有情のヒーローアカデミア(ただし本人はヒーローにあらず)   作:激流を制するは静水

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今回は他の教師と初顔合わせや入学試験。
ちょっと駆け足気味ですが、トキ兄さんは受験生ではないのでそうなってしまいました。
正体を隠して参加……と考えて「それ、アミバと似たようなことしてね?」って感じになったのでボツに。
あれみたく非道な真似するわけじゃないんですけどね。


第三話 挑め若人!雄英の狭き門!!の巻

 あれから三人の行動は早かった。

 

 トキが身一つで動いていたこともあり、根津とリカバリーガールは即座に移動手段を手配し、他の団体がトキに手に入れるべく動き出す前に彼を雄英へと移動させ、その最中に詳しい来歴や戸籍を作るための下準備を行う。

 

 雄英に到着すると、断られることを想定していなかったのか既に件の一軒家は建築済み。これにはトキですら目を丸くしてしまい、前述の通り断られた場合はどうするのか聞いてみたところ二人揃って「嘘偽りなく頼めばそれはないだろう」と思っていたらしい。

人を見る目があるにしても会ったことがないのに分かるものなのか、とトキは二人を相当な人物と認識した。

実際はいきあたりばったりだったのだが、二人の名誉とそれを良い方に誤認したトキのために今後明かされることはないだろう。

 

 それはさておき、案の定水道の蛇口などは問題なく理解出来たトキであったが、連絡用にと雄英から用意されたスマートフォンを渡された時は本気で驚愕していた。

それこそ、マミヤに死兆星が見えていたことを知った時と同じくらいに。

 

 

「こ……こんな小さな機器にそれ程の情報が詰まっているのですか……!?」

 

「正確にはそうじゃないけど……あんた大丈夫かい?すごい顔してるよ、今」

 

(そういえば、彼の世界では電気とかも失われていたのを忘れていたのさ)

 

 

 この後、ノートパソコンや電子辞書、さらには現代の風呂や洗濯機など、過酷な環境下で生きてきたトキには衝撃的なものばかり目にし、それら全てを理解しようとしてトキはストレス性高体温症を発症してしまった。

 

 真面目過ぎた結果である。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 それから幾ばくかの時が過ぎた。

 

 元来の資質や勤勉さもあり、トキは現代家電を始めとした機器の使用法を完璧にマスターし、パソコンに関しても自分で一から組み立てる事こそ出来ないが、起動後の各種設定を自在にこなせるまでに上達。

超人社会における医療方法を多方面から片っ端から頭に叩き込んでいた。

 

 その過程で、雄英の他の教師たちとの顔合わせも済ませてある。特にプレゼント・マイクなど自身のラジオ配信にゲストに呼ぼうとして同期の相澤が頭をひっぱたいていた。

 

 

「何すんだよイレイザー!だってあのトキだぞ!?あの一夜にして時の人となったトキ!あ、コレギャグじゃないぜ!」

 

「んなことは知ってる。どのみち雄英にいるのがバレるのは時間の問題だろうが、同じ教師とは言っても俺たちはヒーローでトキは一般人扱いだ。その俺たちが一般人の生活を脅かすようなマネはするな」

 

 

 そう、ヒーロー免許を持っていないトキは基本的に一般人の教師(保健医)として扱われることが決まっている。逆に考えれば無個性である彼は個性の使用許可を取らずにその桁外れの身体能力や北斗神拳を行使できるわけで、雄英最強の隠し玉にもなるのだ。

とはいえ相澤の言うように一般人扱いの彼の生活を脅かすようなことをしでかせば、雄英どころかそれこそヒーロー自体が批難の対象になりかねない。ましてそれがトキであるならば尚更。

 

 

「お気遣い感謝します、相澤先生。なにぶん以前わたしの名を語る者がいたそうで、変装までして悪事を重ねていたと」

 

「そんなことがあったのか?」

 

「弟と、その友人からの情報ですが。余程変装が上手かったのかここまで再現されたようです」

 

 

 そう言ってトキが上着を脱いで背中を見せると、そこには大きな傷跡が残っており、その場の全員が絶句する。

 

 

「な……なんだよこの傷は!?」

 

「昔、弟の滝行中に落ちてきた流木から弟を庇った際に出来たものです。ここまで似せていたことだけはさすがと言えました」

 

「……よく見かける半端な連中よりよっぽどヒーローらしい。最近じゃ自分が力を発揮出来ないと分かると尻込みする奴が多くてな」

 

「無欲で、家族愛に溢れ、誰かを助けるために体を犠牲にまで出来て、さらに強くて頭脳明晰……おまけに渋い……!アリね!」

 

「何言ってんですかミッドナイトさん」

 

 

 18禁ヒーロー・ミッドナイト。現在独身。

 

 トキの事が色々と刺さったようだが、未だ彼の心にはかつて愛し、それ故にケンシロウとの仲を見守り続けることを選んだユリアがいる。悲しいかな、今のままでは芽はないだろう。

……彼女が黒髪だった頃のトキを見たらどう反応するのか興味は尽きないが。

 

 

 

 他にもセメントスや13号などとも言葉を交わしたトキは教師陣に温かく迎えられた。教員免許や医師免許等はリカバリーガールの口添えもあり、特例で最速取得。

特に医師免許取得に至っては、並み居る名医たちすら唸らせ「これで医者と認めない医者がいるなら、そいつは医療業界から離れたほうがいい」とまで言わしめた。

 

 

「あ、トキ先生ちょっといいかな?」

 

「どうしました?根津校長」

 

「……肩こりとか、疲労回復に効く秘孔、ある?」

 

「ええ。よければ体験されますか?」

 

「是非お願いしたいのさ!」

 

 

 

 

 

 その後――

 

 

 

 

 

「てなわけで見てほしいのさこのツヤツヤすべっすべな毛並み!いやぁトキ先生のおかげで疲れがこう、ぶしゅ〜っと蒸発していくような感じで内側からパゥアーが漲ってきちゃってさ!今ならライオンにさえ正面から勝てそうな気がする、うん」

 

「すみません校長、なんかムキムキになってません?」

 

「一時的なものなのさ!このままでもいいけどね!あ、そうそう。老化抑制のツボなんかもあるらしいのさ!」

 

 

 これを聞いた女性教員がトキの元に殺到したそうな。無論リカバリーガールに説教くらって追い返されていたが。

 

 

 

 そして、さらに時は過ぎ――

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「トキ先生、時間は大丈夫かな?」

 

「構いませんよ、根津校長。今日も疲労回復ですか?」

 

「いやいや、相変わらずアレは魅力的だけど今日は別件なのさ!」

 

 

 ある日、トキの元を訪れた根津はいつもの頼みではなく至極真面目な話を彼に持ってきた。

 

 

「近々この雄英の入学試験があるんだけど、君にも教師の一人として審査に参加しつつ、受験者が何らかの事情で負傷した際に備えて保健医としてスタンバイをお願いしたいんだ」

 

「それは構わないのですが、入学試験に確実に保健医が必要な理由は……なるほど。そういうことですか」

 

「察してくれたみたいだね。君の予想通り、ヒーローを目指す者として避けては通れない、戦闘行為の実技試験があるのさ。これはどれだけ気を配ったとしても、毎年少なからず負傷者が出てしまう。リカバリーガールに待機してもらってはいるんだけど、倍率が倍率だから場合によっては全然手が足りなくてね」

 

「『Plus Ultra』――この雄英の校訓を受験者にも適用するためですね。相澤先生も言っていましたが生半可な覚悟ではヒーローは務まらない。故にヒーローの登竜門たる雄英の試験もまた苛烈なものであると」

 

 

 根津はトキの言葉に頷く。トキ自身初めてこの世界に来た日に早速事件に遭遇し、ヒーローという仕事が危険と隣り合わせであることはその身を持って理解している。今度雄英の教師として赴任するという、日本が世界に誇るトップヒーロー・オールマイトなど凶悪事件との遭遇が日常茶飯事だというし。

 

 危険といえば、あの世界では一般人は毎日が生きれるかどうかというレベルだったのだが、さすがに比べるのは酷だろう。

 

 

「そういうわけで、当日はよろしくお願いするのさ!」

 

「分かりました。何事もなく、無事に試験を終えられるよう尽力させて頂きます」

 

「ありがとう、トキ先生。で……いつものもお願いしたいんだけど」

 

 

 このネズミ、抜け目がない。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 来たる入学試験当日。

 

 本来ならば教師は一ヶ所に集まってモニターを見るのだが、トキとリカバリーガールは急患が出た場合に備えて救護室の隣部屋で見学することにした。と言ってもさすがに余程珍妙な事態でない限り筆記試験で怪我人は出ないだろうということで、当然の如く実技試験のみ見学中。

 

 プレゼント・マイクのアナウンスによって内容が説明され、唐突にスタート。実戦で敵は待ってはくれない、その通りである。

 

 

「ふむ……」

 

「どうだい?あんたから見て有望株はいるかい?」

 

「少々手荒なところが目立ちますが、爆破する個性を持っているこの少年はかなり良い動きをしています。しかし個性と性格が連動しているのか、言葉がだいぶ苛烈です。そういうヒーローもいるかもしれませんが、その点も矯正する必要があるでしょう」

 

 

 まずトキが評したのは先日事件に巻き込まれた爆豪勝己という受験生。戦闘能力は他の受験生に比べて抜きん出ているが、人格に問題があるらしい。

 

 

「それから、こちらの体を硬化させる少年。単純な個性ですが、この手の力というのはそれ故に練度が大きく反映されます。しっかり鍛えれば驚くほど伸びを実感するはずです」

 

 

 その後も次々と評していき、リカバリーガールも頷きながら聞いていたが、ここにきてプレゼント・マイクがルール説明の際に伝えていた『0P』のヴィランロボが出現する。

 

 

「何という大きさだ……!これは一筋縄ではいかない。しかし、あれを前にヒーローとしてどんな手段を取るか、それがこの試験の境目になる!!」

 

「そう、ただ逃げるだけなら誰にだって出来る。予測し得ない脅威に対して如何なる行動に移るか、この実技試験はそれを見るものでもあるんだよ」

 

(やはり逃げようとする者がほとんどか……分かりやすい『力』を表す巨体、人の心にはそれが強い先入観となって恐怖を煽り、抵抗する意思さえも奪っていく。しかし、それを乗り越えねば……む!?)

 

 

 逃げ惑う受験生たちの中で、ある一人の少年がトキの目に入ってきた。これまでにターゲットとなる1・2・3Pのヴィランロボを一体も倒していないその少年は、逃げ遅れた一人の少女を助けるべく0Pへと立ち向かっていく。

 

 あまりに無謀と思えるその姿に、トキはケンシロウの姿が重なる。レイがやられ、怒りのあまりラオウへと挑もうとして自身が力づくで制止したあの時を。

 

 しかし、今画面の向こうにいる少年は怒りではなく、誰かを守ろうという意思のもと眼前の敵に立ち向かっている。

 

 

 

 そして――

 

 

 

 彼は、0Pを撃破した。――己の拳で。

 

 

 

(これは……!まるでラオウ(兄さん)の剛拳のようだ!それだけではない、ケンシロウのように慈しむ心も持ち合わせている。まだまだ未熟だが、彼はあの二人と同じように世界を動かすほどの男になるかもしれない……!!)

 

 

 画面に釘付けのトキを見ながら、リカバリーガールは静かに微笑んだ。

 

 

「……どうやら、あんたの興味を引く子が出てきたみたいだね」

 

「はい……おそらく、彼は鍛えれば大化けするでしょう。しかし、今のままでは個性に殺されてしまうかもしれません」

 

「そうならないためにあんたが支えると?」

 

「いえ、わたしはあくまで彼を見守り、育てることに専念するつもりです。彼を支えるのは、これから彼と共に学ぶ者たちだと、わたしは思っています」

 

「おやおや、まだ合格と決まったわけじゃないのに言い切るじゃないか」

 

「しますよ、彼は。彼は実力よりもっと大事な、ヒーローに必要なものを既に持っていますから」

 

 

 笑顔でそう返すトキに苦笑しつつリカバリーガールは椅子から立ち上がり、それに続いてトキもまた立ち上がる。

受験生たちの『闘い』は一先ず終わった。これから始まるのはトキとリカバリーガールの『闘い』だ。

 

 

「さあて、例年通り負傷者が出たね。さっきの子のことも含めて、ここからは私らが頑張らなきゃなんないよ」

 

「もちろんです。どのような結果にせよ、受験した皆が五体満足に合否を待てるよう治療しなければ」

 

 

 いつもの道着の上に白衣を羽織り、トキはリカバリーガールと共に負傷した受験生たちの治療へと赴く。たとえ不合格だったとしても、今日の出来事は必ず彼らの糧となるだろう。

 

 今回が駄目だったとしても、諦めずにまた挑戦してほしい――そう願いながら、彼は負傷者の治療に当たるのだった。

 

 

 

 

 

 そして後日、彼が興味を示した少年――緑谷出久の合格が決定することになる。




トキ兄さん、爆豪にもマイルドな批評。
だってあのラオウさえ怯ませる彼の場合、爆豪も大人しくなり……いや、無個性と知ったらどうなんだろ。
出久は逆にトキの治療をアテにして無茶振り繰り返しそうな気がしてならない。だって止血と痛み止めって序盤の出久に一番必要なものじゃないか……そこは相澤先生やリカバリーガールにお説教頑張ってもらいましょう。

ついでに根津校長、一時的にムキムキになりましたが別に刹活孔は突いてないのでご安心を。

もし、他にも北斗キャラを出すとしたら

  • ケンシロウ
  • ジャギ
  • ラオウ
  • レイ
  • シュウ
  • サウザー
  • ハート様
  • アミバ
  • むしろトキ兄さんを強化しよう
  • ……霞拳志郎(蒼天の拳)
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