覚悟の表れだと理解した二人も気を引き締めた。

 

 

「お話ししましょう。その理由……いえ、わたしが今日まで歩んできた『生』を!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トキの話は二人とって想像を絶するものであった。

 

 彼が生まれ育った世界は別の世界であること。

そしてその世界は第三次世界大戦による全面核戦争が勃発。それによって地上は荒土と化し、国家機構も崩壊したことに始まり、通貨や貨幣が無価値となり近代文明の所産の大半が失われた結果、当たり前のように略奪が行われるという、暴力が全てを支配する世界であったこと。

自身が北斗神拳伝承者候補であったが、義弟とその婚約者を庇うようにシェルターへと押し込み、結果死の灰を浴びて被曝し、病に侵されたことで継承者争いから脱落したこと。

それからは、『死ぬまでにどれだけの人を救うことができるか、それが自分の生きた証』……そう考えて先日の事件の時のように人を助ける人間として生きてきたこと。

 

 その後も様々なことを語ったトキではあるが、根津とリカバリーガールが最も心動かされたのは彼が実兄である北斗四兄弟の長兄にして、度々話の中で登場した拳王『ラオウ』との決戦。そして、その後に彼自身が落命した時の話だった。

 

 残命を削ってでもラオウを止めるべく、刹活孔を突いてまで挑んだその闘いは、刹活孔を突いて剛力を得たとしてもそれは一時的なものに過ぎず、ラオウを追い詰めはしたが徐々に弱っていく拳では決定打となる一撃を放てずに敗北した。

 

 そして、ラオウの慈悲によって生き長らえたものの、刹活孔を突いた代償で医療活動も支障をきたす程に病が進行し、余命幾ばくもない中でリュウガによる襲撃。

だがリュウガの真意を読み取り、致命傷となる一撃を自ら甘んじて受け、その最期は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自身に致命傷を与えた相手を抱きかかえながら、死んだはずだった、と……壮絶にも程があるのさ」

 

「呆れるぐらいの自己犠牲の精神だよ。己の命を賭してまでその義弟に道を示したってのかい。今のヒーローにそれをやれって言ったってできる奴なんて数えるほどしかいないだろうね」

 

「……それから、気がつけばわたしは廃墟に立っていました。その後はお二人も知っての通り、周りの変化に驚きつつヴィランとやらの動きを封じ、怪我人の治療に当たりました」

 

 

 そして思い出すようにトキは自身の身に起きたことも話す。

 

 

「先程お話しした通り、わたしの体は死の灰を浴びて病に侵され、刹活孔を突き、そしてリュウガによる致命傷を受けていた。にも関わらず、この世界に来たときはそれら全ての『体の負』が取り除かれたかのようになっていたのです。そして、いかなる異形であろうと秘孔の全てが目に視えるようにもなっていました」

 

「確かに、あんたの話を聞くとそのリュウガってのに襲撃される前じゃ体を動かすのだってキツかったようだし、こうやって話してる限りそんな兆候すら見えないね」

 

「加えて、どんな相手の秘孔も見抜ける目を得た……話の中にあった北斗神拳が経絡秘孔絡みの拳法だとしたら、鬼に金棒と言っても過言ではないのさ」

 

 

 異形型個性によってトキの世界の人間とは全く違う姿の者もいるこの世界で、秘孔を見抜ける目が偶然とはいえ手に入ったのはトキにとって僥倖だった。無論、戦闘以上に医療面で。

 

 

「今のわたしに話せることの大半はお話ししました。北斗神拳は一子相伝の拳法故、根幹など詳細を話すわけにいかないのはご容赦頂きたいのですが」

 

「構わないよ。その北斗神拳ってのはこっちじゃ聞いたこともないし、今のところあんたが唯一だからここじゃ伝承者と名乗ってもいいと思うがね」

 

「……伝承者はケンシロウです。たとえ世界が違おうと、わたしは真に拳が必要となった時以外、北斗神拳を振るうことはありません」

 

「それはこの間のように、誰かが助けを求めた時……なのかな?」

 

「そう思って下さって結構です」

 

 

 根津の言葉に頷きながら返すトキに、二人はお互い顔を見合わせると目に狂いはなかったと笑いつつ本題に入ることにする。

 

 

「前置きがだいぶ長くなってしまったね。私らがここに来た理由なんだけど」

 

「単刀直入に言うと、君を我が雄英高校の保健医としてスカウトに来たわけさ!」

 

「わたしを……!?」

 

「そう!その際に君の過去を参考にした来歴や戸籍なんかもこちらで用意しよう。無論住む場所やお給料も出すし、今聞いたことは外部には漏らさず信用出来る人物にしか話さないから、そこも安心してほしいのさ!」

 

 

 トキにはあらゆる面で願ったり叶ったりの好条件だ。しかし、包み隠さず話したとはいえいくら何でも待遇が良すぎる気がする。

 

 

「わたしとしては嬉しい限りですが、逆にそこまでされるとその意図を知りたくなるといいますか……」

 

「そりゃそうだろうね。順を追って説明すると、雄英高校(うち)はヒーロー養成のための学校でね。その性質から怪我人が出るのは日常茶飯事、それこそ擦り傷切り傷大小様々な」

 

「中には個性の反動によって重体になる子もいる。リカバリーガールがいてくれているものの、彼女もその個性と経験上、彼方此方から呼び出しがあって常に居られるわけではない」

 

「そこであんたの噂を聞いて飛んできたんだ。道具も個性もなく出血や痛みを止めたって話を聞いた時はどんなことをしたんだと思ったけど、直接聞いて納得したよ。個性ばかりで失念していた、人間本来の体に備わっていたものを利用するとはね。正直、私の代わりを務められるとしたらあんたしか思い浮かばないくらいさ」

 

 

 回復系の個性は希少。それはリカバリーガール自身がよく分かっている。そんな中で現れたトキの存在は世界各国の医療機関も喉から手が出る程、欲しい存在だ。

リカバリーガールの個性は対象の体力如何によっては逆に命を落とす場合もある。だがトキの北斗神拳の原理を利用した治療と組み合わせるとどうだろう?

トキが痛みを和らげ、体力に余裕が出てきたところでリカバリーガールの個性を使い傷を癒やす。それを実現出来れば負傷者の生存率は格段に上がる。

 

 

「私とあんたが組むことは元より、あんたが常勤してくれるとそれだけで私のフットワークも軽くなって彼方此方に飛び回れる。だから何としても雄英に入ってほしかったのさ。これからの世界を背負って立つヒーローの『卵』たちのためにね」

 

 

 トキはリカバリーガールの言葉を聞いて静かに目を伏せる。この世界もまた、少なからず悪は蔓延っている。しかし、この世界を守る者もまた存在している。己のいた世界、魂を託した義弟・ケンシロウがいたように。

 

 ならば自分はそんな未来への希望を守るために、一度は失ったこの命を使おう。再び……いや、今度こそ天に帰る時が来ようとも、自身の守った命がこの世界を救う救世主となるのならば、この命は惜しくはない。

 

 

「既に一度は無くしたこの命……それが新たな力とともに授けられたのは、この世界でわたしが成すべきことがあったからだと確信しました。そして、この新たな力と命は天の星となった熱い男たちが私にくれたものに違いありません」

 

「では……!」

 

「根津校長、そしてリカバリーガール……貴方たちの申し出、受けさせて頂きたい。このトキ、命ある限り今を生きる者たちを救うためにこの拳を使いましょう!!」

 

 

 その生気溢れる瞳に圧倒されつつ、承諾された喜びを根津もリカバリーガールも隠せなかった。彼に伝えてはいなかったがもう一つ、彼は大きな功績を上げていたことを二人は知っている。

 

 それは『無個性でも、知識と技術を磨き上げれば個性にも決して負けない』――それを体現したことで、無個性と言われた者たちが一念発起して己を鍛え始めたことだ。

 

 トキは医療関係だけでなく、無個性の者たちにとっても希望の星となっていたのである。

 

 個性を磨けど制限されて使用出来なければ、残されるのは己自身の力のみ。ならば最初から無個性ならば己自身の力(それ)を徹底的に鍛え上げればいい。

それを証明したトキはもはや無個性などと蔑めるような存在ではなかった。

 

 

(これは、今後の雄英の入試が楽しみになってきたのさ)

 

(彼に感化されて医療拳法とか使う子が入学してきたりしてくれるとありがたいんだけどねぇ)

 

(しかし……今のわたしにこの世界の文明の利器がまともに使えるのか、少し不安はあるな……)

 

 

 それぞれ期待や不安を胸に、トキの新たな生活がスタートすることになる。

 

 

 

 

 

「あ、住居なんだけど雄英の敷地内に一軒家を用意するからね!何か困ったことがあったら遠慮なく言ってほしいのさ!」

 

「助かります。なにぶん生きてきたところがお話しした有様だったもので……」

 

「ああ……いっそその世界での生活体験、カリキュラムにぶち込んじまうかい?そうすりゃ過酷な環境での耐性なんかも身に付くかもね」

 

「トラウマになる子も出そうだからやめておくのさ……あれ?ちょっと待って二人とも割とその気?」

 

 

 トキの不安はあっさり解決したが、別方面で問題が出そうになったようだ。根津の尽力によってあの世界での生活を体験させる案は流れたらしい。

 

 根津校長、グッジョブ。




あの世界での生活体験させたら爆豪あたり本気で荒みそうだし、個人的に止めて正解だと思う。
根津校長よく頑張った!
トキ兄さんは蛇口とかコンロ使うより、窯とか普通に自作して料理しそう。
とりあえず岩山両斬波で食材を真っ二つにはしないと思う。

もし、他にも北斗キャラを出すとしたら

  • ケンシロウ
  • ジャギ
  • ラオウ
  • レイ
  • シュウ
  • サウザー
  • ハート様
  • アミバ
  • むしろトキ兄さんを強化しよう
  • ……霞拳志郎(蒼天の拳)
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