有情のヒーローアカデミア(ただし本人はヒーローにあらず) 作:激流を制するは静水
元が強いので忘れがちですが、トキ兄さんも彼ら同様学んで修行して日々パワーアップしております。
アミバは模倣が得意らしいですが、そういうトキ兄さんもリュウケンとラオウの修行を覗き見ただけで北斗神拳の技を体得してしまうぐらいだし、技の模倣とか普通にしそうな気がしますよね、あの人。
入学試験を終え、受験生らの治療も無事に完了したトキはリカバリーガールと共に一息ついていた。
「お疲れさん、トキ。おかげで去年までとは比べ物にならないほど円滑で手早く済んだよ。個性に頼り過ぎは良くないとつくづく実感するくらいにね」
「いえ、リカバリーガール先生は個性を使うだけでなく的確な治療を施していました。個性に頼りきりではないですよ。しかしこのスポーツドリンクは素晴らしい飲み物だ……水分のみならず塩分も素早く補給出来る。あの世界では水すら貴重でしたから」
「当たり前のものがそうじゃなくなるとどうなるのか……あんたに教えられたよ。しかし煙草はともかく酒もほとんどやらないそうじゃないか」
「ええ、まあ。酒は百薬の長と言いますが、真の健康とは日常生活を整えることでしっかり維持出来るものと、私は考えていますので。もちろん、ちゃんと管理していても患うときは患うものですが」
このトキ、最近は神仙術なども研究しているらしく、
ついでに食料不足が起きた時は自ら望んで断食する所存とまで言い切った。これは北斗神拳に欠かせない呼吸法が絡んでいるからで、一ヶ月程なら飲まず食わずでもギリギリ体を保たせられるそうだが……この件は本気でリカバリーガールさえ止めた。相澤まで青くなりつつ「それはその時になってから考えろ」と言い、プレゼント・マイクに至っては「え、何この聖母。いや聖父?聖人?」と暫し放心状態にあったそうな。
閑話休題。
そんなトキも根津に「君の意見も聞かせてほしいのさ!」呼ばれ、相澤ら他の教師と同じく会議の場に招かれる。まず根津から聞かれたのは過酷な環境下で多くの猛者を見てきた彼から見た受験生たちはどうだったか、ということ。
「当然個々のばらつきはありますが、この総合ポイントの上位陣は皆見込み有り……というのがわたしの意見です。無論、現時点での改善すべき箇所などもかなり目立ちますが、そこを指導していくのが我々の役目ではないでしょうか」
「まあ、今年は豊作って言ってもアイツらまだまだ子供だし仕方ないよなー。それで、トキ個人としての「ベストリスナー!」は誰だ?」
「ベストリスナー……?」
「分かりにくくてすまんな、こいつが言ってるのはお前が注目してる奴のことだ。おい山田、勝手な造語でトキを悩ますな」
「脈絡もなく本名出しちゃらめぇぇぇ!!」
プレゼント・マイク(本名・山田ひざし)の涙ながらの抗議もスルーされ、相澤に聞かれたことに対してトキは自身が見定めた一人の少年を推挙した。
「彼です。緑谷出久」
「お!さすが分かってんな〜トキィ!俺もあの0Pブッ飛ばした時は思わず「YEAH!」って言っちゃったからなー」
「だが戦い方は非合理的だ。トキ、お前も見ただろう。アイツは自らの個性で自壊している、それもたった一回でだ」
「ええ、分かっています。今の彼は未熟かつ危うい。しかし――」
映し出された映像を見ながら、トキは静かに微笑む。
「『助けを求める誰かのために』――その心を持って動いた彼の勇気を、わたしは尊重したい……!!」
(トキくん……!!)
出久本人が聞いたら涙しそうな台詞だったが、彼以外にもダバダバと涙している者がいた。例の如く、オールマイトである。トキはまだ、諸事情によってオールマイトと出久が師弟関係になった事を知らないのだが、トキの慧眼の前ではバレるのも時間の問題だろう。
「トキ先生の言う通り、たとえ未熟であっても雄英の門を叩き、そしてちゃんと結果を残した。なら僕達が次にすべきことは彼らを、次代を担うヒーローとして立派に育て上げることなのさ!」
根津校長の一言により、今回の雄英の入学試験は本当に終了したのである。合否通知にトキを参加させる案もあったのだが、結局流れてしまったのも最後に付け加えておこう。
☆☆☆☆☆☆☆
そして、新たな一年生が入ってくる入学式の日……トキは相澤に苦笑しながら話しかけた。
「まさかわたしが保健医だけでなく相澤先生の担当するA組の副担任まで受け持つことになるとは思いませんでしたよ」
「俺も聞かされた時は耳を疑ったよ。ただでさえお前は今まで以上に忙しくなるっていうのに」
そう、トキは相澤が担任を務める1年A組の副担任も兼任することになったのである。実を言うと、担当するならB組にというB組担任のブラドキングからの申し出もあったのだが、クラス分けされた生徒の内訳を見て根津がそう判断したのだ。
「ところで相澤先生」
「なんだ?」
「……修行がてら、わたしが担いで行きましょうか?」
「……すまん、頼む。色々あって寝不足なんだ」
彼――緑谷出久にとって、雄英での生活は波乱に満ちたものになるだろうということは初日から明らかであった。何を隠そう、因縁のある幼馴染の爆豪勝己と同じクラスであり、入学試験で顔を合わせたことのある面々もいるとなればそう思うのも当然といえば当然。
その中の一人が可愛らしい女子であったのだけは彼にとって僥倖だったのかもしれないが。
まだ喧騒の中にある1年A組。それを黙らせたのは男性の声。
「お友達ごっこがしたいなら他所に行け。ここはヒーロー科だ」
声のした方を全員が向けば――
道着の上に白衣を着た筋肉隆々の偉丈夫の肩に担がれる、黄色の寝袋に入った無精髭の男性。
(((いやソレどんな状況!?)))
「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね。……悪い、トキ。少し角度ずらしてくれ。ゼリー飲料飲みたい」
「分かりました」
(((そしてそっちも普通に対応するの!?)))
偉丈夫が担ぎ方の角度を変えると男はゼリー飲料を飲み干し、一息入れて自己紹介する。
「担任の相澤消太だ。よろしくね」
「副担任を務めるトキだ。よろしく頼む」
(((え、普通逆じゃない?)))
担任と副担任――相澤とトキのポジションが間違ってるんじゃないかと思われるのも無理はない。もしトキが正式なヒーローであればそうなっていた可能性もあるが、生憎と彼は一般人扱いだ。
「凶悪なヴィランを指先一つで倒すお前のような一般人がいるか」……そんなことを思ってはいけない。
生徒のうち何名かはトキにより治療を施されたのを思い出したのか、「あ!」と声を上げるが次の相澤の言葉にかき消されてしまう。
「早速だが体操服を着てグラウンドに出ろ」
「相澤先生、このままグラウンドへ向かっても?」
「ああ……いや、その前に職員室に寄ってくれ。さすがに寝袋は置いていく」
「分かりました。では皆、グラウンドでな」
穏やかに言うトキではあったが、寝袋に入った相澤を担ぎながら踵を返し去っていく姿はシュールという他ない。
(((まだ担いだままなの!?)))
(ん……?トキ……?トキってまさか!?)
他の生徒たちが二人の奇妙な行動に驚く中、少し前まで無個性であった出久はトキの素性に気がついた。
ある日、突然現れた無個性希望の星。
個性どころか道具や機器を使わず、傷や痛み、出血や発熱さえも治し、さらには後天的に失った視力さえ取り戻すという奇跡の『技』を持つ医者。
しかもヴィランを自身も相手も無傷で制圧するという並外れた戦闘能力も見せたという。
突然現れたと思えば、また突然消えたと言われていたが……まさか雄英にいるとは。
まだその話の『トキ』と確定したわけではないが、出久にはある種の確信があった。何故ならばあの入試の後、彼を治療したのは他ならぬトキだったのだから。
(穏やかな人だったけど、何となくわかる……オールマイトに並ぶレベルの人物だって)
彼にとって、憧れの存在はオールマイトだけではない。トキもまた彼が憧れ、尊敬する人物なのだ。
そして彼が無個性でありながらヴィランを制圧したその実力の一端……それを彼は、否、彼らはこの後の出来事で思い知ることになる。
相澤先生を担ぎ、トキ兄さん堂々登場。
最初は体育館を真っ暗にしてカサンドラの牢獄をイメージしつつ、相澤先生に連れられた生徒たちを座禅で待つとか考えましたけど、やるならもう少し後ですね。
同じ髭持ちでも相澤先生とプレゼント・マイク、トキ兄さんが並ぶと最後の圧が段違いだと思いました。
もし、他にも北斗キャラを出すとしたら
-
ケンシロウ
-
ジャギ
-
ラオウ
-
レイ
-
シュウ
-
サウザー
-
ハート様
-
アミバ
-
むしろトキ兄さんを強化しよう
-
……霞拳志郎(蒼天の拳)