有情のヒーローアカデミア(ただし本人はヒーローにあらず) 作:激流を制するは静水
とはいえ世紀末じゃないからヒロアカ世界だと有情拳すら安易に放てないんだよなぁ……。
そのためのトキ兄さん強化なんですけどね。
少なくともドラゴンボールみたく舞空術使い始めて気弾が乱れ飛び地球がぶっ壊れたり、NARUTOみたく土だの水だの火だのを吐いて巨大生物を口寄せしたりとかはまず無いのでご安心を。
予定になかった戦闘訓練が告げられたことで、生徒はよりもオールマイトがまずトキにその理由を問う。
「ト……トキくん、それ私聞いてないんだけど……」
「先日は相澤先生に乗っかる形でしたが、雄英の校訓と校風をわたしもこの場で使わせて頂くとしましょう」
即ち『Plus Ultra』と『自由』。分かりやすく言ってしまうと『良い受難の為なら何でもあり』……そんな感じなのだが、オールマイトはトキの人となりを知っているので意味なくそんなことはしないと理解する。
「先程の戦闘訓練の成績を考慮し、わたしが選んだ二名とわたしによる戦闘訓練を行う。勝敗条件は変更なし、選抜された二名以外は当然見学。見るのもまた闘いだ」
「そ……それで、その二名って誰なんですか?」
まさか自分なのだろうか、と不安な気持ちが分かりやすく出ている出久に苦笑するが、トキは表情を引き締め熟考の末に選んだ二人の名を告げた。
「爆豪勝己、そして轟焦凍。二人は準備するように」
この発表はその場をざわつかせるのに十分な衝撃であった。入試主席と推薦入学枠が組んで、無個性の教師に挑む――前代未聞と言ってもいい出来事だ。
「爆豪と轟だって!?」
「二人とも強個性じゃねぇか!いくらトキ先生が強くても無個性、その時点で対策不可能だろ!?」
「戦闘訓練を見ていれば分かるが、絶望的にトキ先生が不利だぞ……!?」
「何を基準に選んだのかしら……?」
驚きのあまりトキが無個性、爆豪と轟が強個性とそこに焦点が行ってしまっている……が、これがトキの狙いの一つ。
そしてもう一つが――
(出久と爆豪を組ませるのは時期尚早だろう。先の戦闘訓練の感じからして、わたしと出久の戦闘中にまとめて爆破しようとする危険性が垣間見えるほどだった。同時にその個性でビルを凍結させて瞬く間に勝利した、轟の実力をより知るための良い機会でもある。あれでは個性という面でしか実力を判断出来ない)
爆豪は当然として、轟はその実力を自らの身で確かめることにあった。個性の扱いは見事、しかし先日の個性把握テストでも判断出来なかった部分はどうか?
それらを見極めるべく彼を指名したというわけである。
既に準備が出来ていたトキは、自分がヴィラン側になると言いながらビルに入っていく。
「ヴィラン側って……ますます不利な状況になったぞ」
「一人であの二人を相手しながら核を守れって、そんなの無理ゲーじゃん!」
「守ることは攻めることより難しい……一体どうする気なんだ……?」
生徒たちが不安を募らせていくが、爆豪と轟はそうではない。
(願ってもない機会だぜ……!相手が誰だろうが無個性が俺より上なわけねぇってことを証明してやる!!)
(あの強さの秘密を知るには直接戦う必要があるだろうな……やろうと思えばいつでもビルを凍結させて核の確保は出来る。あいつを超えて否定するためには強さの究明の方が大事だな)
……トキ自身か、それとも彼が相手だからと戦闘訓練の勝敗条件を甘く見ているのか、トキと戦うことばかりが頭の中を占めていた。
それが、思いもよらぬ結果になると誰が予想出来ただろうか。
☆☆☆☆☆☆☆
トキがビルに入ってもうすぐ十分――訓練開始まであと僅か。
「おい、半分野郎」
「……何だ?」
「ビルごと凍らせるんじゃねえぞ。俺が確保して勝つ」
「分かってる。……だがもしもの時は凍らすぞ」
「ハッ!もしもなんかねぇ!俺が勝って終わりだ!!」
出久相手に比べればマシなのだろうが、相変わらずスタンドプレーする気満々である。もっとも、轟の方も似たようなものなのだが。
そして開始時間になって二人が突入しようとした時、なんとビルの入口からトキが悠然と歩いて出てきた。これには爆豪も轟も唖然とする。一人だというのに核兵器を放っておいてもいいのかと。そして、それは見学中のオールマイトや生徒たちも同じであった。
「何であそこに核を……!?二人が突入したりすればすぐに見つかるぞ!」
「しかも本人は出ていくし!はなっから勝負を捨ててるとか?」
「いや……トキ先生はそういう人じゃない」
「デクくん?」
「トキ先生は僕たちが思っている以上に広い視野で周りを見ているんだ。実力だけじゃない何かを狙っているに違いない」
ほとんどのクラスメイトがトキの行動を理解出来ない中、出久だけはその行動の先にある何かを探ろうと頭をフル回転させている。彼が分析が得意なのは周知の事実だが、トキもまた分析は得意なのだ。そこに今回の鍵が隠されている、と出久は踏んでいた。
(しっかり見なきゃ……!無個性とかそんなのは関係ない、トキ先生の強さを!!)
「何でビルから出てくるんスか。俺らが突入したら終わりッスよ」
「かもしれん。故にそうさせるわけにはいかん」
「……いくら先生でも厳しいと思いますが」
「お前たち……『背水の陣』というものを知っているか?」
「「!?」」
少し話して気づいたが、トキの纏っている空気が普段と明らかに違う。
「核兵器はあの中だ。無論、
「そんなことバラしてどうするんですか?」
「……お前たちヒーローによって、
トキは今、ヴィランになりきっている……モニターを通して見学しているオールマイトたちにもそれは分かっていた。
しかし、目の前の二人――爆豪と轟だけはそれだけでなく、彼らをも覆いつくすような、トキの圧倒的気迫がその場を支配していることに気づく。
「覚えておくがいい。覚悟を決めたヴィランほど恐ろしいものはないということを……!!」
爆豪と轟の目にはトキの纏う
「……上等だァ!!!」
未だ棒立ちのままのトキに対して、爆豪が先手必勝とばかりに一気に踏み込んで爆破する――かと思われた。
「ゴハァ!?」
気づいたときには爆豪の腹にトキの拳が炸裂し、爆豪の身体はくの字……いや、『<』の記号のような凄まじい曲がり方をしていた。まだ距離がある、そう油断していた爆豪は思いもよらぬ強烈な一撃をもろに食らい、堪らず腹部を押さえて片膝をついたが、それで終わりと慢心するトキではない。
トキは爆豪が痛みで動けぬうちに、左の胸あたりを突く。
「があぁぁぁああっ!?」
「秘孔
「何だと……ッ!クソがァァァ!!!」
確保用のテープを爆豪に巻き付けたトキは、轟へとその標的を変える。そんなトキに爆豪は力の限り叫ぶも体を動かすことはおろか、個性すら発動出来ない状態。自らのタフさに驕り、相手は無個性だと一瞬でも防御を怠ったことで爆豪は瞬く間に無力化されたのだ。
それを見ていたオールマイト以下A組の生徒たちの表情は驚愕一色に染まる。あの爆豪が、真正面から即座に制圧されたのだ。個性を使う暇さえ与えられぬまま。
「な……何だよ、あれ……何で爆豪が動けなくなってんだよ!?」
「秘孔新膻中……とかを突いたと、トキ先生は仰っていましたわ」
「うん、ウチも聞いた。なんかトキ先生が声かけないと動けないとかなんとか」
「はあ!?何だそのチートみたいな技!」
(あれが校長やリカバリーガールが言っていた北斗神拳……!!相手を必要以上に傷つけず、的確に無力化するとは!!)
一応、鍛え抜いた者が自力で解除して動けるようになることは可能。だが、それは同じく北斗神拳を使うケンシロウでさえ特殊な状態になった時であったため、今の爆豪では到底不可能。
(これが個性に頼らないトキ先生の"技術"……!!)
出久もまた、息を呑んでモニターを注視している。モニターの向こうの轟もまた、あっという間の出来事に唖然としていた。
轟は目の前の光景を信じられない。たった二発。その二発だけで、間違いなくA組トップクラスの実力者である爆豪が何も出来ぬまま確保された。
「お前もわたしとの戦いが目的だったのだろう?いつまでそうしているつもりだ」
「ッ!」
「今はこうしてわたしが待っているから良いものの、実戦ではヴィランが待つことなど基本的には有り得ない。思考をすぐに切り替えるのだ。でなければ次の瞬間、お前の命の灯火が消えていてもおかしくはない」
「そんなこと……とっくに分かってる!」
トキの技量ならば、ここからビルを凍らす前にこちらに仕掛けて爆豪と同じ目に合わせることが可能だと判断した轟は、まず自分の周囲に氷を発生させ、防御を強化した上でトキの動きを制限する戦法に出る。
「安易には攻め込まない。良い判断だ」
(見たところ爆豪を戦闘不能にしたアレは、相手の体を突くことで発動する……そうなると定石といえばやっぱり距離を取っての攻撃しかないか)
既に一人になってしまっているため、慎重に戦術を練らなければ敗北は免れない。しかも相手は無個性と言ってもその技量や素の身体能力が別次元……これ以上は一つのミスも許されない状況だ。
ただ、轟は一つ思い違いをしていた。
北斗神拳には相手に触れずとも攻撃する方法がある。爆豪を戦闘不能にしたことが相当なインパクトだったから仕方ないとはいえ、その可能性すら考慮していなかったのだ。
トキは左の掌に右拳を添え、精神を集中する。それに対し、悪寒を感じた轟は即座に無数の氷を飛ばしてトキを狙うも、逆に距離を取ったのが仇となりトキに届く前にその攻撃は無に帰することになる。
「
「ッ!?」
誰が予想出来たか、突き出されたトキの両掌から闘気による弾丸が連続発射されたのだ。その闘気密度は恐ろしく高く、大きさも轟の放った氷より大きい。轟が放った氷を破壊しながら突き進む無数の弾丸をどうにか回避した轟だったが、彼はそこで判断を誤った。
個性把握テストのとき、トキが立ち幅跳びをした際に相澤が呟いた「トキの真骨頂は空中戦」――ほんの僅かな間の一言を、彼が真面目に受け止めていたらそこで勝負は決まらなかっただろう。
気がつけば轟が見た場所にトキは居らず――
轟よりも更に上空へと飛んでいたトキは、轟の両耳の下辺りを目にも止まらぬ早さで突いた。
「この訓練はお前たちの負けだ。抵抗せず確保されるんだ」
「分かりました」
轟は間髪入れずに答えた上、トキにそのまま空中で抱えられて地上に降りた後、本当に何の抵抗もせず黙って確保テープを巻かれてしまう。それには爆豪の怒声が更に増し、それから戸惑いながら告げられたヴィラン側勝利のアナウンスの後で、トキは二人に突いた秘孔効果の解除を行った。
「半分野郎!!テメェ何簡単に諦めてんだ!!」
「諦める?俺が?それよりいつ決着がついたんだ。先生の攻撃を飛んで避けた後の記憶が無いんだが」
「ふざけんな!!負けだって言われて分かったって言ってただろうが!!」
このままではまずいと思ったトキは、轟が意識を失ったのは自分が秘孔"
「い……意識を支配って……」
「つーか突いたって何!?指先一つで何でもありかよ!!」
「まさに一騎当千、華麗なる業師」
「ところでトキくん、何故核を入口入ってすぐ目につくような所に置いたんだい?」
「簡単ですよ。二人は私が入口を守っており、そこを突破出来無ければ本来置かれている場所まで爆破で空を飛ぶか、氷を使って足場を作り別の階の窓か屋上から侵入するだろうと考えたのです。その上でわたしはこう言いました。そこから動かしていない、と」
そう言ってトキが指差したのはビルの入口。そう、文字通り入口に持ってきてそこから動かしていない、という意味で、とどのつまり逆に頭を使わずビルに正面突撃すれば良かったのだが……結果は、二人が率先してトキと戦おうとしてしまったため徒労に終わってしまった。
「侵入して無駄足を踏ませた後で確保することも作戦の一部ではあったのですが、二人がそれをまるで狙わず私の確保を優先してきたので、思いのほか早く勝敗が決してしまいました」
そう言って苦笑するトキであったが、あーでもないこーでもないとトキの技について議論している見学していた者たちに対して、爆豪と轟は未だショックを受けたままだ。
勝てないとは微塵にも思っていなかった。多少は苦戦するだろうが、むしろ自分たちの実力を示せるという自信が少なからずあったのだが、それは容易く木っ端微塵にされ、実力差を実感させられるだけという散々な結果になり、爆豪は誰に向けてか怒りに震え、轟も悔しさのあまり下唇を噛んでいる。
(確かに二人は強個性を持っているだろう。身体能力も高い。だが世界は広い……自らを井の中の蛙と思い一層励むか、それともこの結果を認めぬか……それが未来への分岐点と言ってもいい。この敗北が二人の糧となってくれればいいのだが)
トキの願いが届いたのかは定かではない。
少なくとも言えるのは、二人とも今回のことで折れたりだけはしなかった、ということだけだ。
常に話題を追い求めるマスコミたち!
しかし、その裏でそれすらも利用しようとする恐るべき悪意が雄英を襲う!
次回!有情のヒーローアカデミア!
『委員長選挙!メディアの影で蠢くヴィラン!!』
「お引き取り願おう。ここはお前たちがいて良い場所ではない!!」
まず今回、トキ兄さんが使った技と秘孔で分かりにくいやつの説明を簡単に。
○北斗乾坤圏:北斗無双にて登場した、闘気を放つ遠距離技。もう病人じゃないので連射しても無問題。
○秘孔"風巌":蒼天の拳で登場。霞拳志郎が馬賊に対して使用した。突かれた者は術者の言う通りにしてしまう、心操人使の個性の物理版。個人的にチートだと思う。
どちらも北斗の拳の原作には登場していないので分からない人もいるかもしれません。特に風巌。
しかし他の北斗キャラ(一名蒼天いるけど)出すにしても精神世界に出すか現実に出すか悩みますね、コレ。
もし、他にも北斗キャラを出すとしたら
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ケンシロウ
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ジャギ
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ラオウ
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レイ
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シュウ
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サウザー
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ハート様
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アミバ
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むしろトキ兄さんを強化しよう
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……霞拳志郎(蒼天の拳)